「巌勝。弟が見つかって何よりだ」
「は。全ては御館様の助力があっての事。心より感謝申し上げます」
巌勝は鬼殺の里まで薫と共に縁壱とうたを届けた。正確には鎹鴉に隠を呼んでもらい、道程の半分以上は目隠し継走だった。道中、兄弟は稽古をしたものの、巌勝は型を使わない斬撃ですら先程の戦いからかなり高範囲に飛ぶようになっており、木の棒かつ完全に呼吸縛りで戦い、腕を上げていた。
因みに縁壱は巌勝の飛ぶ斬撃を「飛月」と名付けた。彼はかなり気に入った。
薫は日の呼吸を見て炎の呼吸と複合させようと考え、うたは巌勝の飛月に興味津々であり、縁壱に真似してもらおうとした。
しかし巌勝は、
「刀に空気の層を纏わせろ。そして振れ」
「違う。もっとこう……あれだ、刀に指向性を持たせろ」
「縁壱、光線を撃つような感じだ」
「??????」
と、縁壱に精一杯教えたが縁壱は終始頭の上に疑問符を浮かべていた。
紆余曲折を経てやっと着いた鬼殺の里。巌勝は柊哉に縁壱とうたの保護を 頼むつもりである。半年ぶりではあったが、久しぶりに見る柊哉の病は進行していた。もう目は殆ど見えていないだろう。
「そう硬くなるな。此方としても我が鬼殺隊の戦力拡大の礎となった呼吸の起源ともあれば、手厚く保護するのは道理。伴侶も鬼殺の里で隠見習いとして保護しよう。なるべく前線には出さん」
「重ね重ね感謝申し上げます」
「うむ。日輪刀も其方と同じ弔替に頼んである。出来上がり次第届けさせよう。……余談だが薫と結ばれたようだな、おめでとう巌勝。鳴柱が嘆いておったぞ」
「お祝いいただきありがとうございます。……鳴柱殿は恐らく、からかっておられるのでしょう」
一年前の呼吸訓練の最中、巌勝が鳴柱に、娘である愛染と見合いして欲しいと言われた時、薫が鳴柱の家に突撃し有無を言わさぬ顔で愛染に勝負を仕掛け、完膚無きまでに叩き潰した為、見合いの話は暗黙の了解でなかったことになった。当然、柊哉は知っている。
「時に巌勝。其方は柱になる気はないか?」
「柱……ですか」
巌勝は堪らず顔をあげる。あまりにも早すぎる昇格。誘いが来たとしてもまだ先のことだと考えていた為、これには面食らった。
「然り。柱になるための条件は主に二つ。
一つ目は名付きの鬼を退治すること。
二つ目は三名以上の柱から推薦を受けることだ。巌勝は両方を満たしている。柱になれば縁壱達の屋敷も用意させよう。因みに二つ目に至っては全柱一致だ。後は本人の意志のみだが……どうだ?」
入隊から二年での柱への昇格。
柱が満席な今の時代は、柱になるのは原作の時空よりも難しい。そう考えると異例中の異例。紛れもなく巌勝の実力が認められた証。柱になれば屋敷を貰える。縁壱達に安心して帰る家が提供できる。断る理由はなかった。
「謹んで柱の命、お受けしたします」
「そうか。そうか。ありがとう巌勝。これよりお前を産屋敷柊哉の名において柱と認める。そして柱合会議は二週間後だ。柱も逐次この里に集まってきている。二週間後にお前の柱就任と、お前の弟に鬼殺隊に入隊してもらい、隊士達に呼吸を教えてもらうことを伝える。いいな?」
「御意」
「これからも頼んだぞ月柱・継国巌勝」
そう言って柊哉は屋敷の奥へと妻に支えられて去っていった。
★
(これは縁壱が日柱になるのも時間の問題だな。早く鬼のように強くならねば。そうしたら私が鬼になっても縁壱達は切腹を命じられることは無いだろう……)
巌勝が産屋敷の屋敷から出ると、薫……ではなく鱗滝正助──水柱の継子が屋敷の塀にもたれかかって巌勝を待っていた。
「やぁ、巌勝君久しぶり。とうとう柱になったようだね。おめでとう」
「……御館様の話を盗み聞きとは無礼だぞ」
「つれないなぁ。まぁそんなことより、見てくれよこの桜を」
