ギルドの二階、座敷に独りで座る里長
大社跡から見つかった過去の痕跡と
里の記録を読んでいく
イブシマキヒコ…風…強い風…
『ひゅるりと』…
もしもこれが風ならば…
「里長」
「フゲン」
ゴコクとハモンが来た
「む、揃ったな…」
里長は座り直すと
「フドウの話がな…」
苦い顔の里長
二人とも頷くと
「分かるゲコ」
「どうやらワシらは長い間、勘違いを
していたようだなぁ」
頷く里長
「50年前の里の惨状…
あれは爆発によるものではない」
「まるで嵐の跡だったゲコ」
「フゲン、我等も覚悟を決めねばなるまい」
…………
初めてカムラの砦を見たトガシとニシノの若者達
「凄い砦だな…トガシには造る財力は…」
「無理だ…ここだけでもカムラの力が分かるな」
キョロキョロする
「…ここでは前が見えないな」
「どうする?勝手に動いたらマズイよな」
「何だよお前ら、カムラ調べに来てたのかよ?」
砦の関門前、右岸で話すトガシの三人
「影の力を見てこいって里長に言われてるんだ」
「やっぱり親父か…」
「隣の里の力を知っておくのは当然だろ?」
「俺には『嫁探して来い』って言ったくせに…」
反対側の左岸
「アイツは前の位置か?」
「ここでは見えないぞ?」
「かと言って勝手な行動は取れんな」
「うむ、心配ない、影なら大丈夫だろう」
ふんぞり返る風月
「風月、お前は目的を理解出来てるか?」
そんな様子を関門に背をつけて見る里長と、
第三柵の上から盗み見るウツシ隊
里長は思う
今までは自分とゴコクから各パーティーの
リーダー、里守への指示をしていたが、
影の出現によって指示出来る者が増えた
だからこそ間者(スパイ)の監視まで出来る、
中間組頭を置く事で不測の事態に対応出来る、
新たな組織編成が見えてきた
……………
物見の法螺貝が鳴る
「第一波来たぞ!」
影の声
前方エリア、真ん中の島
「ハネナガ隊!神部隊!前へ!」
「春香隊は後方で待機してください!」
影が指示を飛ばす
「僕達が先陣かよ!」
「いょうし!やってやるぜ!」
天音も含む8人がリオレイアとオサイヅチ
に斬り掛かる
「何でアタシらは待機なんだぁ?」
「影は今回の夜行に違和感があるんだろうぜ?
マガドがいたからな」
撃竜槍の上にいるゴコク
「ふむ、問題は無いゲコ」
また前方だけでカタがつきそうだ…が…
不安はあるゲコ
墜落するリオレイアがオサイヅチを潰す
「あー…俺らの出番は無さそうだなぁ」
中間エリアで退屈そうに欠伸をするヤクシと
「俺達は後進の指導になるべきかもな」
腕組みして笑うゲンジ
「上が引退しねぇ限り現役だろうぜ?」
笑いながら後を見る、ウツシと里長の事だ
「俺はヨモギを育てたいんだがな」
後ろを見上げる
中間エリアの島、四機の昇降機にはハモン、
ヨモギ、イオリ、そしてハンター見習いの
タイシが準備している
「いいか?バリスタは放物線で飛ぶ、
距離がある場合の落下を予測して撃つんだ」
ハモンは三人に操作を見せる
「射撃しながら体で覚えろ、それと影の
指示通りに弾丸の種類を変えろ」
「うん!やるよぉーっ!!」
「じいちゃん任せて!」
「えーと、通常弾に榴弾に…」
ハモンは昇降機で下がりながら
「この一機は影のために空けておけ!」
…………
後ろから見るトガシの三人
「あの緑の着物は団子屋の…」
「本当に戦うんだな…」
「影の話だと射撃の天才だって話だ」
話すセキエン達
「地下は女子供まで走っているぞ」
「弾丸の運搬か」
「我らニシノはここまで団結出来るだろうか…」
「うむ、強い訳だな!」
「ヤツカダキ!春香隊!前へ!」
榴弾を頭に撃つ影
「おうよ!出番だぁ!」
「待ちくたびれたぜぇ!」
先頭へ駆け出す春香隊
「神部隊!ハネナガ隊!後退!ナルガへ!」
「ミハバ!ナカゴ!通常弾で
ヤツカダキ総攻撃!」
ほっほぉ、モンスターの強さとハンターの
強さを合わせて交代させるとは…
影は全員のリスクを分散させとるゲコ
じゃが失敗した時どうするか…だなぁ
関門前
「未だに第二柵までも到達しません」
ウツシ隊の部下のトウジ、伝令で動く
「むう、以前より采配が
上手くなっているようだな」
満足気な里長
「はい、神部、ハネナガも技量が上がり、
余裕がある様です」
さて…何事も無ければ良いが
「セイハク!ミハバとナカゴに偏りなく弾運べ!」
「やってるよ!」
「春香隊!下がって!」
「何だよ!まだ暴れ足りねぇ!」
あっさりヤツカダキを撃退したが
そうか、春香さんの性格ならこの言い方だと
反発する
「次の大型に備えて下さい!」
「ちっ!」
渋々下がる春香
フドウがこっちに笑う、
これで合っていたようだ
「フルフル二頭!」
「僕達の出番だな!」
「俺が功労賞とってやる!」
再び神部とハネナガ隊が前へ
「中間部!ガンナー!前へお願いします!」
???
