神楽舞   作:天海つづみ

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カムラの里

 

「英雄の帰還だぜw」

「いや、英雄か?この場合?」

ハネナガと神部に迎えられる

 

「影様っ!!」

抱き付こうとする黒猫

「花梨、あばらも折れているのだ、気を使え」

風月に襟首を掴まれる

 

車椅子でギルドに入った影達

「気が付いたのね、良かったわね天音w」

「この椅子は…良いものを作って貰いましたね」

ヒノエとミノトも声を掛けて来る

 

たった2日寝ていただけなのに、

久しぶりに思える

 

「大変な目にあったなぁ影」

ゴコクも迎えるが…笑ってはいない

 

「あの、フドウさんは?」

居ないよな

 

「フドウは謹慎してるゲコ」

 

「え?!」

 

「ナルハタタヒメに関してはワシらにも

責任があるゲコ、だから処分など考えて

無かったがなぁ」

 

「???、えーと?」

 

「自分から言い出したゲコ、

お前達を危険に晒したし、勇気が無かった

と嘆いていたゲコ」

 

「勇気?」

「あのね、吸い込みの時に私を助けに

行けなかったのと、地下に落ちた時も

飛び込む勇気が出なかったんだってさ」

 

「そんな事で…」

仕方ないよな

 

「フドウさんの中では

自分が許せないみたいよ?」

 

「七海の顔がチラついたらしいゲコ、まぁ

フドウも一回り大きく成長しとるゲコ」

 

咳払いをする里長

「さて、これで全員揃ったな、先ずは…」

テラス席から頭を下げる里長

「皆、すまなかった」

 

「何のマネだよ?」

「あ?何であやまるんだ?」

「あんたは頭下げちゃあなんねぇぜ?」

 

 

「今回の騒動、その兆候を見逃して

しまったのだ、これは里を預かる者として

詫びねばならん」

「それだけではないゲコ、夜行の増加も

予想出来たはずなのに対応出来なかったゲコ」

ゴコクも横へ行き頭を下げる

 

 

先人の残した知恵、

それを理解出来ていなかった

 

 

察して天音が耳打ちする

「ミノト姉さんが笑う様になってたでしょ?」

「あぁ、それが?」

「うん、あれがナルヒメが近付いてた

証拠だったみたいよ?」

「!、そうだったのか…」

 

「解っていれば警戒を解かなかったゲコ」

 

「そして…今回の事で全体が掴めて来た」

里長は語る

 

一つ目

まずは大社跡、

あれは過去にイブシマキヒコ、

ナルハタタヒメを恐れ、崇めた人々が造った物

 

しかしある時から恐れが薄れた、

その辺りでナルハタタヒメに崩壊

されられたと遺物に記録されていた

 

その伝承から先代や先先代は、

接近を感じ取るヒノエとミノトを見いだし、

カムラに住まわせた

 

二つ目

竜宮砦は恐らく同じ年代にあの島の人々に

よって造られた

 

そして50年前、カムラが全滅しかけた時、

あの島では決戦が起こった

命を掛けた戦いで多くの人々を犠牲に

しながら、最後の力で大穴を埋めたようだ

 

その後、島の僅かに残った若者は、

近くのニシノに助けを求め、

小さな土地を借り村を造った

 

 

しかし四年前に花梨を残し全滅した

 

 

 !!!

 

「里長殿!本当ですかっ!?」

前に出る花梨

 

「うむ、慈海殿から詳細を送って頂いた、

お前の里ではその時に伝承が途絶えたのだろう」

ニシノの老人達は知っていたのだ、

だから花梨は『余所者の子』でしかなかった

 

だから直ぐに保護しなかった

田畑も奪った訳では無い、

そもそも借り物だった

 

「うむぅ、俺は『ニシノの土地の子』

だと思っていたが…」

風月が首を傾げる

新しい世代には、そんな昔の話は理解出来ない

 

「風月、お前の祖母も島の者だったそうだ」

「何と!」

だから序列が低かった、そして島の話を

聞いた慈海が『忌み島』と呼ぶようになった

 

「大型が来る島とは聞いていたが、

住んでいたのか…それで忌み島…」

考える風月

 

やはり竜宮砦はあの二頭の繁殖場所、

それに気付かずに住み着いてしまった昔の人々

 

 

 

 

「失礼するよ?」

どこか軽い雰囲気の男が入って来る

…尖った耳?竜人?黒い肌、目が大きく

無精髭を生やした笑顔

 

風月とは少し違うタイプのカッコ良さ

 

誰?

 

「バハリ、空気を読め」

ロンディーネみたいな空気の…誰?

凄い美人…

癖毛の黒髪ショート…スタイルが良い

 

 ???

 

「お?起きたんだね、気分はどう?

ちゃんと食べてる?」

影に聞いてくるが

 

 ???

