「ここ危なくないですか?」
小声の影
「良く見えるぜw」
フドウも小声
キャンプから翔虫で飛んで来た四人
イブシマキヒコの居る場所の隅に伏せる
「なぁ?何なんだこの場所?
真っ平らで不自然だぜ?」
地面を撫でる
「ふむ、これは…人の手で
…埋めてあるのではないか?」
ロンディーネも
「人の?作ったモノ?」
この面積を?
そう言えばそうなんだよ、周りは岩場なのに
「私も不思議だと思ってた」
だけどそれなら、
何でバリスタとか大砲が埋まってるの?
四人で伏せて観察する
奥の撃竜槍の下に横たわる巨体、
表情の無い顔…魚に腕が生えたような…
まさか魚類?
目も開けっ放し…目痛くないのか?
「もしかしたらな?夜行の原因が此処に
あるかも知れねぇぜ…」
「フドウさん戻ろうよ、危ないよ…っ!」
イブシマキヒコが突然首を動かす
「ヤベェ…見つかったか?」
この距離で
「いや…どこかを見ているぞ?」
伏せたまま空を見るロンディーネ
「何だ?黒い雲…こちらへ来るぞ」
「ゴアァァァーッ!!」
雲の中から金色の長い巨体が降りて来る!
するとイブシマキヒコも答えるように咆哮する
「あれってまさか花梨が言ってた黄色…」
まずい、立ち上がったら…
見つかったら…
「あんなのが二匹かよ…ヤベェな、
出るに出られねぇ…」
伏せたまま話す
「この音…波が荒く…天候が変わったようだぞ」
鋭い目で周囲を観察するロンディーネ
「気付かれずに、やり過ごすしかないだろう」
「何とかキャンプに飛べたら」
「逃げられるよね…」
「こっちに飛んだのは俺が言い出したんだ、
いざとなったら俺が囮になるぜ?」
ニヤリと笑うフドウ
「ダメですよ…」
「七海さん悲しむよ?」
その先は言わなくても…解る
「何だよ、俺が死ぬみてぇじゃねぇかw」
そうは言っても解っている、あんなモノを
二体も相手出来る人間などいない
今四人は間違いなく『死地』に居る
……………
「細かい事はどうでも良い!!
船と人が必要なのだ!!」
慈海の屋敷で怒鳴る風月
数組の船でカムラを出発、
風月は元漁師、最速で着いた
里で聞いた限りでは影達は来ていない、
それどころかあの船が海に出たと聞いた
「うむ…だが風月、忌み島にはまた嵐が…」
思案する慈海
老人達は
「慈海殿、七海からの文を考えれば…」
「花梨の汚点、あるいは消せるやも」
「ふむ…」
手紙を読み返す
照の借り、花梨の汚点
影の捜索一つで…
影は期待されている…
もしも影が将来カムラの役職になったなら、
帳消しにした上に恩を売れるかもしれない
また交易でニシノが潤う
「よかろう風月!お前が先陣じゃ!
舟を率いて探せ!なんとしても『ニシノ』
で影を見付けよ!」
「?、ニシノで?」
「そうじゃ!手柄はニシノで挙げよ!」
…………
「何してんだアレ?」
巨大な二頭の魚は絡み合う様に浮いている
お互いに体を擦り付けている
…どうやって浮いてるんだ?
「まさか…
ここはアレの繁殖場所じゃないのか?」
商人のはずのロンディーネ、
動揺しないどころか冷静
「繁殖?」
言われてみれば
「影、見て、黄色の方のお腹」
確かにイブシマキヒコには無いモノがある、
後ろ足のヒレで大事そうに抱えている…卵?
「コレ…雄と雌なのか…?」
考えるフドウ
「もしかしたらよ?50年に一度周期で
繁殖があったりしてな?」
「その時カムラが襲われるとかですか?」
「それで夜行が?迷惑だよ…」
「ここんとこ夜行が多かったろ?
繁殖時期なんじゃねぇか?」
二頭の顔に表情は無いが、
もしかしてコレ…デートみたいな状態?
男女でジャレているのかもしれない…
ここは待ち合わせの場所?
そしてそれを覗いている俺達…
ヒノエの笑顔が一瞬過る…と
「ガブゥッ!」
「なっ?!」
ナルハタタヒメがイブシマキヒコの腹に
食い付いた!
「がフッ!ゴッ!グゴッ!」
突然ケンカ?
苦しそうな声
え?突然険悪になった?
身に覚えがある影
「…蜘蛛なんかは雌に喰われるらしいけどなぁ…」
無表情で見るフドウ、複雑な思い
「カマキリもですよね…」
同じく影
男としては、なんともやるせない光景…と
「何だ?雌の腹が光っているぞ?」
ロンディーネが言った瞬間!
「ズダアアァン!!」
地面に落ちるイブシマキヒコ、
地面にヒビが入る
「死んだ…のか?」
ピクリともしない…そして
「ゴアァァァーッ!!」
こっちを見て咆哮するナルハタタヒメ
「ヤベェ!見付かってるぜ!」
立ち上がり大剣を構えるフドウ
「キャンプまで…っ!」
天音は立ち上がり周囲を見る、
島の周りは嵐になっているようだ
「ふむ、キャンプに戻れた所で脱出は…無理か?」
落ち着きのあるロンディーネ
「逃げ回るしかないですよ!」
あの時のセキエンが頭を過る
「こっち来るぜ!!」
ちっ!ようやく春が来たのによ!
