影は前方部の島へ着地、
と同時に
ドォォン!!
「ぐわぁっ!!」
「ミハバぁ!」
ラージャンの空中ブレスが直撃、
バラバラになるバリスタ
「もう一頭だ!」
「くそっ!こっち来やがった!」
里長のすぐ横、ラージャンの回転
しながらの飛び込み
「ぎゃあっ!!」
「いってぇ!!」
数名のガンナーが巻き込まれた
くそっ!失敗した!
後悔する影
ガンナーによる包囲戦は一見正しく見える、
しかしモンスターを見下ろす状態である事、
地面から離れないモンスターであることが条件
身軽で空中から攻撃するラージャンに
とっては、狙いやすい的が固まっているだけ
楽に狩るとは『特化する』こと、逆に言えば
状況の変化に『対応』できなくなる
気付くべきだった!
ガンナーの包囲戦を里長達はやらなかった!
一見効率良く見えるけど、これは悪手なんだ!
「影!」
「!」
中間部から柵越しに天音が叫ぶ
「どうしたの!?指揮が止まってるよ!」
そうだ、俺が…俺がやらないと…
だが今になって震える
指揮をするという事
それが何を意味するか
単に勝つか負けるかだけじゃない
人の命を預かってるんだ
モンスターの恐さではなく、
その意味の方で震える
ヒザがガクガクいっている
立っているのもやっとだ
全身が震えている
こわい
こわい
カムラを指揮した有名人
いつの間にかそれが当たり前に
なっていなかったか?
浮かれて無かったか?
『指揮』の意味、
『責任』を理解していたか?
何が『前方部を預かる』だ!!
「どうした影!失敗したか?!」
フドウが下から怒鳴ると
「ガンナー!全員降りろ!」
全体に叫ぶ
「む…これは…」
里長とゴコクが動きを止めた、
加勢しようとしていたが
「おぉ?里長」
「あぁ、フドウが上手くやってくれましたなw」
笑う
「ワシら年寄りの出番は無くなりそうゲコw」
「あれ?何だよ?せっかく前まで来たのによ」
ゲンジがキャンプから出てきた
「ゲンジ、どうしたゲコ?」
「ウツシさんに
『前行って影の悪手をフォローしろ』って
言われてな」
眺めると
「状況が戻ってるが?」
「ゲンジ、まぁここで見ていれば良いゲコ」
「む?フゲン、影は包囲戦を
やったんじゃなかったか?」
ライトボウガンを装備してハモンが戻って来た
「はっはっはぁ!」
「皆考える事は同じゲコ!」
「オラ!!泣いてんじゃねぇ!!」
下から春香が激を飛ばす
いつの間にか涙が出ていた影
「お前の仕事は何だ!?
ラージャン撃ち落とせ!!」
涙を拭うと
「はい!」
後悔するのは後だ!!
後退弾を装填
「ナカゴ隊!ディアに榴弾!」
「ヨモギ!小さい方のラージャン!
飛んだら後退弾!」
「イオリ!同じヤツに通常弾!」
飛び上がる度にラージャンは落とされる
残りは大物ディア一頭とラージャン二頭
「うむ、何とかなっているゲコ」
「ケガ人はミハバ隊とガンナーが数名だな…」
「影!俺達は軽傷だ!気にすんな!」
中間部、右岸に上がるミハバ隊、
包帯を巻いている
「ケガ人は俺が何とかするぞ!
安心して指揮しろ!」
どうやら風月が救護に走っている
生きてた!!
良かった!
「はぁぁーっ…」
呼吸さえまともに出来ていなかった
「うむ、この失敗をどうやって自分の中で
消化するか…」
「それ次第で影の成長が決まるゲコw」
実は影に挫折の経験をさせたかった二人
勝ってる時などは誰が指揮しても勝てるのだ、
問題は失敗した後のリカバリー、
作戦、陣形、士気の建て直し
それこそが『指揮官』の本当の義務なのだ
「…一つ不安があるな…」
「何だハモン?」
「影は人を頼ろうとしない」
じっと影を見るハモン
「うむ、だから世話好きなフドウや春香と
相性が良いのかも知れんな」
「甘え下手でゲコ…」
「バキィッ!!」
「グオォォ…」
大物の角が両方折れた、
逃げ出す大物ディアブロス
よし後はラージャン二頭
「グゥルルル…」
蒼い炎を揺らし、入ってくる黒いモンスター
「来たぞ!マガドだぁ!!」
「更に配置転換!!ベテラン!!前へ!