 

「バハリ、我々の事が解るはずはないだろう」

美人は直立すると丁寧に

「王国騎士団所属、フィオレーネだ、

こっちは研究員のバハリ」

「よろしくね」

手を上げる

 

「影、覚えておらぬだろうが、その方々に

お前は助けられたのだ」

 

「???」

 

「重傷だったけどね、処置したよ」

「頭を打っていないか心配だったが、

良かったよ」

笑顔の女性、大人の空気

 

「ほら、影、お礼言わないと、

地下から引き上げてくれたんだよ?」

「あ…ありがとうございます…?」

頭を下げるが…

 

「まぁ混乱するよね?

じっくり理解すると良いよ?」

肩を叩く

 

「妹の救援要請に参じ君達を助けたんだ、

間に合って良かった」

 

 

「妹?」

「この方はロンディーネさんの

お姉さんなんだって」

 

 だから雰囲気が似てるのか

 

振り返ると

「さて、フゲン殿、報告がある」

 

「む、例の調査ですな?それで?」

怖い顔になる

 

「間違い無い、この辺りもモンスターの

生息域が乱れ始めた」

ザワッとするギルド

 

「ルナガロン…と言っても解らないよね、

王国地域のモンスターが流入してるよ?

この辺り一帯が混乱しつつある」

腕を広げ全員に聞かせる様に

 

「逆にこの辺りのモンスターも王国周辺に

出現している、この前のマガイマガドが

我が国でも確認されている」

 

「ちょっと待ってくれ、

良く分からねぇんだが?」

ヤクシが前に出る

 

「何か起ころうとしている、って所か?」

ゲンジも

 

「ん、フィオレーネ」

バハリが振る

「あぁ、よろしいか?フゲン殿、ゴコク殿」

 

二人だけは既に聞いている様だ

 

「では」

フィオレーネの話によると母国とその

周辺に大穴が出現、過去の記録によれば、

それは大きな災いの前兆

 

「大穴ってまさか」

ざわつくが

 

「まぁ聞いてくれ」

どうやらその大穴を使いモンスター達が

移動しているらしい

 

それらを調べる為に王国の一番端、

竜宮砦の近くにある岩礁地帯、

そこにある古い砦の跡地に新たな

戦略拠点『エルガド』を現在建設中

 

「そこにロンディーネさんから救援の

話が行ったんだってさ」

耳打ちする天音

 

「えーと、だからあの…なんだっけ?」

バハリがどこかを指差す

 

「竜宮砦だ」

フィオレーネは呆れるように

 

「そうそう、こっちの…

そのリュウグウトリデ?の大穴も

調べたいんだよねw

もしかしたら過去に

開けられた穴かも知れない」

 

 

 里長が前に出る

「さて、ここまでの話で分かったと思うが

こちらと王国の災いが無関係では

無いようなのだ」

「そこで協力して行くべきだ、

という結論になったゲコ」

 

「是非とも協力をお願いしたい」

フィオレーネは丁寧に騎士?の挨拶をする

 

「このカムラとしても影達を救って頂いた、

その義は返したいのだ」

全員を見渡す

 

「問題ねぇぜ?」

「夜行の原因が分かるかもなぁ」

「カムラのためにもなるんだろ?」

ざわつくギルド

 

「良し、ならばエルガドとカムラは今より

協力体勢とする」

右手を出す里長

 

「代理で申し訳ない、次は我々の団長に

正式にご挨拶させて頂きます」

フィオレーネと握手する

 

 

 …………

 

 

 

 

 次の日

「で?条件がお前と天音がエルガドで

協力する事だって?」

ヨモギの団子屋で団子を食うセキエン

 

セキエンは誘われなかったが、

トガシとしては遅れを取りたくないため、

シキエンに流通を勉強させるため送るらしい

 

「あぁ、完治したら来いってさ、

ロンディーネさんは俺達に目を

付けてたらしいや」

「再来月には行かないとね、はい、あーんw」

「ちょっ!天音、左手使えるんだからやめ」

「遠慮しないのw」

 

「何か今日あっついわねーw」

お盆で扇ぎながらヨモギが離れて行く

 

「セキエン、我らは邪魔じゃないか?」

腕組みする風月

 

「風月も行くんだろ?」

結局食べさせられた

 

「うむ、里長から

責任を取って来いと言われてな」

 

「責任?」

 

「お前の捜索の時だ、里長からニシノで

見付けろと言われたのだが」

串をならべると

「花梨が一緒だったのが

気に入らないらしいのだ」

 

慈海としては『貸し』を作りたかった

のだろう、そんな事は風月に

理解出来ないだろうに

 

「おや、揃ってるね」

ニコニコしているウツシ

 

「あ、教官…それは?」

指差す天音

 

「ルナガロンの尻尾だよ、ようやく狩れたw」

特徴を教えてくれるが

 

「氷っ!!」

「あの時の!!…いてて」

脇腹を抑える影

 

「知っていたのかい?」

 

