新世界の海に陽炎、抜錨します!   作:yutarou

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 艦娘は艦、だが人型なのだよこれがな!

 とアクセル隊長も言ってます。(言ってない)

 大変お待たせしまして申し訳ありません。会議シーンが難しかった。

 今回は暴力的な表現が多めになっています。苦手な方はブラウザバックをお願いします。

 秋イベ後段作戦は無事甲勲章を手に入れることが出来ました。

 装甲破砕ギミックを解いている途中でボスに行ったら、クリアしてしまいました。

 最悪難度イベントの次に最ヌルイベントが来るなんて落差が酷い。


第十話 異形の少年は救世を望む

 第十話 異形の少年は救世を望む

 

「なぜ一騎も帰ってこないのだ?」

 

 王都防衛騎士団団長パタジンの問いかけに答える部下はいない。

 

 華々しい戦果を挙げて帰って来るはずの竜騎士団は、敵飛竜との戦闘に入るという魔信を最後

 

 に、日が暮れても一騎たりとも帰還しなかった。

 

 竜騎士たちの悲鳴と絶叫のみが魔信器から聞こえ、最後には応答が無くなった。

 

 250騎という数はパーパルディア皇国から支援を受け6年の歳月を懸けてやっと揃えた航空戦

 

 力の半数に当たる。

 

 ロデニウス大陸の歴史上、これだけの航空戦力を動かしたことはない。

 

 絶対に負けるはずがない戦力だったはずだ。しかし現実には全滅、それも帰還騎0と言う完全

 

 敗北である可能性が高い。

 

 クワトイネには一体どの様な存在が味方に付いたのだろうか。

 

 差し当たり王都の防衛力を高めるために先遣隊からワイバーン50騎を戻すよう通達した。

 

 

 パーパルディア皇国の観戦武官ヴァルハルは自室の隅でガタガタ震えていた。

 

 彼は国家戦略局が秘密裏に支援したロウリアがどの様な戦いをするか見届けるために艦隊の一

 

 隻に乗り込んでいた。

 

 古臭い艦隊ではあるが4千4百隻も集まったらどうなるのか個人的興味もあった、しかし結果は

 

 見るも無残な惨敗であった。

 

 生き残った幸運を神に感謝しつつヴァルハルは戦いを振り返る。

 

 我が国の魔導砲よりも射程が長い砲を持ち、ロウリアの軍船を滅多打ちにしていた。 

 

 敵が使役していた羽ばたかない飛竜、あれは列強第二位のムーが開発したと言われる飛行機械

 

 ではないだろうか。実物を見たことがなく噂でしか聞いたことがないが、もしそうだとしたら

 

 大変なことになる。

 

 日本国なる国はムーの支援を受けている可能性がある。もしこの国と祖国が戦争をしたら列強

 

 たるパーパルディア皇国でさえも危ないかもしれない。

 

 彼は魔信を通じて見たままを上司に報告した。

 

 

 所変わってクワトイネ公国

 

「千人以下の精鋭部隊を編成して毎回拠点を変え敵を襲撃し、戦術的勝利を積み重ねることでロ

 

 ウリア王ハーク34世を戦場に引きずり出しそこで討つ。それしかありません!」

 

 国家の一大事を協議する蓮の庭園で、ヤヴィン軍務卿はクワトイネ公国が戦争に勝利できる唯

 

 一の方程式を首脳陣に提案した。

 

「もしロウリア軍が他の都市でもギムの様に虐殺を行ったらどうするのだ?」

 

「住民には表向きロウリアに逆らわないよう通達しておけばギムの様なことはそうそう起こらな

 

 いと思います。しかしどうしても起こってしまったら見捨てるしかありません」

 

 ヤヴィンが苦渋に満ちた表情で断言する。

 

「そんな!国民を見捨てるなど出来ません!」

 

 カナタ首相が叫ぶ。しかしヤヴィンは非情な現実を突きつける。

 

「もはや我々には何も犠牲を出さずに大切な者を守ることが出来ないのですよ」

 

 出席者は皆自分達の無力さに悔し涙を流していた。

 

 

「日本はロウリア海軍を止められたのだろうか」

 

 陸だけでなく海からも侵攻されればこの国は墜ちる。だからこそ日本国には絶対に勝ってもら

 

 いたかった。あるいは少しでも戦力を減らしてほしかった。

 

「難しいでしょう。日本国が保有する軍船はおよそ300隻、たいしてロウリアは4千4百隻です。

 

 日本国の軍船の方が性能が高いとは言え相当の被害が出ていると思われます」

 

「そうか、、」

 

 カナタは艦娘たちの顔を思い描く。彼女らともう二度と会えないかもしれないと思い、胸が締

 

 め付けられる痛みを感じた。

 

 その時海軍卿が庭園に入場した。今回は海戦の結果が判明したら即時に報告するよう言われて

 

 いる。

 

「ロデニウス沖海戦の結果をお伝えします」

 

 出席者の表情が厳しくなる。皆緊張していた。

 

「して、どうなった?」

 

 海軍卿は一同を見渡していった。

 

「日本国の、大勝利です!」

 

 出席者から驚きの歓声が上がった。庭園内が喜びと安堵の空気に包まれる中、カナタは気にな

 

 ることを尋ねた。

 

「そうかそれは良かった。だが日本国にはどれほどの被害が出たのだ?」

 

「それが味方の誤射で一隻が大破した以外に損害がなかったと言っています」

 

「それはどういうことなのだ?」

 

「ロウリアからの攻撃では損害らしい損害はなく、一方的に叩きのめしたそうです」

 

 予想もしなかった結果を聞いて出席者全員の目が点になる。

 

 海戦の詳細は観戦武官の帰還を待ってから諸侯に発表することになった。

 

 一介の武官を政治部会に参考人招致することは異例であるが、実際に海戦を見た者にしか説明

 