若手は最後尾へ下がれ!!」
ウツシの声が響く
「影!下がれ!ナカゴもだ!!」
里長も指示を出す
…………
「コイツで終いだ!」
ヤクシが最後のマガドを叩き潰す
「あっけねぇ…」
「ラージャンに比べたら弱いな、
丁度良い練習になる」
ゲンジは残弾を確認する
ベテラン等はあっと言う間にラージャン
二頭とマガド三頭を片付けてしまった
「おお…」
「流石だぜ」
「絶対ケンカ売りたくねぇわ…」
中間部から見ていた中堅
「その内俺達もアレになるんだよなぁ…
なれんのか?」
無精髭を擦るフドウ
更に後方の若手達
「おっかねぇ…」
「モンスターよりモンスターだぜ…」
「なんだぁ?まだアタシに追い付いてる
ヤツ居ねぇのか?w」
春香が半笑いで見回すが
「あのな…」
「お前が強すぎんだよw」
神部とハネナガ
「影、大丈夫?」
「…………」
青い顔の影、自分のせいで中堅のガンナー
にケガをさせてしまった
本来ならしなくても良いケガだったろう
後悔に押し潰される
「うっ…ちょっと…」
口を抑えて地下道へ
「影、どこいくの?」
天音が引き留めるが
「一人にしてくれ…」
「っ……」
手を振り払われた天音、
こんなことは初めて
キャンプを通過し
「うげぇっ!」
ガルクの待機場所で吐く影、
地面に這いつくばる
胃の中全部吐いても吐き気が止まらない
失敗した、失敗してしまった
天音に言われていた、
調子に乗ってる
自惚れてたかもしれない
涙を浮かべて吐き続ける
「んー…ウフフ」
「?」
後ろを見るとヒノエがしゃがんで見ている
恥ずかしさに慌てて口元を拭うと青い顔で
「な、なんですか?」
「昔を思い出しちゃってね、里長も
こうして何度も吐いてたわ」
ニコニコ楽しそうに
「何度もねw」
「里長が…?」
あの人が?
「カムラが全滅しかけた後、
フゲンさんが里長になって指揮もしたの、
まだ15才だったのよ?」
「!!」
15?!俺より若い時から?!
「頼る先輩も居ない中で押し潰されそうに
なりながら、何とか今日までカムラを
繋いで来たの」
「………」
強い訳だ、色々と
「指揮の…恐さが分かったのね?」
「はい…」
青い顔で立ち上がる影、
ヒノエも立つと
「影君、貴方には頼れる人が
大勢居るわよ?全部一人で
背負わなくて良いのよ?」
「だけど…それじゃあ責任が…」
「責任感が強いのは良いわ、でも」
影の鼻に人差し指を付ける
「もっと皆を頼りなさいね?
一人じゃないのよ?w」
その言葉一つ一つが優しく響く
ヒノエ様はやっぱり太陽だ
「影!」
天音が来た
「何してたの天音?」
「一応教官に許可を…」
「何やってるの、
貴女は何よりも影君を優先しなさい」
すれ違う瞬間
「ちゃんと胸で泣かせてあげなさいw」
囁く
「へ?」
……………
結局待機しても
イブシマキヒコは来なかった、が
「んだよ?何で止まってんだぁ?」
「おい、何で先にいかねぇ?」
最後尾のベテラン
「あれ?動かねぇな」
「先が詰まってんぜ?」
中堅
「おい、どうしたんだ?」
「いや、里長達が動かねぇし」
「待機しろってよ」
若手
地下道からキャンプに入れない
キャンプ
「出るに出られないゲコ…」
外を覗くゴコク達
「ヒノエ、フォローしろとは言ったがな…」
困り顔の里長
「あそこまで馬鹿正直にやるとは
思わなかったわw」
クスクス笑うヒノエ
「姉様、『家でやりなさい』
って言った方が…w」
同じくミノト
外では天音が影の頭を無理矢理抱いている
天音は背伸びしているし、影は中腰
(ここからどうすれば良いのよ姉さん!)
真っ赤な顔で
「えーと…あのさ…落ち着いた…かな?」
「………」
「失敗したこと気にしてるんでしょ?」
「………」
「…苦しいよね?」
「………」
「皆が恐い?会わせる顔がない?」
「………」
「私がいるから…大丈夫だから…ね?」
頭を撫でる
「………」
「皆味方だよ?仲間だよ?」
「………」
「俺もいるよぅ」
(時雨口調)
「ブホッ!!」
胸で笑うと顔を上げた影
「お前それ反則w」
涙の跡があるが
「もう!やっと笑った!」
「ようやく帰れそうゲコw」
一人で全部抱え込むと毒になる、
そんな時フォローしてくれる存在が
ウザイと感じるなら、プライドが高いか
どこかで病んでいるかも知れない