正助は基本的に気分屋である。こちらの話をまるで聞かないし、ただ自分のしたいように動く。しかし行動は正しい。その我の強さで味方を鼓舞したり、敵を食い破ることで戦いにおいて鬼殺隊に有利な流れを作ることが出来るのだ。故に実力は確か。
仕方なく巌勝が正助の目線の先に目を向けると桜ではなく、街路樹のように木の芽が丸石に囲まれて植えられていた。
「桜? これがか?」
「そうだ、名は猛勝。僕はもし継子ができた時も桜を植え、名付けるように指導する。そして名前には勝を入れるよう伝える」
「……何が言いたい」
「人の思いは永遠ということさ。君が一体何を焦っているのか、何を危惧しているのか僕には分からない。しかし、その想いを伝えていけばいい。そうすればいつか自分の思いを受けた誰かが叶えてくれると僕は思うんだ」
(顔に出ていたか)
「心に刻んでおこう。────名前に勝と付けたのは私への当て付けか?」
「さて、どうかな。……巌勝君。僕はいつか君を超える。そして鬼舞辻無惨を倒し、鬼の居ない世の中を作る」
「……そうか、励むことだ」
巌勝は歩きその場を後にする。正助は巌勝にとって掴みどころのない男であった。巫山戯ているかと思えば至って本人は真剣であり、偶に核心を突いた発言をする。本当に普段は飄々としているが。
(私には時間が無い。継いでくれるものもいない。正助。心苦しいがそう遠くない未来、お前とは……いや、もしかするとお前なら受け入れてくれるかもな)
巌勝は少し気が楽になる。合理的な判断ができ、自分のとの仲も悪くない正助ならば、たとえ自分が鬼になったとしても説得ができるかもしれない。そう思った。
(柱になったと言えば薫はどんな顔をするのであろう。薫のことだから自分の事のように喜んでくれるのだろうか……)
少しずつ薄れていく前世の自分。知識は定期的に思い起こしているが故に消えないものの、現代の自分など存在していないかのよう。
(私も染まったものだな。薫にも、この世界にも)
宿の前につき、戸を開けると、薫はもちろん何故か房綱もいた。うたは隠の訓練に行き、縁壱はそれについて行っているのだ。薫と房綱は旧知の仲。話していても何の支障もないのだが、巌勝は一気に機嫌が急降下する。相変わらずの無表情は変わらなかったが、それに気づいたのは薫だけであった。
(あれ……巌勝君、もしかして今私に嫉妬してくれた? 私が自分以外の男と話しているのを見て咋に不機嫌になったよね。嬉しい)
薫の瞳に昏い輝きが灯る。そんな二人の内面など知らない房綱は平然としていた。
「…………房綱か、久しぶりだな。息災で何よりだ」
「あぁ。お前も見違えるほどに強くなったな。以前よりも体格が大きく成長している」
「房綱もな。単刀直入だが、今し方、御館様から柱の命を承った。これより私は月柱となってさらに鬼殺に励む」
巌勝は房綱への対抗心から少し得意そうに柱になったことを報告する。
房綱は巌勝がもうそろそろ柱になることは想定していたが思ったより早かったことと、横にいる薫が満足そうにしていることにより少し嫌な顔をする。
薫は巌勝が柱になったことにより誰も自分との婚約を疑わなくなることに喜び、自分が柱では無いので今まで通り巌勝についていけることに内心北叟笑む。恋人との計画がより磐石なものとなったのだ。
「そうですか。史上最年少ですね。おめでとうございます。」
「……良かったな巌勝」
「ありがとう二人とも」
「しかしなんだ? 聞いたぞ巌勝。お前の弟はお前とほぼ互角らしいではないか。しかも広めている呼吸もその弟の模倣ときた。これでは柱の面目が成り立たないのではないか?」
「私を卑下するのは構わんが、それは私を柱へと昇格させた御館様の決断への侮辱にも値する。取り消せ房綱」
