メルキアもまた連合内において裏切りを企てているサンサ共和国に悩まされていた。そんなメルキアにある1人の軍人、ヨラン・ペールゼン大佐が案を持ちかける......
連載は多分しないです。
皇歴2017年
アストラギウス大陸、ギルガメス連合首都、メルキア
メルキアの議場には多くの軍の高官達が集結しており、高官達の視線は議場の中央に置かれた演台で1人、議長席に座るギルガメス軍元帥へとある事を必死に訴えるサングラスを掛けた軍人へと向けられていた。
「閣下、サンサ共和国のこれらの行いは我らギルガメス、いや、ブリタニアと戦うアストラギウスの国々への裏切りその物です」
「戦略上ブリタニアにとって、サンサから産出されるレアメタルは到底無視出来ません。恐らくサンサはレアメタルを土産にブリタニアへと接近して単独講和、ひいては彼等の陣営へと降るでしょう」
「そうなればサンサはブリタニアの前線、もしくは補給基地へと様変わりし、ギルガメスはブリタニアに喉元へナイフを突きつけられかねんのです」
「元帥閣下、これは誅伐です。ギルガメス連合という陣営からから出た裏切り者、サンサ共和国は我々の手で罰してやらなければなりません」
軍服姿にサングラスを掛けた男、ヨラン・ペールゼンはギルガメス軍元帥へとそう訴えると、とある書類を提出する。
書類には"第一次サンサ攻略作戦"と書かれており、受け取った元帥はそれを開くと、次々とページを捲っていく。
「ペールゼン、君のサンサ攻略へのやり方は良く分かった、だが作戦の大部分を君のレッドショルダー隊へと依存させるのは些かリスクが高すぎるのでは無いのかね?」
元帥はペールゼンを見据えると、彼はサングラスを外してこう語った。
「閣下、心配には及びません、レッドショルダーの隊員達は厳しい訓練を生き抜いた精強な兵士達です、彼等ならば必ずサンサを攻略出来ると確約致しましょう」
ペールゼンの余りにも自信に満ち、不安げな素振りを一切見せない彼に議場に居る軍の高官達はそれぞれ顔を見合わせる。
元帥は一度考え込む素振りを見せた後、再びペールゼンを見据えるとこう言い放った。
「いいだろう、ヨラン・ペールゼン大佐、君のサンサ攻略作戦の実行を許可しよう」
元帥の決定に軍の高官達は一気に騒めき出す。
「正気ですか閣下⁉︎」
「作戦の大部分を今まで碌に明かされもしなかった部隊に任せる等危険です!」
「作戦の再考を!」
騒めく高官達に元帥は木棺を何度も叩いて静まらせる。
「作戦の許可を頂き、感謝致します元帥閣下」
ペールゼンは元帥に敬礼をすると、彼は議場を後にした。
ペールゼンが議場を後にしたのを見計らい、高官の一人バッテンタイン中将が元帥に話しかける。
「よろしかったのですか閣下?奴のサンサ攻略をお認めになられて」
「我々の相手はブリタニアだけではない、バララントの社会主義者共も相手にせねばならんのだ。下手に兵力を出して余計な血を流すぐらいなら奴の部隊に任せれば多少は押さえられるだろうよ」
「それに奴が作戦に成功しようがしまいが何れにせよレッドショルダー隊のベールは必ず脱がされるのだ。バッテンタイン中将、情報将校のキャラダイン中尉に手を引く様伝えてくれ、彼には例のスキャンダルを調べて貰いたい」
「構いませんがネハルコ参謀は如何しますか?彼も部下の一人を潜り込ませてる様ですが」
バッテンタインがそう伝えると元帥は一度考える素振りを見せてからバッテンタインに顔を向ける。
「ネハルコ参謀には引き続き"共食い"の件で調査させる事にしよう、だがオドン基地にこれ以上の部隊の派遣は禁止だ、このままではブリタニア、バララントと戦う前に兵力が底を尽きかねん」
海には数10機のギルガメス軍の揚陸艇がサンサ共和国の沿岸部へと向かっていた。
揚陸艇に乗せられているAT部隊がこれから行うのは、ヨラン・ペールゼン大佐の立案による第一次サンサ攻略戦の要でもある大規のAT部隊による上陸作戦だ
「ケッ!所長の野郎!散々こき使った挙句に前線送りかよ!」
赤い耐圧服を着た厳つい顔立ちの男がそう毒づくと
「ムカつくぜ......完全防備の沿岸の要塞に突っ込めなんざ死にに行けって言ってる様なもんじゃねぇかよ」
「まっ、これも運って奴さァ」
同じ耐圧服を着た目付きの悪い黒髪の男と金髪に坊主頭の軽薄そうな男が呼応する様にそう返す。
「だな......」
厳つい顔の男は金髪の男にそう返すと先程から一人目を瞑る""青い髪の男""に目を向けて笑った。
揚陸艇はサンサ共和国の沿岸部に到着するとハッチが開き、そこから次々と右肩に"血の色の様な暗い赤"が塗装されたAT"スコープ・ドッグ"が次々と発進していく。
