神楽舞   作:天海つづみ

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拾い物

 

 パーティーが三人になった

 

 セキエンは春香さんとペアに

 

「風月、お前はモテないのか?」

大社跡のキャンプで聞いてみる、

セキエンと違い見た目もカッコイイし

 

「うむ、俺はドコへ行っても女性から声を

掛けられるぞ?」

 

「だろうな」

黙っていれば良い男だもんな、羨ましい

 

「だが不思議なのだ、少し話すと

離れて行くぞ?」

…だよなぁ

 

今日はアオアシラを狩りに来た、目的は

風月の盾の練習

「もしも合わなかったら私が双剣教えても

良いよ?」

 

「うむ、宜しく頼む」

 

風月は軽いが素早い攻撃が得意、

反面防御は不得意だしモノ覚えも悪い様だ、

一度付いたクセを取らないと

 

「片手剣の指導出来る人って誰か居たか?」

「そうね、ベテランはケガしてるし…

今なら神部さんとか?」

「む?あの顔を隠している人だな?」

 

アオアシラ程度なら通用するが、

レイア辺りはどうなんだろうか

 

 里に戻ると

「影、お帰り」

包帯だらけのウツシ

 

「教官、どうしました?」

「砦に行ってくれるかい?ハモンさんが

見に行ったんだよ」

 

…俺が行ったところであの惨状は…

でもハモンさん倒れたりしたら

 

「じゃあ俺行ってくるよ」

 俺が行っても…気休め位だろう

 

「私も行く」

「うむ、俺は神部殿に会ってみよう」

 

団子屋の方をチラッと見ると

春香さんの大きな背中とセキエンの

小さな背中が見える

 

 セキエン…がんばれよw

 

 いつか本心が言えるその日までwww

 生暖かい目で見る影

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 

立ち尽くすハモン

50年、少しずつ積み上げ造り上げた砦の

無残な光景

 

 この無力感

 

 俺達の50年は…こんなに容易く…

 

「ハモンさん!」

 

「…来たか」

「ん?影達か」

 ゲンジさんも来ていた

 

 前方部と中央部は一面瓦礫になってしまった

「どこから手を付けるか…」

 まだ包帯だらけで寂しそうに眺めるハモン

 

「人数集めて片付ける所からですね」

「あと使えそうな物探さないと」

 見回す天音

 

「建屋の予備資材とバリスタの予備機…

全部出せば何とかならないか?」

 ゲンジの答えに

「それでも5基が限界だ、部品が足りない…」

 

「あ、それなら竜宮砦に行って来ましょうか?」

「天音?」

 

「しかしなぁ、何度も行ってバラして

しまったからな、何も残って無いだろう」

 

「何か新しいモノ見付かるかも知れないし

…影も連れて行きたいし」

 

「…こうしていても物事は進まない、

何かするべきかもな」

 ゲンジが頭を掻く

 

「行こう影!」

「あ、あぁ…」

「舟漕いでね?」

「俺はそのためか」

「私下手だもん」

 

「二人とも何か見付けたらフクズクを

飛ばせ、動ける者を行かせる」

 

 

 

 

 …………

 

 

 

「何か寂しい所だな…」

「こっちはね、向こうに飛べば色々あるよ?」

 竜宮砦のキャンプ

 殺風景で何も無い、翔虫で飛ぶと

 

「凄い…な…」

高い崖に囲まれた一面真っ平らな場所、

所々に埋まったバリスタの一部が見える、

見上げれば撃龍槍、更に上には不思議な

色の建物まで…

さらに…あのデカいの大砲か?

 

「昔の技術って凄いよね、あんな高い

ところに家があるんだもん」

 

「!!、そう言えば大社跡もそうだよな?」

「だから同じ年代の人が建てたんじゃない?」

 

「よし、探して見よう」

「うん」

二人で地面を見ながら歩く、気になるモノを

見つけると拾ってみるが

「ダメだなぁ、みんな錆びてボロボロだ」

赤錆の鉄製の歯車、指に力を入れると

簡単に崩れる

 

「あ、これ鋼線(ワイヤー)だ!」

天音が引っ張るとズルズル地面を走るが

「短っ!」

バリスタに使うには足りないし錆びている

 

「地面掘るしかないな」

「でも適当に掘ってもさ…」

「そうだよなぁ…」

 この広さを当てもなく掘って…ムリがある

 

 ひゅるひゅると風が吹く

 少し塩混じりだが心地好い、見上げると

「天音!」

「何?えっ?何で!」

 

青い体、魚の様な下半身、キラキラと

日の光を反射して空を泳ぐ、

イブシマキヒコ!

