新世界の海に陽炎、抜錨します!   作:yutarou

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 お待たせしました。

 サンマ漁イベントが始まりましたね。今年は漁成功率が高くて良かったです。

 初めての秋刀魚漁イベントでは自分は大漁旗をゲット出来ず涙を飲みました。

 本編の前に訂正を一つ、サリオン王子の姓ですが元服前がシナーテ=天照、元服後がエミーテ

 =斑鳩王子でした。謹んでお詫び申し上げます。



第九話 鉄の風、木片の海(後編)

「敵の航空戦力の殲滅を確認しました」

 

 加賀戦闘機隊の隊長、岩本徹三は懸念が杞憂に終わったことに安堵していた。

 

「どうやら鳳翔さんレベルの敵はいなかったようだな」

 

「クワトイネの連中の言う通りあれは完全にイレギュラーでしたね」

 

「強すぎるだろあれは」

 

「もしいたら俺ら岩本隊全員で抑え込む手筈だったが、いなくてよかった」

 

 日本はロデニウス大陸の主力航空戦力であるワイバーンを研究するため、クワトイネ公国の空

 

 軍から一体のワイバーンを譲られた。

 

 その個体はベテラン冒険者30人が命がけで捕獲した野生ワイバーンであったが、公国の竜騎士

 

 は誰一人乗りこなすことが出来なかった。

 

 空軍の担当者は意地悪でその暴れワイバーンを引き合わせたのだが、一ノ瀬提督に同行した鳳

 

 翔を見たその暴れワイバーンはあっさりと彼女を乗せ空に飛びったった。

 

 普通竜騎士と言えども初めてのワイバーンで空を飛ぶのには数か月の慣らし期間が必要なのだ

 

 が、鳳翔は出会って2分で飛行して見せた。

 

 しかもその時は鞍を付けていなかった。その状態で様々なアクロバット飛行を披露したので、

 

 クワトイネ公国の空軍関係者は度肝を抜かれた。

 

 更には同行していた龍驤、瑞鳳などもその日の内にでワイバーンを乗りこなしてしまった。

 

 航空機を扱う空母娘ならばワイバーンを扱うことも出来るのは分かるのだが、意外だったのが

 

 秋月や島風、天津風などもワイバーンを乗りこなすことができた。どうも連装砲ちゃん達と同

 

 じ感覚で話が出来るようだ。

 

 

 その暴れワイバーンは通常のワイバーンより大柄で、全体的に白い体色に、わずかに光を反射

 

 して金色に見える鱗が混じっていた。

 

 その姿から鳳翔はゴールド号と名付けた。

 

 ゴールド号は一ノ瀬家の所有となり、毎日鳳翔さん特製ワイバーンフードを食べている。

 

 

 対ワイバーン戦闘訓練において、鳳翔さんとゴールド号が航空隊の対戦相手となった。

 

 結果的に航空隊が対ワイバーン戦のノウハウを積む前に鳳翔の操竜術が上達してしまい、96

 

 式艦戦や零戦21型の様な旧式の戦闘機では撃墜判定を取ることが出来なくなってしまった。

 

 鳳翔に回避に専念されると誰一人機銃弾を命中させることが出来ない。

 

 文字通りの可変翼を駆使した変幻自在の空中機動で相手を翻弄し、燃料弾薬切れを待って後ろ

 

 足による蹴りもしくは尻尾の攻撃で撃墜判定を取っていく。

 

 空戦を見学していたクワトイネの竜騎士からは

 

「こんな戦い方があるのか!」

 

 と驚かれてしまった。 

 

 動力火炎弾はためが長く、口を開ける際空気抵抗が大きくなり速度が落ちてしまうため鳳翔は

 

 使用しないことにしている。動力火炎弾に代わる攻撃魔法を編み出すなどと言っているが、そ

 

 うそう簡単に新魔法など創れはしない。周囲の人間は笑っていたが、のちに驚愕することにな

 

 るのだが、それは別の話。

 

