神楽舞   作:天海つづみ

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憧れ

 

 里長の話から十日ほど経った

 

 あれからギルドの中では里長達の言う

『例のモンスター』が話題となっている

 黒くて大きい、鋭い爪、紫の炎?尻尾が槍?

 当時を知らない者達は楽観している

 今は砦もあるし、設備もある、どうせ

思い出補正で大袈裟になっているだけだろう

 そんな思いで日々を送っていた

 

 

「何でコイツがギルドに居るんだよ!」

 大人の女性、春香(ハルカ)が影を指差す、

赤いショートヘアの長身で、女ではあるが

名の知れたカムラの強者

 他に仲間を三人連れているが、

全員この里のトップクラス

 レウス一式で統一されている

 

「春香君、影だってハンターになったんだよ?

来るのは当然じゃないかい?」

 ウツシが間に入る

 

「今さらハンターになりやがって!

こんな根暗の半端なヤツが!」

 美人の(ヒノエとミノトには遠く及ばない)

ハンターにガミガミ怒られる影

 

 照(テル)と同年代で照に憧れてた為に

弟の影にも期待した

 しかし弟はハンターにならず守人になった、

そして今更ハンターに…

それが気に入らなかったらしい

 

「姉御は影に厳しいなぁ」

 ニヘラと笑ういつもの時雨

 

「時雨!こんなヤツとツルんでると

お前も弱くなるぞ?!」

 今度は時雨にも怒鳴る、

春香は大柄の為にほとんど真上から

 

「心配ないよぅ、影だって強くなるよぉ?

俺が強くするよぉ?」

 

 (はぁあ?)

 影も含めたギルド中が心の中で突っ込む

 

「お前はずっとウツシ教官に付いてたのに

駆け出しなんだぞ!?」

 唾まで飛ばす

 

 時雨は13の時にこの里に居着いて

教官に弟子入りした、

 それを考えると成長が遅いのだ

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 

「春香姉御相変わらずだなぁ」

 ニヤケる

 

「まったくだ、やっぱり本当だったのかな?」

 兄貴が死んだ時からあの態度、もう慣れた

 

 大社跡のキャンプで話す

 

「照兄ィと付き合ってた噂かぁ…

俺達も解る歳になったんだなぁ」

 クナイをクルクルお手玉する時雨、

手に刺さりそう

 

「俺に兄貴みたいになって欲しかった

んだろうな…勝手すぎる…」

 でも気持ちは解らなくはない、

照が死んだ時一番取り乱し、泣いていたのは

春香なのだ

 当時13だった俺には仲間が死んで

泣いていると思っていた

 

 俺に当たるからずっと避けていたけど、

何となく気持ちが理解できた

 

「でも…俺に期待すんなよなぁ…」

 兄貴は17の頃にはヤツカダキ?とか言う

蜘蛛の化け物まで倒していたという

 俺は今日になって傘鳥、アケノシルムと戦う

 

「照兄ィは突然だったからなぁ」

 

「あれ?お前理由聞いてんのか?」

 

「他の里に向かってる途中で、転覆してた

船の人達助けたんだろぃ、有名だぜぇ?」

 

「本当にヒーローらしい最後だったらしいや」

 全員助けて自分は力尽きたらしい

 道具類を確認する

 

「なぁ、影は何で今更ハンターになったんだぁ?」

 お手玉を止めて

「なんかよぅ、なりたいけど

なりたくないって感じだったぜぇ?」

 

「最初は兄貴に憧れてなりたかったハズなんだ、

だけど兄貴が死んだ時には…」

 うつ向く

 

「なんでぃ?」

 

「良くわかんね、何かやる気が無くなった、

でもよ、やりたくなった」

 ハンターはやっぱり里の花形だし

 

「ふーん、なんか適当だなぁ」

 

「自分の気持ちが…解らないんだ」

 もう少し…何かが…約束だから…か?

