新世界の海に陽炎、抜錨します!   作:yutarou

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 お待たせして申し訳ございません。
 それにしても狭霧の水着エロいな、あれだけ白が似合うのは白米とナミさんと狭霧だけだな。



第十四話 王国の反撃

 時間はギム戦前に遡る。

 ロウリアの竜騎士ムーラはエジェイの飛行場に誘導され着陸させられた。

 相棒の足環を確認していたクワトイネ兵から声を掛けられる。

「あー、ムーラ・ジチタさんか?あんたの飛竜は個人所有なのか?」

 ムーラはその通りだと返答した。

 貴族の娘である妻と結婚するためムーラは必死に勉強し竜騎士となった。

 ムーラの相棒マッキン号は妻の父親から、結婚と竜騎士試験合格祝いに贈られたものだ。

 

「となると接収するわけにはいきませんね。戦争が終わったら返還します」

 この世界にはワイバーンを使役する冒険者や傭兵がいる。敵対国家が所有するワイバーンであ

 れば鹵獲しても構わないが、こういった人々のワイバーンは返還することが慣例である。

 ただしムーラの様に正規兵で個人所有している場合は国毎に対応が異なる。

 

「問答無用で分捕ってしまえばいいじゃないですか」

 先ほど対応した兵士の部下が意見する。

「そもそもなんでロウリア野郎に痛い目を見せるのもだめなんですか?」

 この兵士は捕虜虐待を禁止されたことに不満を持っていた。

「だめだ公国は日本国を見習って近代国家に変わらなければならないんだ」

「ちっ、亡命者が」

 兵士は捨て台詞を吐いて他の仕事に行ってしまった。クワトイネ公国にもモラルの低い兵士は

 いるのである。

 

「それよりも此処の責任者と話をさせてくれ。王国と公国双方に関わることなんだ!」

 ムーラはこの戦争の裏に魔王軍残党が関わっていることを知った。

 何としてもこの戦争を止めねばならない。

「そんなこと無理に決まっているでしょう」

 先程とは別の兵がムーラの要望を否定する。

「分かりました、確約は出来ませんが上申してみます」

 上司は願いを聞いてくれた。ムーラは何故この兵士は自分に甘いのか不思議に思った。

「ジチタ商会の船旅は快適でしたからね」

 

 ムーラの実家はロウリア王国で海運会社を経営している中規模の商会である。

 ムーラの祖父はハーク32世が始めた亜人排斥運動が本気であることを知り、亜人の商会員を

 国外に脱出させた。その際国には国外の支店を乗っ取られたと報告している。

 そして亜人の友人知人にロウリアを脱出すること勧めるとともに自らの商会の船に彼らを密航

 させ国外に逃がした。

 ジチタ商会を通じてロウリアの亜人迫害を逃れた人々の数は数百人を上回る。

 ムーラの目の前の兵士もその一人であった。

 

 ムーラが何らかの情報を持っていることは司令部に伝わった。

 しかし後にムーラの情報が公国の上層部に届いた時、事態は急転していたのである。

 

 ムーラの相棒マッキン号(雄)は鳳翔の元に預けられことになった。

 敵国に預けるよりは安心できるということでムーラも同意した。

 鳳翔の愛騎ゴールド号(雌)もマッキン号のことが気に入ったらしい。

「飛び方に無駄がなくきれい。あと尻の形がいい」

 通訳の連装砲ちゃんを通じてそうコメントしていた。

 戦後マッキン号が竜体重を落として帰ってきたことにムーラは心配したが、鳳翔から特製ワイ

 バーンフードを大量に贈られると共に、相棒がパパになったことを知らされた。

 

 

 

 綾波と夕立を連れて城塞都市エジェイに戻った陽炎の目の前に広がっていた光景は異様、その

 一言に尽きる。

 3人の目の前には鎧に身を包んだ騎士達が仰向けで寝っ転がっていた。

 よく見ると全員獣人であった。

 

 彼らはクワトイネ公国が誇る精鋭騎兵部隊、西部第一騎兵隊である。

 馬の扱いにたけた獣人によって構成され、他国からも一目置かれている。

 その中でも屈強な虎獣人、騎兵隊隊長タイガギルがこちらを向いた。

「ゴロにゃ~~~~~ん」

 大物ベテラン声優の様ないい声で虎面のおっさんが猫なで声をだす。

 陽炎のSAN値は激減した。

 

「何してんの」

「おお、そこのお二人、正に獣人の王いや女王に相応しきお方!」

 獣人達は綾波と夕立を自分たちの女王として祭り上げる気でいた。

 