 

「武装勢力に動きはありません」

 

「まだ撤退する気はないようね、仕方が無いわ、攻撃開始!」

 

「神風は対潜警戒、大型魔魚に注意して」

 

「了解!」

 

 艦娘にとってロウリアより敷波を襲った魔魚の方が脅威であると知ったらシャークンたちはど

 

 んな顔をするのだろう。

 

 

 

 日本国の船から破壊が解き放たれた。

 

 こちらのバリスタの射程をはるかに超える距離から軍船を一撃で破壊する攻撃が飛んでくる。

 

 ロウリア海軍の戦い方は昔ながらの敵船に乗り込んでの白兵戦だ。

 

 しかしこれでは近づくことが出来ない。

 

 しかも敵船はこちらよりもはるかに大きいのに圧倒的に船足が速い。

 

 つまりロウリア海軍には対抗する術が何もない。勝ち目はない。

 

「うわあ、死にたくねえ!」

 

「魔帝だ、魔帝が復活したんだ!」

 

「ママ!痛いよママ!」

 

 味方は大混乱に陥る。恐怖と痛みの余り幼児退行している兵もいる。

 

 敵艦隊から新たな鉄の飛竜が飛来し、何かの塊を落とす。それは甲板をぶち破った後大爆発し

 

 て軍船を跡形もなく消し去った。

 

 また鼻先と翼から光弾の様な物を打ち出した。それを食らった人は血しぶきを上げて倒れ、

 

 船は穴だらけになって沈んでいった。

 

 

 シャークンは決断を迫られていた。

 

 このまま戦っていても敵になんら損害を与えることは出来ない。撤退するしかない。

 

 しかし撤退すれば自分は軍法会議で処断され死刑となり、後世の歴史家から無能の指揮官と呼

 

 ばれるだろう。

 

 そしてロウリア王国海軍の名誉は地に落ちるだろう。

 

 祖国は周辺国から舐められ、ロウリア王国海軍は弱者の代名詞になってしまうかもしれない。

 

 そんなことは決して認めるわけにはいかなかった。しかし、

 

「撤退だ」

 

 シャークンは撤退を決めた。これ以上部下を死なせるわけにはいかなかった。

 

「わが旗艦が殿を務める、全軍撤退せよ」

 

 

「海将殿、貴公は生きよ」

 

 振り向くとムルデカが肩を掴んで言った。その顔は先ほどまでうろたえていた老人のそれでは

 

 なく、海の漢がそこにいた。

 

「伯父貴、来たぞ!」

 

 旗艦の横に小さいが快速の帆船が横付けした。ムルデカの配下の元海賊たちである。

 

「おお、カイラス、こっちこい」

 

 ムルデカは甥っ子で副頭目のカイラスを呼びつける。

 

「なんだ伯父貴、、ごふ!」

 

 ムルデカはカイラスを殴り倒し気絶された。

 

「海将殿、甥を頼み申す」

 

 ムルデカはカイラスをシャークンに託し配下の快速船に乗り込んだ。

 

「さあ、海賊の意地と誇りを奴らに見せてやろう」

 

「おお!」

 

「ムルデカ殿、すまぬ!」

 

「フハハハ!漢の最後は笑って送り出せ!」

 

「お頭、相手は魔帝軍かもしれませんぜ」

 

「むしろ魔帝と戦って死んだとあれば冥府にて父祖に自慢できるぞ!」

 

「ちげえねえや!」

 

 ムルデカと配下たちは笑いながら絶望的な敵に向かって突撃していった。

 

 

「敵小型帆船、こちらに突撃してきます」

 

「あーどうする、大井っち?」

 

 北上がだるそうに言う。

 

「北上さんの思う通りにしてください。あと私も自由にしてください」

 

「大井北上、真面目にやるクマ」

 

 第二艦隊の旗艦であり姉でもある球磨が注意する。

 

「でもさ、多摩姉をいじめた奴らだからぶっ飛ばしてやるつもりでいたけど、木造船じゃやる気

 

