ミハバ達がバリスタを直していた
「…ミハバ」
「おう!影!」
元気そうで安心する
「ケガは…良いのか?」
「打撲と擦り傷程度だぜ?
あの七海って人が大袈裟なんだよw」
七海が包帯を巻いたらしい腕を振り上げる
「まぁ代わりにコイツが重症だ」
バリスタをポンポン叩く
「基礎まではイッてないから旋回出来るし、
木材部品の交換だけで元通りだぜw」
「…ゴメンな…」
「何がよ?」
振り返るミハバ
「俺のせいで…」
「あぁ、建屋の上に攻撃集中させた事か?」
「!、いつ気がついた?アレの失敗!」
「ラージャンのブレス食らった後だw」
「俺…」
うつ向く
「お前さ、完璧に守るなんて
考えてんじゃねぇの?」
「?」
「ガキの頃から見てるだろ?完璧なんて
無いんだ、どっかに穴が出来るもんだ」
「穴…か…」
「お前の役目は、次々に開く桶の穴を
塞いで行く事なんじゃね?w」
笑うと
「こんな例えで良いか分からないけどなw」
「ありがとうな」
救われる
にやっと笑うと
「んじゃ仕事するわw」
中間部の島に登る影、あの時を頭で再現する
「どうしたら…正解だった…?」
…………
「影君は砦かしら?」
いつもの場所で団子を食べるヒノエ
「うん、色々悩んでるみたい」
横に座る天音
「悩むわよねぇwでも仕方ないけどね」
「期待されてるからよね?」
「そうよ?才能があるからこそね」
「…私勘違いしてたかも、
天才とかって楽なんだと思ってた」
うつ向く
「才能があるからこその悩みもあるのよ?」
串を並べると
「本当は17才なんて考えが浅くて
良いんだけどねぇw」
「姉さん、それはなんかバカにしてない?」
「普通は浅くて当然よ?抱えきれなく
なるんだからw
難しい事なんて大人に
丸投げして当然なのよw」
「何か…他にも自信付けてあげる方法って…」
「あらぁ、奥さんらしい事
言うようになったわねぇw」
「!!!」
はっとして真っ赤になる天音
「うふふふ」
ニッコニコのヒノエ
「さ!里長がさ!何か一言
言ってくれたら影も元気に…」
しどろもどろ
「あら、それはダメよ?」
「何で?」
「里長がフォローしたら
考えるのやめちゃうでしょ?」
「?」
「考える事が必要なのw
里長が『それで良い』って言ったら
考えるの止めちゃうでしょ?」
天音の鼻を指で押すと
「天音もね?いつまでも影君が好きなだけの
女の子じゃないでしょ?」
…………
「師匠?」
「アヤメか…」
船着き場近くの屋根の上
「怒られました?w」
「あぁ、絞られたよw」
笑うウツシ、里長が指導やフォローを
するのは影ではない、
当然次期里長のウツシである
「影が前に行っちゃたのは僕の落ち度だからね」
「指揮する人って辛いですね」
「正解は無い、けど限りなく正解に近い
結果を出す、それを目指せ…ってね」
「それって謎かけ?」
不思議そうなアヤメ
「歳取ったら解るよ?w」
「あれぇ?何歳でしたっけぇ?」
ニヤニヤ
「あ、白髪」
「えっ(濁点)!?」
頭を抑えるウツシ
「簡単に引っ掛かるーw」
ひとしきり笑うと
「四年前みたいな状態になったら、
僕に何が出来るか…」
遠くを見るウツシ
「あの決断はキツイですよね、
少人数を犠牲にしてでも…」
「あぁ、里の存続の為には若い者を、
少数より多数を生かす、これが正解なのは
解ってるつもりだけどね」
「…割り切れませんよね…」
里を眺める、その苦しい決断と犠牲の上に
この里は立っている
「僕でも出来る気がしないよ、ましてや
影はケガさせただけで落ち込んでるしね」
「子供で繊細みたいね、影…これからも
指揮出来ますか?」
「17才の肩に重責載せたからには…
僕も成長してなきゃいけない」
ウツシは空を見上げる
「やらせるさ、僕は支える」
…………
ギルド
「元気付ける?」
首を傾げる風月
「う、うん」
(しまった…)
風月に言ってから『相談する相手』を
間違えた事に気が付く天音
セキエンと春香はトガシへ引き揚げてしまった
「好きな料理を作ってやればよかろう?
得意だろう?」
「それは…そうなんだけど…」
この人じゃダメだよなぁ、フドウさんは…
キョロキョロする
「それならロンディーネ殿の船ではないか?」
「!、あー!」
この前珍しく喜んでた!!
