黒死の刃   作:みくりあ

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これにて間章は終わりです。


鬼の娘 急

 鬼殺隊となった継国紫明の武勇伝は全くと言っていいほどない。柱相応の実力を持っていながらひた隠しにした。その時の産屋敷当主は幼年故に才を蓄えた蕾。花開くまでに、生き残った柱の子孫と次代の日柱が従わなければ鬼殺隊は消えていてもおかしくなかったのだ。言い換えれば絶対の存在であった産屋敷一族の権力が衰え、次代の日柱達とそれを二分する形になった。

 しかし産屋敷は壊滅状態の鬼殺隊を持ち直すために否が応でも人手を増やす必要があった。育手すら片手で数える程しか生き残っていないが想いを受け継いでいくためには現実的な数がいる。結果は心配するまでもなく、増えた鬼殺隊は個々の力が前の時代より劣っているものの運良く優秀な武士が多かった。

 あとはより隊としての統率力を底上げするために権力の全てを産屋敷の一存にすればかつての鬼殺隊に戻すことが出来る。しかしそれは誰もが望む形ではなかった。

 鬼殺隊が鬼殺隊として存続できるように、より混乱を起こさないような形で引き金を引いたのは継国紫明であったのだ。

 

 

 

 ★

 

「……近い……«全集中»」

 

 女の姿形を一言で表すとしたら、それは紅蓮であろうか。

 血のような黒ではなく花のような明るい赤を瞳の奥に押し込み、纏う着物は血を弾くような加工がされており夜の光を反射する。肌は血の通った白過ぎずかといって日焼けの少ない色。煌めく髪は少々黒に近い赤をしており、訳を知るものはその色が人工的に作られた色だと分かっている。

 それらが霞むほど存在感を示しているのは背中に背負われた長大な代物である。女の身長すら優に超えるそれは穂先が布に包まれた方天戟だ。

 

「ア、マテ! アルジヲ置イテイクナ!」

 

 制止を求める声を無視して女は足早に駆け出す。月光の煌めく夜道を街へと進む。自身の体重よりも遥かに重い得物を背負いながらも、鬼殺の伴として鍛えられた烏が飛ぶより速く大地を駆ける。一体この細く長い足のどこから推進力を得ているのかは秘密である。ただ手遅れだとは分かっていても被害が少なくなっていることを願って走る。

 

 

「いやぁあああああああ!!!!」

「おい! ぶつかるな殺すぞ!」

「とと! かか!」

 

 そこには沢山の人がいた。それらは荷物を背負い、子を背負い、怪我人を背負いながら逃げ出している。顔は恐怖に凍てつき、阿鼻叫喚の地獄を拡散していた。

 

「街が赤い。鬼にしては有象無象が多すぎる……」

 

 本来ならありえない。人が逃げてくる方向に鬼がいるのは確定。だが鬼は姿を隠すことが第一。破った暁には鬼舞辻無惨からの折檻が待っている。ならばなぜこんなに目立つようにして戦っているのか。

 ふと人混みの端で黒ずくめの人間を見つけた。

 

「のう隠」

「あっ……鬼殺隊ですか!?」

「でなければ可笑しいであろうが。情報を寄越せ。隊士の名は? 人数は? 鬼の姿形は? 血鬼術の内容は? 数は?」

「た、戦っている隊士は二名。名は継国」

 

 継国。その単語を聞いた途端、剣士は自身の最高速度で走った。

 継国姓を持つ鬼殺隊と言えば継国縁壱の双子の息子しかいない。ヒトという種族の特殊個体とも言える彼の血を引く二人の身に何かあったに違いない。後ろで何か叫ぶ声がしたが無視して走る。己の足を止めたいのなら止めてみろ。鬼殺の長とて止められなかったこの足を。

 屋根から降りて、角を曲がる。人気は減る一方で、燻る火の音は増える一方。焼けた家の煙が肺を犯す。

 

 

 