 でないよ」

 

「いいから撤退するまでやるクマ」

 

 北上のやる気が出ない理由はもう一つあった。酸素魚雷の使用を禁止されたからだ。

 

 酸素魚雷は高価であり、かつ今回の敵にはオーバーキルであった。

 

 そもそも喫水の浅い木造船に魚雷が命中するのかさえ疑問であった。なので今回の海戦には通

 

 常の魚雷のみ持ってきている。

 

 そもそも雷巡いる?なんで来たのおまいら?と言われそうだが、四姉妹が希望して半ば強引に

 

 ついてきたので文句は言えない。

 

「ぢゃ、魚雷発射しまーっす」

 

 北上は接近してきた小型帆船の一団に魚雷を発射した。

 

 信管の感度と軌道の深度を調節し少しずつ変えながら発射した。

 

 

 ムルデカ達は前方から白い線が伸びてきたのを見た。

 

 その線が自分たちの船の下を通り過ぎようとしたとき、バキバキと木材がへし折れる音が響い

 

 た、そして船が沈み始めた。

 

「何が起こった!」

 

「お頭、船底がズタボロでさあ!」

 

「なんだ、さっきのは兵器だったのか!」

 

 水中を進み船底を破壊する兵器など御伽噺でも聞いたことがない。

 

 魚雷は信管の感度を鈍くしたため、船底に触れても爆発せずそのまま直進した。

 

 ムルデカの船団は停止した。

 

 よく見ると自分たちの後方、別の軍船が大爆発を起こして消え去っていた。

 

「何という威力!我々は運がよかったのか」

 

 何としても撤退する時間を稼がなければならない。

 

「おのれ、こうなったらわしだけでも乗り込んでやる!」

 

 

 北上は沈みかけた船団から人が一人飛び出し、水面を駆けてやって来たのを見た。

 

 どうやら初老の男性の様だ。艦娘でもないのに水上を走っていることに驚いた。

 

「日本の皆様、お気をつけください。あれだけの長い距離の『海渡り』が出来るのは大魔導師級

 

 に違いありません」

 

 ブルーアイが無線を通して警告してきた。

 

 海渡りは緊急時に避難するため使う魔法であるが、通常短い距離しか歩けない。

 

「へえ、つまり異世界で最強レベルの魔導師ってことね」

 

「北上さん、何を考えているのかしら」

 

 霞が訝しむ。

 

「皆は手出し無用、こいつは私に任せてもらおうか!」

 

 

「うおおお!」

 

 ムルデカは海面を走った。なぜか魔導兵器は飛んでこなかったので前方の魔船に飛び乗ること

 

 が出来た。

 

 軍船にも拘らず船員が一人も見当たらない。戦場にも関わらず静謐な雰囲気が漂う。

 

「ここはなんじゃ?まるで神殿か何かの様じゃ」

 

「元気のいい爺さんだ、ようこそ我が艦へ歓迎するよ」

 

 甲板に光る円が浮かび揚がり、女が一人浮かび上がってきた。

 

 階段も扉もないのに甲板の板を透過してきたことを不思議に思う前にムルデカは戦慄した。

 

 既に命を捨てる覚悟を決め死人と化したムルデカであったが、血の気が引いていくのを感じて

 

 いた。

 

⦅只者が乗っているはずがないとは思っておったが、これは予想してなかったわい!⦆

 

 どこぞの農家の娘かなにかに見えるが、迸る覇気は天を覆いつくすほどであった。

 

 声を聴いただけでムルデカが今まで出会った猛者強者そして遭遇した高レベルの魔物が、幼児

 

 か小動物だったと思えるほどの隔絶した強さを秘めた存在であると確信できた。

 

⦅尻に氷柱を突っ込まれた気分じゃわい!⦆

 

 神の領域に片足を突っ込んでいる、そんな言葉が脳裏に浮かんだ。

 

 船乗りの勘というやつである。

 

