GetBackers -奪還屋- Parallel Universe   作:世紀末ドクター

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第一話『事のはじまり』

 ―――美堂蛮と天野銀次、

 

 この二人の名前を知っているだろうか。

 新宿の路地裏の奥にある「裏新宿」という街で、奪還屋『GetBackers』という裏稼業を営む二人組である。

 奪還率100%を誇る無敵の奪還屋(自称)との触れ込みだが、依頼の品が無事に依頼人に届くかどうかは少し怪しい。

 しかし、依頼の成功率は抜きにしても、彼ら二人と一度でも戦ったことのある人間は誰もが彼ら二人のことを油断のならない強敵と認めているという。

 

 

「『GetBackers』のお二人についてですか? ええ、やはりあの二人が一番楽しい遊び相手ですね。特に銀次君は面白い反応を返してくれるので、弄り甲斐がありますよ」

 

 

 ちなみにこれは裏稼業の世界では最強最悪の「運び屋」として知られる赤屍蔵人の言である。

 取るに足らない退屈な敵が相手ならば一切の容赦なく瞬殺する赤屍の性格を考えれば、ある意味、これは彼なりの最大級の賛辞の言葉とも言えるだろう。

 このようにライバル関係にある裏稼業の人間からの評価は高いのだが、その日の食事にも事欠く日々が続く事もあるのは何故なのか。

 駐車禁止のレッカー移動を喰らったり、『Honky Tonk』のツケを増やしたり、奪還に成功しても不注意から依頼品を壊してしまったり…etc

 あの無限城での戦いが終わった後も、彼ら二人はそんな感じのドタバタした日々を過ごしているらしい。

 そんなドタバタとした日常を過ごしていた蛮と銀次の二人だったが、どうやら運命を司る女神は彼ら二人を放って置いてはくれなかったようである。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ―――裏新宿『占い横町』、

 

 占いと聞くと女子高生がキャピキャピ騒ぐようなイメージを抱くかもしれない。

 だが、裏新宿『占い横町』と呼ばれるその場所はそんなイメージとはかけ離れ、人生の墓場にも例えられる場所である。

 ここに来る人々は、夜逃げや自殺をするか内蔵を売ってその場を凌ぐしか道のない、地獄に片足を入れているような者ばかりだと言われ、さらに占い師の大半は、人買いや悪徳金融とつながっているか、インチキ宗教・呪い屋などだという。

 そして、その町の一角にマリーアが店主を務めるカード占いの店『カルタス』はある。

 

 

「…ったく、何で俺らがババアの店の大掃除の手伝いをしなきゃならねーんだっつーの」

 

「まあまあ、蛮ちゃん。どうせ仕事も無かったし暇だったんだからいいんじゃん? それに手伝ったらご飯ご馳走してくれるって言ってたし!」

 

 

 店の地下倉庫の中では、蛮と銀次の二人組みが荷物を運び出す作業をしているところだった。

 周りには埃を被った古い本や何に使うのか分からないガラクタまで色々な物が置かれており、作業はまだ全体の半分も終わっていない。

 

 

「しかし、いくらメシ奢ってもらえるからってこの仕事量は反則だぜ…」

 

 

 周りを見渡して蛮は思わず顔をしかめる。

 さっきから荷物を運び出しても運び出しても減っている気がしない。この調子では片付けが終わるのに一体何時間掛かるのか分かったものではない。

 それにしても、さっきから倉庫の奥から出てくる品のラインナップが段々と可笑しなことになっているのは気のせいだろうか。

 

 

「あ! 蛮ちゃん、これ『バーチャルボーイ』だよ! ほら、あの赤い画面の!」

 

「馬鹿なっ! こっちには『ピピンアットマーク』だと…!?」

 

 

 家庭用ゲーム機の黒歴史に認定されそうな代物を発見した二人だが、これはあくまで一例である。

 さっきから四角ボタンの初代ファミコンやPCエンジンなど、およそ占い屋に似つかわしくないマイナーゲーム機やガラクタが続々と発掘されている。

 他にも買ったは良いが使わずに放置していたと思われるランニングマシーンやストレッチ器具などが数え上げればキリがない。

 