「む。俺はただ事実を言っただけだ。それに御館様とは言え、二年しか鬼殺隊に在籍していない奴を柱にするのは他の隊士が納得しないと思うんだが?」
「房綱君。そうやって巌勝君の実力を軽視している者がいるから、巌勝君を柱にすると御館様だけでなく柱の皆様も考えたんじゃないですか? 何せ、いきなりこの呼吸法を使って戦えと言われても隊士達は納得しないでしょう。ただの隊士かつ、年下である巌勝君ならば尚更です。彼を柱とすることで柱が巌勝君を、強いては彼の教える呼吸法も支持していることが鬼殺隊に示されます。縁壱君の入隊からの呼吸指導も円滑に進むでしょう。そういう理由があってもまだ房綱君は、御館様と柱達は間違っていると主張するのですか?」
「あ……あぁ……そうなのか」
(房綱の目が死んでいる……というか私も気づかなかった。そうだったのか)
「……薫の言う通りだが?」
「ああ、知っていたとも。知っていたさ……すまない邪魔したな。あと世話になった」
そう言って房綱は戸を閉じて去っていく。薫はまだ不機嫌であった。伴侶たるを悪く言われて不快にならない人間などいない。
「むぅ……巌勝君ももっと言い返せばいいのに」
「それはすまなかった。因みに房綱は薫が招き入れたのか?」
「適当な理由をつけて追い返そうにも、私が巌勝君と蝦夷に行ってからなんの連絡もしなかったからね。彼なりに心配してくれたから追い返そうにも追い返せなくて」
「……私が言うのもなんだが、薫。他の男と同じ部屋にいようとするな」
「ふふっ。……ええー? なんで? 理由を聞きたいなー」
「……言わなくても薫なら分かるだろう。彼奴は私と薫が婚約しているのを知らないのか?」
「言ってないよ? だって言えばあの人、絶対巌勝君に勝負仕掛けるよ。っていうか多分、薄々気づいてるとおもうけど、見ないふりしているだけで……あら?」
「む」
誰かが接近する気配を察知する。
途端に、勢いよく戸が開かれる。そこには房綱が抜き身の緑に染まった日輪刀を肩に担いで堂々と立っていた。後ろには外にいた天外が顔を出している。大方彼女が巌勝と薫の婚約について伝えたのだろう。薫が睨みつけると天外は笑いながら去っていった。こういう展開が好きなのだろう。なんとも豪胆な鎹鴉である。
「巌勝! 数分ぶりだな! 早速だが薫と婚約したらしいな! 薫の鎹鴉に聞いたぞ。風柱の修練場に来い! 薫を任せられるかどうかこの俺が見極めてやる!」
一応上司にあたる柱である巌勝に対して、余りにも不遜。その愚直さは強さが裏付けてカリスマとなる。
薫はほれみたことかと巌勝を見ている。そして次の台詞を期待する。隠が慌てて房綱を止めようとするも雰囲気がそうさせない。彼も次期柱として期待されている新星なのだ。正助と同じく実力者である。
(おお! 縁壱! これが修羅場というものか!?)
(激昂する相手に対して冷静さを失わない兄上。とても凛々しくいらっしゃる)
いつの間にか戻ってきた縁壱とうたは、面白そうに静観している。これは茶番である。誰もが道化。房綱も後に引けない。
「いいだろう。その驕り、その蛮勇、その高邁、私が直々に正してやろう」
「その意気やよし! 先に待っているぞ! 逃げるなよ巌勝!」
「ああっ……!? お待ちください房綱様! 風柱様に殺されますよ!!」
「頑張ってくださいね。巌勝君も房綱君も」
「おお! 風の型か! 見てみたいのじゃ!」
「そんなに見たいなら次から俺が模倣して見せてやる。それでは先に行っております兄上」
薫以外の野次馬達が房綱につられて風柱の修練場へと向かう。残されたのは静かな空間に男女二人。
「……かなり大事になったな」
「……巌勝君。次期柱との勝負ということで多くの人が見に来るよ。良くも悪くも実力を見せつけることができるんじゃない?」