 今までも生き残るために役立ったそれを疑うなど考えられない。

 

 

「貴様ら、魔帝軍か?」

 

 これまでの行動から魔帝軍ではないと思ったが一応確認した。

 

「魔帝軍?なにそれ?」

 

 この世界の住人なら御伽噺で魔帝のことは知っているはずである。

 

「4か月前に違う世界から転移してきたからこっちのことはよく知らないんだよねー」

 

「転移国家じゃと!?」

 

 日本国との最初の会談の際、外交官は転移してきたことを伝えたがロウリア側は一切信じず、

 

 上層部に報告すらしなかった。なのでムルデカは知らなかった。

 

 甲板に白地に赤い丸の描かれた国旗が掲げてあった。

 

「まさか太陽神の使者たちとでもいうのか?」

 

 

「さて、爺さんそろそろ戦ろうぜ。名を名乗りな」

 

 北上が不敵に笑う。

 

「元海賊サンパ二ラデオン頭目、現ロウリア王国海軍相談役、鉄壁のムルデカ参る!」

 

 ムルデカは覚悟を決め身体強化魔法を全開にかけた。

 

「日本海軍横須賀鎮守府所属、重雷装巡洋艦北上さあ」

 

 北上は艤装を装着していない、しかし生身の人間に負ける艦娘ではない。

 

「日本国には貴様の様な化け物ばかりなのか?」

 

「そうでもないさ、なんせ私は最強だから」

 

 最強と聞いてムルデカは奮い立った。

 

 老いたとはいえ男子、最強という言葉に憧れないわけはない。

 

 相手は日本国最強の戦士、相手にとって不足なし、漢の本懐ここに極まれり。

 

 魔力が全身に満ち、老いてなお衰えなかった筋肉を更に巨大化した。

 

「いいねぇ痺れるね」

 

 軽巡洋艦は基本的に筋肉好きである。北上もはち切れそうな筋肉に見入っていた。

 

「うおおお!」

 

 服がはじけ飛び、ふんどし一丁になる。

 

「やぁってやるぜ!」

 

 口調も若いころに戻ったらしい。ムルデカが突撃する。

 

「来な!」

 

 北上も駆けだした。

 

 

「なにがやぁってやるだ!この変態爺!」

 

 ふんどし一丁とセリフを勘違いした大井に横合いから思いっきり蹴り飛ばされて、ムルデカは

 

 海面に三度飛び跳ねて沈んだ。

 

 大井は艤装を装着した艦娘形態になっていた。

 

「北上さん!大丈夫ですか?」

 

 大井が北上の方を向くと彼女の顔がアップで映った。

 

「大井っち割り込んじゃ駄目だよ、危ないよ」

 

「へぶ!」

 

 北上の拳が大井の顔面にめり込んだ。そのままボディを殴り体を浮かせる。頭突きでさらに上

 

 空に高く放り投げる。

 

 滞空している間に北上は観艦式形態を解除し艦娘形態に移行した。

 

「40門の酸素、じゃない魚雷だけど全基持ってきな」

 

 北上は半円形を描くように航行しながら落下地点に魚雷を発射した。

 

「いやーん北上さんたら強引なんだから♡。でも嫌いじゃない、嫌いじゃないわ♡」

 

 大事なことなので二度言いながら落下した大井に魚雷が命中する。

 

「これがあたしの、あたしたちの艦隊の切り札さ!」

 

 巨大な水柱がそびえ立つ。

 

「これは大井の業界でもお仕置きです~ごふっ」

 

 大井は大破した。

 

 

「あれは途中で止められたんじゃねえか」

 

 木曾が球磨に疑問をぶつけた。

 

「いい薬クマ」

 

 やはり勝負に水を差されて怒っていたようだ。

 

「でもあれで大井姉さんが反省するか?」

 

 球磨は渋い顔をして言った。

 

「絶対無理クマ、馬鹿は死ななきゃ治らないクマ」

 

