明け方
「失敗しました…すいませんでした」
夜行から戻り、ギルドで頭を下げる影
「ガキはゴチャゴチャ考えるんじゃねぇ!」
バシッとヤクシが頭を叩く
「半人前はな、ケツ拭いてもらうもんだ!」
「多少のケガなら覚悟の上だ、
里を守るんだ当たり前だろう」
ゲンジはグリグリ撫でる
「気にするこたぁねぇさ、お前の指揮で
死人は居ねぇだろ?」
笑うフドウ
「あれはダメだったな!」
「次に生かせば良いだろ?」
ケガをしたガンナー達にもフォローされる
正直申し訳無さで居づらい影
かと言って黙って帰ったら無責任だし
皆に声を掛けて貰える、
これがどれほど有難い事か、まだ若い
影には良く理解出来てはいない
「セキエン、良く来てくれたな」
里長が笑う
「いやぁ、俺にはそんな勇気
無かったんですが、春香さんが」
「アタシはまだ正式にはカムラの者だしなw」
「うむ、いずれ正式に礼に伺うと
カイエン殿へ伝えられよ」
一礼する里長
「は、はいっ!」
緊張しながら礼をするセキエン
明け方の集会所、和やかに話ている中に
「フゲン殿」
ロンディーネが入ってくる
違和感に静まり返るギルド
里ノ内にロンディーネは来ない、来させない、
というかロンディーネ側にも『弁える』
という態度があったし、取引相手を不快に
させない気遣いがあった
それなのに今になって
「何事でしょうロンディーネ殿?」
里長が前に出る
「先ずは…非礼をお詫びする」
ロンディーネも解っている、カムラの一員
ではない自分が居るべきではない事を
胸に手を当て一礼すると
「緊急になると困るからな、知らせて
おいた方が良いかと」
ロンディーネの話によるとカムラの上空を
巨大な何かが通過したと言う
「もしや大風が吹きましたかな?」
「あぁ、突風が吹いた、お陰で船が
乗り上げてしまいそうだったよ」
全員が押し黙る
やはりヤツは来ている
だから夜行が起きている
「ふむ…ウツシ、すまんが半日警戒を頼む」
「はっ!」
「全員とにかく休め!即座に
対応出来る様にしておけ!」
……………
「ん?…んん?!」
起きる影、外から漏れる光の角度がおかしい、
隣を見ると天音も居ない
何事?!寝過ごした?!
緊急事態?!
「ガラッ!!」
飛び起き戸を開けると
「あー、やっと起きた」
向かいの店で買い物をしている天音
「あ、天音…」
ホッとする、里に何かあった訳では…あれ?
「え?…夕方?」
「そうだよ?良く寝てたからさw」
「何で起こさなかったんだ?」
ちょっとムカッとする、今朝は謝る時間が
無くて、起きて直ぐにギルドへ
行こうと思ってた
「ゴコク様に言われたんだよ?今日は影は
良く寝るはずだって」
「???」
何で解る?
「起きたらギルドに来なさいだってさw」
家に入るとオニギリが作ってあった
「はい、これ食べてね」
「あ、あぁ」
そういえば何時間食ってないんだ?
