神楽舞   作:天海つづみ

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最善

 

「よせ風月!」

「貴様自分で何を言ってるか解ってるのか!」

砦のキャンプから出た森、多数のガルクが

待機している

 

仲間の前でふんぞり返り

「だからお前達だけで帰れと言っている!」

 

それを見るセキエン達、

風月は残るのか?

 

「お前はニシノで期待の…」

「ここで逃げては俺の中で大事な

何かが折れる!」

語彙力が惜しいが

 

「そうだよな…」

「セキエン!」

「お前は次期…」

「団子屋の娘でさえ自分の出来る事を

やったんだ、ここでタダ逃げたら…」

俺の中でも何かが…

うつ向く

 

「ちょっと!どいて!」

 キャンプから出る子供達

「セイハク!僕の後ろに乗って!」

「待ってくれ!俺も!」

ヨモギ、イオリ、タイシ、セイハクが

ガルクに乗る

 

「避難するのか?」

 セキエンの声に

 

「避難『させに』行くの!」

「今里には妊婦さんと足を悪くした人しか

居ないんです!」

「俺達が助けないと!」

 走って行く

 

「………」

 焦燥と共に見送るセキエン

 

「風月!確かにカムラはお前の父を助けた!

しかしここでお前が…」

 

「なぜ分からんのだ!!」

風月の一喝でその場が固まる

 

「ここが落とされたら化け物はどこへ行く?

カムラだけか?」

その言葉で全員の顔色が変わる

「ニシノへ行かないと言い切れるか?」

 

セキエンは振り返る、俺が出来る事は

「お前ら急げ!避難民の受け入れ準備!

同時にトガシ全体の避難準備だ」

「セキエンお前は?!」

 

「俺は出来る事をやる!」

 

「よし!行くぞセキエン!」

 

「風月っ!!」

 ニシノの仲間に掴まれるが振りほどき

 

「ここでカムラに尽力する事はニシノの為

にもなるだろう!」

「カッコ悪い自分に戻りたくねぇ!」

 

二人ともキャンプへ飛び込むと、ちょうど

春香が地下へ降りた

「神部さん!姐さんはどこへ?!」

「影の所だ!」

「それなら!」

 セキエンも飛び込む

 

「場所空けて!ゼンチ!急患よ!」

アヤメがハンターを背負って来た、

砂埃だらけ

「アヤメ殿!俺もウツシ隊の」

 風月が言い終わらない内に

「前方部の地下道!そっちに向かって!

人手が足らない!」

 

「承知!」

 地下道へ飛び込む

 

 

 

 …………

 

 

 

 

「天音!影!」

「春香さん!?」

「春香!良い所へ来たゲコ!

影の方を頼むゲコ!」

 

右岸 天音のバリスタの前で盾を構える

ゴコク、それを見ると春香は察する

「大剣持って来て正解だったぜ!」

影の前でガード姿勢

 

「来るゲコ!」

 岩が次々飛んで来る!

 

(やっべぇなぁ、ランスの盾ならともかく

大剣じゃあ…)

 

 

「姐さん!」

セキエンが隣に並ぶ

 

「お前…」

驚く春香

 

「影!俺が守る!撃て!」

 

 飛んで来る岩をひたすら防ぐ

「ゴガン!ガン!ガキン!」

「腕イテェー!」

 早くも泣き言のセキエン

 

「テメェしっかり踏ん張れ!」

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

「ハモン殿!」

 風月に地下道へ引っ張り込まれた

「離せ!ゲンジを死なせる訳には!」

 前方部 地面の昇降機の地下

 

「……!」

 

「む?何か」

「…聞こえたな…」

 

「師匠!」

 地下道を這っているミハバ

「ミハバ!無事だったか!」

 

「足をやっちゃって…

まだ俺の隊が三人向こうに」

 

「ハモン殿、キャンプへ運びましょう」

「しかし…ゲンジ…」

 上を見る

 

「こちらも弟子では?」

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

「里長ぁ!回復薬あるか?!」

 ヤクシが怒鳴る

 

「ワシは持っておらん!」

 

「誰か砥石持ってるかい?」

 

「ほらよ!ウツシさん」

 フドウが投げる

 四人共に限界が近い、肩で息をする

 

「隊長!ほぼ収容しました!」

 ウツシ隊の三人

「良くやった、里長!」

 

「うむ、潮時だ、我等も…」

 マキヒコの周囲に数本の竜巻…

「これは!」

「やべぇっ!」

 あのブレスだ!