「七回転生しても直らないと思うぞ」

 

 

「ワシはあれを食らうところだったのか」

 

 ムルデカはいま海に浸かっている幸運を嚙み締めた。

 

 最も北上は魚雷を人に使うつもりはなかったはずだ。

 

 

 

 シャークンは一部始終を見ていなかったのでムルデカが死んだと思っていた。

 

「ムルデカ殿の犠牲を無駄にするな、全艦撤退せよ!」

 

 その時旗艦に砲弾が直撃し、船体が真っ二つに折れて沈没した。

 

 シャークンとカイラスは救助に来た駆逐艦雷に救助された。

 

 ギムの町で陸軍が虐殺を行ったので自分たちも報復にあうかと思ったが、拷問も私刑もしない

 

 と言われたので安堵した。

 

 その後彼は日本国に学ぶことを決意する。

 

 

「武装勢力が撤退を開始しました」

 

「よし、攻撃止め」

 

 霞は戦闘を停止させ、物思いに耽る。

 

⦅ファティマがここまで強力な兵器だったとは。今後の軍事バランスが崩壊するわね⦆

 

 これまではもし仮に艦娘が反乱を起こしても護衛艦のミサイル攻撃にて撃破できると考えられ

 

 ていた。深海棲艦には自衛隊の兵器は全く効かないが、艦娘には効果は多少低くなるものの効

 

 くのである。

 

 しかしファティマを搭載した艦娘ならば護衛艦それもイージス艦とすら戦える。

 

 自衛隊、艦娘、深海棲艦の三者で三すくみが成り立っていたのだが、深海棲艦は敗北、艦娘は

 

 退役が決まり、今後国の守りは自衛隊が担うことが決まっていた。

 

 しかし突如日本国が異世界に転移、更にファティマが登場したことによりその未来が完全に崩

 

 壊した。今後どのような事態になるか全く予測が出来ない。

 

「どこのどいつが日本を召喚したのか知らないけれど最高のタイミングだったわ!」

 

 そう最高のタイミングだったのである。艦娘は今だ退役しておらず、数年待てば護衛艦の建造

 

 が完了する。ラキシスも日本に居た。

 

 日本国を召喚したものが何者であるかは分からないが、戦力としては最も充実していたタイミ

 

 ングを狙ってやったとしか思えなかった。

 

 霞が奥歯を噛み締めていると加賀から通信が入った。

 

「霞さん、先ほどの北上さんの言動についてなのですが」

 

 規律に厳しい加賀には看過できない事があったのだろう。

 

「最強は赤城さんです」

 

 霞は考えるのを止めた。

 

 

 ブルーアイの報告書より

 

 日本海軍はワイバーン250騎を全騎撃墜。

 

 及びロウリア王国海軍4400隻のうち約1400隻を撃沈。

 

 日本国の被害は火矢により重巡妙高の塗装が一部剥げたこと、そして友軍の誤射により雷巡大

 

 井が大破したことのみ。

 

 大井が進路を間違わなければ、ほぼ無傷で決着していたと予測される。

 

 日本海軍、そして艦娘の戦力はロウリア王国海軍を圧倒的に上回る。

 

 そして霞母さんの天才的指揮により一切の死角はない。まさに完璧である。

 

 以下霞の素晴らしさを称える文が続くので省略。

 

 

 クワトイネ公国最大の経済都市マイハークは救われた。

 

 この日を記念して公国の祝日、母の日が制定された。

 

 後に日クワ両国の友好を祝して日本から全高148メートルの慈愛の聖母像(企画=大淀、制作

 

 指揮=足柄、資金提供=提督一同)が贈られた。

 

 科学と魔法が融合したその像は夏になると水着に変化する。

 

 つり目にサイドテールの聖母像はマイハーク市のシンボルとなった。

 

 後年、世界有数の経済都市そして美食の都となるマイハークの市民は、この時の恩を忘れずい

 

 つまでもこの像を愛し続けた。

 