 することが出来ないであろうと判断された。

 

 

「では何かね、日本国はロウリアの竜騎士250騎を全て撃墜し、さらに軍船1400隻を撃沈した。

 

 それでいて日本国の損害は中型の軍船である巡洋艦が一隻が大破したのみ、それは味方の誤射

 

 で敵の攻撃による損害はなし、戦死者も負傷者もゼロ。こんな現実離れした報告を信じろとい

 

 うのかね?」

 

 外務卿リンスイが不機嫌そうな口調で観戦武官を務めたブルーアイに質問する。

 

「火矢を受けた妙高殿の船体に塗装が一部剥げた損害があります」

 

「そんなものは損害の内に入らんだろう」

 

 リンスイの冷静な指摘にブルーアイは困った顔をする。

 

 何かしら損害を書かなくてはならないと思って報告書に記載したが、書いている最中にこれは

 

 突っ込まれるだろうなと思っていたが予想通り突っ込まれてしまった。

 

 しかしどう報告書を書いたら良かったのか分からない。

 

「君が嘘を吐いているとは思ってないが非現実的過ぎて信じられんのだよ」

 

 リンスイは頭を抱えて嘆いたが、その他の出席者も同じ気持ちだった。

 

 報告を聞く前は巧みな戦術が上手くはまり奇跡的な勝利を収めたと予想していた。

 

 しかし実際は圧倒的な技術力による兵器の性能差をもって正面から叩き潰したのであった。

 

 もし日本国が自国に牙を剥いたらどうなるのか想像したくない。

 

「もし日本海軍と我が国の海軍が戦ったらどうなるかね」

 

 空気の読めない諸侯が要らぬことを聞いた。

 

「、、、10分と持たないでしょう」

 

 その言葉を聞いて議事堂内がどよめきと怒号に包まれる。

 

 恐怖の悲鳴を上げる者、怒る者、パニックを起こす者、出席者たちは様々な反応を示した。

 

 その中で日本国へ行ったことのあるヤゴウとハンキはブルーアイが嘘を言っていることを見抜

 

 いていた。

 

 ロデニウス沖大海戦は日本国にとっては威力偵察に過ぎない。

 

 ロデニウス大陸の国家がどの様な武器を持ちどの様に戦うのか分からなかったので様子見に終

 

 始してた。

 

 もし日本国が本気でその全火力を叩きつけたら百隻程度に過ぎないクワトイネ公国海軍は10秒

 

 にも満たない短時間で消滅するだろう。

 

 ふと見るとブルーアイにとある老貴族が詰め寄っていた。

 

「貴様それでも公国軍人か、恥を知れ!」

 

 その貴族はノーソン伯爵といい、陸軍卿を務めていた。

 

 名門の生まれで騎士学校(士官学校にあたるもの)の成績も良かったのだが、如何せん人望が

 

 なかった。

 

 かつてエジェイ要塞司令であったとき要塞中のゴミ箱を捜索し、未使用の弓の弦が三束捨てて

 

 あったのを発見。兵士たちの気の緩みを正すと言って長時間の説教を始めたので現場の兵士た

 

 ちは閉口してしまった。その後兵士達からつるさん将軍と陰口を叩かれている。

 

 詰め寄られたブルーアイに対してヤヴィンが助け舟を出す。

 

「まあまあノーソン前陸軍卿、およそ千四百隻が二時間余りの戦闘(実際はもっと短い)で撃沈

 

 されたのですから約百隻のわが国の艦隊では十分以下で全滅するというのは計算上不思議では

 

 ありません」

 

「そういうことを言っているのではない!私は必勝の信念が揺らぐことを危惧しているのだ!」

 

 ノーソンが口唾を飛ばして反論するが、現役時代散々兵士の士気を失うことを繰り返したのは

 

 誰だ、とヤヴィンと周囲の軍人は思っていた。

 

「必勝の信念など相手も持っていますよ、誰だって勝ちたいのですから」

 

 ヤヴィンがにやりと笑って皮肉で返した。ノーソンは怒りで震えている。

 

「貴様、軍人魂を何だと、、、」

 

 両者が睨みあうなか、外務卿が発言した。

 

「皆さま静粛に、日本国からタイダル平野の貸借の要望がありました」

 

 エジェイ要塞から5キロの所にあるタイダル平野はクワトイネ公国には珍しく作物の生えない

 

 不毛の地である。日本国はこの地に駐屯地と飛行場を建設したいと要望していた。

 

「許可します。食糧などの物資はこちらで提供します。また戦争期間中は日本国に公国内の無制

 

 限自由通行を許可します」

 

 カナタ首相は即決で許可を出した。この措置にノーソンと幾人かの出席者が反発する。

 

 しかし決定は変わらない。

 

「首相!我が国の主権はどうなるのです」

 

「ロウリアの戦力は昨年の大東洋諸国会議の参加国全てを合わせたそれよりも多いのです。そん

 

 な敵に対して我が国一国でどうしようというのですか」

 

 ノーソンは歯ぎしりして悔しがった。

 

 そういえば自分が軍務卿に就くことに反対したのはこ奴らであったと思い出した。

 

 国家を私物化する奸賊を排除しなければならない。

 

 ノーソンは反日勢力をまとめ行動を起こすことを決断した。

 

 

 そのころクワトイネ・クイラ国境地帯ではクイラ王国の援軍が立ち往生していた。

 

「日本の技術者を呼ばなくては我々では修理できません。」

 

 この援軍にはクイラ王国の新兵器、鉄甲車が編成されていた。

 

 鉄甲車は日本の装甲車を模倣しようと4WDやオフロード車などに鉄板を張り付けたものであ

 

 る。 当初は鉄板を張り付け過ぎ、重くて動けなくなったりした。なので鉄板を薄くし、間に

 

