八幡丸こと雲鷹ちゃんが実装されましたね。
ココラング磯波といい神鷹といい最近のしばふ艦は目つきが色っぽい。
彼女らはきっとプラスチックスタイルが似合うと思うんですよ。
マイラスの正体が白ブチャラティだったとは海のリハクをもってしても見抜けなかったわ!
ホーク騎士団第15騎馬隊隊長ショーヴは重傷であったものの生きて捕虜となった。
彼はクワトイネ公国に引き渡されたのち取り調べを受けた。
その結果、山賊時代に公国内において強盗殺人、人身売買などの犯罪行為を行っていたことが
明らかとなり、戦後の裁判で死刑判決を下された。
ロウリア王国先遣隊から分離した東部諸侯軍は偵察に出した第15騎馬隊が戻らない理由につい
て協議していた。
機動力に優れた騎兵が誰一人戻らないなどよほどのことがあったに違いない。
「一瞬でしたが極めて強大な魔力が検出されました」
それはパーパルディア皇国製の魔力検出器の測定上限を上回り検出不能な値であった。
「推定ではありますが魔力値100万以上と思われます」
東部諸侯軍司令部は戦慄する。
ロウリア王国筆頭魔導師であるヤミレイですら約8000である。
百万という数字は古龍などの伝説級の存在でもなければ在り得ない数字である。
「まさかリーン=ノウの森のハイエルフが出てきたのか、この段階で?」
クワトイネ公国で高い魔力を持つ存在といえば彼らしかいない。
ハイエルフが集団で大規模魔法を使えば瞬間的に百万という魔力が検出する可能性がある。
「ハイエルフは自分達自身に危機が及ばない限り参戦してこないはずではなかったのか?」
「司令部の予想が外れたということか」
ハイエルフが出てきた以上この後の侵攻は慎重に行うべきと一同は考えていた。
東部諸侯軍の指揮官であるジューンフィルア伯爵は騎士道精神あふれる実直な男である。
捕虜の虐待や民間人の虐殺などの行為を忌み嫌い決して行わなかった。
また気の強い妻が怖いので戦場で女性を手籠めにすることもしなかった。
クワトイネ公国と国境を接し幾度となく矛を交えてきた彼の一族は、そういった行為を行うと
地元民から余計な恨みを買いその後の支配が難しくなることを経験で知っていた。
恨みを抱いた住民は再び戦が始まればサボタージュを起こしたり情報を敵国に流したりする。
最悪用を足すため部隊から離れた兵士をさらって嬲り殺しにすることもある。
「日本国の仕業という可能性は有りませんか」
幕僚の一人が発言した。
「日本国?なんだそれは」
ジューンフィルアは知らなかった。
「四か月ほど前クワトイネ、クイラ両国と国交を結んだ新興国です」
「ワイバーンを持たない蛮国と聞いていますが」
魔導師のワッシューナが辛うじて知っていた。
「ロデニウス大陸で活動している冒険者から情報を集めた結果、当初の想定よりも発展している
可能性があります」
「なんだと?」
「彼らはクワトイネから大量の食糧を輸入しその対価にインフラと様々な魔道具を輸出している
ということです。マイハークの港は整備され大型船が出入り可能になり、道は繋ぎ目のない石
畳の様な物で舗装されてとても歩きやすいそうです。また日本国製の魔道具は非常に便利なの
だそうです」
「しかも海上の戦闘に特化した女魔導師を多く抱えていて、公都の港に現れた邪竜タラスクをい
とも簡単に撃破したそうです」
「なんとあのタラスクを!?」
それを聞いたワッシューナはわなわなと震えた
「まさかあの噂は本当のことなのか?」
「何か知っているのかワッシューナ」
ワッシューナの様子がおかしいのでジューンフィルアは心配になって聞いた。
ワッシューナは自らの弟子をロデニウス大陸各地の魔導師ギルドに送り込み、ギルドの掲示板
に張り出されるニュースを確認させていた。
その中に決して見過ごせないニュースがあった。
「マイハークへ侵攻していた我が国の海軍4千4百隻が日本国の海軍12隻に敗退したそうです」
ロデニウス沖海戦での大敗は戦意の低下を考慮して極一部の高級幹部を除いて非公開にするこ
とが決まっていた。そして東部諸侯軍には知らされていなかった。
「さらに海軍を支援するため出撃したワイバーン250騎も、彼らが使役する羽ばたかない飛竜
と空飛ぶ標的を正確に打ち落とす魔導兵器によって、損害を与えることなく全滅させられたそ
うです」
「まてまて、今戦に動員された我が海軍はそれだけでも公国を征服できる規模だったはずだ」
「たとえ相手が列強パーパルディア皇国であってもその包囲網を食い破り皇国本土に上陸するこ
とも可能と言われていたのだぞ」
「ワイバーン250騎が何もできず全滅?そんなこと有り得ない」
会議は紛糾する。
「欺瞞情報に決まっている」
「しかし先日先遣隊のワイバーン50騎を王都に戻すよう命令されました。これはどう説明する
のですか」
海軍敗北の噂は本当なのか、日本軍は強いのかそれともハイエルフが出てきたのか、判断する
時間が欲しい。この先には騎馬隊を連絡する暇も与えず全滅させた敵がいる。
ジューンフィルアは慎重に事を進めたいと考えていたが、彼の望みを粉々に打ち砕く命令書が
届いた。
「東部諸侯軍はエジェイ要塞の西側3キロの位置に陣を構築し、同要塞に対し威力偵察を実施せ
よ。本隊の合流をもってエジェイ攻略戦を開始する」
そこには先遣隊主将の名が記されていたが実際に発行したのは副将アデムである。
威力偵察を行えという命令なので成果を報告しなくてはならない。
内容が悪ければ司令官から外され死亡率の高い突撃隊などに回されるだろう。
しかしエジェイはクワトイネが絶対防衛線として定めその総力を挙げて築き上げた城塞都市で
ある。ギムの町とは比較にならないほど防衛力が高い。
東部諸侯軍は精強とは言え2万、数が足りない。