「じゃ里長に聞いてみる!」
「しかしだ、ロンディーネ殿を都合良く
使っている気がするのだが?」
違和感を持っている風月
「…そうだね、団子とか持って行って…」
「いや、それだけではない、
ロンディーネ殿の目的は交易だけか?」
腕組みして首を傾げるイケメン
(里長も商人には見えないって言ってた)
「それは分からないけど…」
「お?何だ?何の話だ?」
フドウが七海とギルドへ来た
…………
湖に浮かぶ船
「さて、出してはみたものの…」
毅然としているロンディーネ、
とりあえず船には乗せて貰えたが
「どこへ向かう?目的地が無いのは困るのだが?」
操船する猫族も指示を待っている
この大きさの船が入れる川はカムラまで、
ニシノへ行く位しかないが
「じゃニシノへ向かって下さいw」
笑顔の天音、
マカライト10個で交渉したところ、
あっさり了解してくれた
乗り込んだのは影と天音、そして
「おおっ!速いぞこの船!」
フドウも乗り込んだ
「ほら影、望遠鏡」
「あ、あぁ」
受け取る影、リアクションが薄い
「これがもっとあったら夜行で…」
ブツブツ言う、夜行の失敗が忘れられないようだ
「もう!元気出しなさいよ!」
背中をバシッと叩く天音
「影殿はその若さで重責を背負っているのか?」
腕組みしたままのロンディーネ
「影は指揮できんだよw
元々はバリスタやっててな、ハンターも
理解してるからなw」
フドウの方が喜んでいる、水面を見ながら
「ふむ、指揮官か、辛い立場にもなるだろうな…」
「辛い…ですか?」
顔を上げる影
「話に聞くと複数のモンスターに
対応するらしいじゃないか?当然犠牲の
覚悟もあるのだろう?」
「犠牲?」
キョトンとする
犠牲…考えた事無かった
そうだ、覚悟なんて…
「影はよ、犠牲を一人も出してねぇし、
ケガ人さえ最小限にしてるぜ?w」
今度は望遠鏡を覗くフドウ
「ほう、影殿は優秀なんだな」
河を下る、ニシノの里が見えて来ると
「フドウさん、七海さんと一緒に
来たら良かったんじゃない?w」
ニヤニヤする天音
「それじゃまるで結婚の報告だろうよ(汗)」
「フドウさんはソノ気が無いの?
七海さんはゾッコンだよ?w」
「あ?あー、その、なぁ…」
後ろを向きテレるオッサン
「頭見られても大丈夫だったのにw」
笑う天音
「?!天音、何だ?ソノ話?!」
顔を上げる影
「昨日の午後…影が寝てる時にさw」
…………
昨日、午後、ギルド
「七海、良くやったな」
テレるフドウ
「何も…怪我の手当てと
補給のお手伝い程度ですよ…」
赤くなっている七海
「ニシノから戻って来れるとは思わなかったぜ…」
「だって…」
うつむき赤い二人
そんな二人を遠目に見ながら熱い勝負が始まる
テラス席に人だかり
皆小声で
「さぁ賭けろ賭けろ!」
「別れる方は何倍だ?!」
「今なら別れる1.1付き合うは5倍ってとこだ」
中年ハンターが主導で賭けが始まった
「やーねー男って」
「そう言うヒナミはどっちだよ?」
「もちろん別れるに賭けるw」
「ひっでぇ!!」
「うむ、ワシも参加するゲコ」
皮の袋…財布丸ごと賭けるゴコク
「マ、マジっすか?!」
「いくら入ってるんだコレ?!」
「どっちですか?」
「もちろん付き合うに賭けるゲコ」
胸を張る
「おおお!!」
「すげぇ度胸!!」
「比率が変わるぞ!!」
金額で比率が変わる
急いで計算する
「別れる1.3付き合う4倍になったぞ?」
「大金賭けたなゴコク様」
「ふむ、勝負事はこうでなければ、
真剣になれんゲコw」
「さぁて…」
「では…」
「勝負ゲコ…」
二人をカムラの全ハンターが取り囲む
「な、なんだ?」
「?」
キョロキョロする二人
「よぉフドウ、七海を嫁にするならよ、
隠し事はイケネェよなぁ?」
ヤクシがニヤニヤしながら言葉で制する
ビクッと体を震わせ油汗をかくフドウ
マズイ…逃げ道がない…
「?、何ですか?」
不思議そうな七海
「なぁ、七海、フドウが好きだよなぁ?」
中年ハンターに質問されると
頭から湯気が上がっている
実に分かり安い
「フドウさんの頭を見ても気持ちは
変わらない自信あるか?」
ハネナガに質問されると
「頭?」
首を傾げる
「よせ!やめろ!」
「暴れんなよ!」
「おい!そっち抑えろ!」
フドウが取り押さえられる
「大人しくしろやフドウw」
ヤクシがレウスヘルムに手を掛ける
「ヤクシさん!止めてくれ!!
はなせオメェら!!」
必死のオッサン
「ウソつかれたまま付き合うなんて
出来ないよな七海?」
ゲンジに言われると
「嘘?ウソがあるんですか?フドウさんに?」
「うおおお!!止めろおぉ!!」
涙目のフドウが吠えるが
「そぉらっ!」
ヤクシが兜を取った
現れたのは
密林から大社跡の森へ、
そして水没林になりかけた前頭部
最前線の辺りは河原のススキの様に…
項垂れるフドウ
終わった
終わってしまった
やっと来た春が過ぎ去り
寒冷群島の冷たい風が吹く
楽しかったこの数日
もう帰って来ない
「………?」
全員が七海の顔を見る
表情に変化が無い
「な、なぁ七海、どう思うよ?」
恐る恐る聞くハネナガ
「どう…?」
「ほ、ホラ、フドウさんの頭…」
「頭…?」
じっと頭を見る七海
「ホラ、な、何かさ…」
「あるだろ?」
「見えてるよな?」
「なんでリアクションねぇの?」
ザワザワするギャラリー
「少し…キテますね…」
まじまじ見る七海
その言葉がフドウの胸に刺さる、
寒冷群島が永久凍土に…氷の軋む音がする
「だろ?!」
「どうだよ?!」
「ハゲてるだろ?!」
「はい…それで…何ですか?」
首を傾げる
「!!!」
「おい!」
「まさか?!」
「付き合うのか?!」
「これでも?!」
「フドウさんと?!」
「あの…私何か変な事言いました?」
キョトンとする七海
そして一斉に脱力するギャラリー
七海って…
オッサン好きなのか?
「大勝ゲコー!!」