神楽舞   作:天海つづみ

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拾い物2

 

「ミハバ!」

「うっ?師匠!?」

 ハモンがギルドへ入って来た

「何を遊んでいる!?作業を始めろ!」

 

「うっ、ぐぐぐ…」

 怨めしそうに

 

「まったく…鉄部品が足らない時に…」

タタラ場も止まっているからだ、

バリスタの留め金を持っている

 

「鉄?…それが必要なのですか?」

花梨が留め金を見ながら聞く

 

「…まさか…持ってるのか花梨?」

 

「拾い集めたモノで良ければ」

 

「何だと?」

話に食い付くハモン

 

とにかく確認するため花梨の話に従い舟を出す

 

乗ったのはハモン、影、天音、花梨

「どうして鉄を持ってるんだ?」

「話すと長いですが…」

 

 

 

 ………

 

 

 

まだ平和だった頃には里に行商人が立ち寄った、

その時の口振りからこの土地の鉄が高価で

あることを知った

「カムラの鉄だからなぁ…」

 腕組みするハモン

 

里が全滅したあと里に残っていた鉄製品を

集めて、行商人に売ろうとしたら

…子供だから

 

 泣きそうな花梨

「なにがあったの?」

 

「騙されて…殴られて…全部…」

 下を向くと涙が零れる

 

「酷い目にあったんだな…」

カムラにも出入りしている行商人だろう…

その時にもっと、もう少しだけ世間が

花梨に優しかったら…可愛いしマシな

四年になっただろう

 

「花梨ちゃん…」

抱き締める天音

 

「…うむ…そういう事か…」

理解した、それがトラウマで大人が

怖くなり人を信用しなかった、

一晩で変わったのは影と天音の優しさに

触れたからだ

 

それから大人になってから売ろうと

拾い集めたモノがあります、なかには

モンスターに襲われた行商人の落としたモノも

 

 

 

 ………

 

 

 

 

 川沿い、少し先にニシノの里が見える

「ここです」

 言われて岸に舟を着ける、

 獣道を歩き続けると

「ほう…」

「里…だ…」

「…ひどい」

 

人の背丈程もある雑草とススキの中に、

数件のボロボロな家が並ぶ

 

その内の一軒、半分崩れた大きめの家に

入ると床板を外す

「花梨、もしかして…この家は…」

「はい、花梨の生まれた家です」

 床下からズルズルとワイヤーを引っ張り出す

 

「!なんと!鋼線まであるのか!?」

 ハモンが目を見開く

 

「…影様達に捕らえられた所とか…」

 他にも歯車、留め金、釘まで出てくる

 

「凄いよ花梨ちゃん!」

「これ全部集めたのか!」

 

「…花梨と言ったな、

ここにあるモノで全部か?」

 

「……」

その沈黙で全て解る、全部では無い、

花梨は過去の経験から全部は見せてない

 

大人が…人が信用出来なくなっていたんだ

 

「…条件があります」

 

 

 …………

 

 

 

 

「こんなに早く復旧の目処が立つとはな…」

 感慨深く見る里長

 

「後は木材だけでバリスタは全部完成だ」

 監督するハモン

 砦でバリスタを組み立てるナカゴ達

 

「あとは建屋の鉄板と…」

「関門の修理で何とかなる」

 

 

 花梨の出した条件はカムラへの移住、

 見返りは鉄部品全ての提供

 

いま夜行が起こればカムラは全滅の危機に

あったが、これで砦の復旧が大幅に短縮できる

 

天秤にかければ当然の答え

 

正式に花梨は『カムラの娘』として迎えられた

 

 

「この娘隠密の才能あるかも」

ウツシによると、隠れながら生きて来たため

気配を殺すのが上手く、狩場で役に立つ

モノを集める(つまり採取)方法や調合を

既に知っている

 

生きて行くために必死だった事がうかがえる

 

 

そしてゴコクからは

「今日から正式にカムラの里の一員ゲコ、

立場に甘えずキチンと自活するゲコ、

いずれ住む場所も作るゲコ」

家も用意する運びになった

 

しかし…問題が2つ

 

 

 

 影の家

 

「花梨はここに住みたいです」

キチンと正座する、髪を切り黒髪ショート

のカムラ一式

 

ちんまりとして可愛い

 

「ちょっと!それダメ!!」

「天音様、花梨は邪魔しませんよ?」

 

「わ!私は正式に同棲の許可

出てるんだからね!!」

 

「分かっています、

花梨は2番目で良いのです」

 深々と頭を下げる

 

「良くないわよ!!影!