 

「何つーか、黒歴史の見本市みたいな状態になって来たな…」

 

「そうだね…」

 

 

 ここがマリーアの店の地下倉庫である以上これらは全てマリーアが収集したものなのだろう。

 だが、ここまで黒歴史的な品物ばかりが発掘されると流石に呆れてしまう二人だった。

 とりあえずさっさと荷物を運び出してしまおうと作業を再開する二人。

 しかし、二人が作業を再開しようとした所でちょうど地下倉庫へと入ってきた女性が居た。

 

 

「どう? 仕事は、はかどってるかしら?」

 

 

 波うつ豊かな黒髪と褐色の肌、女神のプロポーション。

 知らない人が見れば、この女性が100を超えようとする年齢だとはとても信じられまい。

 現れたその人物の名は、マリーア・ノーチェス。魔術という名の神秘を修めた本物の『魔女』の一人であり、現存する神の記述の持ち主の一人である。

 そして、蛮の育ての親とも言うべき人物であり、蛮がただ一人頭が上がらない人物でもある。

 

 

「これがはかどってるように見えるなら、テメェの目は節穴だぜ」

 

 

 そう言って蛮は皮肉気に周りの様子を顎で示す。

 

 

「フフッ、随分苦労してるみたいね」

 

「全くだぜ。美味いメシ奢ってもらわなきゃ割りに合わねえ」

 

「ええ、分かってるわ。時間的にも丁度いいし、そろそろ昼食にしましょう」

 

「ご飯? やったー!!!」

 

 

 昼食にしようと言われて、顔をパアッと明るくさせ思わずタレ化する銀次。

 そうして、銀次はトテトテと地下室の階段を昇って行く。

 

 

「蛮も行きましょうよ」

 

「ああ」

 

 

 しかし、蛮がその場から歩き出そうとしたところで平積みに置かれていた本が足元に引っ掛かった。

 

 

「おっと」

 

 

 平積み本が崩れ、何冊かの本がバサバサと床に落ちる。

 

 

「ん…?」

 

 

 ふと蛮は気付いた。

 よく見ると床に落ちた本の一冊が他とは雰囲気が違う。

 

 

「これは…」

 

 

 気になって拾い上げてみると、やはり普通の書籍ではなかった。

 豪華な革装丁本に見せ掛けてはいるが、実際はカードを納めるカードケースになっていることに気付く。

 そして、何より、その表紙に書かれたタイトルは蛮にとって見覚えがあるものだった。

 

 

 ―――『The Divine Design(神の記述)』、

 

 

 以前のルシファーとの戦いの際、蛮たちはこのカードに関わったことがある。

 つい立ち止まったままその時のことを思い出していた蛮だったが、その様子を不審に思ったのかマリーアが話し掛けてきた。

 

 

「どうしたの、蛮? って、それは…」

 

 

 蛮の手元にある物にマリーアも気付いたらしい。

 だが、どういうわけかマリーアは酷く驚いた顔をしている。

 

 

「何をそんなに驚いてんだよ? この倉庫にある以上、テメェの所持品だろうが?」

 

「いいえ、これは私のカードじゃないわ。私のカードは普段使ってる書斎の方に置いてあるはずだし…」

 

「もう一組持ってたのを忘れてただけなんじゃねえのか?」

 

「うーん、そんなはずはないんだけど…。ちょっと貸してくれる?」

 

 

 そうしてマリーアは蛮から本型のカードケースを受け取ると、ケースの留め金を外す。

 ケースの表紙を開いて見開きの右側のページの部分を見ると、そこには数枚のカードが収められていた。

 

 

「カードが4枚だけ?」

 

 

 ケースに納められていたカードの総数は4枚。そして、彼女はその内の一枚を手に取った。

 どこまでも続く荒野の地平線のイラストが描かれた一枚のカード。

 もしもそのカードのタイトルを日本語に訳すとするなら…

 

 

「『セカイの最果て』……?」

 

 

 それがそのカードに書かれたタイトルだった。

 そして、彼女がそのカードのタイトルを呟いた瞬間にそれは起こった。

 

 

 ―――ゴゥッ!!!

