神楽舞   作:天海つづみ

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焼き鳥

 

「ゴコク殿…」

「うーむ…」

 タタラ場、鉄鉱石や砂鉄から鉄を作り出す

巨大な建物、中には多くの職人と猫族が作業する

 カムラの里の中心であり象徴的な場所

 その前で何やら相談している里長とゴコク様

 

 日に焼けた肌に白髪の老人ではあるが、

筋骨盛々の大きな体に鎖かたびら、

大太刀を持つ里長と

 

 丸々太った背の低い、七福神の

恵比寿の様なゴコク様

 

 まるで正反対の二人が何やら話しているのを

横目に見ながら歩く

 ハンターになった、それは

『遠慮なくヒノエ様と話が出来る』とも言える

 これからは毎朝が楽しみだ

 

「ヒノエ様、今日は何かありますか?」

 クエストを聞くカゲリ

 

「あら?今日はシグレは?」

 いつもの場所に座り見上げて来るヒノエ、

その上目遣いに…

 

「ま!まだ寝てるみたいで…

今日は見てません!」

 うぉお!いつも立ち話だったからこの目線は!

 顔はキチンと洗ったし変な所無いよな?

 思いっきりキョドる

 

「しょうがない子ねぇ」

 クスクス笑う、分かっているのだ、

カゲリが自分に気がある事に

 

「ではクエストではありませんが…」

 

 

 

 

 ……………

 

「キッチリ油さしておけ!」

「柵のロープ結び直しておけ!」

「昇降機!錆びも見とけよ!」

 カムラの里は年に1~4回程度

モンスターの群れが進行する通称

『百竜夜行』が起こる、それに備えて巨大な

砦を建設してある、

 そして各設備は常日頃からメンテナンスが

大事だ、だから手が空いた者は大概

ココに来ている

 里の人々は普段は農業、漁業、製鉄で

生計を立てているが、いざ百竜夜行となれば

全員が守人となり防衛戦となる

 

「バリスタの調子は俺が見るよ」

 ヒノエに頼まれた、里から約2キロの砦、

その設備のメンテナンス

 

「おぉ?カゲリ!狩人になったのに守人の

仕事までさせてスマンな」

 里の加工屋、ハモンさんに声を掛けられる、

普段はタタラ場の前で剣などを研いで

仕上げたりしている人、歳は70位だろうか

シブい顔

 

「お前は視界が広くて上空の敵を見つけるのが

早いからな、

正直守人から狩人になるのは惜しい」

 バリスタを撫でながら言うハモン

 

「ハンターだって使うんだし

今までと変わりませんよ?」

 最大仰角にしてみる、普段から整備して

あると変な引っ掛かりや軋みも少ない

「当たり前に動くってのが大事なんですよね」

 今度は旋回してみる

 

「それが解るか…若いのにお前は出来た

ヤツだな、

テルを思い出すわい」

 

「………」

 

「おっと、何か気に触ったならスマン、

バリスタの名手がせっかく調子を見に

来てくれたのになぁ」

 

 

 隣の昇降機が音をたてる、

鎖と歯車の軋む音とともに

 

「シグレ参上ぉ!!!」

 気のせいかスポットライトに照らされ、

残念なイケメンがせり上がる

 

 

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 

 

「リアクションうっすw」

 

 

「…何やってんだ?」

 目も合わせないカゲリ

 

「ハモンさん、ダメだよぅ、

カゲリにその話は」

 

 このバカ…

 

「カゲリぃ、何で起こしてくれないんだ?」

 

「なぜ俺が起こすんだ?」

 模擬弾を装填する

 

「お前しか起こす人がいないんだよぅ?」

 

「俺はお前の親かよ」

 発射する、着弾点に照準を修正

「親なんていねぇもん」

「俺も居ないわ!威張るな!」

 

「本当にお前達は仲がよいな」

 珍しくハモンさんが笑う

 

「腐れ縁ってヤツですよ」

 このバリスタのチェック終了…

えーと…次のバリスタ…

 

「親友だろぉ?あー、

ウツシさんが呼んでるんだったぁ」

 

「バカ!それを先に言え!」

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 ヒノエちゃんの笑顔は正に太陽だ、

あの笑顔と仕草に毎朝起こされるなら

団子を一日五十本食べる程度可愛いものだ、

しかし『注目』すべきなのは

ミノトちゃんの胸!

姉さんより大きくないか?

それにあの無表情も

姉さんとまた違った趣があって…

 

「…」

「…!」

「ウツシ教官!」

 

「うぉっとぉ!影(カゲリ)じゃないか!」

 焦る大先輩

 

「また声に出してたぁ」

 シグレがニヤニヤする

 

「時雨っ(シグレ)どっどの辺からっ?」

 

「団子の辺りからですよ?」

 

 キチンと姿勢を良くすると

「ふ、二人とも、解っているとは思うが…」

 冷や汗の大先輩

 

「言いませんよ、こんな事」

「どうしよっかなぁ」

 ニヘラと笑う時雨

 

 船着き場の屋根の上で落ち合う、

行商人達が行き交うのを真上から見られる

 

 この里の絶対的エース、トップの狩人

ウツシ教官、狩りの腕前はもちろんだが

その他にも諜報などで他の里にも飛び回る

 

