神楽舞   作:天海つづみ

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何者?

 

「あれ?」

クエストから帰って風呂掃除をしよう、

と思ったら風呂場が暖簾ではなく引き戸に

なっている

「なんで壁があるんだ?」

 

「影」

「ハモンさん?」

 影の留守中に風呂を工事したらしい

「何でですか?」

「ヒノエから聞いてないのか?」

 

 

「ちょっと何?姉さん!」

「ほら、ちょうど良かった」

 天音の腕を引っ張るヒノエ

 

「ヒノエ様、どうしました?」

 

 

 家の中

 

 

「「同棲?!」」

 二人でハモる

「何か問題でも?」

 ニッコニコのヒノエ

 

「そ、その、まだ早いって言うか…」

「ね、姉さん、あの、心の準備的な…」

 しどろもどろの二人

 

「天音、貴女は立派にハンターになり影君と

…つまり目的は成し遂げましたよ?一人前の

女性をウチに置いておく理由がありませんよ?」

 

 

「だけど姉さん…私17…」

 

「ここに住むでしょうから覗かれないように

お風呂の工事をしてもらいました」

 頷くハモン

 

「姉さん…」

 

「今日から姉さんと呼ぶのも禁止しますね?」

 

「それは厳しいのではないかヒノエ?」

 

「あら、何故でしょう?」

 

「他家に嫁いでも親姉妹の呼び方は

変わらんだろう?」

 

「そうですねぇ…」

 上を向き顎に人差し指を付ける

 

「あ!あの!」

デカイ声で影が制する

「なぜに!なぜに同棲する運びに

既になっているのかと!」

 混乱気味

 

「そ!そうよ!どこでどのようにどのような」

 こっちも

 二人とも真っ赤で目がグルグル

 

「だって両思いでしょう?」

「反対する親がおらんだろう?」

 

「あ、あの!聞いてください!」

二人の前で土下座する

「お、俺はまだ自信がありません!そ、

その天音を養っていけるか、ハンターとして

食っていけるか…」

 

「あら?今更そんな事言われても困りますよ?」

 

「へ?」

 顔を上げる

 

「何で姉さん?」

 

「天音?一緒に影君に言わせたでしょ?

『一生支える』って」

 笑うヒノエ

 

天音の頭に衝撃が走る!

 

ヒノエと一緒に影をいじっているつもり

だった、悪ふざけで告白させたつもりだった、

あの時…もしかしたら…いや、もっと前から

ヒノエ姉さんは…

 

「こういう悪企みは誰も勝てんなぁ」

 苦い顔のハモン

 

「あら悪企みなんて人聞き悪いですよ?」

 

 

そうか…そういう人だ、そういう人だって

解っていたはずなのに、そうよ、姉さんは

いつでも自分が楽しむ方向に皆を巻き込む

 

 

 『ただの愉快犯』だった!!

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 二人きり

 土間に向かい並んで正座する

 

 どうしたら良いんだ?!

 何だコノみなぎる緊張感!

 目線さえ動かす事を躊躇う

 

 息苦しい

 

 

 

「ななな、なぁ天音っ!」(裏声)

「なっなひゃあに!?、影!?」

 ビクビクする二人

 どうしよう…

 

 

「ガラッ!!」

「うわあっ!」

「ひゃあっ!」

 なに?!何事?!

 

「むう?邪魔してしまったか?」

 

「里長っ!」

「な、なんでしょうかっ?!」

 

 …………

 

「はあぁぁー…」

 深いため息の影と天音

 

 

「残念です里長」

 ヒノエが珍しく口を尖らせる

 

とりあえず同棲は無くなった、理由は

若手の男ハンター達が悔しさとヒガミを

募らせ呑んだくれてしまったらしい

 

「このままではギルドの運営に支障を来すゲコ」

 

「うむ、延いては里の運営、夜行時の連携にも

影響しよう、幸いにもやることはある、延期だ」

里長は見回すと

「梁や柱は問題ない、しかし粉挽きの水車小屋

でもあるからな、ハモン」

里長は畳の新調、襖や建具の指示をして

帰って行った

 

「そうだな…」

 ハモンは土間を見回し

「何とかしてみよう」

 帰って行く

 

「明日のギルドが楽しみゲコ」

「仕方ないわ、天音、行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 一人になった…でも…なんだろ?

