モンスターハンター In My Eyes   作:あずき犬

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樹海からバルバレへ向かうイズナ達。撃龍船に乗る彼女達にダレン・モーランが襲いかかる。

「第2話 急襲」
どうぞ。


第2話 急襲

船員達が慣れた手つきで甲板上の荷物を船室に放り込む。

 

「距離3000」

 

マスト最上部の物見台から船員が叫ぶ。腕を組む団長の横に船長が駆け寄る。

「いやな時に来やがったな」

 

船長は言いながら、手元の地図を広げる。

 

「バルバレまで距離80000を切ってる。戦闘はできねえな」

 

船長の言葉に団長は頷き、ハット帽を被り直す。

 

「この時期の東部大砂流はもっと東に蛇行しているはずだが」

 

「上からの報告では角が一本折れているらしい」

 

船長は言いながら地図を丸める。団長は目を細めて砂漠を睨みつけて呟く。

 

「手負いか。やっかいだな」

 

船長は丸めた地図を上着に入れた。

 

「密猟者のおこぼれか。とりあえずバルバレに信号弾を上げるが、逃げ切れるかどうか」

 

船長が言い終わらない内に船の後方から信号弾が打ち上げられる。青空高く上がる信号弾は乾いた音をたてて破裂し、緑色のけむりを吹き出しながら帯を作り、空を漂っていく。

船後部の操舵台に走る船長と入れ代わりに、船室からナズナが駆け上がってくる。

 

「ニャ、ニャにごとニャ」

 

団長の足元でナズナが叫んだ次の瞬間、大音響とともに、船の真横で砂柱が上がる。大きく揺れた船の上でみなが手すりに掴まる。目の前の砂埃の中から岩山が姿を現した。

徐々に砂埃おさまり、岩山の詳細な姿が明らかになってゆく。

岩山の様に見えたもの。それは幾重にも重ねられた赤茶色の甲殻に覆われ、突き出された長い牙を持つ巨大生物であった。現実感を忘れてしまう程の巨大さである。

砂の中から巨大なひれが浮かび上がり、ゆっくりと動く。ダレン・モーランの巨体が砂埃を舞上げながら徐々に船に接近している。

 

「ダ、ダレン・モーランニャ!」

 

ナズナが叫ぶ。

ダレン・モーランは速度を上げた船に合わせるように一定の距離を開けて船と並走している。船長の言った通り、前方に突き出す角は一本で、もう一本は根元から折れている。

 

「さて、どうしたものか」

 

団長が私の方に顔を向けた時、頭部を持ち上げたダレン・モーランの口が開き、大地を揺るがすような叫び声が響く。両耳を押さえてしゃがみ込む。聴覚を介さず直接脳髄が揺さぶられる。余りの豪音に船が振動し、帆がはためく。一生物が発する音とは思えない。これがダレン・モーランの大咆哮なのだろう。

足が震える。これは私たちの手に負える物ではない。これが団長が言っていたモンスターだろうか。ハンターとはこんな化け物を相手にするのだろうか。

両耳から手を放す。未だに耳鳴りが残る。

 

「イズナ。そこの大銅鑼を鳴らせ」

 

団長の叫び声で我にかえった私は、向きを変えたダレン・モーランが船に向かって角を突き出し突進してきていることに気付いた。 団長の指差す先にはマストがあり、マストの根元に金属製の受け皿が設置されている。受け皿の下には巨大なハンマーが転がっていた。反射的にハンマー握り、思いっきり振り上げて打ち皿にたたき付ける。受け皿がスイッチになり、マストからぶら下げられていた巨大な銅鑼が打ち叩かられる。耳をつんざく銅鑼の大音響が辺りに響き渡った。流石のダレン・モーランもその音に怯み、砂柱を立てて砂漠に潜っていった。 船の甲板に巻き上げられた砂粒が雨のように降り懸かる。

 

「よくやった。ナズナ、バリスタを用意しろ」

 

体中に被った砂粒を体をふるわせているナズナに団長が叫ぶ。

 

「でも、戦闘は」

 

団長を見上げるナズナが言い返す。

 

「バカヤロー、死にたいのか」

 

叫んだ団長の真後ろからダレン・モーランが静かに姿を現し、角を船に向けて突進していた。

 

「あぶニャい」

 