中途半端な攻撃を仕掛けて反撃に遭えば自分達は壊滅するだろう。
ジューンフィルアとしてはアデムの命令には異議を唱えたかったが、彼の命令に逆らうと自身
だけでなく家族まで原因不明の死を遂げるという噂がある。
そしてそれは事実であった。
これまで表立って(表沙汰にできない)功績を上げてなかったアデムだが、ギムの戦の功績で
男爵に叙爵されることが内定していた。
アデム配下の魔獣使い達は下に見られていた自分達の仲間から貴族になる者が出ることを喜ん
だ。しかし当のアデム本人は亜人が殺せればいいと頓着しなかった。
ちなみに与えられる家名はコエメーダ男爵という。
ギムを落とした副将アデムの権限は拡張され、東部諸侯軍に対し進軍を急ぐように命令が下さ
れた。ジューンフィルアは痛む胃の辺りを抑えながら東に兵を進めることを決定した。
「それにしても何故ホークは会議に出席しないのだ」
「不要だ、あ奴がいない方が活発な議論ができる」
何故ならホークは東部諸侯軍を監視するために送り込まれた人物だからだ。
送り込んだのはもちろん副将アデムである。
その後会議の結果を彼に伝えるためワッシューナがホーク騎士団のテントを訪れた。
テントの幕を捲るとすえた臭いがした。
中を覗くと裸のホーク団長が全裸の女性を抱きかかえていた。女性はぐったりしている。
ワッシューナは獣の様なホークの顔を見て恐怖を憶えた。
「ホーク団長、何してる」
「なにってナニさ、見てわかんだろ」
床には他に2名の女か転がっている。
「ギムの住民か?」
「こいつらはビーズルの娼婦さ、ギムの女はもう使えなくなっちまったよ」
彼女らはロウリアの工業地帯ビーズルから帯同してきた商人の連れてきた女たちである。
「我が国の国民ではないか」
「だから無茶はしないさそれより何だ」
「我が隊の方針が決まった、これよりエジェイに向かう」
「了解」
ワッシューナは用件だけ伝えそそくさとテントを去る。
ホークは中肉中背で傭兵としてはそれ程体格の良い方ではないが、人並外れた怪力を持つ。
王が初め犯罪者上りの騎士団を任せようと思っていた男とホークが勝負した事があった。
一瞬で、団長予定の男は城の塔の先端に突き刺さっていた。
ワッシューナはホークが魔族が人間に化けているのではないかと想像し恐れた。
第14駆逐隊はあきつ丸が運転する陸自の輸送車に同乗しエジェイ要塞に向かっていた。
その車内は笑い声に包まれている。
「小官は陽炎殿を信じておりましたよ」
「嘘つけ!」
前日の戦闘後、救助された幼いエルフの少年が陽炎の目の前で服を脱ぎだすという珍事があっ
た。どうも誤解があったらしく、その少年は神の生贄になるつもりだったらしい。しかし傍か
らみたら陽炎がいたいけな美少年に悪戯しようとしているようにしか見えなかったのである。
もし誤解が解けていなかったら今頃陽炎はよくて営倉行き、最悪解体され除隊もあり得た。
陽炎はこれまでも深海棲艦との戦い以外に様々トラブルに巻き込まれてきた。
今回はその中でも最悪のものに匹敵するだろう。
「ぷっ、あはははは!」
皐月と曙はまだ笑っている。
「いつまで笑っているのよ!」
「陽炎、横須賀鎮守府から通信です」
「横須賀から?何かしら」
陽炎はラキシスから通信器を受け取った。
「もしもし陽炎ちゃんお姉ちゃんですよ」
陽炎に向かってお姉ちゃんと自称するのは横須賀の重巡愛宕である。
(陽抜の愛宕は自分のことをお姉ちゃんと呼ばせようとする困ったさんです)
「どうしました、横須賀で何かありましたか」
「そうじゃないのだけど、なにか嫌な予感と言うか胸騒ぎがして」
愛宕の胸が騒ぐのなら大災害だろうな、と陽炎はどうでもいいことを思った。
「陽炎ちゃん、エルフの美少年に変なことしてない?」
ゴンッ!
陽炎は輸送車の窓ガラスに頭をぶつけた。
「陽炎ちゃんまさか本当に?」
「してません!」
「なんだか一生に何度もないチャンスを逃した気がしてたけれど、羨ましい!」
「人の話を聞いてください!」
その後陽炎は何もしてないという言葉を二十回以上繰り返してやっと愛宕をなだめ、通信を切
ることが出来た。
「陽炎、高雄さんから通信です」
「もしもし陽炎さん、ちょっと嫌な予感と言うか胸騒ぎがして」
「ブルータスお前もか」
内容は愛宕と同じだった。
「陸奥さんと香取さんからも通信が入っていますが、私から返信しておきます」
「ありがとうラキシス」
ラキシスは出来る秘書である。
「お疲れですね陽炎さん」
疲労困憊の陽炎を見て潮が心配する。
「なんなのよ、みんな変なカンが鋭すぎるでしょ」
「皆深海棲艦との激闘を乗り越えてきたからな、カンが鋭くもなるさ」
我関せずと静かにしていた長月がそう評した。
「欲望に忠実なだけだと思う」
霰が長月の言葉に返した。
「心配しなくても私たち第14駆逐隊の皆は陽炎さんはそんなことをしないと信じてます」
潮が代表してそう陽炎を励まし、他のメンバーも頷く。
「あんた達どうせ『陽炎の好みは美少年じゃなくて美少女だよね』って言うつもりでしょう!」
「ばれた!」
「陽炎こそカン良すぎ!」
大騒ぎする彼女らの様子を見てあきつ丸が一言。
「第14駆逐隊のの皆様は何時も仲良しでありますな」
その一言を聞いた陸上自衛隊第七師団団長、大内田和樹は疑問に思った。
「あれは仲がいいのと言えるのか?」
あきつ丸は呆れてため息を吐く。
「相変わらず貴様は女子の気持ちが分からん奴だ、そんなだから何時まで経っても恋人が出来ん
のだ」
「余計なお世話だ」
するとさっきまで騒いでいた第14駆逐隊の面々が一斉にこっちを向いた。
「ねえねえ、二人はどういう関係なの?もしかして恋人?」
「違うであります」
「世界が滅びてこいつと二人きりになったとしても恋人になることは有りません」
