神楽舞   作:天海つづみ

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百竜夜行

 

 

 砦、カムラへ続く谷間に建設された

モンスターを退ける設備

 幅60メートル、長さ400メートル程の

真っ直ぐな地形

 

 第1、第2、第3の柵があり、

そして最後の関門がある

 道の左右には防衛設備のバリスタ、

大砲などを格納、内部で移動できる頑丈な

建屋があり、それが連なり

通称『岸』と呼ばれる、

地面から3メートル以上あり

小型モンスターの攻撃は届きにくい

 

 また道の中央に作られた建屋を『島』と呼ぶ

 

 建屋の中は通路になり地下道も通っている為、

弾丸と人員の移動が安全に出来る、ついでに

地面の地下格納庫から設備を出す事も可能

 

 そして第2の柵の真横、左岸には

キャンプの出入口とゴコクが居る撃龍槍がある

 この設備は強力な代わり、一度使うと

放熱と充填の為、しばらく使用不能となる

 

 

「ブオォー…」

 物見の法螺貝の音

 

「よし、来たぜぇ!!備えろ!!」

 春香を中心としたハンター部隊が一斉に抜刀!

 と、第1の柵を飛び越えてくるモンスター!

 地響きを立て着地する

 

「ヨツワミドウ二頭!アオアシラ二頭!」

「行くぞお前ら!」

「おおぅ!!」

 晴香パーティーは左右に別れ

 それぞれがヨツワミドウに

 

「よし、俺達も二手に別れるぞ!」

 まだ若い中堅ハンターの指示に従い、

残りの七名はアオアシラへ

 

右側に走る影と時雨

 

 いざ戦い始めると

「マジか!!俺の方に新人二人かよ!!」

 イズチ装備の名前はハネナガ、大剣装備の男

 

「す!すいません!」

 斬り掛かる影、

 (しまった!つい時雨と一緒に!)

 

「やるぞぉ!」

 的確に尻を斬る時雨

 こちらは三人、しかも新人二人

 

 

 

「うん、春香のパーティーは

二人ずつでも余裕だね…」

 第2の柵の上で見るウツシと部下3名

 

「右のアオアシラ、あれ時雨と影ですよね?」

 

「倒せはするでしょうけど…

時間は掛かりそうですね?こちらに待機中の

ハンターにいかせますか?」

 

「私、行きましょうか?」

 部下のアヤメ

 

 

 里長達が警戒するヤツに備えなきゃならない

布陣は出来るだけ変えずに…

 考えるウツシ

「うん、一人いっ…ちょっと待った!」

 

 

 

 

 

「ミハバ!」

 アオアシラに攻撃しながら突然影が叫ぶ

 

「どうした?!」

 右側の岸、バリスタの担当をしている

ハモンの弟子の一人

 

「コイツに榴弾撃ってくれ!!」

 右岸のバリスタに指示を出す

 目の前だから外す事も無く命中

 アオアシラは気絶

「ハネナガさん!溜め斬りを!」

「お、おう!」

 

「よし、集中射撃!」

 ミハバが指示する、右岸が一斉に撃とうとする

 

「待て!春香さんの所!通常弾総攻撃!」

「なんで?!」

「いいからっ!」

「分かった!」

 

 唸りを上げてバリスタの鉄の矢が大量に

ヨツワミドウに刺さる

 

「なんだぁ!援護がこんなに!」

 見回す春香

 

「春香!こいつぁ助かるぜ!」

 大剣使いの春香の仲間

 

「余計な事しやがって!兜割りぃ!!」

 左のヨツワミドウが逃げ出す

 

 

「分かったぜ影!次はこっちのヨツワ…」

「違う!次は向こうのアオアシラ!」

 斬り下がり!

 

 春香は隣のヨツワミドウへ向かう、

担当していたのは春香パーティー、

そして春香の性格上強いモンスターへ向かう

 

 ほぼ同時に残りのヨツワミドウと、バリスタ

を受けた左のアオアシラが逃げ出す

 

 残るは影達の所だが、

 オサイズチが二頭柵を飛び越え着地

 

「っしゃあ!次だ!!」

 春香達が斬り掛かる

 

「ナカゴ!」

 また影が叫ぶ

 

「どうしたぁ?!」

 左岸のハモンの弟子達の一人

 

「後退弾装填!撃て!」

 影は真上を指差す、ナカゴは見上げると

リオレイアが降りて来る…

そして真下に影達が戦うアオアシラ…

 だったら直ぐそばのミハバに…そうか!

 真上は撃てないから!