「あのうこの二人は獣人ではないので、ないよね?」

 陽炎が否定しようとして改めて二人に確認した。

「私たちを何だと思ってるんですか」

 

 艦娘の中には動物らしき口調やしぐさをする者が居る。

 受け狙いかキャラ付けが目的なのか、それとも艦娘の本能なのだろうか。

 陽炎は二人の素体が人間ではなく犬か猫ではないかと疑念を持っていた。

 あと夕雲型は全員サキュバスじゃないかと思う。

 

「そういう陽炎は元男なんじゃないんですか」

「違うわよ!」

「5本ぐらい生えてそうっぽい」

「あたしゃマレーオオスッポンか!」

 マレーオオスッポンペニスには交尾の際抜けないよう5本の突起が生えており、それを見た爬

 虫類学者高田栄一氏は子供の手の様だといった。

 参考文献 高田栄一の爬虫類ウォッチング

 

 

「お二人が獣人ではないとはご冗談を、立ち上る獣臭は隠せませんぞ」

 そのとき二人の目から冷たく輝く炎が燃え上がる。

 獣の眼光がその場にいる全員の魂魄を射抜く。だれも指一本動かせなかった。

「その口を閉じろ。どうしても開きたければ貴様の顎の骨、この夕立が外すぞ、確実にな」

 夕立がいつもの口調を止めてジ〇ンの少佐っぽい話し方をしている。

 

「お鼻の具合がよろしくないようですわね、鼻の奥にある物を掻き出して差し上げましょうか」

 それは脳味噌と言われる物ではないだろうか。

「女性に対し体臭の話をするのは如何かと」

「は、はひ」

 タイガギル以下獣人兵は生まれたての子猫の様に震えた。

 

「夕立は揚げたてのドーナツの匂いがするって提督さんが言ってたっぽい!」

 夕立の言葉に綾波が赤面する。

「はわわ夕立さんなんてことをー」

「綾波はふかし芋の匂いがするっぽい?」

「違います!」

 

 

 曙と潮が陽炎を迎えに門の前にやってきた、そして綾波がいることに気づいた。

「げ、綾波姉、なんでいるのよ」

 曙は思わず声に出してしまった。潮の顔が引きつっている。

「ぷークスクス、綾波も妹に"げ″と言われてるっぽい」

 

「むう、私は長女ですから、妹の躾をする義務があるんです!」

「うちの長女は一年の大半を芋を食べて過ごしてるっぽい」

 夕立の姉である白露は11月から3月まで焼芋を食べている限定?グラで過ごし、もはやそち

 らが通常グラではないかとも言われている。

 

「そちらはそちらです。曙に潮、後で話があります」

「あ、あたしは鳳翔さんの手伝いがあるから!」

 曙は逃げ出した。一言も話してない潮も、なんで私までと半泣きで退散した。

 

 

 

 

 騒いでいると見知った人物がやってきた。最初の訪日使節団の一員であったハンキ氏だ。

「ハンキさんどうしてここに?」

「ノウ将軍が心の病だということで私が司令官代理として赴任したんだ。ああ軍に復帰して今は

 少将だ」

 

 ハンキは訪日の後、マイハークの自動車教習所に通い免許をとった。

 そしてクワトイネ公国初の機械化部隊の指揮官に就任したのだった。

 現時点では軍用トラックと改造トラクターのみの部隊であるが、ゆくゆくは戦車を配備する予

 定である。

 

 ちなみに改二で戦車を搭載が出来るようになった皐月は、普通自動車免許を取ろうとしたが任

 務が忙しく一年以上かかってしまった。大特はまだ取得していない。

 戦車は妖精が操縦するので問題はないのだが本人は免許が欲しいらしい。 

 

 陽炎は背筋を伸ばして敬礼をした。

「そうでしたか、失礼しました!」

「はは、そうかしこまらんでも良いよ」

「いえ!将官たる方に対して失礼は出来ません!」

 基本的に陽炎は真面目なのだ。

 

「ところでこの二人も艦娘なのですかな」

 ハンキは後ろの二人について聞いた。

「実家が芋農家っぽい方が綾波、語尾があざとい方が夕立です」

 中々に酷い紹介である。綾波と夕立が抗議するか陽炎は無視する。

「この二人は駆逐艦ではずっと最強の座を守り通している猛者です。私より強いですよ」

 周囲がどよめく。

 

「そんなことないっぽい、陽炎の方が強いっぽい」

 夕立は陽炎の言葉を否定する。

「演習では8割あんた達が勝ってるでしょ」

 陽炎と二人は何度も演習で戦っているが、陽炎が勝利したことは少ない。

 改二になってからも、多少勝利のチャンスが増えたかも?という程度であろう。

 