 

 

 瞬間、マリーアが手に持っていたカードが爆ぜ、特大の暴風と閃光が地下倉庫の中に発生する。

 

 

「んなっ!?」

 

「っ――――!?」

 

 

 まるで行き場をなくしたチカラが暴走するように地下室の中を風が吹き荒れている。

 青白い光を放つエネルギーの奔流が部屋の中を竜巻のように吹き荒れ、本や魔術器具などが巻き上げられている。

 しかも時間が経つにつれて部屋の中を吹き荒れるエネルギーの勢いは増していった。

 

 

「蛮ちゃんどうしたの!?」

 

「銀次か!?」

 

 

 地下室の異変に気付いたのか、慌てた様子で銀次が階段を下りてくる。

 

 

「って何だコレ!!?」

 

 

 風が吹き荒れる地下室の様子を見た途端、驚きの声を上げる銀次。

 

 

「マリーア! 何が起こってやがる!?」

 

「分からない! でも、警戒だけは解かないで!」

 

 

 勢いを増していく風の中、マリーアは蛮たちに注意を呼びかける。

 だが、結果から見れば、いくら注意をしろと言われても具体的に何に対して注意すればいいのか分からなかったのでは、対処のしようがなかったと言うしかない。

 やがて部屋の中に渦巻くエネルギーが臨界に達したかのように一際強力な閃光が発生した。

 

 

「「「っ―――!?」」」

 

 

 まるで彼らを飲み込むようにして発生した白色の閃光。

 そのあまりの眩しさに思わず目を覆うが、光は一瞬だけだったのですぐに収まった。

 そして、その光が収まった時、それまで周りに吹き荒れていた風も嘘のように止まっていることに気付く。

 

 

「チッ、一体何だってんだ?」

 

 

 風と光が収まった後、目を覆っていた腕をどけてみる。

 だが、そうして彼らの目に映った風景は、彼らがさっきまで居たはずの地下室とは全く別のものだった。

 

 

「「「は…?」」」

 

 

 突然の事態に思わず間抜けな声を出してしまう三人。

 彼らが周りを見渡すと風化しかけた煉瓦を敷き詰めた床に浅い水溜りが果てしなく広がっており、無数の線が碁盤目のように天井一体を交差している。

 そこは一目見ただけで明らかに"異界"と分かる場所であり、彼ら三人が一度だけ来たことがある場所だった。

 

 

「蛮ちゃん、やっぱりここって…?」

 

 

 銀次は蛮とマリーアの二人に視線で訊ねる。

 その先の言葉は出さなかったが、マリーアと蛮の二人も銀次が言いたいことは分かっている。

 二人は周りの景色を眺めながら銀次に同意した。

 

 

「ああ…、オメェが思ってる通りの場所だろうぜ」

 

「……そうね」

 

 

 グラウンド・ゼロ―――、

 

 そこはこのセカイの全ての始まりの場所であり、かつてはバビロンと無限城セカイをつなぐゲートが存在していた場所だった。

 その意味では先程マリーアが手に取ったカードのタイトルの通り"セカイの最果て"と言える場所であり、【悪鬼の戦い(オウガバトル)】と呼ばれるセカイを賭けた戦いが終結した場所でもある。

 

 

(チッ、ひょっとしたらまた面倒なことになるかもな…)

 

 

 思わず内心で蛮はそう舌打ちする。

 状況的には神の記述のカードが暴走するように発動したことで、ここに飛ばされたとしか考えられない。

 だが、この場所に飛ばされたことも、何かに巻き込まれる前触れの様な気がしてならない。

 そして、結果的に見るなら蛮のその予感はやはり外れることはなかった。

 

 

「おや…、これはまた随分と珍しい客人だな…」

 

 

 突然、蛮たちの後ろから声が響く。

 蛮たちがその声に振り返ると、そこにはウサギの人形を抱いた少女が佇んでいた。

 まるで『不思議の国のアリス』を思わせる幼い外見だが、どこか得体の知れない不気味な雰囲気を持つ少女。

 ブレイントラストのメンバーの一人、間久部博士だ。

 

