神楽舞   作:天海つづみ

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間合い

 

「ナルハタタヒメ?」

「何だソレ?言いづらいな」

 フクズクの手紙を読むアヤメとトウジ

「雷だってさ、例の黄色」

「花梨はココで見たのか?」

 

 竜宮砦

カムラから川を下りニシノを通過、

河口から僅かな距離にある

 

イブシマキヒコをキャンプから観察する

「アイツ全然動かないね」

「寝転がってるだけだな…

死期が来た動物みたいだ」

 

「死期…か…この前の砦の戦いで?」

「そのダメージかもな」

 

 

 

 

…………

 

 

 

「ガキン!」

「てぇっ!!」

弾かれて痺れる両手

砂漠と岩場の中でバサルモスと戦う影、

これが成功すれば火山地帯の狩りを許可

すると言われた

「やりづらい!」

天音に言われた事を思い出す

『最初は様子見でいいから周りで動くの、

そうすればブレス撃つからね、そのあと

頭が赤くなると斬れるんだよ?』

「ブレス撃てよぉぉ!!」

「ガキィィン!!」

 

 

 

 

「なるほどね、これは戦い辛いわ…」

こちらは大社跡でタマミツネと戦う天音、

レウスはレイアと動きが似てて何とか

なったがミツネは初めて見る動きが多い

「夜行とは違うわね…」

建屋があった砦は動きが制限されるが

広いと距離を離される

「もう!滑って行かないでよ!!」

水飛沫を上げて走る天音

 

 

 

「…そうか、クセが強いだけでスキだらけだ」

夜行では柵に向かうだけだからバサルモスを

理解出来てなかった、

けど今なら理解出来る

適当に振っただけではダメなんだ、

正確に一点を斬らないと

 

その勉強のクエストか!

 

 

 

「なるほどね」

全身ズブ濡れの天音、装備も濡れて

重くてスタミナが…

 

双剣にとってスタミナ管理は生命線、

その勉強か

 

 

 

 …………

 

 

 

「おぉ、二人とも戻ったゲコ!」

 笑顔のゴコク、と対照的な

 疲れた影とズブ濡れの天音

「さて、今回のクエストの意味…

理解出来てるゲコ?」

 

影は弱点の攻撃、天音はスタミナ管理の

話をすると

「うむ!クエストの段階、その本当の

意味を理解してるゲコ」

満足そうなゴコク様

 

「影、お風呂沸かして、気持ち悪い」

 

「ん、お前の装備干さなきゃな」

 

 

 

 

 まだ真昼だが家に帰り風呂を沸かす

 

天音を先に行かせて土間に巫女装備を干す影

水を吸ってズッシリ重い、これ着たままで

走り回れる天音ってスゴいな…

まだまだ追い付けそうにない

 

「お先でした」

恥ずかしそうにうつむき加減で家に入る

天音、青い浴衣を着て…良い匂いがする…

肌が桜色に…

 

 ヤバイヤバイ

 ってか自然な流れで気が付かなかったけど…

 

 当然のように家の風呂に…

 

 これは…

 

 この状況は…

 

「?、どうしたの?ついでに入っちゃえば?」

 キョトンとする

「あ、あぁ、そうだな…」

 

 

 

 ………

 

 

 

 

風呂を出ると天音が影の防具を繕っている

「自分でやるから良いぞ?」

 

「いい加減新しいの揃えたら?

武器も新調したんだし」

 

「そうは言ってもなぁ」

 

「お金はあるでしょ?」

 

「そうだなぁ…次は…」

 隣に胡座で座る影

 あっちこっち確かにボロボロだし…

 

 ふと影は気付く、

何だコノ夫婦みたいな会話は?

 

 …あれ?

 

 俺達同棲認められてるよな…

 

 それって夫婦として認められてるよな…

 

 『夫婦喧嘩しなーい!』

 ヨモギに言われた頃から…

 

 だとしたら

 

 だとするならば

 

 この雰囲気は…

 

 天音を見ると手が止まっている

 天音もわかってる?