大内田はきっぱりと否定した。
「いやん、ここまで断言するとかえって怪しいんですけど」
陽炎たちは女子っぽいに歓声を上げた。
「小官とこいつは姉弟なので」
「なーんだ、つまんない」
陽炎はシートに倒れこんで不貞腐れた。
「少女漫画だったら禁じ手だよそれは」
「いつの時代のことを言っているんですか」
しかし大内田の副官の顔は青ざめていた。
「師団長の姉ってあの伝説の自衛官”灰の幽霊”?死んだはずじゃ」
そうこうしている内に石の城壁が見えてきた。
到着すると霰がエジェイ要塞について説明し始めた。
「ここがエジェイ要塞、正式名称は城塞都市エジェイ。国境から公都への侵攻ルートを食い止め
るために公国が造り上げた要衝。ここが落とされると首都まで遮るものが無くて危険」
「ワイバーン50騎、騎兵3千、弓兵7千、歩兵2万。総兵力約3万人のクワトイネ公国西部方
面師団主力が駐屯中」
「城壁は高さ25メートル。ワイバーンは対空戦闘の訓練を施されていて防空も万全。
城内には泉があって水には困らない。食糧も長期間籠城できるだけ備蓄されている」
「クワトイネ公国の大多数の人はこの要塞の防衛力には絶対の自信を持っている。
要塞司令官はノウ将軍、ノーソン伯爵家嫡男、父親は前陸軍卿。プライドは高い」
以前から霰は出向する基地や泊地を事前に調べ、仲間に教えていた。
改二改装を経て大発を装備出来るようになると日々強力になる陸上型深海棲艦との戦いの最前
線にその身を投じた。
「霰が敵将だったらやる気のない夜襲を繰り返して守備兵の疲労を誘う」
そして霰は過去の攻城戦の歴史などを調べ始めた。
霰はプチ歴女と化し城跡などを見ると攻略法を考えずにはいられなくなっていた。
「霰、どこで調べたの」
「ヤヴィンさん、軍務卿の人。いろんな漫画を教えてあげたら代わりに教えてもらった」
「それ他の人には話さないでね」
軍務卿ヤヴィンは地球の戦史を学ぶという名目で戦争を題材にした小説、漫画、アニメそして
ゲームを収集していた。軍務省内には戦史資料室が3つあり、第一はこの世界の戦史資料。第
二は地球の実際に遭った戦争の資料と戦術教本が収められている。
そして第三資料室には創作物の戦術教材が集められている。
その実態は漫画喫茶となっている。大量の漫画が集められ、様々なアニメが見られる。
ヤヴィンはアニメを見ながら原作の小説を読み、アニメ好きの自衛隊員に教えてもらいながら
短期間で日本語をマスターした。
また彼の妻は喫茶スペースで働いている。目的は浮気していないか監視することと、注意しな
いとそこに入り浸って家に帰ってこないからである。
「このエジェイには問題がある」
「ここの司令官は日本が嫌いだから日本のインフラ工事が一切されてない」
「つまりここには電気とガスと水道がない」
ある意味で大問題である。第14駆逐隊の皆は沈黙に包まれた。
一応彼女らも軍人である。過酷な条件下でのサバイバル訓練を受けている。
であるが、あるのにあえてない状況に身を置くのは無意味なことではないだろうか。
一応彼女らも乙女なのである。
「一応ってなに、ソレいらないよね」
失礼しました。
「大内田さん、私たちも陸自とご一緒して宜しいでしょうか」
「了解いたしました」
エジェイ要塞司令官ノウは自信に満ち溢れていた。
「この城塞都市エジェイは、、、」
霰がもう言っているのでカット。
「ノウ将軍、日本国の方が来られました」
ノウは日本国が気に喰わなかった。海戦ではたった12隻で4千4百隻を撃退したというが、
そんなことは出来るわけがない。いくら何でも脚色しすぎであろう。
日本国の援軍はたった6千、数がものをいう陸戦では戦局を左右するような戦果は挙げられな
いだろう。大体日本国の人口1億2千万人からすると6千という数は少なすぎる。日本国には
やる気がないと感じられる。
そもそも自国に外国の軍隊が居ること自体が気に喰わない。
「よし、通せ」
要塞司令執務室に汚いまだら模様の服を着た男二人と若い娘二人が入って来た。
「日本国陸上自衛隊、第七師団長の大内田です」
「日本海軍、第二艦隊第二水雷戦隊所属、第14駆逐隊嚮導、陽炎です」
男達の服装はノウの気品ある宝石で飾られた服と違い粗野で野蛮であった。
こんな蛮族が着るような服を着た男が将軍とはノウは信じられなかった。
そしてこの小娘が噂に聞く艦娘とやらか、とノウは思った。
「ようこそ日本国の皆様、私はクワトイネ公国西部方面師団将軍ノウといいます。この度の援軍
に感謝します。」
まずは社交辞令から入った。
「御覧の通りこのエジェイは難攻不落。いかなる大軍をもってしてもこれを抜くことは不可能で
しょう。我が国の誇りにかけてロウリアは我々だけで退けます。なのであなた方は基地から出
る来なく後方支援をしていただきたい」
ノウの側近達が彼に合わせて笑い声をあげる。
「自衛隊の皆様はどうぞ安心して我らの後ろに隠れていてください、前世界のように」
大内田の眉が小さく動く。
「それはどういった意味でしょうか」
「聞くところによると前世界であなた方の軍隊は海魔と舟幽霊(シーゴースト)の大量発生によ
って壊滅し、その後は艦娘なる女子供を前線に出して戦わせたというらしいではないですか」
大内田と副官の顔が強張る。ノウの側近たちはクスクスと小さな笑い声を上げる。
「そのような軟弱、いえ失礼した実戦経験の少ない者たちをいきなり前線に出すわけにはいきま
せん。どうぞ女の背に隠れていたように次は我々の背に隠れていると良い」
ノウは高らかに笑った。
「どうせ政府に言われて体裁を整えるためだけに来たのだろう。臆病者は何もせず引っ込んでい
ればいい」