「ああ、弟よりも兄の方が怖いことを鬼殺隊に披露してやろう。月の呼吸と日の呼吸は対照的だ。縁壱に向かうはずの嫉妬も受け止めるぞ。私の我儘で縁壱達へ迷惑はかけられん」
「私〝達〟の我儘だよ。大丈夫。がんばって」
「ああ、思う存分暴れてやるから見ていろ」
これは茶番である。ならば上手に躍るべき。
★
二時間後、風柱の修練場に巌勝らはいた。修練場と言っても屋外の広い土地のことであり、観客は周りの家の屋根に乗っているだけである。薫、縁壱らだけでなく柱と次期柱に加え、鬼殺の里に居る鬼殺隊や、隠達も集まってきている。雰囲気はお祭り。賭け事をするものまで現れた。強かである。
水柱は以前より強くなった巌勝に興味を示し、正助は爆笑している。
風柱は頭を抱え、道場に立った房綱を視線で殺しそうである。
岩柱は腕を組みながら堂々と静観し、琴音は巌勝をじっと見つめている。
炎柱は巌勝が柱となったことで上機嫌。そしてこの試合の原因である薫はいつも通りの無表情。
鳴柱は何故か悔しそうに歯噛みしていた。因みに愛染は薫の視界に入らないように隠れている。
もうすぐ柱合会議ということで柱全員揃い踏みである。
「巌勝! 準備はいいな!?」
「いいぞ。そして喜べ、観客が居る時点で私の飛月は余り力を発揮しない」
「っ! 手加減されているのは承知の上だが、やはり腑に落ちないな……!」
両者日輪刀を構える。巌勝の普通の刀は現在修理中。そもそもほかの日輪刀を使えば弔替に嫌味を言われる。人に向けるものではないが、仕方なく巌勝は日輪刀を抜刀する。
房綱は目を疑った。ついでに本人も瞠目した。
「な、なぜお前の日輪刀が赫い!?」
「……わからん。しかしこう……グッと握ると赫くなった」
「……」
「すまない説明不足だった。そうだな……」
「っ! «風の呼吸! 壱ノ型 鹿旋風・削ぎ! »」
房綱は初めのある程度近づいているその間合いを詰めようと風を纏って突貫する。月の呼吸の次に間合いの広い風の呼吸。纏う風は鎌鼬のように地面を抉り取りながら房綱の突貫を援護する。
しかし、月の呼吸は間合いの点で別格である。風の呼吸と比べるのも烏滸がましい。
«月の呼吸 陸ノ型 常世孤月・無間»
巌勝は跳躍し、房綱の頭上から万の剣閃を放つ。地面が捲り上がり、砂塵が舞い上がる。観客が騒めいた。飛月の色は今までの薄い水色や紫ではなくただ赫かった。初見のものは目を疑った。
「……くっ! «風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹»」
房綱は何とかして巌勝の真下から抜け出し、着地隙を狙って技を放つが、それも折り込み済み。連続の斬撃を至近距離で放つことが出来た房綱は月の呼吸の飛月を封じることができたと安堵するが、急遽巌勝は信じられない行動に出た。
«月の呼吸 肆ノ型 虧月突»
「なっ!?」
巌勝は突きを放つ。ただの突きではない。なんと突いた勢いのまま刀から手を離し、投擲したのだ。突きの軌道を逸らすために刀を横から叩きつけて軌道を逸らそうとした房綱は予想の位置に刀がなくとうに投げられた後だった為、空振る。
(しまっ……!?)
がら空きな脇腹に向けて巌勝の回し蹴りが直撃する。観客席から悲鳴が上がった。中には目を覆う者もいた。
「ご……っ!? 」
房綱は少しの滞空時間の後、地面を三度不時着した。ふらつきながらもゆっくりと起き上がる。しかし、内臓への被害は無視できなかった。救護班が立ち上がる。
「……っ! ま、まだだぁぁああ!!!」
既に巌勝は刀を拾って大上段に構えている。房綱は悲鳴を上げる体に鞭打って刀を構える。先程の言葉が脳裏に過る。しかし房綱は力任せに日輪刀を握りしめようが、色一つ変わらなかった。
(クソが! 一撃で終わらせる。……消耗させようだなんて考えるんじゃねェ! 一撃で傷だらけにしてやる……!)
