「よぉし…こっち来い…」
「里長!こっちに回避を!」
撃龍槍の前に立つヤクシ隊と射撃するゲンジ隊
里長は撃龍槍に向かい走る
「付いて来い!」
振り返りながら叫ぶ
「そのまま真っ直ぐ来るゲコ…」
悠然と空中を泳ぎ左岸へ近付く
表情の無い金色でまん丸の目、
大きく太いが鋭さの無い奇妙な角、
発達した上半身、太い前足、なのに下半身は
魚の様で後ろ足は鰭になっている、
そして何より常に浮いている
似たモンスターがまったく居ない、
どんな進化をしたのだろうか
ギリギリ射程の外で止まったイブシマキヒコ
「ちぃっ!」
「読まれたか?!」
「おのれぃ!」
里長が振り返ると
マキヒコは身を翻す、サマーソルトの様に尻尾を
「バレてるゲコォッ?!」
バカな!そこまでの知能が!?
「ぬうりゃああああっ!!」
咄嗟に里長が一閃!!
「ズダァン!!」
さすがに地響きを立てて地面に落下したマキヒコ
「さすが里長!」
「やってくれるぜ!」
「頭は俺達でヤルぜ!!」
ヤクシ隊が走る
「貫通弾!!」
ゲンジ達は射撃
「よぉし!通常弾一斉射撃!!」
岩が一緒に落ちた!
影から里守りへ指示が飛ぶ
雨のように弾丸を浴びるマキヒコ
「フゲン!立てるか?!」
ハモンが走り寄る
「老いとは恐ろしいな…」
ぜぇぜぇ座り込む里長
「もうワシには…扱えんか…」
大太刀を見る
「一回でも凪ぎ払えれば十分だ、
そっちがまだあるだろう?」
助け起こす
「あぁ、退いてたまるか!」
大太刀を地面に刺すと背中の双剣を抜く
マキヒコは起き上がると逆立ちで浮遊する…
「ええい!思い通りに誘導出来ん!」
乱舞する里長
「ならば…ゲンジ!来い!」
ハモンが撃龍槍の方へ走る
「もう一度こちらに注意を向けさせる!」
撃龍槍の間近で射撃するハモンとゲンジ達
「こっち来い化け物!!」
それを見る影、意図を読むと
「右岸!攻撃中止!左岸!一機で攻撃!」
「了解だ!」
ナカゴは手を挙げるとゴコクに近い
バリスタ以外は攻撃を止めた
「さぁ来るゲコ…」
もう少し…と、
マキヒコは一瞬で距離を詰め右手を振り下ろす
「ドォン!!」
最初に見た攻撃、追い討ちに竜巻が来る!
じゃが好機!!
「食らうゲコォ!!」
「ドガアアァン!!」
撃龍槍命中!再びダウンするマキヒコ
「いよっしゃあ!当たったぁ!」
「これでイケるぜ!」
大歓声!
と同時に飛ばされる建屋と撃龍槍、
そしてゴコクとナカゴ隊
「うわあああっ!!」
「ぬうっ!」
見上げるハモン
「ワシより里守りを助けるゲコォ!!」
飛ばされながら叫ぶゴコク
「俺達が助ける!攻撃を!!」
トウジ達がナカゴ隊を受け止める
「ごふぅっ!!」
地面に背中から落ちたゴコク
中間部
「あの落ち方ヤバくねぇか?!」
「虫持ってないのかよ!」
「ゴコク様!生きてるよな!?」
「おいフドウ!どうするよ?!」
フドウはウツシを見上げるが、ウツシは
首を振る、そして
「40才以上の者!前へ!」
影の隣で叫ぶ
総掛かりは簡単に判断出来る、しかし
若い者を失えば里が老い滅びる
だから若手を優先で逃がす、
こうしてカムラは生きてきた
里の存続のため
理屈は正しい
だが感情が邪魔する
見てるだけか?
俺は見てるだけか?
これで後悔しないか?
拳を握るフドウ
「くそっ!」
バリスタを叩く影、ゴコクとナカゴを
守れなかった!
誰もケガさせず完璧に守りたかった!
