「何をしているのか分からんな…」
「はい、しかもヤツは雲ほどの高さを飛ぶ
ため行動を追いかけきれません」
里長へ報告するトウジとアヤメ、
再び補給へ戻った
「しかし竜宮砦から居なくなったなら、
逆に夜行の危険がある…か?」
顎へ手をやり考える里長
「こちらの砦の復旧はどうなんでしょうか?」
「ハモン達里守の尽力と花梨の
部品提供のお陰でな…」
考える
「どうしました?」
「復旧は出来たが『強化』には至らん、
大砲を増やせれば良いが…」
「時間もか…」
「竜宮砦にあるけど輸送が大変そうよね…」
「ふむ…」
…………
「うおお…」
レウス装備を身に着けた影、
自分を見ながら目をキラキラさせる
「どうだ?サイズは?」
「ピッタリです!ありがとうハモンさん!」
「ほら影」
天音が背中にナルガの太刀を取り付けると
「…ッハァ…」
着ただけで…何?w…何この満足感w
「顔がだらしないよ?w」
誰も見ていなかったら
「うへへへ!!俺最強!!」
とか叫ぶ所だが抑えている影
早く試したい!!
「仕方なかろう、レウス装備を着ると言う
事はハンターとして一目置かれると
言う事だからな…それと…」
ハモンはミハバの方を見ると
「チッ…武器貸せ、強化してやる」
不満な顔
「あ、あぁ…」
「金はいらねぇ」
「は?」
「祝儀代わりだ」
顔や態度は悪いが…やはり付き合いの長い幼なじみ
「ありがとうミハバ!」
「いいって…」
「ふーん、ミハバって良い人ね!」
天音が笑い掛ける
「そ、そんな事ねぇって!」
「照れてるーw」
「おお!!影もそれなりの格好になったな」
「里長?」
「一つ頼みがあるのだが」
…………
「変な話だよな」
「今度はトガシの里かぁ」
ガルクで森を走る影と天音
「鉱石の買い付けなんてな」
「でも春香さんの様子見られるし楽しみw」
「いつ春香さんトガシに行ったんだ?」
「私も聞いてなかったよ?」
ガルクで走ること二時間、
大きな鳥居の様な門にズラリと続く柵がある
「これがトガシの里か」
「大木だらけ…」
緊張しながら中に入ると、ガルクの島を
大きくして家を建てたように見える、
カムラに比べて瓦の屋根より藁葺き屋根が多い
「何者か!」
弓を構えた女の子が近付いて来る、
コミツ位の歳だろうか?
どう見てもオモチャの弓
「こら、おきゃくじんかも知れないだろ?」
兄らしき男の子に小突かれる
何とも可愛らしい出迎えである、
門番のつもりなのだろう
「セキエン居るかい?」
「春香さんでも良いんだけど」
「え?若様?」
「春香お姉ちゃん?」
ブホッ!!わw若様w
顔を逸らして顔を隠す影
あとでイジるw
「カムラの影と天音が来たって
伝えてくれるかなw」
ニコッと笑う天音の笑顔に真っ赤になる男の子
「こっ、こちらです!」
ストライク!天音の笑顔にフラフラ歩く
小学生位の男子にとって高校生くらいの
美人の女子は……その破壊力たるや
天音の笑顔は武器だ
「あらぁ、どこから来たの?」
「まぁカムラから?」
「疲れたでしょ!焼き餅食べな!」
「うおっ!どこの娘だ!?」
カムラに比べると森の中で田舎に見えるが、
行商人も多いし露店もある
大きな家の前に…
「よく来たな!」
紺色の着物のセキエン
「セキエン!いつカムラから出たんだよ?!」
「いつの間にか居なくなってるんだもん!」
「早く春香さん連れて来いって親が煩くってな」
頬っぺたを掻くポッチャリ
まだ『さん』なのかw
立派な屋敷、土間から上がり座敷に通される、
新しい畳の良い香りがする
「親父殿!影と天音が来ました!」
奥の襖が開くと
「よく来られた!こちらへ!」
もう1つ奥の広い座敷へ、
里の責任者だろう役職達の中央、
胡座で座る大きな体、黒い着流し、咥えた
キセルにオールバックの長髪、なるほど
フドウさんの言うとおり恐い感じだ
「お前が影か、セキエンが世話になったな」
「申し遅れました、こっちは天音です」
レウス装備の兜を脱ぎ、脇に置き正座する、
今なら分かる、セキエンがカムラに来たとき
『嘗められないように』と実力に見合わない