影の言葉に全員が違和感を持つ
「ガンナー!前へ来るゲコ!」
戦力は余裕…影、なぜゲコ?
「射撃でフルフルをお願いします!」
「ミハバ!後退弾!」
上を指差す
言われた通りに撃つミハバ、
大物リオレイアが落下
「神部隊!ハネナガ隊!春香隊!全員で!」
「射撃出来る人は全員でフルフルを!」
「ミハバ!ナカゴ!フルフルに総攻撃!」
柵に向かい直進するフルフルに次々
バリスタの弾が刺さり、
ガンナー達に蜂の巣にされる
リオレイアはサマーソルトの度に影に墜落
させられ、剣士に集中攻撃
いつもの落下ダメージを狙わない…なぜ?
皆が違和感を持つ
逃げて行くフルフルとレイア、それは良いが…
撃退したから正解…なのか?
砦が静かになる、終わったのか?
「全員回復と研ぎ、調合してください!」
「回復ったってなぁ」
「ダメージらしいダメージ無いぜ?」
「影っ!レイアでフルフル狙わなかったの
解ったよ!」
嬉しそうな天音
「私達を放電から守るためね!」
「あ!そういう事か!」
「なんだよ神部、俺分からねぇ」
フルフル二頭にレイアを落下させるのは良い
が、その後団子状態になればフルフルの
範囲攻撃が避け難い
影はそこまで考えている
「はぁー、指揮するってのは難しいんだなぁ…」
ハネナガは呆れる様に
なるほど、影は更に成長したゲコ、
各ハンターのダメージを最小限にしたゲコ…
だが若すぎるゲコ…だから経験させねばなぁ
関門前
「終わった様だぞ?」
「困ったな、何て報告する?」
「本当に影の指揮なのか?アイツ凄いんだな」
「どうする?引き揚げるか?」
「せっかく参加したのに…」
「これでは何もなぁ…」
「む?全員無事で良いのではないか?」
里長の口角が上がる
これなら何も報告出来まい、影の活躍も
見えないしウツシも動いていない…
このまましばらく待とう…………
待つ?
待つだと?
ワシ自身も『これで終わりではない』と
感じているのか?
「おい影!いつまでこうしてんだ?!」
「もう引き揚げて良いんじゃないか?」
「終わったろ?どうした影?!」
皆から声が上がる
動揺する影、里長かゴコク様の撤退の合図で
いつもは終わる、けど………
俺が出して良いのか?………
それに……この前マガドが来たし…
ゴコクの方を見る
ほっほぉ助けを求めてきたな、
だが指揮官たるもの人の意見で簡単に
揺らいではイカンゲコ
乗り越えろ影、上に立つ者の責務は重いゲコ
「ドンと構えろ影ぃ!」
フドウが怒鳴る
「不安になるな!」
フドウさんが解ってくれた!