「分かったぜ!」

 後退弾を撃つと真下に墜落するレイア

 

「ハネナガさん!時雨!回避!」

「あ?あぁ!!」

「あいよぉ!」

 

「ズダァァン!!!」

「ぶごおぉっ!!」

 押し潰され血を吐き絶命するアオアシラ、

 その上でもがくリオレイア

 

 

 

「誰か里長を呼んでくれ、

大変なことだよこれは…」

 ウツシの部下が飛ぶ

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 

 

 関門の前に立つ里長の元にアヤメが到着

「ウツシより伝令!!」

 

「うむ、良く守っているようだな、

まだ第2柵までも来ないと見える」

 さすがゴコク殿

 

「里長!俺らの出番あるか?」

「俺達も前に行きてぇぜ?」

 最終関門を守るベテラン達

 

 騒ぎ出すのを制するように

「緊急です !!前線までお越し下さい!!」

 

「何だと?!」

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

「ゴコク殿!」

「おぉ里長!大変でゲコ!」

 笑っているゴコク、撃龍槍さえ使っていない

 

「上空!アケノシルム!後退弾!

レイアにぶつけるぞ!!」

「プケプケ!毒弾来る!春香さん避けて!」

 

「指図すんじゃねぇ根暗ぁ!」

 笑いながら避ける春香

 

「影!次は!?」

「ナカゴ!ナルガ!頭に榴弾!!」

 

「何と…」

 目を見張る里長

 

「ワシの出番無いゲコ」

 

「僕の隊もですよ」

 ウツシも来た

 

 影はバリスタの名手、的確に弾丸を選び

援護した…ハモンも認めた里守…ならば!

「影!!『島』に登れ!!」

 里長の声

 

「えっ!!」

 見上げる影、里長達が笑っている?

 

「聞けィ!!臨時で影が指揮を取る!!」

 里長の号令に

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

「ムカつくぜぇ根暗ぁ!!指示よこせぇ!!」

 ビシュテンゴの首を斬り落とし止めを刺す春香

 

 前線中央の島に登ると更に視界が広がる影

 第1の柵の向こうが少し見える

「これなら!」

 息を大きく吸うと

「ハネナガさん!時雨!落ちたプケプケに!」

「春香さん!ナルガへ!」

「ナカゴ!オサイズチ!榴弾!」

「右岸!レイアに集中!」

「バリスタ!上げてくれ!」

 影の島にバリスタがせり上がる

 

「ほっほぉ!!凄いゲコ!」

 

「影にはこんな才能があったのか」

 感心するウツシ

 

 キャンプ地からハモンが出てくる

「どうなってる?!前にばかり弾丸補給が

片寄ってるぞ!」

 時間的に全体が戦場になっているはずなのに

 

「ハモン、見ろ!次の世代が育っているぞ!!」

 ガハハと犬歯を見せて大笑いする里長

 

「影!次の指示くれ!!」

「おい影!フルフルだ!」

「時雨!ナルガに行け!ナカゴ!

左岸でフルフルに一斉射撃!」

「ハネナガさん!援護!榴弾行きます!!」

 

 ハンター11名とバリスタ7基で防いでいる

 

「影は立体で対応してるゲコ」

 

「我々は平面でしか理解できてませんなぁ」

 里長は腕組みして感心する

 

「モンスターをモンスターの上で撃墜…

そんなこと思い付いても出来ませんよ…」

 ウツシも一緒に

 

 モンスター達が一斉に引いて行く

 終わったか?

 

 だが柵の向こうに新手が見える

 影が叫ぶ

「バサルモスだ!!」

 

「んだとぉ?!」

 春香の太刀では相性が悪い

 

「中間部のガンナー達を呼ぶゲコ!!」

 

 それを聞いた影は

「バリスタ!榴弾と後退弾!狙え!!」

 バサルモス二頭が第1柵を破壊、入って来る

「撃て撃て撃てぇ!!」

 右岸のミハバ達

 

「向こうが撃ち切ったらこっちの出番だ!!

装填!!」

 左岸のナカゴ

 足止めに集中する

 

「ナルガクルガ!!でかいのが来た!!」

 ハンター達は見る、明らかにサイズがおかしい

 

「大物だ!!」

 里長が叫ぶ

 

「コイツが大将かぁ?影ィ!!

