「どのモンスターもそうだがよ、何度も
戦って経験積むんだ、その結果次の
モンスターに通用する技術が出来るんだ」
フドウが花梨に説明している、花梨は
アオアシラに挑戦させて貰えないらしい
「ではもっとオサイズチを倒すと?」
見上げる猫花梨
「そうだぜ?オサイズチに余裕あったか?」
首を振る花梨
「罠と閃光と毒蛙と
…回復薬グレートもいっぱい」
環境まで使っている
「だろう?体一つで勝てるまでやってみな?
そしたらアオアシラも苦戦しねぇぜw」
笑いながら団子を齧る
「おう?どっかで聞いた話だなぁコラァ?」
ヤクシが聞いていた
「ってヤクシさんが言ってたぞ!!(汗)」
慌てるフドウ
ふーん、なんかあのフドウって人、
皆にアドバイスしてるし集会所の中では
重要な人っぽいよね…
笑いながら話すフドウを隅の方で見る七海
無精髭で小太り、身長は影位のオッサン…
なるほどねぇ、有力者ってイコール
オッサンだよ、若いやつは無理じゃん
そこ考えたら影って有力者?
…だから早々に結婚させて里に
定着させようとした…か
『有力者を狙え』って『ジジイを狙え』
になるじゃん、冗談じゃないわ
適当に誤魔化して報酬だけ…
慈海のニンマリ笑う顔を思い出す
ダメだわ、くれる訳無い
心の中で首を振る
本気で好きな人みつけようかなぁ…
アタシ恋って分からないんだよねぇ
「おう?どうだったよ?久しぶりの
レイアだったんだろ?」
フドウが来た
「えっ?あ、あー、皆が凄く強くて
楽だったわよ?」
「ソロで出来そうか?」
「そうね…もうちょっと肩慣らしかなーw」
わざとらしく腕を回す
「困った事があったら言えよ?」
笑うと離れて行く
このヌルさと人の良さ、カムラはパッと見、
簡単にどうにでも出来そうだけど…
「ふう…」
「おうゲンジ、浮かねぇ顔だな」
「歳だな…ラージャンに5分掛かっちまった」
「しょうがねぇさ、もう50手前だぜ!」
笑うヤクシ
これって桁違いに強いからこその余裕じゃん
影なんか他の里なら第一線になれそうなのに、
カムラだから中堅なだけじゃん
だから敵対するより政略結婚かぁ
…どうしよっかなー
結婚に憧れる連中いたなー、
どこに憧れるんだ?
七海は外に出ると船着き場へ
ニシノからの舟へ近付く
「あー、ニシノの人?アタシもニシノ
なんだけどさ、海の魚ってあるのー?」
「すいませんねぇ!今日は干物と燻製だ!」
威勢の良い船頭
「えー?やっぱりカムラって生の海産物は
来ないのかー」
干物を数枚買う、その時支払う金に小さく
畳んだ紙を一緒に
「これからも宜しく頼むよお嬢さん!」
「あれー、お嬢様なんて照れるー」
「そこまで言ってねぇよw」
見た目は和やか
(さて、どうかな?)
干物に挟んである紙を見ると小さく
『見』と書かれている
(やっぱり監視されてるか)
クシャッと丸める
どうしよ、初めは面白そうだと思ったけど…
ジジイばっかでダメじゃん
ギルドに戻る七海
………
「七海からの文です」
船頭、実はニシノの隠密
「うむ」
受け取る慈海
そこには有力な者の名前と年齢、
そして今は影に気があるフリをしているとある
「うむ、よく調べたな」
満足そうな慈海
「そうですか?名前だけなら他の里にも
知れ渡っているものばかりでは?
それに良かったのですか?」
「何がじゃ?」
「その…七海にも自分の意志とか…」
「アレは損得勘定でしか男を見とらん、
だから情に流されんのだ、普通の娘なら
恋の一つもする歳じゃがなぁ」
「そう教育して来ましたから…ねぇ」
苦い顔
「まぁ有力な者なら誰でも良い、ニシノに
連れて来ればカムラの弱体化、そして
トガシに負けない縁となる」
「例の若手最強の女が…」
「トガシへ…よりによって次期里長の嫁に
なった様だしな、トガシは上手くやりおった」
「七海自身の幸せも考えてやりたいですが…」
「ニシノのためじゃ、仕方あるまい」
………
「ねぇねぇ、あのフドウって人、
どんな人ー?」
影にしがみつく
「フドウさん?色々アドバイスしてくれる
先輩ですよ?」
胸が…いや、防具の胸の所が…
平常心平常心…
「…最強レベルだけど威張らないし…」
反対側でジト目の天音
やっぱり胸が大きい方が良いのかオイ
「威張らないー?」
そんな強くて?
「それにヤクシさんが居ると
ビクビクしてますw」
「怖がるもんね、昔指導されたみたいだし」
「ふーん…あれでカッコ良かったら
最高かもー」
だが影と天音は知っている、フドウの頭が
アレな事を
フドウは人前で兜を取らないが、
怪我をした時タタラ場で見ている
ちょっと…後退…というか、寂しい感じの…ねぇ
言わない方が良いだろう、
密かにアイコンタクトする二人、そして照れる
「!、なにー?何かあった?」
「い、いや、何にも」
「何もないよ?」
「フドウさんが気になります?」
俺にくっついてるのに
「何かさー気遣いが出来る…
大人って言うか、余裕?かなー?」
「フドウさんと狩りに行ってみたらどう?w」
そして影から離れろ、
フドウさんとくっついちゃえ!
「うーん、どうしよっかなー」
考える七海、将来有望な人物か…?
ジジイじゃなくて…
まぁ30ならギリ候補になるか?