ちょっとドコ行ったのよ!」

 

 

 

 

 もう一つの問題が

 集会所

 

「風月っ!」

 飛び掛かる花梨、しかし難なく避ける

 

「落ち着け花梨!何で風月を敵視するんだ?」

 影が抑える

 

花梨の話では里の田畑を奪われたと言う

 

しかし花梨の里はそもそもニシノが

実効支配している地域

「耕す者のいない田畑を貰っても

差し支えなかろう」

 

それでニシノの里を敵視している、それに

「一応見付けたら折檻しろと言われていた

のでな、捕まえて頬を平手打ちしていた」

風月は足が速い、だから泥棒に真っ先に

追い付く、つまり風月に叩かれてばかりだった

 

風月の言い分は正しいが

花梨にとっては天敵だろう

 

「花梨よ、ここでは仲良くするゲコ、

それとな?今日からヒノエとミノトの家に

暫く泊まるゲコ」

 

「いいえゴコク殿、花梨は影様の家に」

「だから何で?!」

 天音が叫ぶ

 

「花梨は聞いていました、影様と天音様

だけが花梨を助けようとしてくれました、

お二人のお役に立つには影様の家に…」

 

「影!?また逃げた!ちょっと影!!」

 

 

 団子屋

 

「羨ましい問題だな…」

「何でこんな事に…」

 セキエンと話す影、春香が珍しく居ない

 

「本妻と愛人がモメてんだろ?」

「おい、言い方w」

 愛人ってなんだよ

 

「うわぁ…」

 ドン引きのヨモギ

 いや、引かないで

 

 

「羨ましいな…二人とも美人だし」

「セキエン…断る勇気無いのか?」

「お前だったら断れるか?」

「…恐いな…春香さんどうしたんだ?」

 

「許可貰いに行った」

 うつ向く青い顔のセキエン

「里長のところか?何の許可だ?」

 

「二人でトガシに行く許可だ…」

 

「…それは…」

 

「幸せにな…影」

 遠い目になるセキエン

 

 無言で敬礼したくなる

 友よ…君に幸あれ!!

 

「影!!逃げないでよ!!」

「う、天音…」

 タジタジ

 天音を説得出来ないし、花梨に言っても聞かない

 贅沢な悩みだが…

 

「花梨ちゃんに何とか言ってよ!」

 

「おぉ!お前達丁度良い!」

 里長と春香が来た

 

「里長!」

 

 

 

 …………

 

 

 

砦の状態から百竜夜行に備える為、

セキエンと春香のトガシ訪問(結納?)は

一月延期

 

執行猶予が付いたセキエンw

 

 そして

「花梨よ、ヒノエの家に逗留、

後に用意する家へ住め」

 

 子供なのに里長の威圧をモノともせず

「里長殿、それでは影様と天音様に

恩義を返せません」

 

「お前の里への貢献、これをもって

返せば良いのだ」

 

 無言で何度も頷く天音

 

「…分かりました、カムラの里のため…

その通りに致します」

一礼する花梨

 

カムラは花梨を『一人の大人』として条件

を飲み契約した、以前の行商人の様に

子供扱いで蔑ろにしなかった

その辺りは分かっているらしい

 

花梨はウツシ教官に預けられ、午後から

基本を習うそうだ

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 翌朝

 

「お早うございます」

 

「あぁ、天音お早う…」

 布団からモソモソ起き上がると

 

「花梨!?」

「はい、お早うございます」

 ニコッと笑う

 

「えっ?!あ!?天音は?!」

 

「ギィィ…」

 足音を殺して入って来る天音

 

「って花梨ちゃん?!何でいるの?!」

「今来たところです、ね!影様♪」

 

 これが天音の独占欲を刺激した

 

「バァン!!」

 引き戸が勢い良く開くと家から飛び出す二人

 

「待ちなさい!!」

 走る天音

「影様は天音様だけのモノではありません!」

 風月から逃げ回った花梨の足は恐ろしく早い

 