 魔獣の皮を挟むなどの工夫をして防御力と軽量化を同時に実現することができた。

 

 魔獣の皮を加えたことより疑似的な複合装甲の様な効果を得ることが出来たため、本家の装甲

 

 車には敵わないが意外に防御力が高い。

 

 その性能はクイラ王国の上層部も満足のいくもので、王国は満を持して援軍の中枢戦力として

 

 送り出した。しかし異世界の悪路は技術者の想定を超えていた。

 

 国境付近が想像以上の悪路であったため足回りが故障しクイラ人では修理不能となってしまっ

 

 た。研究のため何度か分解したことも故障の原因の一つである。

 

「むう、しかし今は戦時だ。危険だから日本のメーカーは技師を派遣してくれないだろう」

 

「ではここに置いていきますか?」

 

「それはいかん、鉄甲車は我が国の機密だ、誰かに見つかって調べられたら一大事だ」

 

「ではどうすれば」

 

 ヒト族の指揮官と技術者が議論していると獣人の兵士が言った。

 

「持っていけばいいじゃないですか。このくらいなら獣人が6人程で持てますよ」

 

「あ、そうか獣人は力持ちだからこれくらい持って行けたな」

 

 指揮官と技術者は少し恥ずかしかったが問題が解決して安堵した。

 

「ではマイハークまで持っていけばそこに日本の技術者がいるから見てもらおう」

 

「了解しました。」

 

 その後故障した鉄甲車をもって移動を再開した。

 

「そういえば我らがご先祖さまが太陽神の鉄竜を持ち上げたときは太陽神の使者の方々は仰天し

 

 たらしいですね」

 

 かつて魔王と太陽神の使者が戦った際、彼らの使役する鉄の地竜が怪我をして動けなくなった

 

 事があった、その時獣人族数名が素手で持ち上げ移動させたという。

 

 その時使者たちは大層驚いたという。

 

「日本国の皆さんも驚くだろうか」

 

「ははは、違いない」

 

 その時一人の若手兵士が何かを思いついた。

 

「そうだいいことを思いついた、皆さん聞いてください」

 

 

 そのときの兵士の思い付きから生まれたのが人力戦車である。

 

 ロウリア戦役が終結してから1年後、クイラ王国の開発部から国産戦車第一号が完成したと発

 

 表され披露目された。 

 

 その見た目はかつて自衛隊で運用された61式戦車によく似ていて円形の砲塔が可愛らしい。

 

 始動したと思ったら突然車高が高くなり下から16本の足が生えてきた。そしてその足が小刻

 

 みに動いて走り出した。

 

 獣人族の怪力を頼んだ文字通りの力技で動き出した人力戦車は演習場を縦横無尽に動き回り、

 

 大砲をぶっ放して暴れまわった。

 

 その様子を見ていた日本国の来賓たちは一人残らず椅子からずり落ちた。

 

「異世界に来たことを今日ほど実感したことはない」

 

「多分一生涯夢に見る」

 

「ネタ兵器でわが紅茶帝国が負けるわけにはいかないソーフィ!」

 

 列席者はこのような感想を漏らした。

 

 その場で日本から地雷なる兵器の存在を知らされ即不採用が決定したのだが、その後の戦争で

 

 この人力戦車の目撃情報が相次いだ。

 

 いわくパーパルディア皇国のリンドブルムを蹴散らしただの、グラバルカス帝国軍から民間人

 

 を守っただの戦場伝説がまことしやかに噂された。

 

 クイラ王国はこの件に関して沈黙を守っている。

 

 

 

 場面代わってロウリア王国の謁見の間

 

「此度の海戦なぜ負けたのだ」

 

 予想外の大敗北にロウリア王ハーク34世は王都防衛騎士団団長パタジンを呼び出した。

 

「申し訳ありません、生き残りから海戦の様子を聞いても荒唐無稽な内容の証言ばかり出て来ま

 

 して真偽を確かめるのに時間がかかっております。原因がはっきりするまで海軍による進出は

 

 控えるように致します」

 

「何も分からぬというのか」

 

「一つ確かなのは開戦前に軍靴などの装備品に不良品が含まれていたと報告がありました」

 

「それだ!敗戦の原因はそれに違いない!ならば装備調達担当者を打ち首にせよ!」

 

「ははっ!」

 

 哀れ敗戦の責任を負わせる格好の生贄になった装備調達担当者はロデニウス沖海戦の最後の戦

 

 死者となった。

 

 

 

 日本国のマスコミはロデニウス沖海戦の勝利を報じたがさして大きな関心を呼ばなかった。

 

 それよりも陽炎が第14駆逐隊メンバーと百合関係にないと発言したことが衝撃をもって受け

 

 止められた。

 

 この発言を受けて百合同人業界は今後の活動方針を大きく転換するか、それとも今まで通り突

 

 き進むのか決断を迫られた。

 

「ふふふ、やはり”かげ×ぬい”こそ至高」

 

「黙れ!”かげ×ぼの”は滅びぬ!何度でも甦る!」

 

「”あら×なが”は変わらないよね、ね?」

 

「”かげ×むら”はどうなる?どうする?」

 

 日本はこの時はまだ危機感を持っていなかった。

 

 

 

 ヴァルハルの報告を受けたパーパルディア皇国の国家戦略局は日本国という謎の国家について

 

 協議していた。

 

「なんだこの報告は!我が皇国よりも射程が長い魔導砲にムーの飛行機械、挙句の果て空飛ぶワ

 

 イバーンを正確に打ち落とす魔導兵器だと、観戦武官はふざけているのか!?」

 

「ヴァルハルは真面目なだけが取り柄でしたが、蛮地での赴任が長く精神に異常をきたしている

 

 のかもしれません。今度交代させてやりましょう」

 