これならニシノの為になるか?
これなら任務に背かないか?
………
「七海はどこ行ったゲコ?」
「フドウさんと狩りにいきましたよ?」
「♪」
腕にしがみつく天音、邪魔がいなくなった
(まさか見抜いたか?フドウこそワシの
立場を継ぐ人材であることを)
「ゴコク様?」
「なんでもないゲコ」
………
「何で俺と組んだ?」
「えー、影に勧められたしさー、
アンタって誰にでも気遣い出来るじゃーん」
ニヤケる
大社跡の森を歩く
(コイツ言葉遣いできねぇな、風月と同じだ)
「気遣い?してるか?」
「だってさー、アンタ位のレベルなら
素人と話したりー、教えたりしないよ?」
花梨に説明していた場面を話す、
確かに素人の子供に最強レベルが教えるのは
変に見えるかもしれない
「あー、そうだなぁ、
そこがカムラの良さかもな」
「良さ?」
「俺は若い時、他の里のギルドも見てるがよ」
強いヤツは確かに強い、それは良いがよ、
教えたら相対的に自分が弱くなる、
まぁ追い越されると思う訳だな
だから煙に巻いたり嘘教えるヤツまでいる
「あー、ニシノにもいるー、そんなヤツ」
小石を蹴る
「俺には、いや、カムラにはそれが
無いんだなぁ」
「だからソレが解んないのー」
「…そもそもだ、俺は自分が強いと
思ってねぇんだぜ?」
笑う
「えー何で?ラージャンのソロとか
出来るって聞いたよー?」
驚く、これは本心から
「他の里なら最強って言われるかもなw」
大剣を抜くと
「けどカムラだとな…『だから何だ?』の
レベルだぜ?」
フドウの雰囲気が変わる、
そこに居るのは気の良いオッサンではなく、
一流のハンターになる
(恐っ!何?!)
突風!
空から降りてくるリオレイアに
斬りかかるフドウ!
(嘘っ!気付かなかった!)
「あ!アタシどうすれば良いの?!」
(どうやって接近に気付いた?!)
「好きに動け!こっちで合わせる!」
…………
「ぜぃ…ぜぃ…」
息を切らす七海
「な、何て早さ…」
実は七海は裏で訓練を積んでいる、
表向きは箱入りだが、里の隠密の教育を
長い間受けて来た、
本当はリオレイア程度ならソロでも余裕、
なのにフドウは別次元
「アタシ居なかったらもっと早いよね…」
「あ?早さなんざ自慢にもならねぇよ?」
余裕で携帯食料を齧るフドウ、
気の良いオッサンに戻っている
「理解できたか?」
「?」
「さっきの質問だ」
倒れているレイアに腰掛ける
「…なんか、アタシの知ってる強さと違う…」
七海は前に立つ
「そうだ、他の里で『強さ』って言えば
ハンターとしての強さだろ?」
無精髭をザリザリ擦ると
「カムラはよ、夜行があるからな、
モンスター一頭ていどじゃあな」
「まさか…二頭同時とか…」
「甘ぇよ、今の狩りで解らねぇか?」
「たしかに…」
七海の攻撃や回避にフドウはブツかっていない、
それどころか七海に合わせながら
溜め斬りを出していた、
更に言えばフドウはノーダメージ
「夜行になるとよ、狭い場所で複数頭が
当然だ、その上仲間との連携、援護との連携、
陣形まである、どれ程頭使うか解るか?」
「複数頭…」
想像も出来ない
「里長とかベテランはよ、ソレ全部考えて
戦う訳だ、俺なんざまだまだよw」
そういう事か
強さの基準が別次元なんだ
少しうつ向く七海、自分の認識の甘さが解る
「じゃあ影なんて…なんていうか…」
理解出来た、ジジイ達が引き抜こうとした訳だ、
影はハンターとしての強さとは
別の方の『強さ』があるんだ
「間違いなく天才の類いだ、
まぁ努力の上のな」
カムラでは子供の時から夜行で働く、
だけど影だけは各ハンターの動き、
モンスターの動き、位置取り、
援護のタイミング、
全部流れを自然に読んで対応出来る
「だから影はカムラに必要なヤツなんだw」
立ち上がると向かい合い
「だからよ…どういうつもりで影に
近付いたか知らねぇが…」
「半端な覚悟なら帰れや嬢ちゃん…」
眼を真っ直ぐに睨まれる、と
ビリビリと空気が震える!
「影はな、カムラの大事な戦力だ、
引き抜こうってんならこの場で…」
大剣をゆっくり構える
リオレイアと戦った時とは違う殺気の塊!
甘かった!
ここは敵地
認識不足
覚悟なんて無い
全部見透かされてる!
面白半分で来て良い場所じゃない
気の良いオッサン?冗談じゃない!
こんなのがゴロゴロ居るのかカムラは!
気圧されて尻餅をつく七海
ガタガタ震える
「あ、アタシ、あぁ、あ」
言葉さえ出て来ない自分に驚く
恐怖
アタシが来て良い場所じゃなかった!
「どうしたぁ?何か言うことねぇのか?」
睨んだまま見下ろし、一歩前へ
「ひっ!!」
怖い恐いコワイっ!
その辺のモンスターより恐いっ!
座ったままズリズリ後退り
どうしよう!
どうしよう!
どうしよう!
自然と涙が溢れてくる
勝手に体が泣き出す
本能で理解する
化け物だ
恐いよ!
誰か!
助けて!
「帰るぞ?」
空気が元に戻り…納刀
「へぅ、えっ?」
何?…え?…何?
涙を溢しながら
「?、帰るぞって言ったんだ、立て!」