「このぉ!!」

 翔虫で低空を飛ぶ、と

「甘いです!」

 花梨も覚えたばかりの翔虫を使い飛ぶ

 

二人とも反射神経が良くて素早いために、

タタラ場前で縦横無尽の追いかけっこが

始まり屋根から屋根へ飛び回る

 

 その騒ぎに里中の者が外に出て眺める

 

「姉様…」

困り顔のミノト、

花梨を行かせた犯人はもちろん

「うふふwまた暫く二人をイジれるわw」

ニッコニコのヒノエ

 

「うむ、流石ヒノエだ、これなら花梨を

差別する者も出ないだろう」

「花梨の実力を里中に見せる訳ですね」

満足そうに見る里長とウツシ

 

 

「こっ!…このぉ…!」

道の真ん中でゼイゼイと息を切らす美人

 

「もう終わりですか?」

余裕で翔虫にブラ下がる子供

 

「はぁ、ようやく終わったか…」

影が家に戻ろうとすると

 

「チッ…ロリコンメロリコンメロリコンメ…」

工房から顔を半分出して睨むミハバ、

血走った目で呪詛を吐いている

 

 

 

 

 …………

 

 

 大社跡 キャンプ

 

「半日で俺より翔虫の扱い上手く

なってないか?」

 

「基礎授業は必要無い程だって教官言ってた」

 疲れた顔の天音

 

「む?俺も追い付けないか?」

 

三人で話す、今日はオサイズチ

ガードの練習のためにランスを借りて来た風月

「出来るのか?」

「恐らくハンマーより楽ではないか?」

「何で?重いんだよ?」

ミノトの槍で踊った天音は知っている

 

「神部殿に言われたのだ、モンスターの

攻撃を理解していないと」

 

 ???

モンスターのスキに攻撃を差し込む、

これが大前提、

威力は勿論、範囲、リーチ、連繋まで

覚えなくてはならないハズだが?

「今までどうやってたんだ?」

 

「イケると思ったら斬りに行くだけだ」

 得意げに言うが

 

「よくそれで今まで無事だったね…」

 呆れる天音

 

 

 

 …………

 

 

 

 

「攻撃の前には予備動作が…」

「何書いてるの?」

天音が覗き込む、小さい紙に書く風月、

今更こんな基本を覚えようとしている

 

狩りは当然成功、風月にガードばかりさせ

覚えさせた…が

「風月…もしかして師匠居ないんじゃないか?」

 

「む?俺はほとんど一人だ、十分だからな」

 

「フルフル辺りで苦労とかしなかったの?」

 

「反撃が来る前に走り抜ければ当たらんぞ?」

 

 そういう事か、納得する二人

足の早さに頼り一撃離脱だけで何も

考えずにハンターを続けたのだ

 

カムラのように教官から基礎さえ教わってない

才能だけで来た為に壁にぶち当たったのだ

 

「教官に頼んでみるか?」

「なんと!ウツシ先生に皆習うのか!」

 

先生って呼ぶから知っているとばかり思ってた…

 

 

 …………

 

 

 次の日 集会所

 

「良く来たな風月!」

 ふんぞり返る花梨

 …ちっちゃいけど

 

「花梨、何で偉そうにするんだい?」

 ウツシの質問に

「例え1日の差とは言っても花梨が先輩です」

 

絵ヅラ的には長身のイケメンの前で

威張る子供だが

 

「むぅ、お願いします」

頭を下げる風月、今日から基礎を学ぶ

 

どうやら風月は根は素直らしい、しかし

一度決めたら人の意見を聞かないし話も下手

 

そのためにコントロール出来ないバカだと

印象が残るだけかも

 

 

「さて、俺はナルガに行って来る」

 新しい太刀も強化したいし

 

「うん、またソロで鍛えよう」

 邪魔者が居なくなり笑顔の天音

 

「何やるんだ?」

「ん?レウスだよ?」

 

「追い付くの大変だなぁ」

「影が走れば私も走るよ?」

「…追い付けなくないか?」

 距離が縮まらないじゃん

 

「追い付いてよ?私より強くないと

カッコつかないよ?w」

 

 

 

 

 

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