 

「…行くかぁ、火に気を付けるんだぜぇ」

 翔虫で飛ぶ

 

「知ってる、百竜夜行で見てるからな」

 こっちも飛ぶ

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

「クコココッ」

 一本足で動きを止め、キレイに直立すると

翼を後ろ側へ

 

「これなんだぁ?」

「危ないぞ!」

 二人ともガードが出来ない武器のため回避準備

 

 傘鳥は翼をひと振りする

「バシィッ!!」

「痛ってえ!」

 まるででっかいビンタ!

 柔らかそうな翼のくせに硬い上にリーチもある

 

「大丈夫かぁ?」

 傘鳥の後ろから斬りかかる時雨、ところが

 

「クゥオゥ!!」

 後ろに向けて足を蹴り上げる

「っぶねぇよう!!」

 紙一重で避ける時雨

「顔にキズでも付いたらどうすんだ鳥よぅ!」

 斬り掛かる

 

 あぁ、

コイツ一応イケメンだって自覚があったのか…

 変な事に感心しながら斬りかかる影

 

 傘鳥は頭を低くして飾り羽を前に向けて

突進する、二人で追い掛けると

 

 Uターン!!

「何ぃっ?!」

「そりゃねぇよう!」

 二人で食らって吹き飛ぶ

 

「くっそ!動きが読めん!」

「俺らはガード出来ねぇよ、

 少しづつ削ろうぜぇ」

 

 

 

 一度距離を取り別のエリアへ、

奥の門の更に奥、廃墟の影に隠れる

 

「攻撃は出来てるしダメージは入ってるよな」

 ボサボサ頭を後ろに撫で付ける、額に汗

 

「見たことねぇ動きだよぅ」

 片目が隠れ、うざったい髪が暑苦しい

 

 二人は百竜夜行で見ているがアケノシルムは

上空からブレスを吐くばかりだった

 それに二人は今まではバリスタの射手と

弾運び…接近戦は初めて

 

 どうするか…ツイバミ、後ろに蹴り、突進、

ビンタ…スキは…

 

「ビンタの前に斬ろうぜぇ?」

「!、お前知ってたのか?」

「さっき見ただろ?行こうやぁ」

「ん、今度は倒す」

 

 

 

 さっき見た?まさかもう覚えたのか?

 

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 一本足で振りかぶる

「よいさぁ!」

 回転斬りで足元に滑り込む時雨

 

「せいっ!とう!」

 鬼刃斬り、影は普段は使わないが

思い切ってやってみる

 

 あっさり傘鳥は倒れる

「そいじゃ鬼人化!」

 乱舞で斬りまくる、両手の双剣の刃が

高速で欠けていく

 

 今なら…いいか?

 鬼刃斬りを連続で出し最後に大きく

斬り下ろし、斬り上げる!

 刃の色が黄色く鋭さを増したように感じる!

 

 傘鳥は立ち上がり上を向くと連続でブレスを

吐く、放物線を描いて周囲に着弾するが

「スキだらけぇ!」

 すかさず時雨が突っ込む

 

 この刃の色、コイツなら!

 更に鬼刃斬りをするが

 

「あ、あれ?」

 途中で止まる影

 

「もう死んだみたいだぜぇ?」

 斬るのを止めてツツク時雨

 

 せっかく刃の色が変わったのに

 

「影ィ、色変えたなぁ」

「あぁ、スキが大きいと出来るな」

「もう一段あるの知ってるかぁ?」

「赤くなるんだろ?次はやってみる」

 

 

 

 

「ふーん…」

 ニヤニヤ

 

「なんだよ?」

 キモいなコイツ

 

「何か強くなろうとし始めたかぁ?」

 

「ハンターなんだから当然だろ?」

 

「十日前のお前なら言わなかったろうなぁ」

 

「?、そうだったか?」

 

「気付いてねぇの?お前突きと斬り下がり

ばっかりで、雑魚の攻撃まで全部避けてたろぃ」

 

「俺…」

 なんだ?何か変化したか?