「ブオオォォーッ!!!」

 回転しながらブレスを凪ぎ払う!

 

 

 

 …………

 

 

 

「くっそ!またあのブレスか!」

目の前を手でバタバタ扇ぐ春香、

視界が利かない

 

「ゲホッ!砂埃凄いな!」

こっちまで来なくて少し安心のセキエン

 

「これじゃ撃てない、天音!!見えるか?!」

 

「全然ダメ!」

 

何も出来ないが関門から音もしない、

岩は飛んで来ていないようだが

 

「気をつけ…るゲコ…」

 そのまま潰れる様に倒れるゴコク

 

「ゴコク様?大丈夫?影!ゴコク様が!」

 

 そう言われてもこの視界では

 

「ちぃっ!邪魔な砂埃だな!」

「春香さん!」

「姐さん?!」

春香は手探りで建屋を降りると

右岸に向かって歩く

(あの太った体運べるヤツ、

アタシしか居ねぇじゃねぇかよ)

 

「グニッ」

「ん?」

 春香は何か踏んだ、足元を良く見ると…

 

「フドウ?!!」

 

 引き起こす

「おい!フドウ!」

 揺さぶるが意識が無い

「ちぃっ!」

 フドウを背負い天音の方へ手探りで歩く

 

 

「春香さん!フドウさんが居るんですか?!」

 

「意識が無えっ!お前ら!あの化け物探せ!」

 

 

 

 

 砂埃が晴れて来る

「春香さん!ゴコク様の意識が!」

 泣き声の天音

「ちっ!影!トガシの!

どっちかこっち来て手伝え!」

 

 

 

 

 

 無音

 

 

 

 

「おいっ!返事っ…!」

振り返った春香は青ざめる

 

 

まるい…何の感情も込もっていない金色の目

 

それが影とセキエンを見ている

 

逆立ちで浮遊している

 

フドウに気を取られ上を見ていなかった

 

二人とも声が出ない

 

 

いや、声を出したら…どうなる

 

カタカタと震える

 

絶望的な生物としての差がある

 

この状況を…無事に…脱出…

 

 

 

動けない…

 

 

 

 

「影!」

 天音がバリスタを旋回

 

 ヤバイ!撃ったら…

「天音…やめろーっ!!!」

 影が叫ぶと同時に

 

「ゴアアアアァァァーッ!!」

 

 まずい!認識されてる!

 敵として見られてる!

 

 ゆっくりと高度を下げる

 

 

「お前ら!二人担いで逃げろ!アタシが…」

「姐さん!姐さんだったら一人で運べる!」

走って来ると春香とマキヒコの間に

立つセキエン

 

「バカ野郎!お前らじゃ…」

 

「ソロよりはマシです!」

太ったゴコクと小太りのフドウ、

影とセキエンでは運ぶのも難しい

 

「影!避難出来るように!」

 天音が呼ぶ

「お、おう!」

 二人は関門とは逆側、中間部側に降りると

 

 

「…怖いね…」

「ああ」

 

「何とかしないとね」

 震える天音

 

「時間稼ぐか…」

本当は震えている影、

自分を落ち着かせるために脚を叩く

「…ふうっ!」

一度限界まで息を吐き、今度は吸い込む

 

「行くぞ天音ぇ!」

「はい!」

 

「こっち向けぇっ!」

 尻尾を斬ると振り返り逆立ち

 

「恐いけど…行くよ!」

天音が逆立ちの頭に斬りかかると腕を振り下ろす

「ドォン!」

「影!左右に竜巻!」

「分かった!」

天音は攻撃を覚えるのが早い、助かる

しかし居合い斬りなんて合わせる自信が無い…

 

攻撃を食らわない様にチマチマ攻撃

 