装備を着ていた理由、
自分に余裕を持たせるためなのか
影の斜め後ろに正座した天音が一礼する
「ガハハハ!!緊張するな!」
豪快に笑う里長カイエン
「話通りの美人だな!影がイヤになったら
トガシに来い!」
「親父殿!!」
セキエンが諌める
「冗談だw」
ひとしきり笑うと
「して、何用だ?」
よそ者、しかも初めての人物に対する
当然の威嚇、いきなり雰囲気が変わる
カイエン、前の影なら萎縮しただろう、
しかしヤクシより怖い人なんて滅多に
居ないし(二人は見た事が無い)、ニシノの
里長の前で感情剥き出しにした二人には
今更通じない
度胸がついている
「はい、鉱石を更に増やせないかと」
「ふむ、カムラに送る量を増やせ?」
思案する
そもそもトガシは鉱石類、鉄鉱石も採れる
がカムラに比べると質は良くない、
それに製鉄技術が無いため加工はカムラへ
送っている、そうして出来た鉄を
ユクモ方面へ送っているだけ、
トガシの主な産業は木材と農業である
つまりトガシの鉄は副収入程度、
そこまで重要視していない
その鉄も増やせ?考えられるのは…
「砦の強化でもするのか?」
「それは聞かされていません」
本当に何も聞いてない
「うむ、安く買い叩く訳ではないの
だろうからな…」
天音が
「はい…それに」
顔を上げると
「私達本当は春香さんに会いたくてw」
ニコッと笑う
実際こっちが本心だし
「ガハハハ!春香殿か!最初は面食らったぞ!」
初めて屋敷に来た時、入り口を『くぐって』
入る大女、家族全員唖然とした
「俺よりデカイからな!
笑うしか無かったわ!!」
豪快に笑うカイエン
「集会所の辺りにいるハズだ!
会いに行ってみろ!」
………
レウス装備で太刀を背負った大女、
を探していた二人は面食らう
里の広場らしき場所、丸太の椅子を並べた
所に薄紅色の着物を着た春香
……まぁデカくて見間違えることは無いが
「これやってー」
子供達に竹トンボを渡され
「おっ、これはな」
「ブウウゥゥゥン…」
春香の大きな手で回された竹トンボは
唸りを上げて上空へ
「うわぁぁっ!!」
歓声を上げる子供達
他にも綾取りやお手玉を教える春香
「……春香さんって…子供に人気あるんだな…」
「あれ?影知らなかった?春香さんって
面倒見良いんだよ?」
花梨に型の話をした時の話をすると
「あぁ…前は俺嫌われてたっけ」
関係が改善してからは何かと声を掛けてもらった
「おう!来てたのか!」
春香が気がつき手を上げる
「春香さん、いつこっちに?」
天音が近付くと子供の輪が開く
「二日になるか、顔見せに来ただけで
気にいられてなw影!一人前だな!」
レウス装備の事である
「何かテレますw」
「だれ?」
「びじんー!」
「春香ねえちゃんのともだち?」
うおぅ、会話中でも遠慮なく質問攻めだよ
十人程の子供に囲まれる
「春香ちゃん!」
薄緑の着物を着た…おば様
「お料理手伝って頂戴な」
…もしかしてセキエンの母親?
「はい、すぐに」
立ち上がると
「また後でな」
「ええー?」
「おわりー?」
抗議の声を上げる子供
「おう、また明日な!」
「えー!」
「もっとあそんでー!」
子供に人気あるんだ…
………………
「本当は顔を見せに来ただけなのにさ、
人気が凄くてなw」
「アタシも居心地良くてさ、
帰るのが延びちまったw」
串に刺した餅を頬張るセキエンと
鍋の具を盛り付ける春香、本当は当日に
カムラへ戻る予定だった様だ
延びた理由は到着と同時に事件が起こった、
トガシは山の中だから時折ファンゴが
平気で入り込む、だから子供はすぐ近くの
木に登る訓練をするらしい
春香が到着した時もファンゴが入ってしまった、
初めてのトガシ、しかも嫁に来る事に
なるかも知れない里、太刀を振り回して
狩る姿を見せるのは
『ちょっとなー』
と思った春香は、ファンゴに素手で立ち
向かい数回殴り気絶させてしまったそうだ
デカイ体、強い力、あっという間に
子供達のヒーローになってしまい
引き留められたそうだ
いや、素手ってどうよ?