俺の責任だ、コイツら守ってやらねぇと!
俺の無責任な意見で巻き込んじまった!
「フドウさん、納刀です」
影の冷静な声
「?!」
「逃げ回りましょう」
「…その先に何があるよ…」
救援など期待出来ない、なら自分が囮に
なって影達が助かる確率を
「今出来るのはそれだけです!」
「ゴアァァァーッ!!」
デカイ咆哮!
とブレス!?
金色の球体?!
「何だコレ!避けずれぇ!!」
転がるフドウ
ブレスは大きくなりながら飛ぶ
「見たところ電気の様だぞ!」
ロンディーネは難なく避ける
その態度と冷静さから解る、
ロンディーネは商人ではない、ハンターに
近いモノを感じる、と
「シャキッ!」
マントの下から細身の剣と盾が出て来た
「あんた何者だ?!」
「ロンディーネさんってハンター?!」
「話は後だ!指示をくれ!」
考える影
イブシマキヒコと戦った経験があれば解る
勝てる相手ではない
だがこっちは今、守る里が無い
守るのは自分の命だけ、つまり…
「戦う必要がありません!!!」
「!、そうか!」
理解したフドウが納刀する
「え?!そうなの?!」
同じく天音、双剣を構える
「ほう…」
感心するロンディーネ
モンスターと戦う、
そればかりやっていると当たり前になって
行くが、この状況で何が最善なのかを影は
導き出した
「今は逃げ回りながら」
キャンプを指差す
「あっちに飛ぶ事が最優先です!」
キャンプに行けば見逃して貰えるかも
知れない、諦めるかも知れない
…………
「ロンディーネ殿はどこだ?!」
小舟で下から呼び掛ける風月
「にゃ!主はあの中にゃ!」
島を指す猫族、島の周りだけ極地的な嵐、
風と雷
そして今見える…あれは尾ひれ?!
あんな高さに?
荒れる海の中で停泊している船
この荒れ方では…
「カムラの衆はここまでだ!
ここからはニシノが行く!」
風月が号令を掛ける
正直な話荒れた海に不馴れなカムラの船頭、
浮いているだけで精一杯
「風月、あっちは潮目、
渦があるから向こうから!」
「うむ!」
この島の周りは花梨の方が詳しい、
二人の舟を先頭に嵐に突入する
…………
「ロンディーネさん!回復薬とかありますか?!」
「常備している、気にするな!」
影の後を残像の様に付いて動くロンディーネ
間違いなく戦闘を仕事にしている人だ
「また腕来るよ!!」
腕を突き出すナルハタタヒメ、
電撃の輪が飛んで来る!
「あのお嬢さんは賢いな、もう覚えたか」
影と同時に回避する、しかも喋りながら
「せめて閃光玉がありゃあな!!」
尻尾の叩きつけを回避するフドウ
「フドウさん!危ない!」
天音の叫び
「バチィッ!」
「いっでぇ!!」
追い討ちの様に小さな落雷
「大丈夫ですか!?」
「俺に構うな!」
回復薬を飲むフドウ
考える天音
イブヒコの腕の叩きつけ、
追い討ちに竜巻だった、ならナルヒメも?
「攻撃全部!多段だと思った方が良い!」
「素晴らしいな、君の奥方は」
「お、オクガタ?」
紫の光線の隙間に入る影、
その後ろをピッタリ付いて来るロンディーネ
ナルハタタヒメの攻撃はともかく、
影の動きを理解して付いてくる
三人とも理解する
少なくとも並のハンターレベル以上の人間
「これいつまで続けりゃ良いんだ?!」
いい加減腹も減ってきた
「なんとかスキを!」
疲れてきた影
天音の動きにもキレが無くなってきている
「ナルヒメ全然休まないよ!?」
普通のモンスターならエリア移動したり
回復しようとする、
ナルハタタヒメは…移動しない?
だったら決着を付けるしかない?
何で移動しないんだ?
何か…何か方法は…
「影殿、アレは『この場所』に
執着していないか?」
ロンディーネの言葉でピンと来た
産卵する親、子を守る母親、
それは危険から遠ざかるため静かに逃げる
逃げない場合は…
死ぬまで戦う…
まさかここが…産卵場所?
まずい…
ナルハタタヒメに移動する理由がない
全力で排除しようとする…
中央で浮き上がり丸くなる
「何してんだありゃあ?」
「今なら!」
天音がキャンプを指差す、
と紫の光線が全方位に降って来る!
「バチィッ!」
「うぎぃっ!」
「天音ぇっ!」
「回避に徹してこれかよ畜生!」
無様に転げ回るフドウ
「天音!大丈夫かっ?!」
「だ大丈夫!」
回復薬を飲むが体が軽く痺れる
「これ…多分連続で食らったらヤバイ!
気絶するよ!」
隙じゃない!丸くなるアレも予備動作か!
「ジンオウガと同じかよ!」
ジリ貧、こちらの命が削り取られる
どうする…