 国家戦略局の課長は観戦武官ヴァルハルの報告を世迷言と切って捨てた。

 

「しかしこの海域に国などあったか?」

 

「この海域は航海の難所でして碌な調査もされていませんでした。おそらく群島の蛮族が集まっ

 

 てできた新興国家でしょう」

 

「原始的な軍船とはいえたった十二隻相手に千四百隻も撃沈されるとはな。特にこの細長い魔導

 

 砲の様な兵器でワイバーンを打ち落とした、という報告は余りにも現実離れしていないか?」

 

 魔導砲は命中率が悪い。だからこそ多数の砲を積んだ戦列艦というものがあり、それを空を飛

 

 ぶ目標を狙って命中させるなど出来るわけがない。

 

 

「軍船の破壊状況から見て魔導砲と造れるくらいの技術力はあるようだが、ロウリアが負けるこ

 

 とはあるまいな?万一負けることになったら援助した金が回収できなくなってしまうぞ」

 

「ロウリアは人材の質は悪いですがとにかく数だけはいます。質が物を言う海戦ならともかく、

 

 陸戦なら負けることはないでしょう」

 

「ならよいがな」

 

 

「ムーの支援を受けている可能性はないのでしょうか」

 

「ないな、第二文明圏からここまで二万キロも離れている。第三文明圏に介入するくらいなら大

 

 陸の再統一を図るはずだ」

 

「それに最近第八帝国とかいう新興国家が第二文明圏全ての国に宣戦布告したとかいう話だ。そ

 

 の対応に手いっぱいで第三文明圏に手を出す可能性は低いだろう」

 

 その言葉に会議室内の人々が失笑する。列強国二つを含む国家群に文明圏外国が戦争を吹っか

 

 けるなど無謀に過ぎる。

 

「念のためシオスとアルタラスにあるムーの飛行場でここ数年なにか大きな動きがあったかどう

 

 か確認しておけ」

 

 この二か国にはムーが専用の飛行場を建設している。(飛行機械の飛行場ではワイバーンは爪

 

 が引っ掛かって離着陸に適さない) おそらく我が皇国をけん制するために誘致したのだろう

 

 が、いつかそれは甘い考えであると思い知るだろう。

 

 第三文明圏にムーがその手を伸ばすとするなら必ずこの飛行場で動きがあるはずだ。課長はこ

 

 の二か所の監視を強化することを指示した。 

 

「最悪日本国がムーの傀儡国家で飛行機械が提供されていても旧式機か性能を低くした機体だろ

 

 う。最新鋭機でなければワイバーンロードで対抗できる。心配いらない」

 

 ムーの最新の飛行機械マリンはワイバーンロード相手に航空優勢が取れるほど強力な機械であ

 

 るが、そんなものを外国に提供するわけはなく、旧式機ならばワイバーンロードの方が優勢が

 

 取れるのである。

 

「了解しました」

 

 国家戦略局は現地の派遣員に日本国について情報を集めるよう命令を出して会議を終了した。

 

 

 

 エジェイ要塞の西25キロの地点をエルフの集団が移動していた。

 

 周囲には肉が非常に美味な野生牛が草をはみのどかな雰囲気であるが彼らは必死であった。

 

 彼らはギムの町とエジェイ要塞の間にあるエルフの村から逃げてきた疎開集団である。

 

 その数約二百人。

 

 村の若者が町に買い出しに行った際に買ってきた、ラジオという魔道具の様な物は魔力通信器

 

 よりも手軽に使えるという。若者はそれから流れるアイドルという歌い手の歌に魅了されて買

 

 ってきたらしい。

 

 村に帰ってラジオを起動してみるとギムが陥落し住民が虐殺されたというではないか。しかも

 

 自分たちの村が避難命令区域に入っていた。普段外界との交流が少ないため気が付かなかった

 

 のである。

 

 夜のうちに急いで荷物をまとめ出発したがあと少しでクワトイネ公国軍の基地に着く。

 

 そこまで行けば安全であるが、今進んでいるこの場所は遮蔽物が少なく見つかりやすい。

 

 ある少年が妹の手を引いて歩いていた。その名はパルン。

 

 病気で母を亡くし父親と妹の三人暮らしであったがロウリアとの緊張が高まった頃、父親は軍

 

 に予備役召集された。

 

 ある朝父親が出ていく際言った言葉が胸に刺さった。

 

「パルン、アーシャを頼んだぞ。お兄ちゃんなんだからな」

 

 パルンは妹アーシャを絶対に守ると心に誓った。

 

 進む速度はなかなか上がらず焦るパルンであったが、ついに恐れていた事態が起こる。

 

 集団の後方で警戒していた村の若者がロウリアの騎馬隊を発見したのだ。

 

 

 

 ロウリア王国ホーク騎士団所属、第15騎馬隊隊長”赤目のショーヴは不機嫌だった。

 

 なぜならギムの町で彼はほとんど楽しめなかったからである。

 

 獣人の夫婦とその娘を嬲って殺そうと思っていた。殺さないでくれと哀願していたが構わず

 

 まず母親を殺した。しかしその後油断していた彼の手を父親が思いっきり嚙みついた。

 

 もちろんすぐさま父親を殺したがショーヴの指は千切れかかるほどの大けがを負っていた。

 

 軍の治癒魔法の使い手に治してもらおうとしたが、玉ねぎ頭の副将が戦闘で負った怪我ではな

 

 いから金を取ると言い出した。

 

 その治療代は完全に治癒させるとこの戦の儲けが全て吹っ飛ぶ額であった。

 

 仕方が無くとりあえず指を切断せずに済むくらいに治癒をとどめて置いて残りは自然に治るの

 

 を待つことにした。

 

 ケチな副将は闇討ちしてやろうかとも思ったがどうも勘が鋭いのでやめた。

 