ここまで言い切ってノウは不審に思った。事前の打ち合わせではここで側近たちが一斉に笑っ
て挑発する手筈であった。しかし先ほどからしゃべっているのは自分だけだ。
横を見ると側近たちは顔面蒼白、もしくは大量の脂汗を搔いているかのどちらかであった。
「おい、貴様らどうした。顔色が良くないぞ」
正面を見ると陽炎と名乗った小娘がこちらを睨んでいた。
「何だ小娘、目つきが悪いぞ」
「あー!いけません!」
突然ノウの副官が口を塞いだ。
「何をする!」
副官が切羽詰まった様子でノウの顔を覗き込んだ。
「将軍、分からないのですか?」
ノウには実戦経験がなかった。高位貴族の嫡男として生まれ、父親から徹底的に甘やかされて
育った。戦場に出ても安全な後方の陣地で実家の護衛に囲まれていた。
剣術は習ったが道場剣術で実際に人を斬ったことはなかった。
頭自体は良いので管理運営能力はあった。彼の能力は後方支援に向いているのだろう。
だから目の前に激怒した魔竜がいて、茜色の二つの尻尾を振り乱し、今まさにブレスを吐く寸
前であることに気付きはしなかった。
陽炎の放つ強烈な殺気に側近たちは威圧されていた。
「失礼しました。将軍の鼻毛が出ていたのでつい」
副官が言い訳をしてその場を取り繕った。
侮辱された大内田ではあったが、陽炎が自分達以上に怒っていたので冷静になった。
「前世界については致し方ない理由があったとご理解ください」
その上でこのエジェイに連絡員を置くことに了解を得た。
「お前たち、いったい何のつもりだ!」
ノウが側近達を叱責する。
後半はノウの副官と大内田とで話し合い、ノウは参加させてもらえなかった。
「将軍の安全のためです」
「何だと!」
「それよりもトイレに行ってきてもいいですか、ついでに下も着替えたいので」
側近の全員が頷いていた。
要塞司令部の建物の前で第14駆逐隊の面々が待っていた。
異常を感じ取ったのか代表して長月が尋ねる。
「陽炎どうした、殺気が出ていたぞ。何があった」
「ここの司令官に日本の男は臆病者だと言われたわ」
「は?」×5
他の五人も怒りを露にする。空気が震え、地面が揺れる。
入口を守っていた衛兵は失禁して気絶した。
「女の背に隠れる軟弱者とかミミズ野郎だとか玉無しだとか」
「陽炎殿、後の二つは言われてませんでしたが」
あきつ丸が突っ込むが六人は聞く耳持たない。
「どうする?ここ潰す?ねえ潰す?」
何時もは朗らかな皐月が物騒なことをいう。
「まって、あたし達ならそれは簡単だけどそれをやっても日本男児の汚名返上にならないわ」
かつて提督達は女子を戦場に送り出すこと、自分達は何も出来ない事に深く苦悩していた。
その傷に軽々しく触れたノウ将軍を決して許さない、と陽炎達は心に誓ったのだった。
第14駆逐隊は円陣を組んでなにやら相談していた。
それを見ていた大内田と副官は物凄く嫌な予感がした。
「よし、それで行こう」
話がまとまった様だ。陽炎達が大内田に向き合う。
「このエジェイに置く連絡員ですが、我々第14駆逐隊に任せてもらえないでしょうか」
「え?」
「大丈夫です、日桑友好のため異文化交流をしてお互いの理解を深めようと思います。ここの人
たちには髪の毛一本ほどの傷もつけません」
「それは当たり前のことなのですが、本当に大丈夫なのですか?」
「93式酸素魚雷に誓って大丈夫です」
魚雷は命中率が低いということで有名ではなかったか、大内田は訝しんだ。
「榛名は大丈夫です」
榛名さんなら大丈夫だろうが、あいにくここにはいない。
「いいだろう浜風のおっぱいも賭けよう」
ここにいない浜風のおっぱいが無断でベットされた。さすがに勝手すぎるかもしれない。
「龍驤さんのおっぱいも揉んでいいぞ」
無理だ!
「それ存在しないものを手に掴む極意を会得してないと揉めないやつ」
大地を斬り、海を斬り、そしてすべてを斬る。そういった類の極意であった。
「和樹よ、慎重も度が過ぎると好機を逃すぞ。そんなだからいつも貴様は好きになった子に告白
できずに自然消滅するのだ。貴様の様な奴は婚期に焦ったアラサー女に度胸付けで逆ナンされ
る事態でも起こらないと恋人ができまい」
「姉貴こそ好きな男子を校舎裏に呼び出したら果し合いと勘違いされて土下座されたことがあっ
たろう。その後警察を呼ばれて大変だったんだぞ」
「貴様!それを言うな!」
姉弟喧嘩が始まり、大内田は追いかける姉から全速力で逃げていった。
あきつ丸は速度が遅い。彼女は艦娘になる前よりも走るのが遅くなってしまっていた。
「じゃ、了解を得たということで」
エジェイに残る観測員は陽炎以下第14駆逐隊6名とあきつ丸、そして陸上自衛隊員43名が
選出された。
ノウは悩んでいた。エジェイ要塞の5キロ先にロウリア兵約2万が陣を張ったのだ。
数が少ないので先遣隊であることは明白である。本隊の到着を待って総攻撃を仕掛ける思惑で
あろう。合流前に殲滅したいがこちらから手を出して自軍の戦力を消耗するわけにはいかな
い。どうするか迷っていると夜間に城壁に近づいて大声で騒ぐということを繰り返した。
毎晩のように敵兵が大声で騒いだり襲撃するフリをするので、要塞の守備兵は寝不足で疲労が
蓄積されていった。戦意も下がってきているようだ。
ノウは遅い朝食を食べながら今後の作戦について考える。
メニューは干した魚と芋のスープ、内陸部のエジェイでは貴重な海産物を使った高級士官用の
献立である。調理したのは公都の有名レストランからスカウトしたシェフである。
「ところで妻と娘はどうした」
「お二人とも日本の自衛隊の所です。風呂が気に入ったと」
「なんだと!」
観測員として要塞内に残った自衛隊はこちらが用意した宿舎を断り、広場にテントを張って寝
泊まりしていた。中を検分する際あの小娘(陽炎のこと)が女性が暮らす空間なのだから、調