 そこには、血。血。血。腕。血。血。血。頭。血。足。血。足。血。腑。血。腑。血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。足。足。血。人。血。頭。血。血。腕。血。血。血。血。血。血。血。頭。血。皿。血。頭。血。血。血。腑。血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。手。血。血。足。血。血。血。血。血。血。血。血。血。があった。

 

 

 骨の突き出た足は遊戯の過程でもぎ取られたことが分かる。爪の剥がれた指は抵抗したことが分かる。苦痛に歪んだ形相の顔は痛みと共に切り落とされたのかわかる。

 そしてそれらの部位は生きていた。脈動し苦痛に喘ぐようにして暴れている。切断面からは百足のような血管が何かを探す手のように何本も束になって蠢いている。蹂躙されているのは鬼。生かさぬように殺さぬようにして放置されている。鬼殺隊は総じて鬼に恨みを持っているがだとしてもやりすぎだと思った。

 

「……っ! あなた達!」

 

 片や蠢く肉塊に頭を突っ込んで臓腑を貪る人。

 片や未だ生きている手足をゆっくりと食べている人。その瞳は女を見つめていた。瞳孔は充血しながらも、二人とも日輪刀を握っている。それはあやしくも人である証。

 襲われているのは人では無い。鬼だった。鬼が何度も再生しその度に喰われている。不死性はもはやないも同然。このまま放置しても再生することなく日光が塵に還すだろう。

 

「どうして……昊羽、櫂晴。私のたった二人の友達。どうしてなの?」

「あァ゛?」

「ああ、どうしてだろうね。君の気配はいつも分からない」

 

 赤髪の女剣士・紫明は言葉が出なかった。彼女の頭が最大限に回転する。幾ら考えても理解できなかった。目の前の彼らが鬼になるなど想像すらしていなかったのだ。二人はあの日柱・継国縁壱の息子。最強を約束された神子。有り余る才能のどこが不満だったのかと紫明は思った。方天戟を持つ手が震える。

 

 人はなぜ道を踏み外すのか。目先の事物に目が眩んだのか。悪人の口車に乗せられたのか。ただ狂ったか。踏み外したことに気がつくのはいつだって取り返しがつかなくなったあとだ。些事であれば誰でもする。問題はそこでは無い。

 引き返せるかどうかである。もはや二人は人じゃない。人の道を外れている。

 

「いや。違う。違う。どうして鬼を食べているの? ……鬼食いでもないあなた達がそんなことをする必要性なんてないのに」

「気を悪くさせた? ごめんね。でも必要なことなんだ」

「近寄らないで!」

 

 昊羽は向き直るとぬらぬらと歩いてくる。

 そんな彼に向けて方天戟の布を取り払い、突き付ける。しかし刃が胸板に食い込もうが距離を縮めてくる。刃を赫くするなど以ての外、かと言って今の二人は得体がしれない。肉体的な意味ではない、その点で言えば紫明にとって鬼殺隊など暗殺集団となんら変わりない。大事なのは精神が人か鬼かである。

 

「変わらない。変わらないよ。鬼の血肉はなんの意味もない。ただ身を蝕まれるだけ。復讐心に身を委ねて鬼の肉を食べようとした隊士が今までにいなかったとでも?」

「……」

「食べても強くならない。これは事実」

 

 根負けした紫明が武器を引いた。昊羽の着物を血が汚す。方天戟の精巧な装飾を伝って手に達する。

 

「……父様と師匠に報告する。いいよね」

「……ああ」

 

 紫明は複雑な表情を浮かべた。どう考えてもこれは紫明の胸の内に秘めておくわけにはいかない。黙って後退することに決めた。

 

 

 

 

 

 

 とん。

 

 

 

 

 

 

 何かに背中をぶつける。

 いつの間にか後ろにいた櫂晴が紫明を見下ろしていた。口の端から滴る血が紫明の頬を汚す。口元は笑っていたが目は笑っていなかった。紫明はその表情に見覚えがあった。それは櫂晴が自らの子供に向ける表情だった。

 

 