 そして最後に残った娘はまだ殺していない。

 

 この手の怪我が治ったら生まれてきたことを後悔するような拷問を考え付く限りのやってやる

 

 つもりである。娘の父親には亜人の分際で人間様に嚙みついたことを、あの世で後悔するよう

 

 にしてやろうと思っている。

 

 そして今も娘を馬の背に括り付けてている。本陣に置いて誰かに盗まれるわけにはいかない。

 

 また溜まった時に処理するのに好都合であったので常に連れまわしている。

 

 部下にも好評である。

 

 

「獲物発見。野郎ども突撃だ殺しまくれ!」

 

「ヒャッハー!」

 

「正規騎士の掛け声がヒャッハーって、ロウリアってどんな国だよ!」

 

 エルフの若者の誰かが叫ぶ。筆者が日本国召喚第一巻を読んだ感想はこれと同じだった。

 

 ロウリア王国は領土を拡大する際山賊や盗賊などから腕に覚えのある連中を取り込み、爵位を

 

 与え貴族とした。

 

 ロウリア王国東部諸侯団所属ホーク騎士団もまた山賊から成りあがった騎士団である。

 

「男は殺して魔獣の餌にしてやれ!女は犯してから魔獣の餌だ!」

 

「隊長、お話があります!」

 

 ショーヴの山賊時代からの副官が真剣な様子で声をかけてきた。

 

「なんだ?」

 

「エルフの美少年は殺さずに私に下さい。興味があります」

 

「え?」

 

 ショーヴは一瞬真顔になった。副官がそっちの趣味を持っていたとは今まで気付かなかった。

 

 こんな時どう返したらいいのか判断が出来ない。ホーク団長ならどう答えるだろうか?

 

 ショーヴはホーク団長の言葉を思い出す。

 

「ホーク騎士団心得!」

 

「エンジョイ、アンドエキサイティング!」

 

「男か女か言ってたら人生損しちゃうぜ!」

 

「ヒィヤッハー!」

 

 

 奇声を上げながら迫りくる騎馬隊を見てパルンは恐怖した。

 

 何を言っているのか分からないが自分たちを殺そうとしていることは分かる。

 

 一体自分たちが西の国の人たちに何をしたというのだろうか。

 

 父さんが言うには公国は千年以上他国に戦争を仕掛けていない。

 

 なぜ彼らは僕たちを殺そうとするのか分からない。

 

 この世の理不尽に泣きたくなる。しかし妹だけは絶対に守らなくてはならない。

 

「アーシャ!必ず守ってやるからな」

 

 パルンは母の話してくれた御伽噺を思い出していた。

 

 

 遠い昔北の大陸に魔王が現れた。

 

 多数の強力な魔物を率いてフィルアデス大陸の人々を襲い多くの国と集落を滅ぼした。

 

 ヒト族、エルフ、ドワーフ、獣人たちはお互いの軋轢を一時棚上げし、多種族連合を結成しお

 

 互いの長所を生かして対抗しようとした。

 

 しかし魔王軍の力は強大で多種族連合は敗退を重ねた。

 

 ただしエルフはその高い魔力を持つことから脅威となると判断され、魔王軍はエルフを根絶や

 

 しにするため神森に攻撃を仕掛けた。

 

 エルフの神(緑の神)は我が子同然の種族を守るため自らの創造主でもある太陽神に祈り、助

 

 けを求めた。太陽神は緑の神の要請に答え自らの使者をこの世界に遣わした。

 

 その代償として緑の神は自分の名前を失ったという。

 

 

 太陽神の使者たちは鋼鉄の魔船に乗って現れ、空飛ぶ神の船や鋼鉄の地竜を操り魔王軍を蹴散

 

 らした。魔物の大群は雷鳴の様な轟きと共に大地を焼く魔導をもって消滅させた。

 

 神武の超鋼をまといし太陽の神兵は徒手空拳でもって魔物を肉片に変えた。

 

 魔王はその力に慄き、まともに戦おうとはせず逃げの一手で北の大陸に撤退した。

 

 フィルアデス大陸を開放した使者と多種族連合は北の大陸との結節点に世界の扉と呼ぶ城壁を

 

 築き魔王軍を封じ込めた。

 

 太陽神の使者たちが帰るとき人々は金銀財宝を渡そうとしたが彼らは決して受け取らず、鋼鉄

 

 の魔船に乗って帰っていった。

 

 神の森の奥には故障した空飛ぶ神の船が一隻残されたという。その船は今では失われた古代魔

 

 法である時空遅延式保管魔法によって大切に保管されている。

 

 

 

(お母さんは本当にあった話だっていってた。神様、緑の神様、太陽神様、自分はどうなっても

 

 構いません。自分の命ならあげますのでどうか妹の命だけは助けてください!)

 

 パルンは必死になって祈るが何も起こらない。

 

「ヒャッハー!ぼやぼやしてっと殺しちまうぞ!」

 

「空を見ろ!あの星が輝いてるぜ!」

 

 ロウリア兵の声が聞こえるようになり村人の中にはあきらめてへたり込む者も出てきた。

 

 パルンは自分の体を盾にしてアーシャを抱え込み叫んだ。

 

「神様ァ!助けてェェェ!」

 

 その時エルフの村人の周囲を強烈な光が照らした。

 

 

「救世を望むのはお前か、異界異形の少年よ」

 

 バタバタという音が響く中、その声はパルンの耳に届いた。

 

「神様、僕の命を捧げます。ロウリアの魔の手から救ってください」

 

「勇気ある少年よ貴様の願い聞き届けた」

 

「神様が太陽神の使者たちを遣わせてくれたくれたんだ!」

 

 パルンは目に涙をいっぱいにして歓喜した。

 

 

「陽炎さん、、」

 

 ラキシスがジト目で見てくる。

 