こっちは任せなぁ!!」

 春香が叫ぶと

「やっぱり大物狙いよ!!」

「だから勝負はやめられねぇ!」

「あんな岩よりオモシレェ!!」

 春香パーティーが走る

 

 バサルモスはガンナーの水冷弾によろけ

ながらも、第2の柵へ近づく、ハンターにも

バリスタにも目もくれずに歩く

「切れ味が持たねぇよぉ!!」

「時雨!下がれ!射線開けろ!」

 

「これは出番が来たゲコ…だが…」

 ゴコクの前で第2柵を壊し始めたバサルモス、

撃龍槍で仕留めるのは簡単だが、

たった一頭で使うには…

 もう一頭は射程外

 

 それに…

 

「ゴコク殿、戦力は十分残っている、

判断は任せます」

 里長も分かっている、本当はヤツに温存したい

 

「影はどうするゲコ…影?!」

 

 影は島を降りて、ゴコクの前にいる

バサルモスの後ろに立つ

「ナカゴ!!あっちのバサル!右足に榴弾!

春香隊以外は岸に登れ!!」

 

「お、おう!」

「なにする気だ!!」

 

 ナカゴは指示通りに撃つ、榴弾は右足で

弾けるとバサルは体勢を崩し、よろけながら

こちらのバサルにぶつかる

「これなら二頭いけるでゲコ!!」

 スイッチに手を掛ける

 

 が!!

 

「まだ!!」

 影が叫ぶ!と!

 大物ナルガが影を狙って飛び込んでくる!!

 囮を自らやっていた!

 

「かげりーっ!!」

 誰かが叫ぶ声

 

「ゴアアアッ!!」

 バサルとナルガ、三頭が団子に

 

「今!!」

 叫ぶと同時にバサルの下から這い出る影!

「ゲコーッ!!」

「ズドオオォォォン!!!」

 

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

「皆!今回の百竜夜行、ご苦労だった!」

 里長の声、明け方のギルド

 結局 警戒していたモンスターは現れなかった

 

「今回は全員無事!損傷も最小限で済んだゲコ!

では功労賞を発表するでゲコ!」

 

 静かになる

 

「春香パーティー!」

 ゴコクが呼ぶ

 

「うおっしゃーっ!!」

 ガッツポーズの春香達

 大きな革の袋を受け取る

 

「討伐、撃退数は11でダントツでゲコ」

 

「うむ、ご苦労だった…そして今回特別に

もう一つ、少しばかりの報償を用意した」

 里長の言葉で影に注目が集まる…が、

全部が好意的ではない

 

 一番下の駆け出しが立場もわきまえずに

指図したのだ…

 

 プライドを傷付けられたと思う者も多数居る

 配置により出番が無くなった者もいる

 

「我々五名の連名により、例外ではあるが

影に功労賞を与える!!」

 

「ちょっと待った!!五名って誰です?」

 ベテランハンターの一人、ハンマーを担ぐ

 明らかに不機嫌な顔で

 

「うむ、ゴコク殿、ウツシ、ハモン、そして

里長であるワシと…」

 

「アタシだぁ!!」

 春香が叫ぶ

「文句ねぇだろ?!アタシが認める!!」

 前線にいた若手が頷く

 

「今回の夜行、25頭全部に影の指示が

関係しているでゲコ」

 

「影!!前へ!!」

 里長の前へ行くと小さな革の袋を貰う

…ずっしり重い

 

「やったなぁ影ィ!!」

「時雨、皆のおかげだよ、

里長、これで砦の修理…」

 

「バカヤロ!!お前がそんな事したら

アタシだって何かしなきゃいけねぇだろ?!

貰っとけ!!」

 バシッ!と頭に手を乗せると、

グリグリ春香に撫でられる

 

「それでは里の勝利を祝おう!!乾杯!!」

 笑う里長

 

「「「乾杯!!」」」

 

 

 ……………

 

 

 すっかり夜が明けた、ギルドの喧騒が

無くなり朝日がさすテラス席

 ゴコクと里長

「まさか一石三鳥とは驚いたゲコ」

 

「うむ、照と違う意味で天才かもしれませんなぁ」

 

「じゃが…ちょっとでしゃばり過ぎたゲコ」

 

「照もそんな所がありました、

暫く風当たりは強いでしょうな」

 

「今までとは違う強者の出現ですわね」

 ヒノエとミノトが団子とお茶を持って来た

 

「影に指揮する才能があるとは驚いたゲコ」

 

「大いに祝いたい所ではあるが…」

 

「警戒は解けないゲコ」

 

「所でヒノエ、そろそろ限界だろう、

影にバラさないのか?」

 ニヤリと笑う里長

 

「姉様はまだ楽しみたいようです」

 少し困った顔でヒノエを見るミノト

 

「あら、影君の反応は面白いんですよ?」

 クスクス笑うヒノエ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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