 毎年母の日には市民が集まり、太鼓を鳴らして聖母像のモデルとなった駆逐艦を称える祭りが

 

 催されることとなった。

 

 ちなみに同様の像がムーの都市マイカル、新生レイフォルの首都カスミリア、イルネティアの

 

 港町ドイバ、そして日本の横須賀市にも建造されることとなる。

 

        (青葉出版、究極!内閣総理大臣、霞ちゃん伝説~導かれしクズ司令官より)

 

 

 

 少し時をさかのぼって聯合艦隊が出撃した後のマイハーク。

 

 日本が借りた駐屯地でマイハークの陽炎たちは悩んでいた。

 

「やはり駄目ですか」

 

「ハイ、マグナパレスニセントウハムリデス」

 

 カタカナで整備の結果を告げるのは軽巡夕張のパートナー、バスクチュアルである。

 

 

 バスクチュアル

 

 クローム・バランシェ博士の初期の作品。愛称はバシク。

 

 本人の希望によりGTMの開発専門に育成された。しかし何故か全ての感情を失ってしまう。

 

 これはバランシェ博士も意図したものではなく、かなり困惑したらしい。

 

 特定の主を定めずミラージュ騎士全てをマスターと呼ぶ。

 

 同じ性質のヴィッターシャッセという妹が居る。

 

 

 辛うじて歩かせる事は出来るものの、剣状武器ガットブロウを振るったりバスターランチャー

 

 をぶっぱなしたりすることは出来なかった。

 

 広域都市破壊兵器は使えるが弾が生産できない。

 

「仕方がないデスねマグナパレス、あなたは陽炎ちゃんの艤装に隠れてなさい」

 

 なんとジョーカー星団最強のGTMを近代化改修餌にしようと言うのだ。

 

「待って下さい、お母さま!」

 

 案の定反対の声が上がる、がこの場の誰も知らない人の声であった。

 

 ここはごく限られた関係者しか立ち入りを許されない場所である。

 

 声のする方向を見ると大きな帽子を被り、肩はとがっているのに腰回りがハイレグという珍妙

 

 奇天烈なスーツを着た女性がいつの間にか居た。

 

 その顔はラキシスに似て彼女をボーイッシュにした感じである。

 

「あら、カレン。久しぶりね」

 

「誰?」

 

「私が未来に産むことになる娘デス」

 

「はあ?!」

 

 

「要するにセワシ君みたいなもん?」

 

「大体合あってる」

 

「ただ手に負えないくらい我儘な娘なんですよ」

 

 極めて危険な人物であると分かり周囲のものが緊張に包まれる。

 

「母さま、250億年間再会の希望にしたマグナパレスをどこの馬の骨とも分からない小娘の機

 

 械に融合させるなんてお止めください」

 

 カレンはマグナパレスに思い入れがあるようだ。

 

「大丈夫、機会を見て分離できるようにするから」

 

「そういう問題ではありません!お母さまはお父様と再会したくないのですか?」

 

 するとラキシスは赤い宝石の付いたイヤリングを見せた。それを見たカレンが狼狽える。

 

「それはセントリードロップのイヤリング」

 

「そうです。天照の帝のペンダントの宝石と元々一つだったこの石は共鳴しています」

 

「もし離れ離れになったときはその音を頼りに再会しようとペアであつらえたのデス」

 

 なんだか夫婦のいい話のように一同は聞いていた。

 

「天照の帝は自分のペンダントをコーラスのディジナ王女に贈ったそうですね」

 

「うわぁ最低」

 

 それを聞いていた女性陣から猛烈なブーイングが起こった。

 

「なのでしばらく帝とは距離を置こうと思います。一億年と二千万年は最低でも」

 

「うぐぐ、でもお父様が意味不明なことをするのはいつものことじゃないですか!」

 

「いつもなのかよ!」

 

 ぐぬぬと唸っていたカレンが陽炎に憤怒の表情を向ける。

 