 

「ヤバイ戻るぞ!」

「やっぱりここアイツが来る場所なんだ!」

 

 

 

 

 

 

キャンプまで戻って眺める、さっきの場所に

降りたイブシマキヒコ、

幸い気付かれなかった様だが

「ここから少し見えるんだな」

 岩の間から青い巨体が見える

 

「どうしよう、これじゃ何も出来ないよ?」

 

「何でアレが…とにかく荷物纏めて逃げよう」

「うん、…あれ?」

 テントの中を見廻す天音

 

「どうした?」

「しっ!」

人差し指を口に当てると、天音は足音を

消して…少しずつ動く

 

タダゴトではない雰囲気に影は固唾を

飲んで見る…と小声で

「影、太刀貸して」

 

太刀を渡すと本体を抜いて置き、鞘を

両手で握り締める

 

 

 

 

 

「………そこっ!!」

 思い切りテントの壁を突く

 

「うぐぅっ!」

「えっ?!誰かいるのか?!」

 外に出て裏にまわると

 

汚い女の子?気絶している、

携帯食料が散らばっている

「泥棒だね」

「天音、良く気付いたな」

「モノの配置が変わってたからね」

天音って素手でも強いかもしれない

…気を付けよう

 

「どうしたら良いんだ?こういう場合」

実の所竜宮砦はカムラの管轄と言う訳ではない

 

「イブヒコいるし置いて行く訳にも

行かないよね…」

体を調べる天音、武器も無いし酷く痩せて

汚れている

 

「連れて帰るしかないな」

「置き去りにしたら…何か嫌だね」

 

キャンプを調べると乗って来た舟の近くに

小さな舟、これに乗って来たのか

 

 フクズクを飛ばしてから急いで舟を漕ぐ

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

「孤児なんぞ面倒見る義理は無いゲコ」

仕方なく連れて帰ると非情な言葉を投げられる

 

 何とか椅子に座ったゴコク

 

「影君、天音、あなた達は両親が里を

守るために亡くなった、だから里中で

育ててきたのよ?」

 ヒノエも笑わず言う

 

ギルドの一階、皆に囲まれている、

例の女の子は椅子を並べて寝かせてある

 

「影、気持ちは解るけどよ、カムラの子供

じゃなければ追放するしかねぇぜ?」

 フドウも冷たい

 

「……」

「……」

項垂れる二人、そうなのだ、放置して

戻るべきだった、

誰も養ってやる人が居ないのだから…

 

 

でも…それが出来なかった

 

 

二人とも13で家族を亡くし、

里に支えられて生きてきた

 

前にセキエンが言った事を思い返すと

確かに『恵まれて』いた

 

 この娘にはその環境が無かっただけ

 

影と天音もこの娘のように孤児に

なっていたかもしれない

 

置き去りにすることに

罪悪感が出てしまったのだ

 

 

「うむ、とにかく明日には追放だ、良いな?」

里長も恐い顔

実際孤児どころではない、

イブシマキヒコが近くにいるのだ、砦を

何とかしないと

 

ヒノエとミノトに支えられて二階へ

上がるゴコク、里長も出て行った

 

「まだ10才位か?」

「痩せてんな」

「可哀想だけど仕方ないぜ?」

 ハネナガ達にも言われる

 

「助けて…やりたいな…」

「私達だって…こうなってたかも知れないよね…」

 

「せめて一晩だけでも腹一杯

食わせてやりたい…」

 

「お団子買って…」

 

 そこへ

「だからガードは最終手段だと何度も」

「うむぅ、防ぐと後が続かない訳ですな」

 神部と風月が戻って来た

 

「む?コイツ花梨ではないか?」

 

「カリン?!知ってるのか風月!」

「教えて、この娘何なの?」

 

風月の話を要約すると、ニシノの周辺に

あった小さな里の一つ、そこの住人らしい

 

「あった?」

「うむ、モンスターの襲撃に会って

滅んでしまった」

 

その後引き取り手も無く孤児となり

コソ泥として生きていた

「たまに干物とか盗まれるが、少し位は

目を瞑っていたのだ、使わない小舟もな」

 

 風月が近付いた瞬間!