その様子を運ばれながら見るゴコク
これで良い…
影は指揮するには欠点がある
それは
『捨て駒』と言う考えが無い
それも含めて全体指揮なのだ
指揮官は勝利のために犠牲も出す冷徹な
思考が必要なのだ
イブシマキヒコ…このモンスターに
犠牲無しで対応は無理だ
ワシら三人は影の両親を含め多くの犠牲の
上に居る
…次は我等の番で良いゲコ
…学べ影
「くそっ!またここかよ!」
こっちも地団駄を踏む春香
「仕方ないだろう?」
神部がなだめる
「影…ケガしなきゃ良いけど…」
春香達は更に後ろ、第三柵まで下がっている
「姐さん達がこっちまで下がったな…」
「退避…するか?」
「どうするか…」
「天音!我等はどうすれば良い?」
「バカか風月」
「まだ何も得られてないだろう?」
「まだ逃げる訳に行くかよ」
マキヒコが溜めをする、と、竜巻が数本起こる
そして、
「ブオオォォーッ!!」
左から右へ横凪ぎに広範囲のブレス!!
中央部もハンターごと巻き上げられる!!
「柵が!!」
「何っ!?」
「ぎゃあっ!」
「ガード!」
「間に合わねぇっ!」
………
「………いってぇなぁ…」
よろけながら立ち上がるフドウ、
辺りには瓦礫、砂埃が立ち込める
前方エリアは壊滅、第二柵も飛ばされ
中間部もダメージ
「………ぐうっ…」
立ち上がれない里長、薄目で瓦礫と埃の
一帯を見る
そうか、これだ、間違いない
50年前我等がこの場所でマガドと戦った時、
里へはイブシマキヒコが行って壊滅させたのだ
「…ゲホッ!」
立ち上がる数人のハンター
「皆無事か?!」
「生きてるか?!」
「武器がどっか行っちまった!」
「影っ!返事して!影ぃっ!」
「天音か?!後ろへ下がれ!ウツシさん!
里長!どこだ!」
視界が利かない中でフドウが怒鳴る
「ゲホッ!…ん?あれ?」
起き上がる影
「影っ!?」
「天音っ!?ここだ!」
瓦礫と埃の中で手を取り抱き合う
「影!良かったぁ!」
「天音、イブシマキヒコは?」
「解んない、爆発みたいに皆が吹っ飛んだ
のが見えて…」
「………ぁぁぁっ……!」
???
叫び声?それに上からパラパラと何か…
「やあああああっ!!」
「ドドドドドッ!!」
速射砲が火を吹く
二人とも真上を向く、埃で視界は利かない
が岩を纏って浮く巨体のシルエット
…………
関門前
「ちくしょう!皆殺られちまったのかよ!」
中間部に大量の埃、その上に
イブシマキヒコが浮いている
「春香!これは避難だ!」
神部に引っ張られる
「中間部の設備もダメかも知れねぇぞ!」
「天音が走って行っちまった!」
「野郎こっち向いてるぞ!」
「みんな!避難して!」
ヨモギは叫ぶと
「やあああああっ!!」
速射砲を撃つ
「そこから入って!」
イオリは地面の扉を指差すと
バリスタを撃つ
「お前らが先に逃げろ!」
「アレもう一発撃たれたら終わりだぞ!」
「何もしないで逃げるなんて出来ない!」
「じいちゃんに会わせる顔がありません!」
「セキエン!逃げるぞ!」
「影と天音が!」
「お前は次期里長だろ!」
肩を捕まれ連れていかれる
「ウツシ先生が見えないのだ!」
「馬鹿者!」
「お前はニシノの人間だ!」
「大人しくしろ!」
引き摺られていく風月
「ドォン!!」
突然関門が音を立てる
「何だ?!」
「おい!あれだ!」
イブシマキヒコの周囲に浮いた岩や瓦礫が
次々に飛んで来る!
明らかに邪魔なものと認識している
第三柵を簡単に貫通して関門にぶつかる
「あぶねぇ!」
「他の通路だ!」
「建屋の中通れ!」
砦が…終わる…里が…
…………
「…今の…音は…?」
「ゴコク様!気が付きましたか!」
水桶を持ったミノトの声
ゴコクは頭を起こすと唖然とする
「コミツ!秘薬の素材が足らないニャ!」
「もう使い切っちゃッて応急薬しかないよ!」
まるで戦場のキャンプ、ウツシ達が
運び込んだ里守とハンター達
このケガ人の数は…
「ちくしょう!」
「暴れるな!」
神部に引っ張られ、春香達が地下から出てきた
「あんなもんどうしたら良いんだよ!」
ハネナガが地面を叩く
避難…やはりさっきの音は関門が攻撃されて…
「こうしては…おれんゲコ…」
「ゴコク様!まだ休んでいないと!