「ウマイな」
「当たり前じゃん!w」
…………
「良く寝たゲコ?w」
「はい」
ギルドのテラス席へ移動する
「では今回の反省点を言うゲコ」
「………ガンナーで包囲したのはダメでした」
「ふむ、それはなぜゲコ?」
「その…限られたモンスターに特化…すると
…えぇと…広く?大きく
対応出来ない…と言うか…」
「それだけではない、限られた足場に
ガード出来ないガンナーを配置したゲコ、
これでは回避が出来ないゲコ」
(俺はそんな簡単な事さえ見逃したのか)
うつ向く
「自分の思い付きの利点だけ見て欠点を
見ていないゲコ、さてもう一つはどうゲコ?」
「もう一つ?」
答えられない影
「指揮官が最前線に出た事ゲコ」
「でもさ、最初は影って前の島で指揮したよ?」
横から口を挟む天音
「うむ、最初は指揮官を
『やらせてみた』だけだからゲコ」
「?」
「適正があるか解らんゲコ、まぁ結果
として里守とハンター両方を理解している
から、指揮官にしたゲコ」
「前方部に居たらダメだったんですか?」
この前も前方で…
「うむ…気付いておらんなぁ」
首を傾げるゴコク
「?」
「何で最後にベテランが前で若手が最後尾に
なったか気付かんゲコ?」
「あれ?それってヌシとか
危険な時じゃなかった?」
「確か若手を守るための…?」
「考えろ、マガドが来る以上、
イブシマキヒコも警戒しなければならんゲコ」
「あ………そうか…順番に
…三つのグループで対応…」
考える影、
夜行の最後尾にマガドとウツシに
言われていた、
そのあとでイブシマキヒコが来る事は
前回から想像出来る
ならばそれに合わせてベテランを最前線へ
向かわせ、若手を最後尾へ……
「俺…まだまだ全体の流れが
解ってないんですね?」
「うむ、理解出来たか?お前は目の前に
しか対応していないゲコ、まぁ今それが
出来るなら天才ゲコw」
「なんか…考える事が多いな…」
うつ向く
「今回は色々学んだゲコ?」
「はい、先輩をケガさせたし、責任が…」
「うむ、まだ全部考えられる歳でも
ないゲコ、そこでな?里長から
アドバイスを二つ預かってるゲコ」
二本の指を立てる
「アドバイス?」
「一つ目は『功遅は拙速に如かず』ゲコ」
「こうちはせっそくにしかず?」
二人でハモる、もちろん意味など理解出来ない
「うむ、遅くて成功するより、多少
失敗しても速ければ良い、という意味ゲコ」
「…夜行は失敗したらダメなんじゃ?」
「じゃから失敗したなら即座に
作戦変更ゲコ、あの時お前はどうしたゲコ」
何も出来なかった…失敗したことで頭が一杯で…
「もう一つは『指揮官が不安になるな』ゲコ」
なってた、不安で怖くて
「指揮している者が不安になれば、皆が
不安になってしまう、士気が下がるゲコ」
そうだ…一体どれだけの失敗したんだろう
また吐き気がしてきた影
「影、大丈夫?」
青い顔の影を見ると
「ゴコク様、もう許してあげて、影が…」
また吐きそう
「うむ、帰って今言った意味を良く考えるゲコ」
…………
通りを戻る、待機命令が出ていた様で、
フドウが七海と団子屋に居た
「だからよ、ウツシさんが『やってみろ』
って言ったんだろ?その時点で
『カムラ全員の決定』な訳だ」
団子を齧るフドウ
「お前一人の責任じゃねぇさ、
里全員の責任な訳だ」
「じゃあもっと気軽に考えても良いんですか?」
吐き気で何も食べられそうにない影
「ま、だからってヘラヘラしてたらヤクシ
さん辺りにボコボコにされるだろうよw」
「あの…余計な事かもしれませんが」
フドウの横の七海が手を上げる
「混乱しているなら問題点を書いて
見るのはどうでしょう?」
「書く?」
「頭の中が整理できますよ?そうすると
新しい事も学ぶ余裕が出来ますよ?」
家に帰り書いてみる
久しぶりに筆なんて持った
硯で墨を作る
「先ずは…」
「包囲した事よね?」
下手な字で包囲と書く
「次は…そうか、若手を下げたのに俺が
前に行った事だ」
「私達も若手だからねw」
「それと…何だ?」
「不安になって止まった事じゃない?」
「そうだ、作戦変更を直ぐに出来なかった事」
「後はベテランを前にする…何て言うのアレ」
「そうだ、イブシマキヒコが来る可能性に
対応するための配置転換を予想出来てなかった」
以上四点
「何か…全部ダメだったな…」
「最初だけだったねw」
ゴロリと横になると天井を見る
「俺…これからどうなるんだろう…」
一緒に寝転がり天井を見る天音
「んー、どうなるかより、どうなりたいか、
じゃない?」
「どうなりたいか…か…」
……………
翌日
「イブシマキヒコの現在位置が分かった」
ギルド、全員が里長の話を聞く
「どうやら竜宮砦に居る」
「この前と同じゲコ?」
「うむ、ヤツが移動しない限り、今は
大きな夜行は起こらないと考えられる、
ギルドは通常運営を」
「了解ゲコ」
解散すると
「影、どうする?何かやりたいクエストある?」
「…いや…ちょっと砦に行って来る」
暗い顔で
「………うん、行ってらっしゃい」
そう簡単に割り切れるハズもないよね、
今は一人にした方が良いかな
今は…そっとしておこう…
『良いこと考えたー!!』
って言う子供は『それ』以外見えなくなる