「あはは、やっぱりカッコいいセリフだったから私も言いたくなっちゃった」

 

 先ほどのセリフは西太陽系ボォス星に伝わる御伽噺の中にあるセリフである。

 

 悪魔に攻められたある国の王女を助けた異界の神のセリフで、天照の帝もカッコいいからいつ

 

 か言ってみたいと言っていたセリフであった。

 

 

 ショーヴは困惑していた。空に黒くて細長い箱の様な物体が浮かんでいる。

 

 その中の中央の空飛ぶ箱から紐が釣り下がっていてそれに人が逆さまにぶら下がっている。

 

 その人間から目を閉じていても眩しいくらいの光が発せられ部隊は足を止めた。

 

 ショーヴは馬がバランスを崩し転倒しそうになったので自分から馬を降りて転倒を避けた。

 

 その後は空飛ぶ箱から光と炸裂音がする度大地が爆ぜて仲間が吹き飛び死んでいく。

 

 山賊時代から苦楽を共にした仲間が虫の様に殺されていく。

 

 空の上にある敵に攻撃する手段はこちらにはない。

 

 ショーヴは退却しようと馬の背を見るとあるものが目に入った。

 

 

「攻撃中止!拘束された民間人を発見しました!」

 

 ラキシスの報告に陽炎は奥歯を噛み締めた。最悪だ。

 

 陸自のヘリ”AH=1Sコブラ”からぶら下がって探照灯を照射していた陽炎は照射を止め牽

 

 引索から足を外した。

 

「陽炎さん、なにをしているんですか。危険です」

 

 ラキシスがその行動の真意をただす。

 

「そう危険だからあたしが行くの。一番危険な海域に最初に突っ込むのが駆逐艦の役割なのよ」

 

 これこそ駆逐艦魂というやつなのだ。ラキシスが絶句しているのが分かった。

 

「KAREM(艦娘活動範囲拡張機構=Kanmusu Activity range expansion mechanism)起動」

 

 艦娘が地上でもその力を発揮できるようにする新たな装備”KAREM”を起動した。

 

 艦娘大地に立つ。

 

 

 KAREMは前の防衛副大臣が自身と関係の深い軍需企業にひそかに研究させていた装備である。

 

 艦娘を地上でも戦力化することにより彼は日本が世界を征服することも可能と考えた。

 

 もしそんなことが出来れば疲弊した世界の他の国に比べ多くの艦娘を保有する日本は優位に立

 

 てるであろう。そんなことが出来ればの話であるが。

 

 艤装のスクリューの回転をローラーブレードの車輪に伝えるこの装備は結局、地上に居る時は

 

 艤装が動かないという問題を解決できなかった。

 

 失敗作として倉庫の奥に放り込んであったこの装備であるが、異世界に転移してある物と出会

 

 って一気に実用可能となった。

 

 それは魔石である。

 

 水属性の魔石は常に水の魔力を放出している。その水の魔石を艤装に装着させることにより、

 

 いつでもどこでも艦娘が海に居ると艤装に認識させることに成功した、してしまった。

 

 これにより海の上では無敵の力を持つ艦娘が地上でもその力を振るえるのである。

 

 

 

 赤目のショーヴは歓喜していた。先ほどから空飛ぶ箱からの攻撃がない。

 

 アレを使役しているのはきっとどこかの騎士団だろう。それも相当の甘ちゃんの騎士たちに違

 

 いない。そういった連中は人質を取れば攻撃してこなくなる。うまくすれば逃げられる、ショ

 

 ーヴの心に希望が芽生えた。

 

「おうこら、この人質が目に入らねえか、攻撃を止めて地上に降りてこい!」

 

 ショーヴは人質の獣人の娘を左腕で抱え右手で短剣を娘の喉に押し当てている。

 

 左手はこの娘の父親に噛みつかれた傷があるが何とか抱え上げるくらいはできる。

 

 そうこうしているうちに箱の一つから、ぶら下がっていた人影が落ちてきた。

 

 その人影は金属が擦りあうような音を立てて、馬よりも速いスピードで近づいてきた。

 

「待て、そこで止まれ!」

 

 ショーヴが慌てて制止する。

 

「あんたたち!その子を放しなさい!」

 

 近づいてきたその人物はなんと15歳くらいのヒト族の娘であった。

 

 物凄い大きな声で人質の解放を叫んだ。

 

 眉間にしわを寄せ、怒りの目をしていなかったら惚れてしまうくらい可愛い。

 

「くくく、いいぜ嬢ちゃんが俺たちの相手をしてくれるならな}

 

 ショーヴが下品な目で陽炎の体を舐めまわすように見つめる。

 

「あたしが行けばその娘さんは解放するのね」

 

「ああ、俺はな、仲間は知らんがな」

 

 ショーヴは解放するが他の仲間がまた拾っていくつもりであった。

 

 

「く、こいつ」

 

 陽炎は人質の様子をみる。人質の娘は気を失っている。

 

 明らかに凌辱された痕跡、そして切傷や火傷などの拷問を受けたらしい跡もある。

 

「さあ、さっさと仲間を引かせろ。人質がどうなってもいいのか」

 

 陽炎とショーヴが睨みあう。

 

「誰か本隊に連絡しろ」

 

「お頭、じゃなかった隊長、我が隊に支給された魔力通信器は二器、隊長と副隊長が持っていま

 

 したが副隊長はさっきの攻撃で死にました。魔力通信器も跡形もなく壊されました。残ってい

 

 るのは今隊長が持っているものだけです。魔力通信の魔法が使える者は我が隊に居ません」

 

「隊の内情を敵の前でべらべらしゃべるんじゃねえよ。俺は手がふさがっているから誰か俺の耳

 

 から魔力通信器を取って本体に連絡しろ」

 

 不味いこのままでは逃げられる。陽炎が焦る。

 

 