太刀より殴る方が恐くね?
晩御飯を屋敷でご馳走になるがニシノと
比べると全然違う、ニシノでは座敷に
お膳を並べて役職も一緒だったが、トガシ
はデカイ囲炉裏の部屋で鍋を囲むスタイル
「もうすっかり若奥様で御座いますなぁ」
茶色の着物で痩せた老人がカイエンに酒を勧める
「まったくだ!良い嫁を見付けたもんだ!」
「気が早いよ親父殿!」
「そうです父上、私の義姉にふさわしいか…」
「あら、私は春香ちゃん気に入ったわよ?」
「………えーと…」
「あぁ、二人とも知らないよな」
セキエンが紹介してくれる
「この人は権爺、トガシの長老だ」
痩せた老人が少し頭を下げる、
カムラと同じで長老と里長が居る訳だ、
ニシノは慈海が里長で長老だった
…ゴコクとは対照的で地味で痩せて腰が低い
「んでコイツが弟の」
「シキエンと申します」
礼儀正しく挨拶する少年、兄と違い
シュッとしているwその態度から
賢そうなのが分かる、
似てないwこっちは母親に似たのかも
「で、私はこの子達の母親よ?
『おかみさん』って呼んでね?w」
…フレンドリーなおば様だ…
「影よ!一杯どうだ?!」
カイエンが徳利を向ける
「あの、俺呑んだことないんですが…」
「「「「ええっ!?」」」」
一同が影を見る、意外な事に天音まで
「そういやぁ一緒に呑んだこと無かったよな」
思い出すセキエン
「アタシも見た事ないな…」
春香も
「天音、呑んだことあるのかよ?」
「私は姉さん達に呑まされたよ?
加減と限界知っておけってw」
「何で?」
「酔わされて変な事されないように
『用心だ』ってさw」
「影よ!嫁御に負けてはイカンな!さぁ一杯!」
何だか距離感が近い、久しぶりに
家族みたいな雰囲気
そうだよ晩飯ってこんなだったよなぁ、
家族四人でワイワイしてた…
その日にあった事話して…それで…
あぁ、楽しかったんだなぁ…
用心は必要だけど…
良いかな?
「じゃあ…」
「うむ」
カイエンが注いでくれる
里長クラスの人間に酒を勧められる意味、
その重さなど影達はまるで解っていない
初めて酒を飲む影、全員が注目する…
「っほおお……」
熱い…喉が…
何か腹まで行っても熱い…けど…
「…何か…不思議だ…」
「おお!イケるくちだな!」
更に酒を注がれる
…………
「ぐ…寒い…」
微睡む影、薄目を開けると知らない天井に…
布団の感触
どうやら酔い潰れたらしい…
掛け布団は……あった…
あったかい…
…や…べぇ…
泊まるはずじゃ…ないの……に……
…………
「!!!」
影は目を覚ます、
と同時に目の前に髪の毛???
え?これまさか?
…………どっどどどどうしよう!
夕べの僅かな記憶…布団だと思って
しがみついたのは…そうです天音です!
う、動けん……
動いたら色々触ってしまう…
ここは…そーっと……
「んんっ…ぐぅーっ!」
突然天音が伸びをすると
「んー……あー…起きな…きゃ?…………!!!」
二人同時に飛び退く!突っ込んで来た
モンスターを避けるように
「な!何で一緒に寝てるのよ!」
「おおお俺も分からないんだ!」
お互いインナーだけで
「な!何かしてないでしょうね?!」
「し!してない!と思う!…多分…」
初めて一つ布団で寝たが、
他の里長の屋敷、お互い酔ってて記憶無し
という最低の思い出になってしまった