神楽舞   作:天海つづみ

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先輩後輩

 

俺はこの狩り場が好きではない、高低差が

大きく崖と泥水だらけ、しかも戦うエリアに

谷間があり木の根っこで繋がってたりする

…だから

 

「うわあぁぁぁぁぁー…」

 落下する影

「戻って来いよぉーwww」

 半笑いで見送る時雨

 

フルフルの電気纏いを回避したら自分から

谷間に落ちた、そう、

嫌いな地形なんだ、だから滅多に来ない、

だから覚えない

 

ぜいぜい言いながらさっきの場所まで戻ると、

時雨はケルビに草を喰わせ遊んでいる

「ふっ、フルフルは…」

 疲れた

 何でこんな場所が狩場になってんだ

 

「飛んで行ったぜぇ?」

 

「くっそぉ…」

 戦い辛い

 

急いで別エリアに向かう

段差を登り翔虫で飛ぶ

 

「こんな時ガルクに乗れば早いぜぇ?」

 

「………イヤだ…」

 

「なんでそんなにイヤなんだぁ?」

 

 立ち止まると

「10才位の頃にな」

「ふんふん」

 

兄貴に憧れてハンターに成りたかった頃だ、

ある夜家族が寝静まった後、俺は家を抜け

出した、アニキが使わなくなった片手剣を持って

 

俺は舟漕げるからな、大社跡に向かった

 

「あぶねぇなぁw」

「なんつーか…そんな時ってあるだろ?」

 

キャンプから蔦を降りてな、わくわくしてた、

これが狩場!

両手で片手剣振って気分はヒーローだった、

剣を振り回してイメージした悪人や

モンスターを斬りまくったし

「子供は近付くな」と言われた場所に

入り込んだ『俺最強!』って思ってた

 

「チュウニビョウw」

「まぁそうだな」

 

 

川原の石、ススキの穂、ゆったり流れる

川には星空が写ってた

 

気付いたら対岸に何かが居た

目が光ってな、川を渡ってきた

 

「モンスターだと思ってな、ビビったぜ?」

「それがガルクかぁ?」

 

目の前にまで来たら俺よりずっと

でっかいだろ、恐くて逃げ出したかったけど

腰抜かしてな…

「それが原因…かぁ…」

 

「で、その後な」

 ニヤける

 

「なんだぁ?」

 

「出会いがあったんだ…」

 遠くを見る

 

「お?誰だぁ?」

 

「…いや、いい」

 ソッポを向く

 

「なんだよぉ、話せよぉ」

 口を尖らす時雨

 

「フルフル追うぞ」

 

 …………

 

地図で11番と呼ばれる場所、開けた所で戦う

 

「くそっ!また電気か!」

電気を纏うフルフル

 

「コイツめんどくせぇ!」

 クナイを投げる時雨

 だけど大したダメージ無さそう

 

二人ともガードも出来ない武器だから手が

出せない、こんな時ガンナーならどんなに楽か

 

「ギュアアアアア!!」

 

「うるせぇ!!」

 耳を塞ぐ影

 

「でもなんかよぅ!」

 電気纏いの終了と同時に鬼人化

 

「あぁ!咆哮と電気以外は噛み付きだけだ!」

 二人で斬り掛かる

 鬼刃斬りは二回で止める

 

「そんなに強くねぇよぅ!」

 

やってみるか…

影は納刀してフルフルを見る、

しゃがむフルフル、

放電するその刹那を見極める…

居合抜刀………集中!

「ちぇぇい!!」

 

 

普通に斬った?

そして

 

 バチバチバチッ!!

「いってぇ!!」

 電撃で弾け飛ぶ影

 

「ち、ちぇぇい…www」

 笑いながら斬る時雨

 

「わ、笑うな!!」

「ちぇぇいw」

 

欲張らなければ効率が良い事に気付く、

単発でチマチマ攻撃する

 

 

それを高台から見下ろすアヤメ

ふぅん…ハンターとしての勝ち方には

気付いたか、リスク回避は基本だもの

 

だけど夜行の場合は一頭に時間掛けられ

ないから、これじゃダメよね

同時多頭より時間制限クエストやらせた方が

良いんじゃないかしら?

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

「お前ら!もう二頭同時やらされたってな!」

 ハンマー使いのヤクシ

 二人の背中を叩く

 

「ずいぶん早いな!」

「まぁ無理だわな!」

 ベテランハンター達に声を掛けられる

 

結果はフルフルは討伐出来たが

レイアはダメだった

 

「道具が無くなっちゃいましたよ…」

 アオアシラ装備の端々が少しコゲている

 

「現地調合してもダメだったぁ…」

 ボロボロの二人、テーブルに突っ伏す

 

だが駆け出しでチャレンジした心意気だけは

評価されたようだ

「まぁ身の丈を知るんだな」

 バシッと背中を叩かれる影

 

 なるほど、こういう事ね

 アヤメは納得した

 影に対する敵意が弱まった

 

「一頭だけとは情けないゲコ」

 ゴコクが紙を持って来る

 クエスト用紙?

「次はこれゲコ」

 皆注目する

 

 ベリオロス!

「明日行くゲコ」

 

 ギルド中が静まる…

 若手は勿論ベテランさえも…

 

 

 …本気だ

 

 

 …本気でこの二人を鍛えるつもりだ

 

 

「道具が足らないなら今から採取に行くゲコ」

 ザワッとするギルド

 

「えっ?」

 マジで?