べるのは女騎士がするようにと要求してきた。
仕方が無く言う通りにすると中から女騎士の悲鳴が聞こえてきた。
慌てて中に入ると悲鳴に聞こえたのは実は歓声で、彼女らは温かいお湯の出る洗面所に歓喜し
ていた。さらに風呂があることに驚いていた。
クワトイネは文明圏外国の中では比較的上位ではあるがまだまだ風呂自体が少ない。
大量の水と薪を用意する必要があり財力のある大貴族でもなければ所有していない。
日本国は贅沢品である風呂をあろうことかテントの中に作ってしまったのだ。
一体どの様な魔法を使ったのか想像もつかない。
「筋トレすれば万事解決!」
「体力つければ全部解決!」
「汗を流せ!」
練兵場では金髪の艦娘、皐月が先頭に立ってランニングしていた。
艦娘と自衛隊員がトレーニングしていると言うので、そこに公国の精鋭騎士を合流させその体
力を見せつけることで優位に立とうという作戦だ。
海魔に負けるような軍隊なのだからその兵士の体力など大したことないだろうと思っていた。
しかし我が公国の騎士はついていくのにやっとという感じである。
というかさっきから何周走っているのか分からない。それでも自衛隊員たちは平然と走ってい
るし、先頭を行くのはあの生意気な艦娘どもである。
「情けないぞ、それでも栄光ある公国騎士か!」
「しかし将軍やつら全員化け物じみた体力の持ち主です」
「泣き言をいうな!根性が足りん!」
騎士たちは半泣きで走り続けた。
「次行くよー、
「筋トレすれば万事解決!」
「体力つければ全部解決!」
「汗と一緒に弱い自分を流してしまえ!」
そしてさらに筋トレが延々と続き大半の騎士たちが潰れた。
ノウは配下の騎士たちの不甲斐なさに激怒した。
陽抜の皐月はかつて自分の弱さに全てを諦めかけていたが、ある時呉に努力家の駆逐艦がいると
聞き、取り敢えず体力をつけようと考え四六時中筋トレをしていたのである。
朝練後の休憩時間に陽炎から提案があった。
「魔法を覚えるの?」
曙が怪訝そうに聞く。
「そうよ、まずは私たちの活動に有効な魔法から習得しようと思うの」
そう言うと陽炎は持っていたカップを上下逆さまにひっくり返した。
中に水が入っていたカップからは何も落ちてこない。
「驚いた?これが水操作(ウォーターコントロール)よ」
「凄いけどこれが一体何の役に立つの?」
「この世界の船乗りは浸水したとき、この魔法で水を排出するのよ」
さらに極めれば浸水を止めるも出来るという。
「思った以上に私たちに関係する魔法じゃない!」
第14駆逐隊は水操作の魔法を覚えることを決めた。
ノウは仕事帰りに市街地にある行きつけの酒場に寄った。
ここは高級士官専用の酒場で、ノウがいるのは要塞司令官のみが利用できる貴賓室である。
この部屋を作らせたのは彼の父親であるノーソン伯爵であり、この店の主人は父親の愛人で
あった女性だ。
ノウは両脇にこの店のナンバー1とナンバー2を侍らせ酒を飲んでいた。
今日の酒は初めて飲んだ物でとても美味く、彼は上機嫌であった。
「ねえ将軍、わたし欲しいものがあるの」
「なんだ言ってみろ、なんでも(機密費で)買ってやるぞ」
「私日本の化粧品が欲しいの」
「私はシャンプーとリンス、それで洗うと髪の毛が美しくなるの」
「ねえ将軍のお力でなんとかできないかしら」
ノウは渋面を作った。さっきまで美味かった酒が何故が酷く苦い。
「駄目だ、日本国の製品なんぞこの国に必要ない!」
「でも今将軍の飲んでいるお酒は日本のお酒ですよ」
ノウは酒が気管に入ってむせてしまった。そしてその日はそのまま何もせず帰った。
次の日、エジェイ市の市長と商工会の代表が会談を申し入れてきた。
市長は日本のインフラ整備を受け入れるよう陳情してきた。
「エジェイは軍事拠点である。他国の業者を入れるわけにはいかん」
「しかしこのままではエジェイは公国の発展から取り残されてしまいます」
「海軍が日本国を全面的に受け入れたマイハークは目覚ましい勢いで発展しています」
「ここは公国でも最重要拠点だぞ、機密が漏れでもしたらどうする」
すると横からノウ将軍の秘書が発言してきた。
「お言葉ながら将軍、日本国は我が国より技術力ではるか上をいっており、列強に匹敵すると言
われています。漏れて困る機密など在りはしません」
おかしい、昨日まで自分に忠実だった秘書兼愛人が反抗してきた。
「日本国と協力することは国の方針です。各地の軍事拠点のインフラ整備はその地の司令官の監
督のもと行われます。工事の許可証には首相と軍務卿のサインが既にあります。後は司令官の
サインだけです、早くサインしてください」
「駄目なものは駄目だ!」
ノウは席を蹴って立ち上がり部屋から出て行った。
残った者達は扉を見つめてため息を吐いた。
そのころ第14駆逐隊は魔法を練習していた。
陽炎はカップの中に指を突っ込み呪文を唱えながらゆっくりと指を引き抜く。
すると陽炎の指にはカップの形に固定された水があった。
「やったわ!成功よ!」
と喜んだ瞬間、陽炎の指の水塊ははじけ飛んだ。
「きゃっ、濡れてしまいました」
潮が盛大に水を浴びてしまい、制服からブラが透けて見える。
「ごめんね、でも宿命だから」
潮は陽炎の謎の言動に疑問符を浮かべた。
彼女らを指導していた魔術師は驚いた。
前日に魔法の修行を始めた者が成功できることではないからだ。
次の日のノウの朝食はパンとハムそしてワインであった。
料理人は屋敷には居らず書置きにはこう書かれていた。
「日本国が料理を教えてくれるので行ってきます」
ノウは無言でぱさぱさのパンを食んだ。
自衛隊のキャンプでは異文化交流の一環として前世界の料理を提供していた。
今日のメニューはクラムチャウダーだ。