飛びついたナズナに団長が押し倒される。甲板上を薙ぎ払うダレン・モーランの牙先は団長のハット帽をかすめて空を切った。

甲板の床に倒れた団長はハット帽が無くなってることに気付き、のしかかるナズナを押しのけて立ち上がる。辺りを見回していた団長はダレン・モーランの頭部にハット帽が引っ掛かっているのを見つけた。再度近づくダレンに走りよろうとする団長。 だめ。行ってはだめ。

私の鼓動が早くなり、目が見開かれていく。走り去る団長がスローモーションで見える。

私の胸の中で何かがはじけた。視界が赤く染まる。

 

私はハンマーを放りだすと、一目散に団長の側に駆け寄り、団長が腰に差しているハンターナイフを引き抜く。驚き振り返る団長を尻目に追い越し、手すりを飛び越え船の直近まで接近していたダレン・モーランの牙に飛び乗る。

牙の上を頭部に向かって全速力で走り抜け、ダレンの頭部に飛び付く。団長のハット帽を握りしめた私は、その場にしゃがみ込み、ナイフを赤茶色の甲殻と甲殻の間に突き刺した。ナイフを突き刺した箇所から鮮血が吹き出す。ナイフを引き抜く。ハット帽を口にくわえた私は、両手で柄を握りしめ、頭上高くナイフを振り上げ、再度突き刺す。また引き抜きナイフを振り上げる。私の全身にダレン・モーランの血液が吹き付けられる。ただがむしゃらに何度も何度もナイフを突き立てる。的確に甲殻の隙間を狙い突き立てたナイフは、ダレン・モーランの体組織をズタズタに切り裂いていく。次第に握りしめる手の感覚が無くなっていく。

 

振り下ろしたナイフが甲殻に弾かれる。ナイフの刃はすでにボロボロになっていた。それでも、鮮血の吹き出す傷口にナイフを突き立てる。

ダレン・モーランが体を震わし徐々に頭部を持ち上げていく。

突き刺したナイフが抜け、私はダレン・モーランの頭部の上を転がり落ち、船の甲板に叩き付けられた。全身を激痛が走る中、なんとか顔を上げる。ダレン・モーランは上半身を高々と持ち上げると、力が抜けた様に横倒しに倒れていく。

舞い上がる砂埃。豪音とともに衝撃波が船を襲う。と同時に船の周辺から次々と信号弾が上がるのが見えた。周辺の船が援助に来てくれたようだ。

船団は起き上がったダレン・モーランに拘束バリスタを打ちこみ、ダレン・モーランの進行方向を巧に変えていく。

 

甲板の上に立ち上がると、拘束バリスタの鎖に曳かれて進路を変えていくダレン・モーランの向こう、砂埃の先に町が見えていた。

ダレン・モーランの返り血を浴びて真っ赤に染まる私に団長が歩み寄る。団長は立ち尽くす私の口からハット帽を引っ張り抜き、ツバの部分にくっきりと歯型がついたそれを頭に被った。

私は握っていた、ボロボロに刃こぼれしたナイフを団長に返そうとしたがナイフを握り締めた手が硬直してなかなかひらかない。やっと片手が外れた時、団長はナイフを握ったままの私の手を天に突き出させた。船員達から地響きのような歓声が上がった。

 

後から聞いた話しでは、この時のダレン・モーランは、やはり密猟者が取り逃がした手負いであったらしく、あのまま突進が続けばバルバレの町が壊滅していたかもしれないとのことであった。

そして私には

「紅蓮の女神(パンツいっちょ)」

 

という称号がどこからともなく贈られたらしい。

 

 

ダレン・モーラン撃退の歓喜の中、バルバレの桟橋に降り立った私は、街の奥にそびえ立つ巨大船を見上げていた。

 

「ギルドの船だ」

 

団長が船員から荷物を受け取りながら言う。

 

「さて、俺達は拠点に戻るが、お前さんはどうする」

 

私は首を振る。これからどうするのか全くあては無い。

 

「ならとりあえずついて来な。団員にも紹介したいんでな」

 

団長は荷物を背負うと、人ゴミの中を掻き分けながら街の方へ歩き始めた。団長の後ろをピョンピョン歩くナズナを見失わないように私も歩き始める。 団長の拠点はギルドの大船の近く、大通り沿いに並んだキャラバン馬車の一つであった。団長が荷物を下ろすと、眼鏡をかけ、緑色のベレー、ポンチョ姿の若い女性が走り寄ってきて、興奮気味にまくしたてる。

 

「団長〜〜 ダレン見ましたよ。バカでかかったですね〜〜 ダレンの牙触りたかったです」

 

興奮が冷めやらぬ女性に団長が一言二言話し、私を指差した。

 