多分あばら骨が!」
「ミノト!槍を貸すゲコ!」
ウツシも影も見当たらない、フドウも居ない、
これからの里を守る者が戦っている…
ようやく埃が晴れて来ると
「ヨモギだ!」
「凄い!岩を撃ち落としてる!」
飛んで行く岩を迎撃、
しかし弾切れも早い速射砲
「影!天音!お前らは使える設備探せ!」
フドウの姿が見えた
「疾風迅雷!!」
尻尾に攻撃するウツシ
「ウツシさん!」
生きてたか!
「フドウ!注意を逸らすよ!」
瓦礫の中にハンターが埋まってるかも
知れない、しかし今は…やるしかない!
「ウツシ!」
「里長!」
「ワシが時間を稼ぐ!」
額から血が滲む里長
「アンタ一人じゃ無理だぜ!」
「おぉヤクシ!無事だったか!」
「あっちこっちガタガタだけどな!」
べっ!と血の塊を吐き出す
「こっちを向け!」
前方部から狙撃するゲンジ
「おぉ!ゲンジさんも無事かよ!」
「無事じゃない!弾丸が少ないんだ!」
「残ったのは十人程か?」
里長は見回すと
「影と天音も居るけどな、使えるバリスタ
探しに行かせたぜ?」
ニヤリとするフドウ
「良く避難させたな」
笑う里長
「解って来たじゃねぇかよ」
同じくヤクシ
「さて…ここが引き際だ、
ワシとしてはウツシ、フドウ、
お前達には逃げて欲しいが…」
「どこへ逃げます?」
「逃げ場なんざありませんぜ?」
笑う二人
「こうなったら成るようにしか成らねぇ!」
笑いながら突っ込んで行くヤクシ!
「このデカブツ道連れだ!」
一斉に斬りかかるベテラン達
「天音!そっちは?!」
「ダメ!旋回しない!」
中間部の使える設備を探すが
「天音!奥へ行くぞ!」
ヨモギ達が使った場所だけはまだ無傷
「おおおぉ!!!」
雄叫びを上げながら戦う里長達、横目に見ながら
皆が戦ってるんだ…早く援護しないと!
「よし使える!天音!操作覚えてるか!?」
左岸に影
「バカにしないで!」
右岸に天音
バリスタで援護する
「セイハク!誰か!弾だ!」
地下道に響く声がキャンプに伝わる
「影あんちゃんだ!」
「影はまだ戦ってんのかよ!」
「避難させねぇと!」
「セイハク!アンタは逃げな、
ここからは母ちゃん達でやるからね」
セイハクを抱くと
「里に残ってるのは身重な人ばっかりだ、
頼んだよ!」
それを聞く春香
アタシは何をしている?
何で守られてる?
これはアタシか?
コレがアタシか?
「があああーっ!!」
突然雄叫びを上げる春香
「グダグダ面倒くせぇ!!」
「まて春香!!」
神部達を振り切り地下へ飛び降りる!
「なるほど!攻撃が正確だ!」
「その分避けやすい!」
マキヒコは一瞬で前へ一回転、尻尾を叩き付ける!
「ドオォン!!」
と同時にブレスの様なモノまで
「ぐわっ!」
「だあっ!」
「しくじった!!」
数人吹き飛ばされたが助け起こす暇はない
「どうするよ?!」
見回すフドウ
「僕の隊が救護する!」
構わず突っ込むウツシ
「ゲンジ!」
瓦礫に埋まったのだろう、
全身傷だらけのハモン
「ハモンさん!生きてたか!」
「弾丸全部置いて避難しろ!」
並んで射撃を始める
「バカ言うな!アンタが避難しろ!」
「お前は下を育てるんだ!」
「俺はガンナーしか出来ない!」
「?」
「アンタが居なきゃ砦は直せない!
武器防具の面倒も見られない!」
振り返ると
「そこのヤツ!この人頼む!」
「承知した!」
突然現れた風月