料理を提供しながら曙は疑問を呈する。
「なんで陽炎はクラムチャウダーだけ美味く作れるのかしらね」
陽炎の料理の腕は壊滅的であった。
一応食べられるのが、ただ栄養補給するためだけのものでしかない代物だった。
その陽炎が唯一料理と呼べるレベルで作ることが出来るのがクラムチャウダーであった。
「公式設定だからじゃない?」
「身も蓋もないわね」
「あらノウ将軍、いらっしゃいませ」
昼食の時間になっても料理人が帰ってこないのでノウは自衛隊のキャンプにやって来た。
ここで飯を食べて文句の一つでも言ってやろうと思っていた。
しかし出てきた食事はノウの想像を超えていた。
「干してない生の貝だと?腐りやすい食材ではないか!」
「大丈夫ですよ日本には様々な食品保存技術がありまして、こういった痛みやすい食材も風味を
損なわず長期保存が可能なんです」
ノウは衝撃を受けた。それこそクワトイネ公国に最も必要な技術ではないか。
もしかして日本国と敵対するのは得策ではないのではと思ってしまった。
驚愕したままスープをすする。牛の乳を使った少しとろみのあるスープに海産物と野菜から出
たうま味が合わさり得も言われぬ美味を奏でている。
「美味いな」
ノウはそう言ってクラムチャウダーを全て平らげ帰っていった。
第14駆逐隊の魔法修業は順調だった。
「見てみて、ボク潮!」
皐月が胸を張ってそんなことを言う、彼女の胸には二つの巨大な塊が付いていた。
「大きさ、形、潮と寸分たがわないわ」
皐月は水操作の魔法で潮のおっぱいと同じ大きさの水塊を胸につけていた。
「いつも見せつけられているからね、再現は簡単さ。でもかなり重いよ」
長月も真似して巨乳化した。
「潮もよくこんなの付けていられるな」
もはや朝潮型とは言えない胸をした霰は感慨深げに呟く。
「一度言ってみたかった、あー肩こるわー」
第七駆逐隊で最も胸が平たかった曙は嬉しさから目の端に涙を浮かべている。
「あたしも言いたい、あー肩こるわー」
ある一つの女性の夢が叶った瞬間だった。
「皆さん、おふざけはほどほどにしてください。さもないとこちらにも考えがあります」
そう言うと潮は水操作の魔法で女性の裸の胸像を創り上げた。
「これは陽炎の胸!?」
陽抜の陽炎は公式設定より明らかにおっぱいが大きい、それを完全再現した像であった。
「これを人目の付くところに飾ります」
第14駆逐隊の面々の水パッドが一斉に破裂した。
「止めてください」
全員土下座した。
第14駆逐隊の中でおっぱいについて最も知っているのは潮である。
恐るべきも知っている。攻めるべきも知っているのである。
その様子を見ていた魔術師は遠い目をしていた。
魔力操作が抜群に上手い先輩が酒の席でよくやっていた遊びであった。
自分にはまだそこまでの技術はない。
夜になって料理人が帰って来た。
叱責しようとしたが、逆に日本の調理家電について熱く語ってきた。
家電製品と呼ばれる日本の魔道具があれば作れる料理の幅が広がる。だからインフラ整備をし
てエジェイでも家電が使えるようにしてください、と頼まれた。
ノウは迷い始めていたが一族の長である父親は反日の方針を示している。
だから難しいと伝えたら、料理人はそうですかと言って退職願を出した。
この戦闘が終わったら即座に都市を出てマイハークに行くそうだ。
そして親戚友人に頭を下げて金を借り、自分の店を開くと決めたのだという。
ノウが自室で残業していると黒い服の男が入って来た。ノーソン伯爵家お抱えの影である。
「伯爵様の密書をお届けに上がりました」
父の指令書を届けに来たようだ。
「ここに来るまでに誰かに見つかっていないだろうな」
「申し訳ありません、途中でおかしな娘達に見つけられてしまいました」
「なんだと!」
この者は伯爵家でも一番の手練れであり、それが易々と見つかったことに驚いた。
おかしな娘と言うのは艦娘のことだろう。
「副官殿に伯爵家の者と保証され開放していただきました。ですがその密書だけは見られないよ
う死守しました」
この影は咄嗟に密書を入れた筒を尻の穴に隠して難を逃れたらしい。
ノウはそれを聞いて顔をしかめた。
気を取り直して父からの密書を読む、親日勢力の切り崩しはうまくいっていないようだ。
何としても自国の戦力のみでロウリアを打ち倒し公国の威光を見せつけろ。
父はそのように言ってきた。
ノウはそれが困難であることを予感してた。
ロウリア東部諸侯軍はエジェイ要塞から西に5キロの地点に本陣を構えた。
命令書には3キロの地点に陣を構えよとあったが、なんだか嫌な予感がしたのでこの場所に変
えた。この程度なら現場指揮官の判断で変更が許されるだろう。
何故かエジェイからの攻撃はなかった。
約300名の騎兵を選抜し交代で夜間威嚇を行った。
その他の兵は十分な睡眠を取れて元気である。
ギムで奪った食糧は大量にある。流石のクワトイネ産で実に美味い。
エジェイの守備兵は疲労が溜まっているようで動きが鈍くなっていると報告が上がっている。
この調子なら先遣隊司令部の命令は遂行できるだろう。
ジューンフィルアは胸を撫で下ろした。
そのころホーク騎士団の陣地で問題が起こっていた。
「彼女らをどこにやったのですか!」
ビーズルの商人が所属の娼婦が何時まで経っても帰ってこないのでホークを問い詰めていた。
「知らねえな」
ホークはこれまでも相手をした娼婦が怪我をしたり、心を病んだりする事件を起こしている。
「そもそもあなたが客だと分かっていたら断ってましたよ」
ホーク王様の覚えが良いので事件を起こしても不問にされている。
なのでロウリアの娼婦はホーク騎士団の客を取らない。
娼婦らは別人の名前で呼び出され、いつの間にかホーク騎士団の陣地に移動させられたのだ。
