黒死の刃   作:みくりあ

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初投稿。黒死牟さんはかっこいいよなぁ?プロローグなんで短いです。


人道編
プロローグ


 ────何だ

 

 身体に……力が有り余る……これは……? 

 

 

 ────────────────

 

 

 ★

 

 

「お疲れ様でしたぁ……」

「……お疲れ様」

 

 結城陸斗は疲れきって顔色の悪い部下を横目に溜まった仕事をこなす。たった今帰った部下を恨めしそうに見た。報告が遅れるのはあれだが世渡り上手でどこか憎めない男だ。

 

「……」

 

 残業で彩られた夜景が窓の外に映る。夜の太陽のような輝きは深夜だと言うのに収まる気配を見せない。

 

「……嫌だなあ」

 

 陸斗はブルーライトを放つパソコンを凝視しながらやれと言われた仕事を機械のようにただただやり続けていた。

 

今日で七連勤。当然の如くまとまった休みはとれない。とらせてもらえない。荒んだカッターシャツは帰っても洗濯する時間はないのでファ〇リーズで服の洗浄は済ませている証拠。欲は人並みだと自負しているが彼女もおらず、風俗で発散させる暇もない。旅行に行ったのは何年前だったか。と言っても削られた経費では陸斗自身は低予算で楽しむしか無かった。土産を買って媚びを売っておけば、どこかで得するのは経験から知っていた。かと言って退屈かと言えばアニメや漫画があるのでそうとも言いきれない。

 至って普通の人生。

 

「頑張れ俺、お前は出来るやつだ」

 

 ベチンと、頬を両手で叩いて眠気を吹き飛ばす。陸斗は最近「鬼滅の刃」を読破し、アニメも全部見て絶賛どハマりしている。そのためこうしてたまにセリフが口から出てしまう。今も尚彼の頭の中では主題歌がBGMとして鳴り響いている。仕事人間の彼からすれば数少ない娯楽であり、拠り所とすることで過酷な仕事ですら頑張れる。

 ふと目を画面から逸らすと、パソコンの縁に見知らぬメモ書きが貼ってあるのを発見した。発見してしまった。

 

「信じられぬものを見た……」

 

 上司からの覚えにないタスク。残業確定。

 クソ課長当たりが自分の仕事を押し付けて来たのだろう。無視すれば怒られるのは自分である。しかし慣れたものである。実際彼の仕事量と質は平社員のそれではない。これで今夜も徹夜が確定する。

 

「だがっ! 残業した程度では、赤子でも死なぬぅ!」

 

 時刻は既に深夜2時過ぎ。故に陸斗の奇行を目撃するものはいない。

 

 彼のデスクだけに灯りが点いており、会社は闇に包まれて不気味だが陸斗にとっては見慣れた暗闇であった。何処かに監視カメラがついているわけもないので、彼が狂ったように1番好きなキャラのセリフを話しても大丈夫なのだ。目撃者は誰一人いない。

 

 陸斗の推しは上弦の壱・黒死牟であった。

 

「やっぱり黒死牟様が一番カッコイイよなぁ……! 縁壱さんもかっこいいけど、こう闇堕ちして強くなったっていう感じがもう……サイコーだよなぁ……! 原作でもう少し掘り下げてくれてもよかったのにィ……」

 

 

 

 上弦の壱・黒死牟

 六つある目、弟よりも広範囲に渡る痣。鬼滅の刃に出てくる鬼は『血鬼術』と呼ばれる物理法則などを完全に無視した攻撃や毒や麻痺などを使用してくる。

 しかしながらほぼ唯一物理攻撃のみを使用し、原作に出てくる鬼の中でも一二を争う強さを持ち、しかも人間だった頃は主人公達と同じ鬼殺隊の一員で闇落ちして鬼になったという重い過去も持つ人間味のある設定。

 

 ネット上では『なんで勝てたか分からない』『無惨より威厳ある』『もうお前がラスボスでいいよ』等と言われる鬼。挙句の果てに人気投票で鬼舞辻無惨を抑えて鬼側一位を獲得。

 

 それが陸斗が今熱を上げているキャラ、黒死牟である。

 

 

 

 ★

 

「帰る……ってなんだ?」

 

 陸斗は深夜テンション且つ語彙力と理性が欠如した頭で帰り支度をしている。残業<漫画は彼の信条であり、残業を無視する方向に決めた。あとはもう帰るだけなので、頭を空っぽにして妄想の続きに耽ってもいいのだ。

 これで頭もそんなに悪くないのだから、変人は賢いという仮説はあながち間違ってないのかもしれない。

 

「さぁ……家に帰ったら新しい漫画にも手を出してみるかぁ……う……あれ……?」

 

 帰宅しようとした陸斗を強い眠気が襲う。抗えない脱力感に脚を折った。心が浮き立つような心地が身体中を包み込んだ。

 

(なんだ……? もしかして……身体が逝っちまったのか? 

 それにしては苦し……くはない。というよりむしろ……)

 

 

 

 

 瞬間──彼はその場から消失した。

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───眩し」

 

 視界が開ける。目の前に屋敷がある。太陽が煌々と輝いている。晴れだ。服が少し重い、着物を着ている。腰に差してあるのは本物の刀。雨上がりのようだ。体が徹夜続きなのに怠くない。

 

 次々と頭の中に入ってくる情報。遠くの景色が鮮明に見え、葉先から滴り落ちる雫の音が聞こえた。どうやら五感は眠る前より鮮明になっているようだった。

 

(ど、どういうことだ!? 一体何が起こっている!?)

 

 陸斗だったものは混乱の真っ只中でありながら、眠る前の疲れきった体から抜け出した開放感に高揚していた。まるで柔らかい布団で快眠できたかのよう。

 とりあえず、水溜まりを覗き込んだ。

 

「え?」

 

 そこに居たのは陸斗ではなかった。

()()にしては長い髪を無造作に後ろで括り、ぶっきらぼうな目付きではあるものの前の人生よりは精悍で整った容姿であると断言できる顔。成長すれば美丈夫になること間違いないだろう。そして誰なのかわかりやすい顔であった。

 それは寸分違わずつい先程まで妄想の中にいた存在。

 

 彼は黒死牟……いや、鬼になる前の継国巌勝であろう人物になっていた。




戦国時代から大正時代で原作と合流するまで何してたんやろって感じで書きました。原作に合流できてからも続けるつもりです。
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