 俺の中で

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 何だ?あの落書きは…

 ギルドに帰る、と、いつもの場所に座り、

何やら大きい紙を見ているミノト様、

 顔の前で見てるせいで俺達に気が付かないし

こちらからは透けて絵が見える

 

「ミノト様?」

 

 ガバッ!と動き、絵を隠すミノト

 

 あれ?何かマズかったか?

 

「お疲れ様です」

 一礼するヒノエ様の双子の妹、ミノト様

 いつも冷静沈着、落ち着いた美人

 ヒノエ様と良く似ているが、

少々目付きが鋭く(ヒノエがタレ目)

 ほとんど笑わず(ヒノエは常にニコニコ)

 言葉に抑揚も少ないために

コミュニケーションが取りづらい

 

 しかし『そこが良い!!』という男は多い

 無表情がたまらないらしい

 

「アケノシルムの討伐、成功しましたけど…?」

 俺ミノト様はちょっと苦手なんだよなぁ

 

「順調ですね、

次はヨツワミドウ辺りでしょうか?」

 

「ミノト姉さん、今の落書きなんだよぅ?」

 

 ぼっ!!!と真っ赤になるミノト

 

 ?なんだろう、聞いちゃいけないのか?

 

「お、思いきって

フルフル辺りもよろしいかと…」

 

 ミノト様が言葉に詰まっただと?

「そっ、そうですね百竜夜行で見てるし、や」

「なぁなぁ今の落書きなんだよぅ?」

 ズイッと寄る時雨

 

「おっお疲れ様でした!

十分に体を休めて下さい!」

 (裏声と冷や汗)

 

「なぁなっぐもっ!」

 時雨の口を塞ぎ

「か、加工屋行って来ます」

 時雨の襟首を掴み、引き摺って外に出る

 影は察した

 何かヤバい、触れてはならない何かがある

 

 

 

「何すんだよぅ」

「何かヤバそうだろ?」

 コイツはあのミノト様の動揺が

分からないのか?

 

「気になるぜぇ?」

「お前なぁ…」

 触れて欲しく無い事ってあるだろ

 

 通りを歩き団子屋のヨモギ、飴屋のコミツ、

ヒノエ様、里長達と軽く挨拶して

 

「おう、影、時雨」

 

「あぁミハバ」

「修行は順調かぁ?」

 

 見よう見まねで金槌を振るうミハバ、

ハモンの弟子の一人

「まだまだだ、影、守人に戻る気はないのか?」

 

「とりあえずハンターになったんだ、

どうにかモノにしてみるよ」

 

「バリスタに戻りたかったら言ってくれよ?

俺の下に付けてやるぜ?w」

 

 

「なんだよ、一からやり直しか?」

 こっちも笑う

 

「当然だろ、時雨はまた弾運びだな」

 

「俺は楽が出来れば何でも良いやぁw」

 

 手を振り別れて

 

 

「じゃあな、時雨」

 時雨はこの先の橋を渡った小島に住んでいる

「おぅ、明日なぁ」

 

 

 

「ふぅ」

 さて晩飯作るか…

 

 

 

 

 

 

「ただいまぁ」

 

 

 

 

「…………」

 

「影ィ、ココは『お帰り』だろぃ?」

 

「…何でお前が入って来るんだ?」

 

「なんだよぅ、お互い独り身なんだから

晩飯位一緒に食おうぜぇ?」

 

 

 

 

「…ほぅ、ちなみに晩飯は誰が作るんだ?」

 竈の前に立つ

 

「客が作るなんて聞いたことないぜぇ?」

 ニヘラと笑う

 

 

 

 

「おい時雨、殴られるのと蹴られるの、

どっちが好きだ?」

 

 

 

 

「じゃあ…」

 

「風呂も貸さん!」

 

 

 

 

 




ウザい、書いてて自分でも時雨がウザい
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