「団長さんの命の恩人さんですね。パンツいっちょでダレンを撃退した女!くぅ〜〜 カッコイイ!」

 

女性は私に飛びつき抱きしめてきた。船の中でダレンの返り血は拭いたが、女性の服が汚れるといけないので引き離した。

 

「団長さんを助けてくれてありがとうです。私は太陽の団で出張ギルドカウンターをしているエルザと言います。無事でなによりです」

 

眼鏡をかけ直しエルザはペこりと頭を下げた。

 

「団長。ダレンに襲われたらしいな」

 

女性の後ろから大男が声を掛ける。頭にはタオルを巻き付け、黒く日に焼けたたくましい上半身をさらけ出している。

 

「おうよ。この人がいなかったら今頃みんな、砂原の中を泳いでるとこだったぜ」

 

団長は高笑いをしながら私を指差す。

 

「イズナさんだ」

 

男性は握手を求めながら

 

「加工屋やってるカガリだ。団長が世話になった。無事でなにより」

 

と言い、力強く私の手を握る。

 

「取り合えず俺はギルドに探索の報告にいきゃなかいけねえ。イズナ、お前さんもついてきな」

 

団長は言うと荷物を下ろすと、ナズナと一緒にキャラバンに入っていく。しばらくして手ぶらになった団長が一人で出てきた。外で待っていた私に手を振ると、通りの先に見えているギルドの大船に向かって歩きだした。

 

 

ギルドの大船は樹海から乗った竜撃船とは比べものにならない程巨大であのダレン・モーランにも劣らない大きさであった。船の側面には

【ハンターズギルド バルバレ支店】

の看板が立て掛けられており、多くの人が出入りしている。そのだれもが厳めしい甲冑を身に付け、背中には様々な武器を担いでいる。

入口のカーテンを押し開け、中に入ると、薄暗い中、左手にカウンター、右手にバーが見えた。談笑するハンター達を掻き分けて団長はカウンターに向かう。 カウンターに辿りつくと、受付をしている女性達に声をかけながら、カウンターの端に座りパイプタバコをふかしている小柄な老人と話し始めた。

団長が話しをしている間、手持ち無沙汰の私は、ギルド内を見渡す。厳めしい甲冑の人々の中、私は完全に浮いた状態であり、中には私の方をジロジロ見ていく者もいる。

 

(紅蓮の女神だ)

 

小声が聞こえる方を睨みつける。

 

(目あわせるな、くわれるぞ)

 

(おっかねぇ)

 

若い男性ハンターの三人組が私と視線を合わせないようにバーの方に立ち去る。

 

「イズナ、こっちに来てくれ」

 

団長に呼ばれ、慌ててカウンターの前に立つ。

 

「ギルドマスターだ」

 

団長が私にギルドマスターの前に立つよう手招きし場所を譲ってくれた。ギルドマスターはパイプの煙を私に吹き掛ける。

 

「ハンターになりたいってのはあんたさんかえ」

 

私は団長の方を振り向く。団長は肩を竦めて笑っていた。

 

「紅蓮の女神らしいぜ」

団長は高笑いしながら言う。

 

「どれ、わしの目を見なさい」

 

私はギルドマスターのシワの奥の金色に輝く瞳を睨みつけた。ギルドマスターはうなずくとパイプの煙を顔中の穴から吐き出す。

 

「やれやれ、とんだ女神様じゃわ」

 

ギルドマスターはゆっくりとパイプを吸う。

 

「御ぬしと同じ目をした者を見たことがある。ずいぶん昔になるがな」

 

ギルドマスターは、煙を吐き出しながら、しばらく考えこんでいたようだったが、

 

「まあよかろう。ギルドは来るものこばまずじゃ。御ぬしをギルドのハンターとみとめよう」

 

と言い、またパイプを大きく吸い込む。煙を吐き出しながら横に立っていた女性に話しかける。

 

「銅鑼ねえちゃん、この娘に新人教養頼むわ」

 

女性は頷くと、カウンターの中に入るよう私に指示をする。

 

「新人ハンターさん、どうぞこちらに」

 

私は女性の後を歩きカウンター奥の部屋に入る。

 

「さて、団長さん。あの娘どこで見つけた?」

 

ギルドマスターは今までとうってかわって厳しい目つきで団長を睨みつけた。

 

「常人ならば即倒するくらいの眼力を送ったが、ひるむどころか睨み返してきおったわ」

 

団長は腕組し、天井を見上げる。

 

「あんたに嘘は通じねえな。実は…… 」

 