「じゃあ殺さなきゃね」

「え?」

 

 正面の昊羽が話す。形だけの笑みを浮かべている櫂晴と違って彼ら諦めたような、仕方の無いような表情を浮かべていた。

 

「殺す?」

 

 上手く飲み込めなくて紫明は聞き返した。

 

「私が黙っているとは考えなかったの?」

「お前はそういう奴じゃない」

「御館様に知られたら切腹は免れないし、それによって家族に迷惑はかけられない。これでも二児の父だしね」

「違うよ。もう一人、生まれているの。知らないの?」

「あー。うん、知っていたさ。忘れていただけで」

 

 落ち着いた振る舞いを見るに鬼食いは習慣的に行われていたのだろう。日輪刀で首を切れば鬼の体は塵となる。その前に喰う。痣者の実力では鬼は簡単に無力化できる。鬼の肉を食べた口で妻に愛を囁き、子に言葉を教え、父に教えを乞うたのだ。

 紫明は吐き気がした。鬼を食べたことにでは無い。子を忘れていたことにだ。自分に当て嵌めてみる。父親と母親の記憶から己が消滅すると考えただけで吐瀉物が食道をせり上がってきた。

 

「貴方の子供を見たことがある。剣に没頭して姿を見せない父を恋しがってた。三人。みんな会いたがっていた。まだ一人で生きることすら儘ならない歳の男の子。ようやく言葉を覚え始めた女の子。乳母の腕に抱かれている男の子」

 

 昊羽は、はぁと溜息をついた。

 

「武士の子供はそういうものだよ。杓子定規に考えて欲しくないな」

「昊天、貴方の妻は……働き手を失い、子を抱える女は……これからどうやって子を養っていくというの? 鬼食いをした剣士の家族を鬼殺隊がただで置いておくと本当に思っているの?」

「父上が育ててくれる。でも紫明。君が死ねば、私達はその心配をしなくていい。無事に家に帰れるのだから」

「頼むから死んでくれ。お前が生きていると不都合なんだ」

 

 友人であろうと敵なら殺す。彼ら武士なりの人生観。きっとそれはごく当たり前でひとつの正解でもあるのだろう。ある日突然友人に刃を突き立てられた側はたまったものではないが。

 

「おかしい。間違ってる」

「何がおかしい? 誰も人間は傷つけていない。鬼殺隊の名の通り鬼は殺している。おかしいのはお前の方だ。紫明。鬼の娘、継国紫明。今は天月夜叉と名乗っているのだったか?」

「黙って」

 

 町の火は勢いよく燃え盛っている。人の悲鳴も家屋が倒れる音もやまない。

 

「二人は父様に報告する。もしかしたら叔父様の耳に入っちゃうかもね」

 

 «日の呼吸 壱ノ型 円舞»

 «日の呼吸 拾弐ノ型 炎舞»

 

 二人の斬撃を紫明は退かずに受け止める。踏ん張った両足から地割れが広がるほどの威力。

 紫明の心は獰猛に歓喜した。ああそれでいい。ごちゃごちゃ御託を並べて口論したところで鬼は止まらない。きっと崇高な目的があったのだろう。痣者特有の短命が迫っているとしても家に帰りたいだとか、父親に認めて欲しいだとか。

 だがそんなことはどうでもいい。鬼となったからには絶望の中で殺さなければならない。いつか蘇ったとしても家族に手を出されないように。

 

「私はね。八十過ぎまで生きることが出来るの」

 

 紫明はもう片方の手で着物の肩口を掴み胸元をはだけさせた。そこから覗くのは着痩せにより小さく見えていたはずの胸部とそれを覆うようにして出来た痣。双子のそれよりも広く、濃いそれは元日柱のよう。

 恥じらいよりも早く二人の顔が揃って憤怒に滾る。双子らしいところもあるなと場違いなことを紫明は考えた。

 

「私ってとーっても強欲な女なの。今のままで十分幸せだけどそれ以上を望むくらいにはね。父様達の幸せに師匠は必要だけど、私の幸せにあなた達は必要ない」

 