 

 これは…

 

 

 同意か…

 

 

 ここは…

 

 

 男なら…

 

 

 距離を詰める

 

 

「花梨ちゃんの事、どう思ってる?」

 うつむいたまま聞く天音

 

「えっ!?かっかか!花梨がどうしたっ?!」

 焦った!!あービックリした!!

 予想外の質問に気持ちを折られた

 

「花梨ちゃん…好きなの?」

 

「…………」

 好きではある、しかし女性としてではない

 子供だから可愛いという認識…

 孤児に対する同情…

 何だろう?

 影にも自分の気持ちが分からない

 

 沈黙が続く…

 

 

 

 

「ギィッ!!」

「もう!じれったいわ!」

 

「ヒノエ様?!」

「ヒノエ姉さん?!いつからそこに!」

 

「二人が帰った時からよ?真っ昼間から

お風呂入るんだもの、期待したのにw」

 

 …何の期待でしょうか?

 

「天音、ムードってモノがあるでしょう?

花梨ちゃんに嫉妬するなら影君をしっかり

捕まえなさい」

 

 捕まえるとは?

 

「……!、ね!姉さん!何で覗いてるのよ!」

 顔を真っ赤にする

 

 そうだ天音よ、今の問題点はそっちだぞ

 

「んー、これは失敗だったかしらねぇw」

 

「どういう事?」

 

「影君が花梨ちゃんを女として見てる訳

無いでしょ?」

正座して話すヒノエ

 

影と天音も姿勢を正す

 

「じゃあ何で影は答えられないのよ?」

 

「天音、貴女だったら影君のタイプが

気になったり行動を知ろうとするでしょ?」

 

「そうだけど…?」

 

「影君と花梨ちゃんはお互いのタイプとか

行動を気にしないでしょ?」

 頷く影

 

「うん…でも花梨ちゃんは影にベッタリで…」

 眉間にシワ

 

「分かってないわねぇ、花梨ちゃんは

1日何があったか自分から影君に

報告してるのよ?」

 

「だから?」

 

「分からない?まるで子供が親に

誉められたいだけよ?」

 

「!!!」

 

「だけど影に相応しい女性に成るって!」

 

「まだ子供の好き嫌いの段階なのよ?

それにね?」

 少し横座りになると

「花梨ちゃんは貴女達に両親重ねて

見てるのねw影君が答えられないのは父性が

理解出来ないからよw」

 笑うヒノエ

 

「だ!だけど朝影を起こしたり!」

 神経逆撫でするようなこと

 

「私がやらせたのw」

 最高の笑顔のヒノエ

 後光が見える…

 

「なんで?!」

 

「貴女達が奥手で全然進展しないんだものw

花梨ちゃんに嫉妬して一気に…

って思ったんだけどねw」

 

そういう事か、最初から…いや、

ずっと前から俺達はヒノエ様に転がされて

居たわけだ

 

「嫉妬で逆に止まると思わなかったわw

あんまり時間掛けてると花梨ちゃんが

追い付いちゃうわよ?」

 立ち上がる

「四歳しか違わないんだし、花梨ちゃん

だっていつまでも子供じゃないのよ?」

 

「それは……」

考える天音

今は私達を両親の様に思ってる

だけど影を男として見る時が来るかも

知れないのか…

 

それに影だって浮気しないとは言い切れない

 

 

「じゃあ私は行くわね、続きどうぞw」

 ヒノエは回転扉に入って行く

 

 何の続きですか?

 

 

「あ、天音、えーと…」

 どうしようこの空気…

 天音はソノ気なんて無かった訳で…

 何か俺一人で盛り上がってた

 バカだなぁ俺

 

 

 

 

「続き………する?」

 上目遣いに見てくる

 

 

 

 …え?

 

 

 それは…

 

 

 良いのか?