 

「……何でテメェがここにいやがる?」

 

 

 突然の来訪者に警戒心をむき出しにして蛮は尋ねた。

 

 

「フム…、それはどちらかと言えばこちらの台詞なのだがね。まあいい。私がここに来た理由はただの調査だよ」

 

「調査?」

 

「そうだ。かつてこの場所は、バビロンシティとこちらの世界を繋ぐゲートが在った場所だったということは知っているだろう?だが、このセカイとバビロンとの繋がりが断たれたことで、今この場所は別のあらゆる次元と繋がりやすい不安定な状態になっているのさ」

 

「つまり、それを調べるのが貴女の目的ですか?」

 

「まあ、そんなところだ。もっとも、調査自体はもうほとんど終わっている。

 次元が不安定になっているのも恐らく一過性のもので、あと数週間も時間が経てば収まるだろうさ。もっとも一応、念のために監視役は置いておくつもりだがね」

 

 

 博士の話に嘘を吐いている気配はない。

 もっともこの少女が"あの"ブレイントラストの一員だということを知っている者なら、彼女の発言を無条件に信じることはしないかもしれない。

 事実、蛮の方は他に何か良からぬ事を企んでいるのではないかと未だに博士に対して疑いの目を向けているくらいだ。

 

 

「他には何も企んでねえんだろうな?」

 

「……君が私のことをどう思っているか良く分かる台詞だな」

 

 

 そう言って、博士はやれやれと苦笑い気味に肩を竦める。

 そして、彼女は溜め息を一つ吐くとマリーアと銀次を含めた3人に向かって尋ねた。

 

 

「…まあ、私のことを信じる信じないはどうでもいい。それより今度はこちらが訊く番だ。どうして君たち三人がここにいる? 君たち三人が今さらこんな場所に何か用があるとは思えないが?」

 

「どうしてここに居るって訊かれても……」

 

 

 思わず困惑顔になる銀次。

 彼ら三人としては気付いたら、この場所に飛ばされていたという感じだろう。

 だが、飛ばされた切っ掛けがあるとしたら間違いなく『コレ』だったはずだ。

 

 

「…おそらくですが、私達が飛ばされた原因はコレだと思います。カードの力が暴発してここに飛ばされたとしか…」

 

 

 そう言って、マリーアは手に持っていた神の記述のカードを取り出す。

 そして、そのカードを見た博士は納得したように言った。

 

 

「なるほど…。そのカードが原因だったか。神の記述の原型になったプロトタイプ……、全て処分したと思っていたがまだ残っていたのか」

 

 

 プロトタイプという聞き慣れない言葉。

 その言葉に神の記述に関しては蛮や銀次よりも遥かに詳しいはずのマリーアですらが驚いた顔をしている。

 マリーアの様子を見る限り、彼女もそんなカードが存在しているということ自体知らなかったようだ。

 

 

「プロトタイプ…? 私の持っているオリジナルのカードとは違うのですか?」

 

「基本的には殆ど同じだよ。だが、そのカードに秘められている力は君が持っているオリジナルのカードを遥かに上回っている。そのカードを100%完璧に使いこなせる者は、恐らくはウィッチクイーンくらいのものだろうさ。素人が下手に扱おうとすればそれだけで暴発しかねない危険物でもある」

 

 

 マリーアの所持するオリジナルのカードよりも、さらに強力な力を秘めたカード。

 しかも博士の話が事実ならマリーアですら使いこなせない代物であり、ちょっとしたことで暴発してしまうような代物らしい。

 

 

「…ってことは、オレ達がここに飛ばされたのも?」

 

「単純にこのカードの暴発に巻き込まれただけってことかよ…」

 

 

 言いながら蛮はマリーアの方をチラリと見る。

 その視線に気付いたマリーアは表面上は笑顔で、しかし恐ろしく抑揚のない声で蛮に訊いた。

 

 

「……何か言いたいことでもあるのかしら、蛮?」

 

「べっつに~? カードの力が暴発したのは、どっかの誰かさんの所為だなんて欠片も思ってねえから気にしないでいいぜぇ?」

 

