「痛ったぁ…ぺっぺっ…」
うつ伏せのまま何とか上体を起こす、
口の中まで砂だらけ
壊れたバリスタや大砲が辺りに散らばる
全身埃と細かい切り傷の天音
「あれ…影は?」
少し気絶してた?
右手の先、瓦礫の中に
「影っ?!!」
そこには兜は脱げ、レウス防具が所々
砕けた影、右足と右手が…あらぬ方向に…
「え…え…?…いやあああああーーっ!!」
叫び這い寄る!
「影!影ぃっ!ねぇっ!起きてよ!」
体を揺さぶるが
「起きてってばぁ…ねぇぇ…」
反応が…ない
「起きてよぉ…目ぇ開けてよぉ…」
座ると影の顔を両手で擦り
「…」
顔の砂埃を払う
瓦礫から庇ったのだろう
「起きてよぉ…ねぇ…」
影の顔に涙が落ちる
「やだよぉ…一人にしないでよぉ…」
「ぐ…」
「影っ!」
生きてる!!
「あ…助かった…のか?」
薄目を開けるが
「待って影!今回復…」
今になって気付く、
ポーチも武器も吹き飛ばされて…
「いってぇ…あれ…どこだ天音
…見え…ねぇ…ごふっ!!」
目が虚ろに泳ぎ
口から血が流れる
「待って!動かないで!何とか!
何とかするから!」
見回す
そして漸く気付く
砂埃が落ち着くと
ナルハタタヒメがこちらを見たまま…
中央で静かに浮いている
悟る天音
影はもう動けない
もう助かる道は無い
絶望的だ…
けど…なんか…不思議…
恐怖も沸いて来ない
「今…何とか…するから…」
涙を擦る
ナルハタタヒメより影が死ぬ方が恐い
(どうせ…死ぬなら…)
瓦礫の破片を持って立ち上がる
細い鉄の金具を両手に
ナルハタタヒメに向かって歩く
「へぇ、待っててくれたんだ?トドメ刺すの」
言葉が通じる訳は無いが広い地下で向かい合う
自分でも不思議な位落ち着いている
一度振り返る
私達の出会い…誰も気付かないんだよね…
影も…姉さん達でさえ笑い話だと思ってる
何で皆気付かないかなぁ…
咳ばっかり出てさ、夜行でも働けない
病気の子供がさ
何であんな時間に狩り場に居るのか、
誰もそこ気にしないんだもん
本当はね?死ぬつもりだったんだよ?私
何にも出来ない自分がイヤだったから、
キライだったから
カササギが付いて来ちゃって困ったよ
あの子だけが友達だったからかな
河原に座ってどうしようか考えてたらさ
向こう岸で剣振り始める男の子が居るんだもん
目ぇキラッキラさせてさ
こっちは死のうとしてるのにさ
ムカムカするじゃん?
話してみたらさ、更にムカつく事言うじゃん?
だから生きる事にしたんだよ?
見返してやりたくて
「ふう…」
団子屋で働いている時も照さんが死んで
落ち込んでる時も
ずっと見てたよ?
両親が亡くなって大変になって、
時雨に化けて一緒に馬鹿やって、
影がハンターになって…
時雨から天音に戻って…それから…
ずっと
ずっとね?
影と話したあの時から
あの大社跡の河原から
天音は幸せでした
「ありがとね、影、ずっと一緒だからね」
涙を手の甲で拭く
ナルハタタヒメに向き直り
「ゴメン、待たせたね」
構える
影のお蔭で生きて来た
影が死ぬなら…
惜しいモノなんて何も無い
私も…一緒に逝くからね!!
「やああああっ!!!」
走り込む!!
と
シュルルル…スタッ!!
「まったく、スゴいお嬢さんだねぇ?」
突然横に立つ男、ゴーグルを上げる
「!、え?」
いつの間に…誰?
黒い肌…尖った耳…竜人?