 いつの間にか背後に立っていた紫明が、彼らの間の地面に突立っている方天戟を抜く。紫明の手に渡った途端、刃が赫く染まっていく。

 赫い刃。

 それは鬼を殺す色。地面から抜き放つと同時に構える。二人が後ろに振り向くよりも早く……

 

「貴方達は……痣の寿命で死んだ。そう父様達に伝える。師匠にも」

 

 

 

 

 

 

 

 ────斬

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★

 

 雨が降り出した。蒸気が靄となって当たりを覆う。

 

「師匠とうたさんは双子君の育て方を何も間違えてなかった。間違えて無さすぎたのかな。いや、きっと君たちも焼かれたんだね。分かるよ、痛いほど」

 

 事切れた二人。日輪の耳飾りは血に濡れ、描かれた太陽は錆色に曇っている。比較的新しいそれは二人が成人の際に縁壱が作り送ったもの。本当に縁壱が彼の母より授かった耳飾りは今、炭焼きの耳で輝いている。血を知ることなく。穏やかに。

 

「速ィ! サスガハワガハイカ…………」

「かや」

「オオッ! ……ジ、ジゴクエズ……ワガハイカヨ、イキノコリヲサガセ!」

「斯様な汚れ仕事は妾の務めでは無い」

 

 独特な一人称と高慢な態度は舐められないようにするため。舐められて得をすることなどないのだ。二人の死体に近寄り、目を閉じさせる。

 

「継国昊羽、継国櫂晴。二人で一本の柱。二方は勇ましく鬼を討伐するも痣の反動によって息絶えた」

 

「ォ……オオオオ!!! 柱ガ倒レタ……由々シキ事態。産屋敷様ハカナシマレルカ……()()()()

 

 かやは翼を震わせた。産屋敷と柱との関係性は様変わりすると確信したのだ。日柱と産屋敷で二分されていた鬼殺隊が、日柱の死によって皮肉にも産屋敷にとって良い方向に。跳ねた雨粒が紫明の頬にかかり、嫌そうな顔をした。

 

 

 ★

 

 ある晴れた日。鳥のさえずりと風のざわめきが耳に入る春の日。

 みすぼらしい小屋に二人の男女がいた。ここだけ聞くと困窮した農民だが二人はそうではなかった。実際この小屋は二人のうち男の方の妻が、引っ越しても前から続けていた生活を続けていたいと願った故に豪華な屋敷に接続される形でこの小屋が作られたものである。また女の傍には方天戟が突き立ててある。

 二人は師弟であった。

 

「ねー師匠」

「なんだ」

「私って行き遅れでは?」

 

 縁壱は茶を吹いた。気管に入った分を吐き出すために、ここ数年した事の無い咳を何度かした。そして何事も無かったかのように姿勢を正して紫明の方に体を向け一言。

 

「気の所為です」

「ししよー? 私の目を見て言いなー?」

 

 紫明の体型は母譲りが六割、父譲りが四割である。少なくとも本人はそう思っている。黙っていれば傾国の美姫と称しても差し支えない顔貌は母から一割。物憂げに顰められた切れ長の眉や端正な輪郭は一割ほど父親と似ている。顔から下は母譲りで、平均より少し大きい程の胸部、着物からは分かりにくいが細い腰、安産型の臀部。母親のように成長の余地があるこれらは男とっては垂涎の的で同じ女の嫉妬と羨望を集める。そういうところは五割ほど母親譲りなのだろう。

 問題は残った三割。これが物理的なもので率直に言うと身長が他の女性と比較して三割増で大きい。五尺半程度(170cmと少し)といったところ。江戸女性の平均身長がそれより一尺(30cm)ほど低いと考えるとかなり逸脱している。

 紫明はそれをあまり気にしなかった。母親は自分と同じぐらいか少し低いぐらいであるし、父親と叔父はかなり高いが見慣れている。昊羽と櫂晴は少し高かったし、叔母は低すぎて可愛かった。