 固まる二人

 

「そりゃ無理ってもんだろゴコク様!」

 大人しく聞いていた春香が横槍を入れる

「強くしてぇのは解るけどさ!」

 

天才と呼ばれるタイプにも課せた事が無い

ペース、春香も経験したことがない

 

「…行って来ます…」

「ツラいなぁ…」

 もう夕方だが影と時雨は出て行く

 

「駆け出しだろうが何だろうが強くなって

貰わねばならんゲコ」

 

その真剣な顔と空気に中堅達も気合いが入る

(あいつらが追い付いてくる…

いや、俺達も鍛えないと)

 

 

 (流石はゴコク様、人心を誘導していますね)

 感心するヒノエ

 影君耐えられるかしら?

 時雨がいるし引き際は間違えないと思うけど

 

 ………

 

 

「ベリオロスって毒無いよな?」

「無いはずさぁ、だけど早いって聞くなぁ…」

はっきり言ってヘロヘロの二人、

薬草を初めとする素材を大社跡で

片っ端から拾う

 

 

「鉄鉱石も…」

「売れるしなぁ…」

 換金出来る物は売って道具を買う

 今日中に準備しなければ

 

「なぁ影ィ…」

 とぼとぼ歩く

 

「何だ?」

 翔虫を使う気力もない

 

「晩飯作る気力あるかぁ…?」

 

「…めんどくせぇな…」

 

「…こんがり肉食おうやぁ」

 

「あぁ」

 

キャンプに戻り肉を焼く二人

テントの中で焚き火を囲む

 

「なぁなぁ!出会いって何だぁ?」

 妙に元気な顔

 

「ん?あぁその話か」

 

ガルクが目の前に来たらな、

背中に女の子が乗ってたんだ

 

「え…やべぇな、

この話って影の恋話なのかよw」

 ニヤッとする

 

「あ、あー?そうなのか?」

 やべ、冷やかされる

 だけどガルクが嫌いな話と繋がってる

 

「で?で?どうなったんだぁ?」

 ニヤニヤ

 

「あー、確かお前は知らない娘なんだよ」

 

「なんで?」

 

「両親が百竜夜行で亡くなってな、

親戚に引き取られて里から出たんだ」

 焚き火に薪を放ると

「お前がカムラに来る前に居なくなったんだ」

 

「どんな娘?美人?」

 ごろっと横になる

 

「出会った時は10才だった」

病弱で親がほとんど家から出してくれなかった

らしいが、夜中にこっそり抜け出してたんだ、

両親が使ってたガルクで里の周辺を散歩してた

 

「ふんふん」

 

で、元気になってから団子屋の看板娘やって

てな、丁度ヨモギの先代になるんだな、

ヒノエ様とミノト様にも可愛がられてた

 

「なぁ、影ィ、大事な事言ってねぇよ?」

 にじり寄ってくる時雨

 

「何だそれ?」

 

「その娘好きだったのかぁ?」

 

 好きと言えば冷やかされる

 何でもないといえば「つまんねぇ」となる

 

 …ならば

 

「俺はヒノエ様が好きだしな」

 

「…つまんねぇヤツ」

 転がって向こうを向く

 

 なんだよ結局こうかよ

 

「その娘の名前は覚えてるかぁ?」

 

「あぁ、アマネだ」

 

「ふーん、覚えてんだw」

 

「なぁ、お前の居た里には

…アマネ行ってないか?」

 

「聞いたこと無いぜぇ?」

 

「そうか…」

 

「もしかして、

ハンターになったのってよぉ…」

 

「…んー、確かな、俺がハンターになったら

仲間にしてやるって言った様な気がする」

 

「その娘に会いてぇから?w」

 

「……どうだろうな…

多分会いたいんだろうな…」

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 

 すっかり夜になってからギルドに戻って来た

 

「お?二人ともこっち来い」

 手招きする小太り

 

「フドウさん」

「なぁにぃ?」

 

 春香が

「デケェ声出すな」

 テラスの方へ

「お前ら道具はどうだ?」

 

 ハッキリ言って足りない

「だろうと思ったぜ」

「ほら、コレやる」

 

 出してきたのはハチミツ、

 正直嬉しいが

「え…これって…」

「いいのかぁ?」

 ゴコク様に何か言われそうだけど…

 

「気にすんな、お前の指揮で報償金貰った

様なモンだしよ」

 コソコソ話す春香

 

「アイテム貰っちゃあダメとは

言われて無いだろう」

 フドウも

 

「他に必要な物あったら言えよ?」

「余ってる道具なら何でもいいぞ?」

 

「あ、ありがとうございます」

「ありがとぉ」

 こっちも小声で

 

 

 

 帰り道、夜中になってしまった

「なぁ影ィ」

 星を見ながら歩く

 

「何だ?」

 

「嬉しいなぁ」

 

「あぁ、すげぇ嬉しい」

 誰も居ないタタラ場前を歩く

 

「姉御が認めてくれてんだなぁ」

 

「もっと頑張ればもっと認めて貰えるか?」

 

「やってみようやぁ」

 

「頑張ってみるか!」

 

「初めて頑張るなんて言ったなw」

 

「そうか?」

 

「…ちぇぇいw」

「笑うな!!」

 

 

 

 

 

 あらぁ青春してるじゃない、

 さて私も帰りましょ

 

 タタラ場の屋根から飛ぶアヤメ

 

 

 

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