商人は自らの沽券にかけてこの男を訴えることに決めた。
「我が商会は宰相様や首都防衛騎士団長とも面会することができるのですぞ、この戦いが終わっ
たら必ずあなたを訴えます」
ホークはつまらなそう聞いていたが、砥石を問いだして自らの剣の手入れを始めた。
「では失礼します!」
商人は怒ってテントを出ようと後ろを向いた。
ごっと音がして商人の後頭部に砥石がめり込んだ。
「あーあ、手が滑った」
商人は即死していた。
「あの三人と違って不味そうだか、もう直ぐ戦だし、喰っちまうか」
団長のテントからは骨を嚙み砕く音が聞こえっていた。
ホークは何時も骨付き肉の骨まで食べていたので不審に思う団員はいなかった。
その後その商人まで帰らなかったので、東部諸侯軍に帯同していた他の商人達は怖がって陣地
を引き払って後方へ下がってしまった。
陽炎達は自らが作った水球の上で昼寝をしていた。
それは程よい弾力で歴戦の戦士を堕落させるのに十分であった。
第14駆逐隊は完全にオフの日モード、だらけ切っていた。
先ほどから潮の胸部装甲が揺れる様を男どもがチラ見している。
かがんでパンツを覗こうとした愚か者には妖精たちが探照灯を浴びせていた。
しかし指導役の魔術師は戦慄していた。
眠っていて意識のない状態でも魔法を維持出来るようになる。
それはその分野の魔法を極めた証である。
魔術師は彼女らを天才だと思った。しかしそれは思い違いである。
彼女らに才能はない。むしろ落ちこぼればかり集まった6人である。
己の弱さを見つめ泣いて、周囲を見返してやろうとひたすら訓練に訓練を重ねた。
そして日本海軍でも一目置かれる駆逐隊に成長したのだ。
任務か訓練で彼女らは毎日海に出ていた。
日々の積み重ねがあったからこそ短期間で水魔法を習得することが出来たのだ。
「流石は陽炎殿、小官はまだまだでありますな」
あきつ丸は眠っていても魔法を維持することはまだ出来なかった。
彼女は水球のクッションに座って土魔法で作った石の球をお手玉している。
魔術師は彼女にも戦慄していた。水と土、二種類の魔法を同時に使っているのだ。
ロウリア軍が現れてから7日、ノウは悩んでいた。
連日の夜襲で守備兵たちは眠れず、疲労がピーク達していた。
騎士達は自衛隊の訓練に付き合わせたことが原因で兵士以上に疲弊し使い物にならない。
ワイバーンは夜間に飛ぶことは出来ない。
八方塞がりの状況で自衛隊から連絡が入る。
「ギムの西方5キロに居るのはロウリア兵で相違ないか。そうなら支援攻撃を行っても良いか。
また攻撃にクワトイネ兵が巻き込まれないよう、周囲2キロに友軍がいないか確認したい」
ノウは一瞬、光明を見た気がした、しかし努めて強気な姿勢で言った。
「そうか陣地から出るなと言っているのに、奴らも手柄が欲しいのだな。仕方が無い許可すると
伝えよ」
晴天の空の下、ジューンフィルアは深呼吸した。空気が美味い。
本隊が到着すれば圧倒的兵力でエジェイを陥落できるだろう。
そう思っていた、奇妙な空飛ぶ箱が現れるまでは。
空飛ぶ箱は空気を叩く音を立てながら野営地上空を旋回し紙を撒いて帰っていった。
その紙は真っ白で見たこともないほど上質な紙であった。
そこに書かれていたのは以上のことである。
「2時間以内に陣地を撤収し、退却せよ。さもなくば攻撃する。日本国自衛隊」
「ついに出てきたか日本国」
「日本国について追加の情報はないのか?」
正体不明の不気味な敵である、少しでもいい情報が欲しい。
「密偵からの報告です、日本国は過去海魔とシーゴーストの大量発生により軍が壊滅したそうで
す。現在定数の半分程度しか揃っていないらしいです」
東部諸侯軍に希望が生まれた。
「ということは日本の陸軍は大した事はないということか?」
「はい」
「情報源は?」
「ノーソンです。各地で日本国の軍隊を酷評しているそうです」
ジューンフィルアはほくそ笑んだ。あのつるさん将軍には随分勝ち星を稼がせてもらった。
「奴は名将だ、ただし我が方のな」
東部諸侯軍は戦闘準備を開始した。
字を読める兵士は警告を挑発と受け取り、士気は高揚していた。
「さあ、日本国に我らの力を見せてやろうではないか、っと靴紐が切れた」
ジューンフィルアは軍靴の紐を交換するよう従卒に命じた。
「あきつ丸殿からの情報では敵の野営地に出入りしていた民間人は撤収したそうです」
あきつ丸は配下の陸軍妖精をロウリア軍野営地に潜入させ、中の情報を収集していた。
結果、人質になっているクワトイネ国民はいないと判明した。
ただしロウリア王国の商人らしき民間人が野営地内で商売をしていることが分かった。
民間人を戦闘に巻き込むわけにいかない。まかり間違って死傷することになったら自衛隊の存
亡にかかわる。何があったかは分らないが離れてくれて良かった。
「敵は撤退をしたか?」
師団長の大内田は部下に問う。
「いえ、それどこらか隊列を組み、戦闘準備を整えつつあります」
「戦意ありか、付近に友軍はいないと確認は取れているか」
「ノウ将軍に確認したところ友軍は存在しないと明言されています」
大内田は目をつぶり祈りを捧げた。
「そうか、発砲を許可する」
「斉射用ォー意ッー、撃てッ!」
多連装ロケットシステムがロケット弾を発射し、155㎜自走榴弾砲が砲撃を開始した。
2万の兵士が整然と並ぶ。東部諸侯軍が精鋭である証である。
日本国が例え想定以上に強くても決して敗北することはないだろう。
その時ジューンフィルアの頭が冴える。
水面に水滴が一滴落ち、波紋がすうーっと広がり、植物の種が割れて光が煌めく。
そんなイメージが脳内に広がっていく。
敵はまだいないにも拘らず確かな死の予感がする。
彼の背中が冷や汗をかいて冷たくなっていくのを感じた。