 

 蛮とマリーアの二人の間に火花が散る。

 もっとも二人とも本気でケンカしている訳ではなく、じゃれ合う様な遊びのケンカだ。銀次もそれが分かっているから何も言わずに放置している。

 そして、そんな漫才のような彼らのやり取りを見ていた博士はフッと小さく笑うと銀次に言った。

 

 

「…君たちは相変わらずだな」

 

「そうかな?」

 

「ああ、余りにも変わっていなくて安心したよ」

 

 

 銀次と話をしながら、彼女はバビロンシティで彼が言ったある台詞を思い出していた。

 それは銀次がバビロンシティに辿り着いた後、母親である天野博士に会った時に言った言葉だ。

 

 

 ――オレが望む『世界』はオレが知っているあのセカイです。仲間がいて…友達がいて…敵もいて…見知らぬ誰かもたくさんいて…でも、すべてがオレの知っているあのセカイであってほしいと願います―――

 

 

 この台詞だけで天野銀次という青年の人となりが良く分かる気がする。

 博士は何か思う所があるのか、銀次のことをジッと見つめた。

 

 

「な、なに?」

 

 

 中身はいざ知らず、仮にも美少女に見つめられて狼狽する銀次。

 どうやら彼が女の子に弱いのも相変わらずらしい。博士はそんな彼の様子に小さく笑みをこぼした。

 

 

「…いや、何でもないよ。それはそうと、用が無いなら君たちも早くこの場所から立ち去った方がいい。さっきも言ったが、今のこの場所はあらゆる別の次元と繋がりやすい不安定な状態だ。下手に長居していると次元の揺らぎに巻き込まれる危険がある」

 

 

 そう忠告すると、彼女はこの場所から立ち去ろうと踵を返す。

 だが、数メートル歩いた所で不意に銀次に呼び止められた。

 

 

「あの~、ちょっと聞きたいんだけど、次元の揺らぎってひょっとしてこういうヤツ?」

 

「…?」

 

 

 銀次が指差す先には、未だに言い争いを続けている蛮とマリーアの二人が居る。

 二人はゴゴゴゴという擬音で表現されそうな気迫を放っており、その気迫の所為でまるで空間が歪んでゆくように見える。

 いや、歪んでいるように見えるのではなく、これは実際に空間が歪んでいる。

 

 

(……これはマズイな)

 

 

 規模的に大したことはないが、ケンカ中のマリーアと蛮は全く気付いていない。

 すでに歪みは臨界に達する寸前であり、このままでは確実にここに居る全員を巻き込むだろう。

 もっとも間久部博士だけは予め対策を施した上でこの場所に来ているため、彼女だけは次元の歪みに巻き込まれずに済むはずなのだが。

 

 

「ん?」

 

「あら?」

 

 

 流石に蛮とマリーアの二人も気付いたようだがもう既に遅い。

 瞬間、周囲の空間がぐにゃりと歪み、歪みはぐるぐると渦を巻いた。

 

 

「って、なんだこりゃあ!?」

 

「うわっ!?」

 

「くっ!?」

 

 

 まるでブラックホールのような強力な引力が発生し、時空の渦の中に吸い込まれる3人。

 やがて歪みの渦が収まった後、そこには間久部博士だけが残された。

 

 

「やれやれ……」

 

 

 残された彼女は溜め息を一つ吐く。

 彼らが飛ばされたのは、間違いなく無限城セカイとは別のセカイだろう。

 

 

「まあ…放って置くとするか。彼らならその内に自力で戻ってくるだろう」

 

 

 あの3人がそう簡単に死ぬはずがない。

 そして、生きているならいつか必ずこの世界へ帰ってくる。

 

 

(彼らが帰ってきた時には、向こうの世界でどんな経験をしたのか聞いてみたいものだな…)

 

 

 そう思いながら彼女は銀次達が消えた場所を一瞥し、その後は振り返りもせずにその場を立ち去った。

 




とりあえずの導入部分。
どんなクロス先にも繋げられるような導入部分にしてありますが、とりあえずはネギまで書いてみることにしました。
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