 この『外堀が勝手に埋まっていく』感じは…

 

 俺…追い詰められてね?

 

 

 

 

 

 

 ヒノエ、ミノトの家

 

 追い詰められる、それは天音も同じで

「ヒノエ姉さん、本当にこれで良いのかな…」

 和室で正座で向かい合う

 

「あらぁ、不安?」

 

「天音、四年前の天音の意思を姉様は

叶えたんです、今になってどうしました?」

 

「あのね?」

 

私は嫁ぐ流れなの?

いや本心を言えば影が好きだよ?だから影の

望むまま男になって仲間になったんだよ、

影のそばに居たいから

 

だって初めて『病弱な娘』じゃなく

普通の『女の子』として話してくれたもん

 

 だけどさ

 

 支えるって言ってもらったのは

 男の仲間の『時雨』じゃん

 私はずっと時雨だったじゃん

 

 私は…何も言ってもらってない…影の本心…

 

「全くこの娘は…」

 首を振るヒノエ

 

「天音…影君はハッキリ『天音』に

言ったでしょう?」

真っ直ぐ見詰めるミノト

 

「何を?」

 

「『天音は俺のモノだ!!』、って里中に

宣言したでしょ?」

頚を傾げるミノト

 

「あ!あー…あれか…」

今更真っ赤になる

 

「告白されたのに空舞で斬り掛かるんだもの

本当に見てて飽きないわよ貴女達w」

口を抑えて笑う双子

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 

 翌朝

「うわ…」

「臭いよ…」

影と天音は唖然とする、ギルドの床や

テーブルに数人の若手が寝ていて凄い酒臭い

 

「まったく…情けねぇヤツらだ」

春香が頭を引っ叩いて起こしていく

 

「うぐぉぉお…影のやろぉ…」

「天音ぇ…何で影と…」

ハネナガと神部も転がって寝言を言って

いる、この短期間で天音のファンが

増えていたのだ

 

確かにヒノエとミノトは美人ではあるが、

この里の象徴的な部分があり

近付き難い所がある、

 

ところがある日そこに身近な美人が現れた

駆け出しの彼女ではあるがチャンスはあった

 

しかし今回の同棲騒ぎ

もう『許嫁』と里長達が正式に認めてしまい

手が届かない存在になったのだ

 

「おう影、なんか同棲中止だってなぁ」

春香が来る、

笑顔なのに何で迫力があるんだろう

 

 昨夜の話をすると

「里長達も急ぎすぎたんだよなぁ…」

 顎を掻く

「急ぐ?何かあるんですか?」

「春香さん教えて下さい」

 

「天音、いつも通り姉御で良いぜ?影、

要するにお前の自覚の問題だ」

影の額に指を当てる

 

「自覚…?」

 

「まぁ…まだ解らねぇよなぁ」

奥のテラス席へ行くと座って寝ている若手を

掴み、乱暴に床に放り投げる

「ゲフッ!」

「うぐぉっ!」

呻きながら転がる酔っ払い

 

 

「ほら、まぁ座れ」テーブルをバンバン叩く

「は、はい」

 席を作ってたのか…乱暴だな…

 

 春香の話を要約すると

『影の帰る場所』を作るために始まったらしい

 

「帰る場所?」

 何の事だ?俺ん家あるし…

 

「お前家族も居ねぇだろ?他に行くつもりに

なればいつでもカムラを出られる」

 

 二人で『?』となる

 

「だけどな?影は夜行で居て欲しい人間だ、

里長達は他の里とかに取られたくないんだ」

 

「取られる?俺が?」

 

「カムラの力を削ぐならお前を

引き抜こうとするぜ?」

 

「だから結婚って…」

「私は…」

 

「全体指揮出来るんだぜ?これからのカムラ

を支えて欲しいんだよ」

 

「俺はこの里出る気なんて無いですよ?」

 

「いや、お前の成長のためには他の里とか

もっと遠くに行かせたいんだ」

椅子にもたれて伸びをする春香、

椅子が軋んでいる

「だけどな、その時に他を気に入って

移住されちゃ困るわけだ」

 

「そうか…それで…」

「でも…どうしたら…」

 

「アタシにもそれはわからねぇな!影、

お前は誰だ?」

 指を指す

 

「え?…え?影ですが?」

「そこだ!」

 頭を掴む

「お前には『カムラの影』で居て欲しいわけだ」

 

「姉御、その話からすると私は里から

出られないとか?」

 出る気ないけど

 

「そうだ、お前が影の首輪なんだよ」

 指をさす

 

「「首輪っ?!」」

首輪が付けられた影を想像する二人、

ナニコノ趣味?!