「もう少し体制を維持して下さい!」
「大物で終わりだろ?」
「ヌシでも来るってか?」
「誰か索敵行ったら良くないか?」
ざわつく
「うるせえ!!影が言ってんだ!従え!」
春香の一喝で全員黙る
才能はあるが経験と実績不足は否めんゲコ
ちょっとした事で動揺する…
一つのミスで崩れかねん
「ドドッドドッドドッ!」
その音に全員が振り返り正面を見る
「グロォアアアッ!!」
咆哮する黒い巨体
「ホントに来やがった!」
「やっべえ!影!」
「マガドだぁ!!」
予想が当たった!
「春香隊前へ!」
「バリスタ!榴弾と後退弾!」
「フドウさん!指揮して下さい!」
「おっ!?おう!」
そうか、経験あるのは俺達だけだ!
「炎を食らったヤツは転がれ!
消さねぇと爆発する!」
うむ、これが影の良さであり悪さでもあるゲコ、
フドウに指揮を預けるのは当然の様だが、
責任放棄とも言える
ヒュンヒュンと尻尾が鳴る
「ガード!」
フドウの声に
「?」
「なんで?この距離で?」
若手が戸惑う
次の瞬間尻尾が槍のように伸びる!
「うおっ!」
「届くのかよ!」
「あっぶねぇ!」
「これ私が食らったヤツ!!」
天音は舞う様に避けた
「見た目に騙されんな!今までの四足
モンスターとは違うぞ!!」
春香も声を上げる
見たままならジンオウガより上半身が
発達したパワー型、
力押しするモンスターに見えるが
「フドウさん!1頭相手なら
混乱が起きません!閃光投げます!」
このために数個持っていた
「そうか、影!お前に任せた!」
普段の夜行では閃光を使わない、
連携を止めてしまうからだ
「投げます!」
…………
「申し上げます!マガイマガド出現!」
「やはり出たか!」
苦い顔になる里長、
セキエンと風月達を見たあと小声になる
「ヒノエの様子は?」
……………
キャンプ
「何だかヒマになってきたわねぇ?」
団子を食べるヒノエ
「姉様、まだ1頭例のモンスターが居るそうです」
「援護もほとんどいらないニャ、
しかしヒマだニャア」
ゼンチはゴロゴロする、怪我人が一人も居ない
………
「変化は見られませんでした」
トウジも小声に
「うむ、それなら心配ない」
マガイマガドで終われば良い
「ウツシ!ワシも前に行く!ここを頼む!」
マガイマガド…ヤツを見ねば…
それと…
…イブシマキヒコ…来てくれるな…
…………
「ぎゃあっ!」
転がったマガドにハネナガが引っ掻かれた
「ハネナガさん!大丈夫!?」
天音が助け起こす
「ダウンじゃねぇのか!」
「フェイントかよ!」
ほう!知能も高いゲコ!
やられたフリまでするか!
追い詰められたモンスターを横から狙う…
楽に狩る…
大物に追い立てられ混乱した獲物を…
問題は…その大物…
二回連続サマーソルトの様に空中で身を翻すと
「ガード!!」
春香の怒鳴り声
一瞬空中で動きを止めた後、尻尾を振り下ろす!
「ズダアァン!」
「アブねぇ!」
「初見殺しかよ!」
「何なんだよ!コイツの尻尾!」
「アタシも何度か食らったぜ!動きを見ろ!!」
「怪我した人は回復を!」
動きが速くて当たり難いし、
タイミングが解らず後退弾も使えない
マガドは後ろ脚で立つ、すると青い炎が周りに
「爆発するぞ!避けろ!」
「ドドドン!」
谷間に反響する
「何種類攻撃持ってんだ!」
「くっそ!隙が解らねぇ!」
「私達は何も出来ないね…」
ただ見ることしか出来ないヨモギ達
「せっかく参加してるのに…」
「おれ弾運び卒業したいのになぁ」
三人共に悔しい
「お前ら!項垂れんな!顔あげろ!」
ヤクシが下から怒鳴る
「出番が無ぇって事は余裕があるって事だ!」
指を指すと
「前を見ろ!あれが未来のお前らだ!学べ!」
「ヤクシの言う通りだ」
「里長っ!?」
「お前達も数年であそこに立つのだ、
先輩のやり方を良く見るのだ」
ニコリと笑う