「陽炎さん」

 

「なあにラキシス?止めても無駄よ」

 

「止めませんよ。もし必要なら私も剣を取って戦いますから」

 

 陽炎は驚いた。

 

 一見か弱そうな少女なラキシスが自分から戦うと言い出すは思っていなかった。

 

「私結構強いんです。並の天位騎士くらいなら余裕で勝てます」

 

「天位?」

 

「天位というのはジョーカー星団で様々な分野で多大な功績を残した人に与えられる称号です」

 

「天位騎士の審査は現役の剣聖かもしくは騎士の力量を量ることが出来るバキンラカン帝国の聖

 

 帝が審査します。地球でいうと剣術のノーベル賞といったところです」

 

 かなり高い権威ある称号の様だ。そしてその剣士を彼女は一蹴できるというのだ。

 

「頼もしいわ」

 

 陽炎はラキシスの本来の性格がかなり好戦的であると察した。

 

(この子カマトトぶっていたけどとんでもない難物だわ)

 

 その性格は村雨や荒潮に近いのではないだろうか。

 

「ラキシス、今度から私のことは陽炎と呼んでね」

 

「はい、陽炎」

 

 

 

「さあ空飛ぶ箱を引かせろ、そして嬢ちゃんは俺たちと来るんだ」

 

「俺たちで可愛がってやるぜ」

 

「この獣人の娘の負担を減らしてやろうとは思わないのか?可哀想だろ」

 

 ホーク騎士団の生き残りの面々が口々に勝手なこという。陽炎は我慢していたが最後のショー

 

 ヴの言葉にキレた。

 

「まあこの亜人は用が済んだら殺すんだけどな!」

 

 

 フィィィィィィィィィィィィィィィィン!!

 

 陽炎の怒りに答え新型艦本式缶と改良型タービンが唸りを上げる。

 

 マグナパレスを吸収してから陽炎の缶とタービンは軽快な駆動音を上げるようになっていた。

 

 それはさながら金管楽器の様だった。

 

 

「な、なんだ?これは!」

 

「不味いですぜお頭、こいつ魔導師ですぜ」

 

「なんて魔力だ!これは魔導師じゃなくて大魔導師ですよ」

 

 自分たちは絶対に怒らせてはいけない相手を怒らせた。彼らはそのことにやっと気が付いた。

 

 目の前の魔導師が発する振動で地面が揺れる。

 

 

 少女は消え入りそうな意識の中で父の最後の言葉を思い出していた。

 

 逃げろ、と。

 

 父は私だけでも逃がそうと残虐なロウリア兵の隊長に噛みついたがすぐ殺されてしまった。

 

 父が殺されるところを見て私は足がすくんで動けなくなった。

 

 せっかく父が命を懸けてくれたのに何も出来なかった。

 

 父さんごめんなさいと心の中で謝る。

 

 もう一度父の声が聞こえたような気がした。

 

 逃げろ、と。

 

 

「うあああ!」

 

 突然人質の娘が暴れだした。ショーヴは必死に抑え込もうとする。

 

「こら暴れるなって、痛ってえ!」

 

 左手の傷が広がり激痛がした。そして人質を放してしまった。

 

 

「貰ったわ!」

 

 人質が地面に倒れこむ前に陽炎がKAREMを全力駆動して前進、少女を抱きかかえた。

 

 

「あんたたちよくも今まで好き勝手絶頂やってくれたわね!」

 

 陽炎は少女をお姫様抱っこしながら怒りを爆発させた。

 

 ショーヴは全てが終わったことを察し、顔面を蒼白させた。

 

「イマラ・ロウト・ジャジャス直伝、必殺姉ちゃんキック!」

 

 陽炎は片足を振り上げ、ショーヴの足と足の間を蹴り上げた。

 

(馬鹿め俺はこんなこともあろうかと中古で買った神聖ミリシアル帝国騎士のファウルカップ

 

 を装備している。混ミスリル製でどんなハンマーでぶっ叩いても壊れなかった優れものだ。金

 

 的なんて無駄無駄、ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!)

 

 ミスリル製のファウルカップは卵の殻のように砕け散り、ショーヴの男性としての人生は終焉

 

 を迎えた。平原に名状しがたい悲鳴が響き渡る。

 

 その場にいたロウリア騎馬隊、自衛官、エルフの男衆は全員血の気が引いて体の芯が縮みあが

 

 るのを感じた。

 

「女を舐めんじゃないわよ!」

 

 

 イマラ・ロウト・ジャジャスは北太陽系カラミティ星の小国アティアに王女として生まれた。

 

 宇宙の治安を守るイオタ騎士団の団長の息子と結婚し一男を儲ける。

 

 彼女自身も宇宙海賊退治で功績をあげ、ミラージュ騎士団にスカウトされる。

 

 またAKD(天照帝に忠誠を誓う国家の連合体)宇宙軍司令長官を兼任している。

 

 その性格は極妻。

 

 捕虜にした海賊のタマ〇ンをことごとく蹴りつぶし宇宙の男達全員から恐れられている。

 

「ギムで好き勝手にやったロウリアのクソ野郎どもは全員同じ悲鳴を上げさせてやるわ」

 

「ひい逃げろ!」

 

 騎馬隊の生き残りは脱兎のごとく逃げだした。しかし陽炎たちは許さない。

 

「ラキシスお願い」

 

 ラキシスは陽炎の後頭部に増設されたファティマシェルから出て人間大になった。

 

 そして魔法で質量のある分身”ミラー”を作りあげた。

 

 さらに光の光輪をひとり12枚、二人で24枚作りだし騎馬隊に投げつけた。

 

 ダブルヘキサグラム、剣聖級の剣士のみ使える剣技である。

 

 光の光輪は人間を易々と両断し殺傷した。

 

「(うわ、凄い)この子をお願い」

 