「この人妻を誘惑する毒婦め!四人までなら同時にオッケーって顔をしてるわ!」

 

 カレンの敵意が陽炎に向かった。どこのダークシュナイダーだ。

 

「陽炎さんはそんな人じゃありません!」

 

 潮がカレンの声を遮る。

 

「陽炎さんは五人までならオッケーです!」

 

 まさかの追い打ち、ダークシュナイダー越えである。

 

「そうだそうだ」

 

 他の第14駆逐隊のメンバーも同意する。

 

「ちょっと、私はあんたたちと粘膜をぬちゃぬちゃする関係になったことはないわよ!」

 

 するとその場にいた全員がえっ、という顔をした。

 

 楊貴まで食事の手を止めて驚いた表情を浮かべていた。

 

「何なのよコレ」

 

 

「ええい、ごちゃごちゃと騒いでも誤魔化されないわ、毒婦め成敗してくれる!」

 

「カレン!」

 

「安心してくださいお母さま、殺しはしません。殺す代わりに埼玉県民にしてあげます!」

 

 人には決して出来ない発想、吐き気を催す邪悪、これが神族なのか。

 

「そんな、筆者yutarouと同じ埼玉県民に変えるなんて、なんて恐ろしい」

 

「ふふふ、モーターヘッドをゴチックメードに変えることに比べれば容易いこと」

 

「くらえ!」

 

 カレンのクロスした腕から光線が迸る。

 

「きゃー!」

 

 陽炎に埼玉県民ビームが命中する。

 

「あれ?」

 

 陽炎はなにも変わらず立っていた。

 

「もう一度!」

 

 二回目のビームを浴びても陽炎に変化はない。

 

「何故?なぜなの?」

 

 カレンの疑問にラキシスが答える。

 

「陽炎ちゃんには神の力では干渉できないのよ」

 

「彼女は一個の完結した宇宙を内包している艦娘完全体なのよ」

 

 カレンの表情は某天空の神の様だった。

 

「なになに艦娘完全体って」

 

 陽炎の疑問には誰も答えない。

 

「ちくしょー」

 

 カレンが殴り掛かる。陽炎はカウンターを食らわせる。

 

「ぶったね、父様にもぶたれたないのに!」

 

「あのヒトは娘を殴れないデショ」

 

 ラキシスがカレンに突っ込む。一方で陽炎は大げさに手を広げて後ろを向いた。

 

「殴って悪いか、殴られたことのない人間が立派な人間になれるか!」

 

 そう言ってカレンをもう一発殴る。

 

「二度もぶった!」

 

 何故か二人の表情は満足そうだ。

 

 その時ピロリーンというフリー音源の音が鳴った。

 

「任務達成しました。ネジ二個と間宮と伊良湖を手に入れました。」

 

 スピーカーから大淀の声でそのようなアナウンスがあった。

 

「休憩しましょう。カレンさんも一緒に間宮に行きましょう」

 

 陽炎が第14駆逐隊とカレンを間宮に誘う。

 

「カレンさんじゃなくてカレンと呼んでよ」

 

「分かったわカレン」

 

「あなた達初対面よね、なんで仲良しなの?」

 

 ラキシスが疑問に思う。どうやら二人とも一目見たときから友達になれると思ったようだ。

 

 その後陽炎たちとカレンは仲良くお茶をした。

 

 今後もし地球の品が必要になった時は、カレンの能力で持ってきてくれるという約束を取り付

 

 けた。

 

 マグナパレスは陽炎の艤装に吸収されたが艤装が金色になることはなかった。

 

 




 ムルデカの元ネタは異世界転生騒動記10巻に出てくる同名の人物です。

 鳳翔さんの操竜術は「クロスボーンガンダム=鋼鉄の七人」の敵役、影のカリストをイメージ

 してください。

 陽炎と第14駆逐隊メンバーに肉体関係は有りません。

 艦娘完全体は私のオリジナル設定ですロウリア編完結後に説明する話を書きます。
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