団長は周りのハンター達に聞こえないようにギルドマスターの耳に口を近づけて話す。ギルドマスターはパイプの灰がカウンターに落ちていくことすら気づかず団長の話しに聴き入る。

団長が話し終えるとギルドマスターは俯き、何度も頭を揺する。

 

「ったく。本来ならギルドナイトに通報してしかるべきだな」

 

今度は団長が厳しい視線でギルドマスターを睨みつける。

 

「マスター、俺もギルドの掟は嫌というほど身に染みているつもりだ。」

 

ギルドマスターは団長の気迫に押されるように両手を挙げた。

 

「あの娘がダレンを撃退した時の情報は入っておる。団長、あんた最後まで面倒見きれるのか」

 

団長は頷く。

 

「イズナが追い求める物と俺が探し続けている物は行き着くとこ同じだと思っている」

 

ギルドマスターは頷くと、話題を変える合図のようにパイプに火を起こし煙を吸い込む。

 

「ギルド本部が筆頭ハンターをこちらに派遣したそうだ」

 

「ああ、港で船を見かけたな」

 

「ドンドルマの古竜観測省の友人からもクエストに目を配るよう連絡があった。何かが動き始めている気して落ち着かんよ」

 

「まあ、あんたもそこでタバコふかしてるだけが仕事じゃないだろ」

団長は言うとギルドマスターから顔を離した。

 

「とにかくイズナは俺の命の恩人だ。あいつの旅にとことん付き合ってやるさ」

 

 

 

 

銅鑼ねえちゃんに案内された部屋はギルドの受付係の控え室だった。狭い室内には女性物の衣服が壁一面に吊り下げられており、中央のテーブルの上には読みかけの雑誌やタンジアチップスと書かれたスナック菓子の袋が開けられている。

銅鑼ねえちゃんは私に椅子に座らせ、更に奥の部屋から持ってきた数冊のノートをテーブルの上に置いた。

 

「さて、新人ハンターさんがまず覚えることは、とにかく死なないこと。死なないためにどうすればいいのか考えること」

 

銅鑼ねえちゃんは言いながら私に渡したノートを広げる。

 

「これはギルドノート。あなたの狩りの記録をギルドが記入するものなの。その記載内容によってギルドはあなたにふさわしいレベルのクエストを提供しているの」

 

銅鑼ねえちゃんは次に木製のケースに入ったカードを取り出す。

 

「これはギルドカード。まあ名刺のようなものなんだけど、ここにはハンターが属する猟団名と、ハンターの名前が記載され、ハンターの現在のギルドでの評価も記載されるの。今のところあなたは所属する猟団は無いみたいだからそこにのってるのはあなたの名前とギルドの評価だけね。評価は新人さんはみんなランク1ね」

 

次に銅鑼ねえちゃんはハンターの手引と書かれた本を開く。

 

「ここにはモンスターの情報とクエストでの注意事項が書かれているわ」

 

銅鑼ねえちゃんは、注意事項のページを開く。

 

「お家に帰ったらしっかり読み返してほしいんだけど、大事なことは、1回のクエストには制限時間があって、一部例外を除いて狩猟時間は5時間と決められているの。これはクエストへの送り迎えの段取りのせいもあるんだけど、5時間も戦い続けたら流石のハンターさんでも集中力切れて危険な状態になるでしょ。5時間を超えたら強制終了よ」

 

ハンターの手引の下には封筒があり、中身をとりだすと数枚のお札と懐中時計が出てきた。

 

「クエスト用の特別製の時計。といっても、単に5時間しか計れない時計だけどね。お金は支度金よ。ちゃんと装備品つけないと死んじゃうよ」

 

銅鑼ねえちゃんはそこまで説明すると、もう一脚の椅子に腰を降ろし、足を組む。

 

「ぶっちゃけ、最初は軽めの採集クエストで、狩りの基本を体に染み付かせてから、大型モンスターの討伐ってのがよくやるパターンね。いきなりダレンとか行っちゃったら今度はホントに死んじゃうよ」

 

私は頷く。あのダレン・モーランともう一度やり合う気はさらさら無い。

 

「これで新人教養はおしまい。あとはいちどクエスト受注していろいろ試してみたら」

 

銅鑼ねえちゃんは椅子から立ち上がる。

 

「あ、ちなみに私はクエスト出発の合図の銅鑼を鳴らす係なの。命懸けの狩りに出発するハンターさんの安全祈願の銅鑼よ。見かけたら声をかけてね」

 