「…っ!」

 

「あ、気が付」

 

「やああっ!!」

突然飛び起きて叫び、風月に蹴りを放つ

 

とは言っても、ここにいるのは仮にもハンター

風月にとって子供の蹴りなど天音の双剣に

比べたら止まって見える、難なくかわすと

 

「やめろ!」

あっけなく影に押さえられる

 

「はなせぇ!」

「暴れるなよ」

「このぉ!!」

影の手甲を爪でガリガリ引っ掻くが

歯が立つハズもなく

「天音、この娘縛れ、逆にケガさせる」

押さえる影、爪剥がれそう

 

「うん!」

 

 縛ると大人しくなった

「むううぅ…」

 威嚇する小動物

 

「じゃあこのガキの面倒はお前らで見ろ」

「俺達は関係無いぜ?」

 皆離れて行く

 

 

 …………

 

 

 

 

 

「ほら、食べるか?団子」

影の家、とりあえず与えてみると奪い取り

ガツガツ喰う、数本食べさせると

大人しくなった

 

「影、この娘お風呂入れよう」

ひどい臭いだし

 

「良いのか?天音?」

 

「影がお風呂入れる気ぃ?」

 ジト目、オーラが黒い

「あ、あぁ、頼む」

 逆らわないでおこう

 

「でも服はどうしよう」

 ボロボロだし…

 

「あぁ、俺の子供の時のが…」

「ギィィ…」

 

「ん?」

床の間の回転扉に隙間?動かすと

何かの包み、広げると

「なぁ、この着物って」

「私が前に着てた…姉さん達だ!」

 慌てて外に出る天音

 

「姉さん!!」

 

 振り返る双子

 

「ありがとうございます!」

 

「あらぁ?何の事かしら?」

「姉様、何か落としました?」

「さぁ?忘れましたw」

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 

 風呂から出てきた花梨と天音

「びっくりした…」

 唖然とする影

 

 風呂に入る前とは全然違う

 ボサボサで固まっていた髪は綺麗な黒髪

 汚れていた肌は天音並みに白い

 鳶色の目がミノトの様に少しキツめ…

 

 と言うか…この娘美人だぞ?

 

「私もびっくりしたよ、洗ったら

可愛い娘出て来るんだもん」

 

「えーと…花梨だったな、明日は…」

 

「分かっています、出て行きます」

キチンと正座して頭を下げる青い着物を

着た美人

 

その空気は小さいながら理性と知性を

感じるし、礼儀も態度もしっかりしてる

 

話を聞くと花梨は読み書きや礼儀は

キチンと教育されたそうだ、それが

四年前に花梨を残し、里は全滅したそうだ

 

「なぁ、今何歳なんだ?」

 おかしいよな

 

「一人になったのは9才でした、今は13です」

二人とも絶句する、そのわりに小さいし

痩せている、食べるものに苦労して

来たんだろう

 

「…影、私ここで寝るからね」

 

「?」

 

「泊まるって言ってんの」

 

 あー…そうだよなぁ…えっ?

 布団は二組しか無い…

 天音の目が

 『察してよ!』と睨んでいる

 

 仕方なく囲炉裏の横で雑魚寝する影

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 翌朝

「じゃあ…」

 

「分かっています、お世話になりました」

 キチンと礼を言う花梨

 

「待って影、せめてニシノの

近くまで送って行こう」

 

三人で船着き場に行こうと家を出ると

「おい!誰だその娘!」

 

「あ、ミハバお早う」

「聞いてない?昨日連れて来た…」

 

「聞いてたのと全然違うじゃねぇかよ!」

 こっちだって驚いたよ

 

 

 

ギルドへ入る、一応ゴコクに報告しなければ

 

「誰だ?!この娘!」

「昨日のアイツかよ!」

「可愛いじゃねぇか!」

 昨日はまるでボロボロの捨て猫

 

 今はヨモギより小柄な美人

 

 ゴコクに向かい

「一晩お世話になりました」

 キチンと礼をする

 

「む?う、うむ」

その態度に違和感を持つゴコク

ギルド中が面食らう、一晩で余りにも変わった

 

「これからどうするゲコ?」

 

「はい、影様に相応しい女性と

なるべく精進致します」

 

「はああ?!」

「おい影!!」

「お前何した?!」

「天音が居ながらテメェ!!」

 取り囲まれる影

 

「影!お前ってやつは!」

 松葉づえのミハバまで入って来た

 

「ちょっと!影は何もしてないよ!」

 天音がフォローするが

「花梨ちゃん!相応しいってどういう事?!」

 

「影に何されたんだ!」

 詰め寄るミハバ

 

「衆人環視の中で押し倒され…」

 花梨は顔を隠す

 

 

 

 ???

 それって昨日取り押さえられた時か?

 皆は止まるが

 

見ていなかったミハバの頭の中は

未成年閲覧禁止状態

 

 

 

「更には鷲掴みにされ…もう影様に…」

 真っ赤で顔を隠すが…

 

 どこを?

ミハバ以外は首を傾げる、花梨には鷲掴みに

出来る場所なんて…(ツルペタ)

 

 

 しかしミハバの中では…

「影!テメェ子供にまで手ぇ出したのか!」

 松葉づえを振り上げる

 

「落ち着けミハバ!!何もしてない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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