 

 

 …………

 

 

 

「よし、良く生き残ったなミハバ」

キャンプにミハバ達を避難させ、

立ち上がるハモン

 

「ハモン殿、どこへ?」

風月が聞く

 

「決まっている」

ハモンはガンナー達のポーチから弾丸を集める

 

「ゲンジ殿は言っていた、ハモン殿が

居なければ砦の再建は出来ないと」

 

 キャンプの人々が注目する

 

「武器も防具も面倒見られないと」

 

 振り返ると

「しかしな、ここからは年寄りの仕事…」

「御免っ!」

 風月が鳩尾を突く、気絶するハモン

 

「風月!お前何する気だ?!」

怪我人の処置をして台車に乗せる神部達の問いに

 

「?、俺は自分のやりたい事を

やっているだけだが?」

地下道へ降りると

「まだ怪我人がいるかもしれん!見てくる!」

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 

「よし、姐さん降りたぞ!」

 

「セキエン!お前も避難しろ!」

 

「お前ら置いて行けるかよ!」

 

「二人とも!関門から離さないと!」

 

 三人は中間部へ移動しながら攻撃する

「だめだ!攻撃に行けない!」

「納刀だセキエン!」

「回避だけでも良いよ!隙が出来る!」

何とか少し中間部に来たが…

里長もウツシ教官も姿が見えない…

ここからどうする…

 

 マキヒコが両手を地面に着く

「?」

 と、次々に小さな竜巻が2列に

「影!横回避!」

「おう!」

 巻き上げられる建屋の瓦礫も降って来る

 

 今度は一瞬で尻尾を上から叩き付ける!

「ドオォン!!」

「ひいいっ!」

 なぜか上手い事逃げているセキエン

攻撃は少なくても誘導は出来ている…

少しでも離せば…

 

「?」

影は気づく、マキヒコの右腕の袋みたいな

モノが破れている

 

左腕は…なんともない…もしかしたら

「天音!マキヒコの左腕!」

「分かってる!でも…」

 狙えるか

 

 尻尾を凪ぎ払う

 ヤバイ!初めて見る!

「影!上!」

 虫で飛び上がる天音

 

 ダメだ!間に合わない!

 瓦礫を巻き込みながら尻尾が広範囲に!

 

 咄嗟に身を低くして太刀を盾に

「かげりーっ!!」

 

 

 

「だ!大丈夫だ!」

 立ち上がる、不思議なほどダメージが無い

 しかし

「あああっ!!?」

 太刀が折れてる!

 どうする?!どうすれば!!

 

 

 

 

 

その様子を前方部から見る風月

助太刀に入れば足手纏いになると

二の足を踏んでいた

 

今戦えるのは天音、影は太刀が折れ、

セキエンは逃げ回る

(奇跡的に陽動はできている)だけ

 

 

 

 最善

 

 

今俺に出来る最善は何だ?

 

 

「うむぅ…なんと情けない…」

 何か、何かないか…

 

 

見回すと瓦礫に混じり、太刀が一本立っている

 

「む!これだ!」

 引き抜くと

「ぬおっ!何だコレは?!」

 太刀のはずなのに大剣並に重い!

 これを影に…しかし重い!

 …ならば!

 

 

 

 

「影!もう無理!避難しないと!」

「分かってる!」

何とか攻撃を避けるが武器も無しで何も

できない、避難したいがマキヒコは

俺達を追っている

 

どう逃げる…せめて天音だけでも…

 

「天音!お前は逃げろ!」

「武器も無しでどうするのよ!」

「お前に何かあったら俺は後悔する!」

「私だって後悔するよ!」

 

「影ー!!」

 その声に振り返る

 

「風月?!」

 

 インナー一枚で走って来る

「武器だ!」

「ドスン!」

 投げて来るが太刀とは思えない重い音

 

助かった、これなら天音を先に避難させられる

重さに驚きながら持ち上げると

「?、風月!防具は?!」

「む?脱がねば走れなくてな!」

 片手剣(盾無し)を抜く

 

「私逃げないからね!」

「お、俺もに、逃げないぞ!」

 逃げ回ってるが

「影よ、どうする?俺はお前に付いていく」

「…各自無理せず時間稼ぎだ!前方部へ誘導…!」

 

 

 

 

 マキヒコの周囲に瓦礫と岩が浮く

 そして関門の方へ向く

 

 (くそっ!せっかくここまで離したのに!)