彼らはギルガメス連合軍第10師団メルキア方面軍第24戦略機甲歩兵団特殊任務班X-1
通称""レッドショルダー隊""、生き延びる為なら味方すら殺すその姿は友軍からは"吸血部隊"と呼ばれ、恐れられた。
そんな吸血鬼達がサンサの沿岸部に到着した、これから多くの血を流し、その血を貪る為に。
サンサ共和国ブリタニア駐留軍司令部
「何⁉︎沿岸部の守備隊が壊滅だと!ヤツらは何をやっていたッ!?」
ブリタニア人司令官が沿岸の守備隊が突如壊滅したところに怒りと失望を半々に浮かべながらも
彼らの無能さを糾弾していると、そこでブリタニア人の兵士が答える。
「はっ!守備隊の生き残りに聞いた所、""レッドショルダー""と呼ばれる部隊に壊滅に追い込まれたとの事です!」
""レッドショルダー""、その名前を聞いた瞬間サンサの軍人達は一斉に顔を蒼褪め、絶望が広がっていく。
「バ、バカな......レッドショルダーだと......」
「な、何故だ......何故奴等がサンサへと」
名前を聞いた瞬間に目に見えてわかる程動揺し、恐れ慄くサンサの軍人達にブリタニア人司令官は見下した目で彼らを見ながらも、彼らの恐れりレッドショルダーについて問いただす。
「おい!レッドショルダーとは何だ!答えろ」
司令官がサンサ軍人の一人へと問うと、彼は口を震わせながらもその問いに答える。
「れ、レッドショルダー隊はギルガメス連合軍の特殊部隊だ......どんな戦場に投入されてもあの部隊は必ず生き残る事から、味方を殺してでも生き残る吸血部隊と噂されている......」
心底怯えてる様子で話したサンサ軍人を司令官は見下しながらこう返した。
「フン!くだらん噂だな、レッドショルダーとやらが必ず生き残ったのも大方命惜しさに味方を盾にした腰抜けの集まりだろうよ」
「何を馬鹿な!レッドショルダーは一個師団で国を落とした集団なんだぞ!我々が勝てる訳が無い!」
「それは貴様らの使う惰弱なアーマード・トルーパー同士の戦闘の結果だろう、案ずるな、レッドショルダー隊とやらも我が神聖ブリタニア帝国のナイトメアフレームには手も足も出ないだろう」
司令官は自分達は必ずこの戦いに勝利できると確固たる自信を持っている、何故ならギルガメスのアーマード・トルーパー通称ATとKMFでは性能面や耐久性、運動性の面で大きく差を付けていた。
開戦当初のブリタニアはギルガメス軍の主力AT、スコープ・ドッグを脅威と捉えていたが軍から鹵獲した機体を調べていくうちに"性能”が表わになっていくと彼等はATを脅威とも捉えず、寧ろ見下す様になった。
ブリタニアの研究チームはATを人型の機械では無く、"鉄の棺桶"と称した。機銃程度に撃ち抜かれる薄い装甲、被弾すれば引火してしまう液体、挙句の果てには脱出装置すらない。
結果、ブリタニアはATを脅威どころか動く的と見る様になり、今日に至る。
「フフフ......来るなら来るがいいギルガメスの鉄の棺桶ども、貴様らのその薄い装甲我々が穴だらけにしてやるわ」
ブリタニア人司令官はそうほくそ笑むと指揮を執る、自軍の勝利を確認しながら
しかしその確信は全て次の報告で全て崩れる事になる。
「は、速い⁉︎何だアレは、本当にATなのか⁉︎う、うわぁッ!!!」
「気を付けろ!こ、こいつら......コックピットを正確に狙って来ているぞッ!」
「ランドルフ卿脱出を!......なっ⁉︎脱出パイロットまで狙うのか⁉︎野蛮人どもめ!」
「味方を盾に......ッ⁉︎狂人めぇッ!」
「む、無理だ!レッドショルダーに叶う筈が無い!逃げ......ッがぁッ!」
前線はレッドショルダー隊によって地獄絵図が作られていた、ブリタニアのKMFグラズゴー、サザーランドは相対したスコープ・ドッグターボカスタムによって次々と撃破されていった。
彼等はパイロットが脱出して逃げない様、的確にコックピットをヘヴィマシンガンやソリッドシューター、ミサイルガンポッドで破壊し、運良く脱出装置を作動させて逃げたとしても容赦無く追い撃ちを仕掛ける。
そしてそんな姿を見て恐れ慄いたサンサ人のAT乗りや兵士達は敵前逃亡を試たが、直ぐに追い付かれて一方的に虐殺されて行った。
その後、結果だけを見ればサンサ攻略戦は成功し、ギルガメスは見事裏切りを企てたサンサ共和国に誅伐を下す事に成功した。
が、その過程は悍ましい物だった。駐留していたブリタニア軍及びサンサ軍の兵士の戦闘員、非戦闘員関係無くほぼ全てが皆殺し。
サンサの市民達もレッドショルダー隊の見境いの無い攻撃やペールゼン大佐が認可したBC兵器や試作型のミサイル兵器によって半数以下になるまでその数を減らす事になった。