 

 

 このまま…

 

 

 見つめ合う…

 

 

 顔が近くなる…

 

 

 このまま…押し倒して…

 

 

 

 

「!」

「?、どうした?」

 天音は静かに立ち上がり足音を殺して歩く

 

 

 回転扉に手を掛けて

「ギィッ!!」

 

 

「あらぁ…(汗)」

 困り顔のヒノエ

 

「やっぱり!!」

 

「天音の鋭い所、姉さん好きじゃないなぁw」

 

 決めた、回転扉塞ごう

 

 

 

 …………

 

 

 

 ギルドの二階の座敷

 大量の巻物と書物を読む里長とゴコク

 

「トウジからの報告では死期が近付いた

様に動かないと」

 

「…ワシは見てなかったが…

イブシマキヒコはダメージを負って

逃げた様に見えたゲコ?」

 

「…いえ、余力は十分、単に煩わしいから

避けて行った…と言った所でしょうか」

 

「他に記述は見つからないゲコ?」

 

「まったく見当たりませんなぁ」

 紙の束を畳む

 

「竜宮砦はニシノの方が近いゲコ、

慈海殿なら何か…」

 

「見返りを…要求されるでしょうなぁ」

 

「風月を上手く使えると良いが…

アレでは不安がのぉ」

 首を捻るゴコク

 

「その線で考えますか」

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

「風月、なんで両手使うんだい?

片手で振るんだ」

指導するウツシ

 

「ぬうっ、最初からこうだったので」

「ウツシ殿!辛いです!」

 

素振りする風月と花梨、風月は片手剣だが

花梨は短い木刀

 

「花梨、一回の狩りで剣を何回振ると

思う?この程度で音を上げたらハンター

にはなれないよ?」

 

「何回位振るのでしょう?!」

 何度も斬り下ろす

 

「ざっと500かな」

ニッコリ笑うが、その言葉だけで貧血に

なりそうな花梨

 

「風月、盾の位置が違う!剣は振り

ながらも体を守る様にするんだ!」

 

「はい先生!」

「花梨は出来ていますか?!」

「うん、出来てる、花梨は100回振ったら

休みなさい、風月は後200」

 

「だっ!だったら花梨も!」

 既にヘロヘロだが

 

「ダメだよ、体が出来上がって無い内から

無理するとケガの元だ、休むのも

訓練の内だからね」

風月にライバル心を持ってるせいで

怠ける事が無い、が、

先ずはしっかり体を作らないと

「終わったらシッカリ食べよう」

肉を焼き始める

 

 

 …………

 

 

 

 

 団子屋

「やぁやぁ!お二人とも!」

「ヨモギ?どうした?」

 いつもと話し方が…

 

「そりゃあ二人とも浴衣で日の高い

内から歩いてれば、仲の良い夫婦にしか

見えないよっ!」

 

天音は反応しないで、うつ向いたまま

影の腕を掴んでいる

 

「あれ?いつもの反応じゃないなぁ?

ケンカしました?」

 ニヤニヤ見てくる

 

 そこへ

「影様、天音様」

「おぅ、花梨」

ヘロヘロの花梨が来た、

途端に天音が腕にしがみつく

 

 !!!

 

 いつもは気が付かなかった、

 防具着てたから

 腕に当たってるんだが…

 

「花梨、団子食べる…か?」

 ギュッと腕に力が入る

 

「影様、無理です、もう食べられません」

 ヘロヘロに見えるんだが

「ウツシ殿に『食べるのも訓練だ』

と言われまして…」

 

「そうだよねぇ、花梨ちゃん細いもんねぇ」

隣に並ぶヨモギ

あらためて並んで見るとヨモギより

五センチ以上低い

 

「それに『胸が大きくなるよ』って肉ばかり…」

 

「あはっ!ウツシさんらしいわw」

笑うヨモギ、

とは対照的に怒りが込み上げる天音

『おのれ教官!余計な事を!』

 

「おぉ影、丁度良い」

「どうしましたゴコク様」

「少し相談したい事があるゲコ」

 

 

 

 




一番楽しい時期だよねぇ
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