 姿勢も良く動きも早い為に勘違い

しやすいが、

俺が子供の頃から今の姿だし、

中年のハンター

にまで「愛弟子よ!」って言う

 

 

 

 一度何歳なのか聞いてみたら

 

 「永遠の17歳だよ!」

 

 

 

 

 

 …教官、追い付いちゃったよ俺

「で?何をするんですか?」

 

「フクズクは与えて貰ったんだよね」

 

「昨日からねぇ」

 

「じゃあ二人で寒冷群島へ行って来て、

ヒノエちゃんから正式に受けるんだよ?」

 

 

 

 …………

 

 

 

「なんか変な仕事だな」

「偵察だって仕事だぜぇ?」

 

 また二人でこの寒い狩場へ来るとは

 依頼内容は

「寒冷群島の大型モンスターの把握」

 

「なんでそんな事するんだ?」

 翔虫で飛ぶ

 

「里長とゴコク様が話してたぜぇ?」

 一緒に飛ぶ

 

「何を?」

「この前の荷車さぁ」

 身を切るような冷たい空気

 雪と氷と水辺の世界を飛ぶ

 

 着地して

「俺達がバギィ掃除したあれか?」

何か変だったか?

 

「あの数の群れなのに何でドスバギィが

いないんだって話して たんだぁ」

 

「!」

 そう言えばそうだ、

何でボスが居ないんだ?

 それにあの数、

何で一ヶ所に固まってんだ?

あれじゃまるで…

 

「…避難してたっぽいよねぇ…」

 影の顔を見る

 

「時雨…お前いつ気付いた?」

 

「バギィは肉食だよぉ?団子に混ぜる

薬草とかの荷車に用があるかぁ?」

 

 コイツ!!

 しかし納得する、実は時雨はもっと早く

ハンターになれるはずだった、

しかしある事件を起こして3ヶ月遅くなった

 ハンターとしての能力は影より高いのだ

 

 フクズクが腕に留まる

「良い子だ『ヒヨコ』、大型は何頭だ?」

 フクズクのヒヨコは三回影の腕をツツク

「よし行け!」

 ヒヨコを飛ばす

 

「お前ネーミングセンスねぇなぁ」

 時雨がニヤニヤ

 

「お前に言われたくないぞ?」

 時雨が起こした事件、

それは晴れてハンターとなりフクズクを

与えられた時、

名前を『焼き鳥』と付けようとして

里長を激怒させた通称『焼き鳥事件』を

起こしたらしい、

そして練習生に戻された

 昨日はキチンと名前を付けたが…

丸目ってそのまんまじゃないか

 

 

 

 …………

 

 

 

 

「あれって確かゴシャハギだな」

 初めて見た

「うわぁ、おっかねぇ顔だなぁ」

 

 10番と区切られた崖の上から見下ろす

 アオアシラと同じタイプの熊型、

普段は四足だが戦う時は後ろ足で立ち、

その両手に氷の剣を造るらしい

 コワイ顔に角

 

「その内アレとも戦うのか?」

 デカイ、アオアシラと比べ物にならない

 百竜夜行に来たことが無いモンスターだ

 

「そうなるさぁ…おっ?あっちに

イクニミソネ…イニクソミネ?」

 

「イソネミクニだ、名前くらい覚えろよ」

 

「なんか言いずらいんだよなぁ」

 なんだか楽しそうに泳ぐモンスター、

水辺に特化しているらしく

地上戦はやらないらしい

 

「さて、あと一頭は…」

 上空のフクズクを見る、旋回していた

ヒヨコはコッチを見ると、キャンプの方へと

身を翻す

 

「ありゃ、入れ違いだったなぁ」

 丸目も同じ様に飛ぶ

 どうやらキャンプの近くに移動したらしい

 

「また飛ばなきゃな…」

 翔虫を準備するが

「さみぃよ、あったかい防具欲しいなぁ」

 この寒さの中を飛ぶのは辛い

 

 

 

 

 

 

 3番にそれは落ちていた

 黒くて…紫っぽい鱗?

 それに何だ?この足跡

 

「あれぇ?何もいないぜぇ?」

 見上げる時雨

 上空の丸目は旋回するだけ、

既に他の地域に行ってしまったらしい

 

「時雨、これ見たことあるか?」

 多分鱗?を見せる

 

「んー、こんなの習ってないぜぇ?」

 時雨は足元を調べる

「四本足っぽいぜぇ?」

 

「こんな足跡…」

 二人ともウツシに習っているため、

ほぼ全てのモンスターの姿形は知っている、

 百竜夜行でも確認している

 

「まさかラージャン?」

 一度夜行で見た、あの時は重症者が出た…

 

「ラージャンは鱗じゃねえよぅ?」

 

 そうだ、金と黒の体毛だったはず

「…よし、とにかく帰ろう」

 

「影ぃ、気付いてるかぁ?」

 

「?」

 

「ポポもバギィも姿消してたろぉ?」

 

「!」

 

「何だろうねぇ」

 辺りを見回す

 

 やっぱり時雨は勘が良い

 

 

 

 

 




こういう人は必ずクラスに一人はいる
自己紹介の時、どこの中学からじゃなく
「家から来ました!」
とかいうやつ。
陽キャとは少し違いスベり続けるが
誰からも愛されるバカ
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