突如隊列の真ん中で大爆発が起こり、土煙が上がる。
遅れて轟音が響き渡る。
「何が起こった!」
ジューンフィルアは叫ぶが誰も答える者はいない。
この場に状況を理解できる者など一人もいない。
爆発は土とそこにいた人間だったものを天高く放り上げ、土と肉片に変えて降り注ぐ。
続いてバラバラという奇妙な音とともに空に黒い花が咲いた。
その黒い花が咲くたびに兵士がバタバタと倒れる。
黒い花は東部諸侯軍の隊列の上空に広く咲き乱れその下の兵をなぎ倒していく。
大きな爆発と黒い花の小さな爆発が戦場に吹き荒れ、兵士達は逃げまどい死んでいく。
「こんな馬鹿な!」
ジューンフィルアは絶望していた。
今まで共に戦ってきた戦友、歴戦の熟練兵、優秀な幕僚たち、家族ぐるみで付き合いのあった
上級騎士、戦場の習いを教えてくれた先輩。
全てが虚しくなるほど、泣きたくなるほどあっさり死ぬ。
ジューンフィルアは心の中で謝罪する、警告通り引いておけばよかった。
不確かな情報に踊らされ出陣を決めた自分が悪い。
「おのれノーソン!図ったなあ!」
そして彼は天に向かって叫ぶ。
「戦の神よ、虫けらのように殺されるのが我らの運命だというのか!」
直後彼は押されたような衝撃を受けて浮遊感を味わう。
自分の手足がバラバラになって飛んでいく光景を見て、彼の意識は途絶えた。
「俺はこれを知ってるぞ!」
ホーク騎士団団長ホークは驚いて叫んだ。
「団長なにを知ってるんでるか?」
団員が何のことか尋ねる。
「一万年前と同じだ!太陽神の使者のカンポウ!誰が奴らを再び召喚したんだ!」
「それはどういう事なんですか!」
ホークは問いに答えず仲間に襲い掛かる。
「お前ら、俺の盾になれ!」
口から触手を出して騎士団員を絡めとり一纏めにする。
「これだけじゃ足りん、穴を掘って隠れなくては!」
ホークは手から鋭い爪を生やし、急いで地面を掘った。
ノウは絶句していた。
日本国が支援攻撃をすると言うので城壁の上から観戦しようとした。
6千ではある程度の損害は与えられても反撃で大損害が出るであろうと予測を立てた。
そして日本国が窮地に陥ったら救援に駆け付けられるよう部隊を編成、兵士を城内に控えさせ
ていた。
しかし今目の前に広がる光景はノウの想像を絶していた。
敵陣で火山の噴火が起こったように爆発し煙が噴出する。
しかし正確無比に敵陣で爆発しているので自然現象ではないと分かる。
「まさかこれは日本国の攻撃なのですか」
参謀が恐怖で顔を引きつらせながら推論を口にする。
しかし自衛隊は陣地から出てもいない。
「自衛隊がいるのは我らの5キロ後方だぞ、ロウリア軍まで5キロなのだから合計10キロ、こ
のような長距離を攻撃する手段など在るわけない!」
息もつかせず次々と爆発しロウリア兵もろとも地面を掘り返す。
隊列の整ったさまから敵兵は余程練度の高い精鋭であっただろう。
しかしその精鋭は逃げまどい死んでいった。
己の人生を賭け鍛え上げた武技を発揮することなく一方的に殺される。
そこには華やかな騎士道などなく只々効率的に処刑される哀れな敵の姿があった。
「魔導師殿、これは爆裂魔法なのか」
ノウは横に居た魔導部隊の隊長に質問する。
しかしその魔導師はノウの質問に答えずカタカタと震えていた。
「何という威力の爆裂魔法だ!何という魔力投射量だ、これ程の魔力は大魔導師が6千人いても
不可能だ!まるで神竜のブレスとしか思えない!」
この世界の魔法使いは序列があり、見習いの魔法学生から魔法助士、魔法士、魔術師、大魔術
師、魔導師、大魔導師と順に高位となる。
魔導師となれば国の要職に就くほどの達人であり、大魔導師に至っては一国に数人しかいない。
自衛隊の攻撃はその大魔導師が6千人いても作り出せないほどの威力があった。
「魔導師殿、この攻撃には魔力が感じられません!」
魔導部隊の部下の一人が信じられない報告をする。
ノウも魔力を探知しようとするが、報告通り魔力を感じられない。
「だとすればこれは一体何なのだ!」
その時後ろから艦娘の陽炎が近づいてきた。
「どう日本国自衛隊の戦闘は、参考になったかな?」
海魔に負ける弱少の軍隊だとは誰が言ったのか。
これ程の力を持った軍隊を壊滅させるなど、どれ程強力な魔物だったのだ。
そしてその魔物を駆逐したという目の前の人物は一体、、
「あーお礼なんていいのよ~」
ノウは恐怖の悲鳴を上げて気絶した。
「あ、あれ?」
陽炎は困惑した。
自衛隊の力を見せるため艦娘である自分達は今回の戦いに参加しないことにした。
エジェイ要塞にこもって異文化交流だけをしていたはずだ。
なのに目の前の男は確かに自分を見て気絶した。
「解せぬ、だわ。なんなのもう」
何をどう勘違いしたらこうなるのか全く分からない。
するとあきつ丸が現れ、壁によりかかってこう言った。
「さすが陽炎殿ですな」
エジェイ要塞攻防戦は軍人のみならず一般市民も目撃した。
彼らは城壁の外に出てただ唖然とその様子を眺めていた。
そしてその人々の口から日本国の恐ろしさが伝えられたのだった。
ノウ将軍はその後、一か月間自室に引きこもった。
そして軍上層部に転属願をだして後方勤務部に異動した。
その後新しい職場で精力的に勤務した結果、公国軍は補給に困ることはなかった。
ノウの功績は高く評価され退役時に名誉元帥の地位が与えられた。
皐月「筋肉は全てを解決する」
神通「その通りです」
鹿島「筋肉をつければエロキャラ扱いされなくなりますか?」
皐月「、、、」
神通「、、、」
アウナス「宿命からは逃れられぬぞ」
前回の万能斧は怪獣自衛隊が元ネタです。
今回の水操作の魔法は理想のヒモ生活からの引用です。
himajin409様、誤字報告ありがとう御座いました。