「あと最近は後輩の長波や風雲にも負け越してるし」

 後輩であり陽炎が指導した夕雲型は実戦を経験してからはめきめきと実力をつけ、改二を実装

 した後は陽炎を演習で倒す者達が現れ始めた。

 長波や風雲はその代表でもある。陽炎は嬉しくもあり、悔しくもあった。

 

「確かに演習では勝ち越してます、ですが実戦では分かりません」

「陽炎より戦果を上げろというならできるっぽい。でももし日本が二つに割れたとして、陽炎と

 敵対する陣営につくのは御免っぽい」

「本当の命の取り合いになったら、陽炎さんに勝てるイメージが湧きません」

 

「ちょ、何言ってるのよ!」

 周囲の人間達は陽炎に恐れの視線を向けていることに気づき、陽炎は頭を抱えた。

 

「ならなんであたしと演習したがるのよ」

「陽炎との演習が一番実戦に近いっぽい」

「一歩間違えば大怪我、最悪死亡するという緊張感が有りますから訓練が一番身に付くのです」

 ただ訓練メニューを消化するだけになっては、何事も上達しない。

 さらなる高みを目指す二人にとって陽炎は最高の訓練相手なのである。

 

「だから演習するっぽい!」

「演習しましょう!」

 ずずいと陽炎に迫る綾波と夕立、陽炎はたまらず助けを求めるが、第14駆逐隊のメンバーは

 いない。

「ラキシス助けて!」

「ちょ、ファティマシェルを叩かないでくださいよ!」

 

 ラキシスが人間大になって艤装の外に出てきた。

 その時、綾波と夕立は一瞬で後方に40m以上飛び後ずさった。

「誰っぽい!」

 夕立は両手を地につけて今にも飛掛ろうとする姿勢を見せる。

 綾波は限界まで姿勢を低くし、ラキシスを睨みつける。

 二人の様子を見てラキシスが嗤う。

「私の手刀の射程を一瞬で見抜きますか、流石ですネ」

 

 ラキシスに対し二人は最大級の警戒を見せる。

 四人はエジェイ要塞の外に移動した。

「どうしますか、今なら止められますヨ」

「そんな馬鹿なこと致しません、貴女のような強者との戦いは望むところです」

 綾波は歓喜の表情で答える。

「ガルルルル‼」

 一方の夕立は既に人語を忘れている。

 

「貴方達は強いですけれどファティマ無しでは勝てませんよ?」

「そんなことやってみなければ分かりませんよ!」

「ガァルルルルーーーー‼」

 綾波と夕立はラキシスに飛掛って行った。

 

 その戦いを目撃した人々は後に声を揃えてこう語った。

「あれは神々の戦いだった」

 

 一時間後演習の舞台となった荒野に立っていたのは藍色の髪をした女性ただ一人であった。

「まさかコンサバモードで対処しきれないとは、、、」

 藍色の髪はラキシスの運命の女神としての真の姿である。

 綾波と夕立が意外にも健闘したため彼女はその真の姿を開放せざるを得なかったのである。

「凄いわねラキシス!流石私のパートナー!」

 開始早々ダウンした陽炎が、地面に頭を突き刺したままラキシスを褒めた。

 

 綾波と夕立がクレーターから這い出てきて一言、

「うーんもう一戦、、」

 これは陽炎が二人を避けるのも仕方がない、そう思うラキシスであった。

 

 

 演習を終わらせ、エジェイの自衛隊テント内でギム奪還作戦に関する会議が行われた。

 出席者は陽炎と長月、鳳翔とあきつ丸、大内田と副官、ハンキとノウの副官ソミー。

 そしてクイラ王国からユーリア・バシュチェンコが参加した。

 

 バシュチェンコはクイラで最も精強な騎兵隊を率いる騎兵隊長である。

 その名を聞いたロウリア兵が震えあがるほどの勇名を挙げていた。

 その彼女が新設の自動車部隊の隊長を務めることにハンキとソミーは驚く。

 

「会議の前にこれをお渡しします」

 鳳翔が持ってきたのは6種12個のブローチであった。

 陽炎達はロデニウス大陸で活動する際に身分を証明するため冒険者登録をしていた。

 赤城と加賀も大陸の魔獣を狩って食べるため冒険者登録をしている。

 

 この世界の冒険者は己の実力を示すために自らが仕留めた魔獣、もしくは採取した希少素材

 で作られた宝飾品を身に付ける。

 このブローチは第1駆逐隊が初めてクワトイネ公国に訪れた際に遭遇した邪竜タラスクの甲羅

 で作られている。

 