 

「髪と目は戻したようだな」

「話を逸らした……偽紫明こと鬼殺隊士天月夜叉は上弦に遭遇して死亡ってことになってる。潮時だったんだよ。もういいかなーって」

「……その上弦の鬼の名前は?」

「云うまでもなく父様に一芝居うってもらったよー。だから刀を置いて?」

 

 縁壱は目を伏せた。自分の何倍も小さな背中に背負わせたのは、背負って欲しくなかったものばかり。

 

「…………苦しくはないか?」

「苦しい?」

「私の作った呼吸。兄上の娘。嫌味に聞こえたら申し訳ないが我らは〝辿り着いたもの〟普通では無いし、人の器ではない。この差がどこか重荷となっているのならば」

「え? 何言ってるの? かっこいいじゃん」

 

 縁壱は目が点になった。

 

「かっこいい?」

「うん。

 いやだって父親は背が高くて刀から斬撃を飛ばせる元鬼殺隊の柱で現在は鬼の侍でしょ? 母親は父親一目惚れ乙女で鬼だから若々しくて多分めっちゃ強いのにお淑やかで何より金髪だよ金髪。黄金の髪だよ? んで師匠はもう最強。箸で鉄塊を断ち切りそうなぐらい強い。そんな鬼強い師匠を射止めたのが悪くいうつもりは無いけど普通な叔母さん。

 こんな境遇、誰もが羨むほどかっこよくない?」

 

 縁壱の心配は杞憂だった。紫明が両親に向ける愛情にかかれば異質すぎる境遇など霞む。口早に捲し立てる威容は信仰じみている。

 紫明は立ち上がった。腰に手を当て、縁壱に振り返り、見下ろして一言。

 

()()()()()()()()()()。私が私であり続けるにはそれだけで十分」

 

 

『胸を張れ、縁壱』

 

 

 縁壱の瞳の中で姿が重なる。産まれたばかりの赤子を抱き上げたような。言葉にならない感動が押し寄せた。ああ目の前の女子は継いでいる。未だ不安定な完全無欠の面影を継いでいる。この喜びをなんと言う。

 

「私が父様にとっての叔父様になる」

「紫明」

「父様の隣で日の呼吸を振るい続けるよ。月を照らす太陽は私が担う。……父様と一緒に鬼にならなかったことを後ろめたく感じているなら残念無念。父様の太陽の座は私が頂いたのだ〜」

 

 眩しい。自分にも、恐らく兄にもない輝きを縁壱は目にした。

 

「それは……少し嫉妬する」

「駄目?」

「いいえ。……私の日の呼吸が兄上と共にある。六つ目になろうが、体中から刀が生えてこようが。紫明は私の弟子に変わりない。いつかお前も幸せになって欲しい」

「……私は十分幸せだけど?」

「あなたは昔の私によく似ている。兄上しか知らなかった私に。大丈夫だ。いつか気づく時がくる」

「……また難しいこと言ってる」

 

 膨れっ面をする紫明を横目に縁壱は腰帯に刀を差した。置いてあった団子を三串まとめて頬張ると立ち上がった。リスのように膨らんだ頬っぺたを除いてどこか吹っ切れた顔をした縁壱に紫明は嫌な予感がした。

 

「特訓しよう」

「うぇえ。今ものすごく綺麗に決まったのに? 終わりでいいんじゃない?」

「お前が嫌でも、私の時間は有限だ」

「それ私達にとっての殺し文句だよ??」

「兄上に冗談半分で言ったら、無言で抱きつかれて泣かれた。そして夜の祭りに連れて行ってくださった」

「父様……」

「兄上が私のために泣いてくださるのは、こう……なんだかとても堪らぬ心地だった。また言って見ようと思う」

「師匠……」




縁壱
薄々勘づいているが、言わない。それは鬼殺隊として正解で、親として不正解なのだろう。

とうとうこの次が童磨の章です。いや長かった。お楽しみに
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