「分かりました」

 

 分身体のラキシスは人質の少女を抱え自衛隊の元に向かう。

 

「さて、行きますか」

 

 陽炎は艤装から7.7ミリ対空機銃を顕現し構えた。

 

 KAREMを走らせ突撃する。

 

 機銃を乱射しながら平原を疾走しロウリア兵を次々と討ち取っていく。

 

「全ての艦娘にはね、近接格闘武器が常設されているのよ」

 

 万能斧、それは海で働く人間にとってあらゆる扉を開けるマスターキーである。

 

 そして艦娘が振るえばあらゆる敵を打ち倒す最強の武器となる。

 

 陽炎は擦れ違いざまに万能斧でロウリア兵の首を跳ね飛ばしていった。

 

「とどめよ、12.7㎝連装砲C型改二、撃ち方始め!」

 

 駆逐艦の主砲が火を噴き第15騎馬隊の生き残り全てをあの世に送った。

 

 

 エルフの疎開集団は困惑していた。

 

 自分たちを殺そうとしていたロウリア兵を撃退した謎の集団が味方かどうか確信が持てなかっ

 

 たためだ。もしも彼らが自分達にも牙を剥いたら今度こそ自分達は終わりである。

 

 そうこうしているうちに先ほど物より大きく胴の太い空飛ぶ箱が飛んで来た。

 

 それが発生させる強烈な風に村人達は怯えるがそれは平原に舞い降りた。

 

 やがてはその扉が開き、緑と茶のまだら模様の服を着た男達と真っ黒い服をきたやたら顔の白

 

 くて胸の大きい女が現れた。

 

 どう見ても蛮族と女アンデットにしか見えない。

 

「お怪我のある方はおられませんか」

 

 ヒトが出せる大きさの声を遥かに超えた大音量でそう言われたが、かえって村人たちの恐怖は

 

 高まった。働けぬ者なら殺してしまおうと判断されるかもしれない。

 

 そのうちロウリア兵を駆逐したあの女大魔導師が戻って来た。

 

 村人たちの恐怖は頂点に達した。

 

 その中で恐れを知らない子供のパルンが前に進んでいった。

 

「あなた達は太陽神の使者様ですか?」

 

 

 

 あきつ丸と自衛官達は困惑していた。救助対象者たちは怯え切って避難してくれない。

 

 そんな中一人の子供が近づいてきた。どうやら日本の国旗が太陽であるから勘違いしているよ

 

 うだ。嘘も方便と思い陽炎に話を合わせる様に頼んだ。

 

「そうよあなた達を助けるように言われてきたのよ」

 

 陽炎がうなずいて答えると村人たちがどよめく。

 

「太陽神のお使いだと」

 

「確かに船に太陽の紋章が描かれている」

 

「兵士たちの服にも太陽の紋章があるぞ」

 

「空飛ぶ神の船に大地を焼く魔導、それにあの方はもしや太陽神の神兵!?」

 

「太陽神の神兵は全身を鎧で覆っているのではなかったか?」

 

「いや一万年も前の神話だから所々違っているのやもしれん」

 

「やはりこの方々は太陽神の使者様に違いない!」

 

 村人達は一斉に平伏した。

 

 

 しまったと思う艦娘と自衛隊だがもう遅い。

 

 彼らをヘリに載せようとしたが恐れ多いと言って乗ってくれなかった。

 

 そして最初に声をかけてきたエルフの少年が陽炎の前にやってきた。

 

「僕はパルンと言います、妹を助けてくれてありがとう御座います」

 

 なぜかパルンの顔は真っ赤に上気していた。

 

「当然のことをしたまでよ」

 

 陽炎がやさしく微笑む。するとパルンはとんでもないことを言い出した。

 

「約束どおり僕の全てを捧げます。どうぞ僕を食べてください」

 

 そう言ってパルンは服を脱ぎだした。

 

「ちょ、なにやってるのー?!」

 

 陽炎が仰天し絶叫する。

 

「約束ですからあの、痛くしないでくださいね」

 

 全裸のエルフの少年が上目づかいでそう言ってきた。

 

 どこからどう見ても事案発生にしか見えない。

 

「もしもし憲兵本部?憲兵を二個大隊重装で、大至急お願いします」

 

 あきつ丸が憲兵の派遣要請をしている。その目には軽蔑の色が見える。

 

「ちょ、違う」

 

「見損ないましたよ陽炎殿、この異常性欲!変質者!提督!」

 

「ひどい!」

 

 

「あの、やっぱり思いっきり痛くしてください!」

 

 陽炎はいたいけなエルフの少年に歪んだ性癖を植え付けてしまったようだ。

 

「いいかげんにしてバカおにい!」

 

 幼いアーシャが妹キックを兄にかました。

 

 彼女だけが状況を正しく理解していた。そのあとアーシャの説得で村人の誤解を解き、無事輸

 

 送ヘリに載せ安全な場所まで送り届けることが出来た。

 

 陽炎はアーシャに泣いて感謝したのだった。

 




 烈海王は異世界転生でも一向にかまわん!が面白い。ゴブリンヌンチャクなんて最高過ぎる。

 ノーソンの元ネタはもちろん銀英伝です。

 ドーソン大将って戦後どうなったんでしょう、出番がないので分かりません。

 神武の超鋼をまとう神兵は覚悟のススメとエクゾスカル零が元ネタです。

 勅命により葉隠瞬殺無音部隊から隊長の息子他数名が派遣されたという設定でお願いします。

 パルンは性的な意味で食べてと言ったわけではありません。

 服を脱いだのは食べるのに邪魔だと思ったからです、きっと。

 この作品では提督を変態や変質者などを表す単語としても使います。

 なぜなら艦隊これくしょんというゲームをやりこんでる人間は大体変態だからです。

 (↑偏見)
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