この結果を受けて当初は軍上層部もペールゼン大佐に非難を集中させたが、レッドショルダー隊の有用性を確認するとそんな声も無くなって行った。
サンサ攻略戦の成功によってレッドショルダー隊は覆っていたベールを脱ぎ捨てると、凱旋パレードと共に市民達や軍の兵士達にその身を曝け出した。
神聖ブリタニア帝国軍はサンサ戦の微かな生き残りの兵士からの報告を聞き、レッドショルダー隊とスコープ・ドッグの改良型の性能に驚愕すると、改めてギルガメス、厳密にはレッドショルダー隊を危険視する様になる。
オドン基地
「グレゴルー・ガロッシュ先任上級曹長、以下3名只今到着致しました!」
グレゴルーという厳つい顔の男が3人の部下と共に士官服を来た男の前に駆け寄ると敬礼する。
「随分と遅い到着だな曹長、道に迷ってたのか?」
「そりゃあすいませんね"所長"、何せサンサ戦の疲れが取れないもんで休んでたんですよ」
グレゴルーが士官服の男に軽口を叩くと、男の隣にいた副官が激昂する。
「ガロッシュ貴様!リーマン"大佐"に何という口を叩くのだ!」
「大佐ァ?」
金髪の軽薄そうな男、バイマン・ハガード伍長が呆気にとられた顔でそう言うと
副官は高圧的で見下した態度を取りながらも、リーマンの昇進の理由を話す。
「リーマン大佐は此度のサンサ戦役の活躍により、少佐から二階級特進で大佐となったのだ!」
「ケッ、オレらをコキ使ってテメェは昇進かよ......」
昇進理由を聞いた目付きの鋭い男、ムーザ・メリメ伍長は呟く様にリーマンを毒づく。
「......」
そしてそんな彼等を青い髪の男、キリコ・キュービィ伍長は黙って見てみていた。
「まぁいい、諸君らに集まって貰ったのは他でも無い、辞令を伝える為だ」
「辞令だぁ?」
リーマンの辞令という発した言葉に対し、グレゴルーは怪訝そうな顔で聞き返す。
「ギルガメス連合軍第10師団メルキア方面軍第24戦略機甲歩兵団特殊任務班X-1、グレゴルー分隊に告げる」
「諸君らにはこれから神聖ブリタニア帝国領エリア11、旧称日本へと向かって貰おう」
「諸君らがグレゴルー分隊か、私は日本解放前線の片瀬だ。ギルガメスから来た諸君らを心より歓迎する」
「藤堂さん!何で僕達がレッドショルダーなんかと組まなきゃいけ無いんですか!」
「我々は貴様らを味方として認めないッ!」
「随分な物言いじゃねぇか四聖剣さんよ?テメェらこそオレらが居なかったら如何なってたことやら」
「あの赤い肩は......ッ⁉︎レッドショルダー!?サンサの虐殺者がなぜエリア11に!」
「その赤い右肩気に食わんなぁ......!我ら純血派の誇りに掛けて!レッドショルダー、仕留めさせて貰うぞ!」
「へぇ、黒の騎士団のエースがこんなお嬢ちゃんだったとはなぁ」
「だったら何だよ、アタシを舐めてると痛い目見るよ.....ッ!ギルガメスの最低野郎!」
「気を付けろキリコ!この白い新型かなり強いぞ!」
「レッドショルダー!これ以上お前達の好きにさせない!」
「バカな......ッ!ギアスが効かないだとッ⁉︎キリコ・キュービィ!貴様は何者だ⁉︎」
「俺は誰にも従わない、それがゼロ、アンタだったとしてもだ」
もしかしたら出るかもしれなかったオリジナルAT達
鉄騎
ギルガメスから日本へ輸出されたスコープ・ドッグの日本解放前線仕様、ダークグリーンで塗装されてる以外特に通常のスコープドッグと何ら変わらない。名前の由来は鉄の騎兵であるが、これはコピーKMFである無頼に比べれば鉄程度の防御力しかない、騎兵の様に脆い事から蔑称としての意味合いも込められている。
甲騎
ギルガメスから日本へ輸出されたスコープ・ドッグの改造型、通常機と比べると大幅に装甲部分が強化され、火力も向上したが結果として機動性が大幅に低下してしまっている。装甲だけはギルガメスのトータス系に匹敵するが運動性すら低下してしまった本機の自衛力はトータス系にも劣る。主に日本解放前線が使用。
鉄騎改
日本解放前線から鹵獲した鉄騎を黒の騎士団が改造した機体、ダークグレーで塗装されており、主に騎士団の主力機の無頼の支援や補佐に使われた他、無人機として改造され囮として使われてもいる。
グラントリー・ドッグ先行配備型
メルキア連合の次世代AT、秘密裏に開発が進められていた本機体だが。それが何故か機体全体を黒く塗られ、右肩も赤く塗装されており、"何故"かエリア11に一機配備されているのが確認されている。ブリタニア、日本解放前線、黒の騎士団どの陣営にも属さず無差別に攻撃を仕掛けている。