救援???
誰???
腰にロープ?おりて来た?
と同時に
ヒュルルル…
「ドドドドォン!!」
「ゴアアァーッ!!」
「えぇっ?!」
爆弾!?と閃光玉?!
ナルハタタヒメに!
「え?えっ?!何?!」
「ホラ、コレ結んで?大丈夫、怖くないよ?」
ロープの一端を天音へ
「え?!、影はっ?!」
影を見ると
「心配ない!息はある!」
「ロンディー…?」
影に回復薬を飲ませて体をロープで…誰?
「説明は後だ!引き上げるぞ!!」
女性が手を上げるとロープが引かれる
「見てて良いかい?
こんなチャンス滅多に無いよ?」
竜人が言うと睨むの女性
「やっぱ…ダメ?(汗)w」
ニッコリ笑う
「バハリ!いい加減にしろ!!」
「分かったよ、ジェイ!ルーチカぁ!
もっと投げるんだ!」
引き揚げられる四人
…………
「まったく!
偉そうに指示しないで欲しいです!」
次々に爆弾を落とす
「ジェイ!閃光足りてませんわ!
早くなさい!!」
若い知的な女性と
「人使い荒いですよね、ロンディーネさん?」
ナルハタタヒメに向かって投げ続ける若い男
「あの二人は見込みがある、
何としても助け出すぞ!」
調合を続けるロンディーネ
「うむ!合図だ!!」
風月の合図でニシノの漁師とカムラの
ハンターが引っ張る
「地引網より簡単だ!一気に行くぞ!!」
「こんなの滅多に見られないのに、残念だよ…」
引き上げられながら首を振る竜人
四人が引き上げられると
「ケガ人一名だ!直ぐに治療に掛かれ!
出航準備!!」
「もう素材無くなります!」
「爆弾も限界ですわ!」
「全員退却だ!」
影は担架に載せられた、リーダーらしき
女性の指示で全体が動く
「影!影!ねぇ!助かったよ?!」
影の傍らから離れない天音、
意識が戻らない
「大丈夫、船で治療出来るよ?」
バハリと呼ばれた竜人達が運んで行く、
いつの間にか嵐は収まり日暮の穏やかな海
そこにロンディーネの船と…更に大型の船が
「さぁて、こっからは俺等の仕事だなぁ」
ヤクシパーティーが警戒する、
ナルハタタヒメが追ってきた場合の…囮
「小舟一艘だけ残しといてくれやw」
「使うかどうか分からねぇけどなw」
大穴を覗き込む
「デケェわw」
人を押し退けフドウが
「先輩!俺のせいで影がこうなったんだ!俺が」
「ボグッ!!!」
思いっきりブン殴られ転がる
「だったら影達を無事にカムラに届けろ!
そんで里長に怒られろ!
それがテメェの責任だ!!」
背中を向けると大穴の縁に立つ
「テメェも『守られる若手』だろうがよ!
黙って帰れ!!ケツ拭いてやる!!」
間を置いて、無言でヤクシ達の背中に
直立で一礼するフドウ、最後に船に向かう
「どうするよヤクシ、地下に降りるかぁw?」
「いや、瓦礫で足場が悪い、ここで迎え撃つ」
「デケェなぁ、ここが俺等の死に場所かぁw?」
「ちょうど墓穴あるしなw」
笑うカムラの最強近接パーティー
ヤクシパーティーを残し全員が
船に乗り込み出発
甲板からヤクシ達を見るフドウ
「ありがとうございます」
涙を浮かべ呟く
「ん?、アレ何でしょう?」
花梨が空を指差す
紫色の光が近付いてくる、
オレンジの夕焼けに複数の紫の線
距離が詰まると正体が解る
「マガイマガドだ!!」
フドウが甲板で叫ぶ
「あれ何頭居るんだい?どうする?