 

 瓦礫を駆け上がり

「やあっ!!」

「ガリガリガリガリ…!」

 空舞を仕掛ける天音

 そうか!今ならスキだらけ!

 

「お!俺だって!」

 抜刀斬りするセキエン

 

「うむ、遅い!」

 相変わらず素早いが軽い一撃の風月

 

「重いぞコレぇ!」

 この太刀って何で出来てんだ!

 

 

 無謀な相手に立ち向かう…

 

 

 兄貴がやってた事…

 

 

 今の俺は同じ立場か?

 

 

 勝てばヒーロー、負ければタダのバカ

 

 

 そんなのは勝負じゃない!

 

 

 何でこんな時に兄貴のこと思い出すんだよ!!

 

 

「ガキン!」

 !

 矢が降って来た

 

 奥のバリスタが攻撃している?!

 

 

「テメェ!しっかり狙え!」

「春香さん!俺右脚折れてんだぜ!?」

 支えられてるミハバ

 

「あの程度で気を失うとは情け無かった」

 ほぼ無傷のナカゴ

 

「いいかお前ら!しっかり踏ん張れ!

バリスタ守れ!」

 

「恐いぞこれぇ!!」

「やってやらぁ!!」

ガードする神部、ハネナガ達

 

 

そうだ!俺は守るために戦ってんだ!

 

 

「今ならスキだらけだ!左腕狙え!」

「おお!!」

 

「ガン!ゴゴン!ドォン!!」

 次々関門に当たる岩と瓦礫

 

「テメェ!撃ち落とせ!」

「無茶だよ春香さん!!」

 

「ビキッ!」

 

 その音に春香達は振り返る

 

 ヒビだ…

 

 隙間から星が見える…

 

 これだけ鉄板で固めてあるのに…

 

 ここを抜けたら里まで直線!

 

「弾だ弾ぁ!!」

「抜かせねぇぞ!!」

「撃て撃てぇ!」

 

 

「影!関門が!!」

 泣き声の天音

 

くそっ!どうする?!

この左腕さえ破壊出来れば…

 

 突然瓦礫が動くと

「良くやったね!!」

 その声と共に瓦礫の中から

「疾風迅雷!!」

 ドリルの様に突っ込む血まみれのウツシ

 

「ガシッ!」

「えっ?!」

影が持つ太刀を後ろから持つ里長、

瓦礫に埋まったのだろう、血と埃だらけ

 

「よくぞ守った」

 全身傷だらけで笑う里長

 

 影は太刀を離す、と、

 

「ぬうりゃああああ!!」

 里長の一閃!

 左腕も破壊されダウンしたマキヒコ

 

「天音!セキエン!風月!」

「おう!」

 一斉に頭に斬りかかる

 

「さて…僕も…」

 ウツシも満身創痍で乱舞

 

「里長…」

 肩を貸す影

「これで…ダメなら…逃げろ」

 胸を抑える里長

 

マキヒコが起き上がる、次々に

バリスタの矢が当たっているが

 

「逃げろお前達!」

 構える里長

 

 

 しかし

 

 

 ???

 浮いて…あれ?

 

「なんかさ…」

「どうした天音?」

「イブヒコ…上に…」

 

 高度を上げて行くイブシマキヒコ

 

 

「オラぁ!しっかり狙え!」

「もう無理だって!最大仰角だよ!」

 

 バリスタも狙えない高さへ

 

 

 終わった…のか?

 

 

 

 

 




最善、最良、無数の中から選択する、
人から見れば愚かにも見える事がある、
だけど自分で選択、決定したなら
一番後悔は少ない…はず。

この後の話どうしよう…
予定通りに進めるか
続編の設定(早く発表シテクダサイ)にあわせて
考えるか

どちらを選択するべきだろ?
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