銅鑼ねえちゃんはハンマーを振り回して銅鑼を叩く真似をする。

 

 

 

 

団長と二人でギルドの船を出ると辺りはすでに夕日に赤くそまっていた。団長はキャラバンまであと少しの所で足を止めた。

 

「銅鑼ねえちゃんから猟団の説明うけたよな」

 

頷く私。

 

「どうだ、俺達の猟団に入ってくれるか。」

 

団長の誘いは有り難かったが、これ以上迷惑かけてもいけないと思い始めていた私は首を縦にはふらなかった。ハンターになったのならば、一人で暮らして行くことが出来るかもしれない。

 

「わかった。いいんだ。こういうのは無理じいしちゃいけねぇ。うん。うん」

団長は勝手に頷くと少し歩いて再度私に振り返る。

 

「こういうのを人生の選択ってんだ。今日一日じーーくり考えて明日答えをくれたらいい。うん。うん」

 

団長の態度の急変に首を傾げていた私だが、その理由はすぐに判明した。

 

キャラバンに戻ると、太陽の団のメンバーが揃って通りに出て団長の帰りを待っていた。歩いてきた団長を見つけると一斉に形相を変えて駆け寄ってくる。

最初に口を開いたのは看板娘のエルザだった。

 

「団長、団のお金どこに持っていったんですか」

 

さらに、加工屋のカガリが

 

「晩飯買う金が無いとオトモが言ってる」

 

と続く。カガリが皆の背後で半ベソをかいているナズナを前に押し出す。

 

「だ、団長が、ハ、ハンター登録の保証金と言ってお金を持っていくところを見ました、ニャ、見たニャ。」

 

ナズナが目を擦りながら棒読みで言う。

 

「団長!」

 

全員が団長に詰め寄る。団長は困ったような顔をして私の方にゆっくりと振り返る。

入団するしかなかった。

 

その夜、団長の焼いたこんがり肉を肴にし、私がギルドからもらった支度金で買ったタンジアビールでささやかな私の歓迎会が開かれた。

次の日の朝、物音に目を覚ますと、私の枕元に団長が立っていた。

あれだけ強引に入団させたにもかかわらず、

 

「我らの団のハンターとしての入団試験を課す」

 

2日酔いの私は、やっとのことで床から頭をもたげる。

 

「まず、今日一日で、お前さんの使う武器種を決めてもらう。明日からは俺が指定するクエストに挑戦してもらう。入団希望者はあまたいる。検討を祈る」

 

団長はそこまで一気に話すと再び床に倒れこみ鼾をかきはじめた。冗談か本気なのかわからなかったが、フラフラした足取りでキャラバンの外にでると、それが本気であることが分かった。

既に昼前のキャラバンの外では、エルザが受付カウンターの後ろに、大きな看板を立て掛けようとしていた。私が近づくと、満面の笑みを浮かべて

 

「団長から聞いてますよ。入団試験受けるんですね〜〜 断然応援しますよ〜〜 取り合えず各武器種取り扱いのクエスト用意しました」

 

彼女は言いながら紙切れを渡してきた。

【すべての武器を使え】

【依頼主】 武器屋のせがれ。

【依頼内容】 親父から武器屋を継ぐように言われて早5年。おいらが制作した武器の出来次第では武器屋を番頭に譲るって言い出した。おいらの作った武器全部試してなんでもいいからモンスターを倒してくれ。

 

私はうなずくと、差し出された依頼書にサインした。

 

「ちょうどいい依頼があってよかったね」

エルザは依頼書に受注済みの印を押すと、立て掛けた看板に貼付けた。

出発の準備のため、キャラバンに戻ろうとすると、キャラバンの前に店を出したカガリが私を呼び止めた。

 

「昨日、あんたから貰った支度金で装備一式を作って装備箱の中に置いた。ブレイブって装備で紙みたいな防御力しかねえが何も着ないよりはましだ」

 

言い捨て、立ち去ろうとしたカガリは立ち止まる。

 

「お嬢は一晩中、依頼を探して走りまわってた。団長は強引だが、あんたに賭ける気持ちは本物だ。がんばれよ」

 

カガリは手を振りながら店に戻っていった。

私の仕度金。団長はちゃんと考えてくれてたんだ。

私は両方の頬を叩き、ボンヤリした頭を切り替えキャラバンにもどった。




いきさつはどうあれ、ハンターになったからにはやはり、大型モンスターを…… 。やっぱり駄目ですか。
次回「第3話 狩人」お楽しみに。
ではよき狩りを。
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