(次の動きは……跳躍か。ならばこれだな)
«風の呼吸 玖ノ型 韋駄天台風»
今度は房綱が跳躍し、大小様々な斬撃を巌勝に放つ。痛みに耐えながらも放たれたそれは、観客が感心するほどの斬撃。観客が房綱に向けて、歓声を上げる。風柱は舌打ちをしながらも機嫌が少し治った。
だが、圧倒的な力の前には全てが無意味。そうとでも言うように巌勝は凄惨に笑みを浮かべた。房綱は全身が総毛立つ。
(不味い! まずい! 不味い! まずい!?)
«月の呼吸 玖ノ型 降り月・連面 »
巌勝は刀を上段から一振。
瞬間、空中の房綱に向けて、赫い三日月が降り注ぐ。空が赫く染まり、観客は表情を一転させた。再び悲鳴が上がる。此方にも、攻撃がくるのではないかと立ち上がって逃げ出そうとする者も現れた。
鬼のように無慈悲な技を放つ巌勝と、人らしく何度も起き上がり立ち向かう房綱。
(……なんだあれは。あれは────本当に人なのか?)
(斬撃が血のように赫い。鬼の血鬼術と酷似している)
房綱が血塗れで着地する。全て受けきったため大事には至っていないが、すぐに倒れ伏す。歓声は薫と縁壱達だけであった。圧勝にしては歓声がやけに少ない。柱も険しい顔をしている。他の鬼殺隊に至っては一人も拍手していない。すぐに隠が房綱を介抱する。巌勝の前を恐る恐る通って行ったのは気の所為では無いだろう。
(圧倒なんぞ生温い。これではただの蹂躙だな)
(内面も鬼か、岩柱として、本当に柱に推薦してよかったのか?太陽を克服した鬼だとすればまだ説明がつくぞ)
「御館様が決定されたことだァ。文句を言うのは間違っている。が、まぁこの惨状は考え物だなァ……」
(……まぁ、愛娘である薫を守ってくれる程強いのなら俺は諸手を挙げて歓迎だな!)
「むぅ。巌勝はんが歓迎されないのは分かっとったけどこれは余りにも鮮烈すぎやなぁ」
修練場の地面は地割れのような刀傷に覆われ、修復に時間がかかるだろう。凡そ人が作り出していい環境では無い。しかも十五にも満たない少年が。
「勝ったのは巌勝君です。これは事実」
薫はもう誰も二人を邪魔出来ないと喜ぶ。縁壱は無言ながらも目を輝かせ、うたは一番の大声ではしゃいでいた。だが、大半の鬼殺隊や隠は嫌悪感を隠そうとしない。鬼に家族を殺されたりした者達が鬼と同じような技を使う巌勝を忌避するのは当然の結果と言えた。
二週間後の柱合会議は嘘のように円滑に進み、巌勝は月柱へと、縁壱は柊哉の前で日の呼吸を披露し、晴れて鬼殺隊として認められた。
しかし、
血鬼術に似て禍々しい月の呼吸を使用する巌勝。
太陽のように鮮烈で温かい日の呼吸を使用する縁壱。
どちらに民意が傾くかは明白だった。鬼殺隊や隠の巌勝と縁壱に対する扱いの差に縁壱達は何度か激昂した。巌勝は気にしてはいなかったが。
しかし、柱合会議から一年後、炎柱・煉獄正寿郎が痣を発現し、名付きの鬼・崩落天の頸を満身創痍で切った後、急死。
その一月後、岩柱・明道院早百合が名付きの鬼・龍牛を痣を発現して退治後、数時間持ったものの急死。
炎柱の戦闘状態と死の淵ながら遺した岩柱の証言から最低でも三十を超えて痣が出た者にはその晩急死するという推測が建てられた。そのため、一種の呪いでは無いかという噂が鬼殺隊の中で広まり、その元凶とほぼ確定している月柱である巌勝は、多くの鬼殺隊に嫌疑されることになった。
幸か不幸か、巌勝と比較された痣持ちである縁壱はその美しく、正々堂々な剣技と他の鬼殺隊を慮る配慮と、連れているうたの太陽のような雰囲気が鬼殺隊の心を掴み、殆ど忌避されることなく、巌勝より半分の一年で柱へと昇格。本来受けるはずの縁壱への嫉妬は、全て巌勝へと向けられた。
薫の兄や縁壱、うたが責任をとらされて腹を切るのは耐えれない兄上。
このシステム武士らしいといえばそれまでですが、かなり凶悪っすね