説明する、あの夜のジンオウガ

「なるほど、ルナガロンは確かに氷を

使ったよ、ジンオウガの弱点属性だから

…結構前から異変は起こっていたんだね、

バハリ殿に報告しておこう」

翔んで行くウツシ

 

「トガシとしても他人事じゃあないな、

モンスターの種類が増えるのか、面倒だなぁ」

 

「うむ、次期里長としては

考える事が多くなるな」

 

「なぁ、あの青いデッカイのは

死んだんだろ?もう夜行は

無くなるんじゃないのか?」

 

「セキエン、一匹な訳もなかろう」

 

「あぁ、それならまだ居るはずだ」

「姉さん達の様子がね」

 

 

 

 …………

 

 

 

 今朝未明

 

協力体勢となり、王国側の五人も

集まり酒宴が開かれた

 

それが終わった後、

テラス席に残った影と天音

 

「困ったな、全然眠くならないぞw」

「そりゃそうだよ、寝っぱなしだったもんw」

「…なぁ、イブシマキヒコは死んだし、

ナルハタタヒメはこれから…」

「一人になっちゃうのかな……」

あの地下を思い出す、影が死んだら

…私は一人で生きて行けない…

 

 

あんな思いをナルヒメもするのか…

 

 

あれ?イブヒコ殺したのナルヒメだよね?

 

 

 

 

 

「……」

  

「ん?何か聞こえるぞ?」

「あ、姉さん達」

 

 

 テラス席から見える水辺

 

 

「対よ」

 

「対よ」

 

「子々孫々」

 

「大地あまねく」

 

「息吹け風」

 

「鳴れ雷」

 

 

 二人が手を取り合い唄う

 目が光っている

 

 と、一陣の風

 

「あ、あら?」

「姉様、私達はなぜここに?」

 

 

 …………

 

「影、それってよ…」

「うむ、まだ居るのだな」

 

「早くケガ治さないとな」

「あと2ヶ月でリハビリも終わらせないとねw」

 

 

 

 …………

 

 

 2ヶ月後

 ガルクの島

 

「準備は良いかな?」

ロンディーネの声

やっぱりビシッとした態度

 

「はい、後はニシノで風月を

拾えば全員揃います」

レウス装備の影

 

「花梨も一緒に行きたいです!」

背が少し伸びた黒猫

 

「これからはこの船をエルガドの定期便

とするからな、いつでも言ってくれ、

風さえ良ければ半日も掛からないぞ?」

花梨に笑うロンディーネ

 

「あら、それなら私も行けるのかしら」

「姉様を一人には出来ません、お供します」

相変わらずな二人

 

「影よ、勉強してこい!」

「一回り大きくなって帰って来るゲコ」

 

「私、行けなくなってご免なさい」

 頭を下げる天音

 

「ハッハッハ!なぁに予想はしていたさ、

天音殿は影殿への思いが尋常ではないからな」

 

「あれ?もしかして気付いてました?」

 

「あぁ、女の勘、というやつかなw」

猫族に出航を告げる

 

「じゃあ行ってくるよ天音」

乗り込もうとすると

 

 

 

 

「影」

「ん?」

「ぎゅーってしてw」

腕を広げるが…

 

 いつでも帰れる場所だよ?

 帆船なら遠くないし

 皆見てるし恥ずかしいぞ?

 

「むぅ、我等は引き上げるか」

「それが良いゲコw」

「あらぁ、面白いですよ?見学しませんか?w」

「姉様…」

「花梨もして欲しいです!」

 

「やって!!」

腕を広げたまま睨む

 

「あ、あぁ…」

仕方ない、抱き締める

 

「ちゃんと無事で帰って来てね?w」

 

「あぁ、もうあんなケガしないようにするよ」

 

「たまには帰って来てよ?」

 

「もちろんだ、心配だしな」

 

「ちゃんと心配してくれるんだ?w」

 

「当たり前だろ?」

 

「ふーん…」

 顔を近付け

 

 

 

 

 

「浮気したら…解ってるよね…」

 腹を撫でながら低い声…

 目が笑っていない…

 

「はい(汗)…行って来ます…」

 青い顔の影

 

「うふふ、母は強し、ねw」

 

 

 

「出航だ!!乗りたまえ!!」

 

 

「行ってらっしゃい!」

 

「向こうのお菓子、期待してますねー!w」

「御武運を!」

「花梨もいつか行きます!」

 

「…さて、ワシは続きを描くゲコ」

 

「あの絵ですな」

 

「ナルハタタヒメを描き足して、

後世に伝えねばならんゲコ」

 

「我等の思いが…伝わって欲しいものですなぁ」

 

「ワシらの過ちを繰り返させる訳には

行かんゲコ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




勢いだけで書いても何とかなるもんだなぁ
とりあえず辻褄合うように書けたかな?
読んで下さった皆様、ありがとうございました

これで終わりとします、
気が向いたら外伝、続編書くかもしれません
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