 

 

 

 

「あー…いや、縄か?」

 首を傾げる

 

「「縄っ?!」」

 

影の首輪に付けられたリードを持つ天音、

を想像する二人

 

ナニコノ新世界?

新たな境地に開眼しちゃう

 

 

「春香…お前に説明は無理だ」

 いつの間にか居たフドウが頭を抱える

 

「フドウ説明してくれ、アタシ苦手だw」

 

「簡単な話だ、天音がカムラに居れば影は

どこに行っても帰って来る、

まぁ浮気しなければって注意は必要だがな」

 

「浮気ぃ?」

 睨む天音

「しないしないしない!!」

 首を振る影

 

「な?春香、大丈夫だろ?

お互いに独占欲がある」

 

「なんだよ、苦手な説明なんかするんじゃ

なかったぜ」

 

 

 ………………

 

 

「同棲か…それよりも」

なんと風月はこの手の話題に食い付かない

「ヤクシ殿と同等のハンターである

ゲンジ殿の狩りを見たいのだが」

 

「ゲンジさんは確か骨折したよな?」

「うん、確かそうだった」

 

「お前ら公認なのかよ…」

セキエンが食い付く、これが普通だ

 

「何でゲンジさんの事を?」

「うむ、仲間がな」

風月の説明によると、せっかくヤクシさん

の力が解ったのなら、カムラのベテランも

調べようと言うことらしい

 

「ベテランを調べる?」

里長達の言った通りだ、連れの三人は

カムラを調べてる

 ベテラン『も』って事は…?

 

「この里の力を知りたいって事ね?」

 何で私達に言うんだろ?

 

「何でもそれがニシノにとって必要らしいのだ」

 

うわ、風月って馬鹿正直に何でも喋る…

苦笑いの影

 

風月さんって逆に利用出来そう…

天音も

 

ニシノってバカしか居ないのか?

連れの奴ら風月の馬鹿さ加減を甘く見てる…

「風月、それ人に言って良いって言われたか?」

ニシノは探りに来てんのか…

もしかして俺達トガシもか?!

 

「む?何か言われたか?覚えておらん」

 

 三人は思う

 

 扱いやすっ!!

 

「聞いておったぞ?ゲンジに話して見るゲコ」

 

「え?だって骨折してるんじゃ?」

 

「部下達に狩らせて指揮をしとるゲコ」

 

 

 

 

「おいおい、ゲンジの狩り見せるってかぁ?」

 

「あ、ヤクシさん、お早うございます!」

 四人並んで普通に直立する

 

「俺だって理解出来ねぇし、マネ出来ねぇぞ?」

 

「そんなに強いんですか?」

 ヤクシさんと同等のはずじゃ

 

「なんつーかな、タイプが全然違うんだ」

 頭を掻く

 

 

 ……………

 

「始まるぞ…」

水没林の開けたエリア、四人は高台から

見下ろす、ゲンジに

「見たいならそこに居ろ、決して動くな」

と言われたからだ

 

「ナルガだな、ガンナー四人でどう戦うか…」

段差の上の籔の中、音を立てないように動く影

 

「たのしみ」

ワクワク見る天音

 

「ゲンジ殿は指揮と言っていたな」

「ガンナー三人だよな?そのゲンジさんは

戦わないだろ?」

 

 

ゲンジパーティーが到着、閃光玉を投げた

 

 

 

…それで終わりだった

 

 

 

 

 

 

 

 




皆誰かの子であり生徒で、
段々親や先生になって行く

誰もが社会で何者かになる

私は何者だろう?
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