フィオレーネ、やるかい?」
「奴らは長距離を跳べるのか?」
リーダーらしき女性は眺めると、剣を握るが
「こちらを襲う気は…無いようだな」
剣を納める
自分で爆発を起こしながら
島に向かって飛んで行く
それに気付くヤクシ達
「んだアレ?、何でこっち来んだ?」
「ヤクシ、数が多いぜ?」
「どうするよ?」
「やる事ぁ一緒だ、構わねぇやw」
ハンマーを構える
次々に着地するマガイマガド、
その数は10頭を越える
「やりがいあるぜ!!」
「ぶった斬ってやる!!」
「これが俺等の花道だぜ!!…え?あぁ?!」
大穴に次々飛び込むマガイマガド
ヤクシ達に威嚇や咆哮をしない、
見向きもしない
…人間を見ていない?
「何してんだ?」
「おい!青い方喰ってるぜ?!」
「黄色は反応しねぇな、動かねぇ」
「おい…コレよ、もう俺等関係無くねぇか?」
…………
トントントント…
ごはんの香りと包丁の音
「…ん?」
天音の後ろ姿
あれ?俺何してたっけ?
えーと…
日の光に赤く透ける天音の髪
あー、綺麗だなぁ…
天音って俺には勿体ないよなぁ…
振り返る天音
ガシャン!!
「影!!気付いたの?!」
気付いた?何が?鍋落としたぞ?
「影っ!」
そばに座り泣き出す
「どうした天音?何で泣いてんだぁ?」
あれ?俺横になってね?
「影!影っ!良かったあああ…うあああ!!」
ボロボロ涙が出る天音
大口を開けて泣く
「そうかぁ、良かったのかぁ…」
なんだか知らないけど、
天音が良いならイイかぁ…
ボンヤリしていた意識がハッキリしてくると
「いってぇ!っ!ゴホッ!!」
「あ!動かないで!!」
「あれ?俺ん家?何で?ってイテェ!!」
あれ?!俺の手動かねぇ!
「あばら骨が折れてるの!寝てて!
ゼンチ呼んでくる!!」
…………
「もう大丈夫にゃ、熱も無いし後は静養にゃ」
ゼンチが診てくれた
右腕に骨折が複数、右足複雑骨折、
あばらが数本
幸い首や背骨には損傷が無いが、
丸2日間眠っていたらしい
「よう!起きたって?!」
「ミハバ!ってイテェ…」
布団から出たいが
「大声出しちゃダメ!あばらに響くんだから」
「少しは動けるか?集会所に皆居るぜ、
顔見せに行こうや」
「どうやって?影は動けないよ?」
「俺を誰だと思ってる、
杖より良いもの作ってたんだぜ?」
戸を大きく開けると車輪の付いた椅子?
「俺も前に足折ったろ?
こんなのあったら良いと思ってよw」
木と竹で造られた車椅子
「器用だよなミハバはwイテテ…」
「天才だろ?師匠の仕事は
まだまだ出来ねぇけどなw」
「ありがとね!ミハバ!」
「その内何かで返してくれよw」
「おぉ!気が付いたか!」
里長が入って来る
「里長…俺…どうなったんですか?」
「大体は天音から聞いているがな、
お前も知りたい事があるだろう」
車椅子を見ると
「集会所へ来れるか?
全員に聞かせたい話があるが」
「何とか行ってみます」
「そうか、無理はするなよ?」
そう言うと出て行く
二人に手伝われ、車椅子に何とか座ると
ミハバが押してくれる
「カラカラカラ…ギシッ!!」
「これ壊れないだろうな?w」
「お前はケガしても心配無いだろ?
天音が全部世話してくれるんだからよ、
羨ましいぜw」
「全部………!」
ようやく気付く、寝たきりの世話
ということはもちろん、その…下の方も…
「あ…天音…ありがとうな」
顔を背け、真っ赤でテレる
「お礼なんていらないよ、影にはイッパイ
貰ってるんだからねw」