 また各人のパートナーに縁のある図柄かデザインされている。

 陽炎とラキシスは紅の十字架、曙とエストはオレンジの三つ巴、潮と町はフィルモア帝国の国

 章、霰と静は踊る人形、長月とクーンは銀のS十字、そして皐月とパルスウェットはルミナス

 学園の校章である。

 ファティマにはこういったアクセサリーを折々に贈ると精神的に安定するのである。

 

 これらはロデニウス冒険者ギルドを通じて職人に作ってもらった。

 職人いわくタラスクではなくキングタラスクだと言う。

 長く時を経たタラスクが変異したのがキングタラスクである。

 

 かつてパーパルディア皇国の初代皇帝がガハラ神国の力を借りて討伐したと伝えられている。

 キングタラスクの甲羅で作られた盾は皇帝即位の儀式で用いられる三種の国宝の一つである。

 

 陽炎達は酸素魚雷で粉微塵に吹き飛ばしてしまい、わずかに残った破片で作ったのがこのブロ

 ーチである。ブローチぐらいしか作れなかったというのが真相でもある。

 もしキングタラスクの素材が残っていたら孫の代まで遊んで暮らせる金が手に入っただろう、

 と職人が嘆いていたのは陽炎達には秘密にされている。

 ハンキはもしこのブローチをつけて皇国に行ったら問題になるんじゃないか?と思った。

 

 

 

 クイラ王国の援軍は遅れるという連絡があったが、予想よりも早く到着した。

 彼らは故障した鉄甲車を人力で運搬しつつマイハークを目指したが、とある人物と遭遇した。

「壊れた機械の声が聞こえるわ!」

 ピンクの髪を振り乱し現れたのは工作艦の艦娘、明石であった。

 

 異様な雰囲気と血走った目が恐怖を感じさせたが、ひとまず鉄甲車を見せることにした。

 決して断ったら何されるか分からなくて怖かったからではない。

「ふむふむ、なるほど、ほうほう、この子はここが壊れているんですね」

 

 明石は鉄甲車を手の甲で軽く叩きながら何かを呟くと、輸送車から自動車部品を持ってきた。

 それぞれが各車の交換部品らしい。

 触っていただけじゃないか、という言葉に明石はこう答えた。

「触って音を聞けば分かるじゃないですか」

 

「鉄板の間に挟んでいるのは爬虫類系の皮、接着に蜘蛛の糸を使っているんですね、面白い工夫

 ですね」

 クイラの技術者は驚いた、まさにその通りであったからである。

 鉄甲車の装甲板はサンドリザードの皮をブラックスパイダーの糸で巻いたものを挟んでいた。

 明石は装甲板を開けて見ることもせず言い当ててみせた。

 

「それじゃ修理開始しますね」

 明石が明るい声でそう宣言すると、足を上げ地面を踏み鳴らした。

 そうすると鉄甲車はちょうど明石の目の高さまで浮き上がった。

 明石が両手を振ると鉄甲車が打ち上げ花火の様にバラバラに分解される。

 明石はその中に手を入れ部品を取り出し、交換する。

 地面に落ちた時、鉄甲車は完璧な状態で組みあがっていた。

 

 クイラの人たちが唖然とする中、明石は鉄甲車を次々に修理していった。

 歪みを直す必要がある部品はハンマーと背中の艤装を駆使し、鉄甲車が空中にある間に電光石

 火のごとく直していった。

 

「ふう、やっぱり修理したての機械の匂いと音は良いですね。いい気分転換になりました!」

 明石にとって一連の作業は気分転換であった。

 普段艦娘の艤装を修理している明石にとって違う機械を修理することは日ごろのストレスを発

 散する良い機会であった。

 

 仕事のストレスは仕事で発散する、ワ-カホリックの向こう側に渡った者がそこにいた。

「おまけでカーナビも付けときました!」

 衛星もないのにそんなもの付けてどうするというのか、ちょっと抜けてる明石だった。

 

 以上がクイラの援軍が間に合った経緯である。

「あれがジャパンクオリティなのか」

 バシュチェンコが自分たちの目指す頂の高さ嘆息すると、陽炎が一言釘を刺す。

「どうかあれを参考にするのは止めてください、あれは我が国でも行き過ぎで異常です」

 そういう陽炎も他人の事は言えないのではなかろうか。

 

 

 あきつ丸はタイダル平原で建設中の飛行場の進捗について報告した。

「衛星で思い出しましたが、ギム攻撃は航空自衛隊ではなく海軍基地航空隊が行うことになりま

 した。これは衛星のない現時点では自衛隊機では精密爆撃が難しく、また技術的に大きな差の

 ある相手にはジェット機による攻撃は効率が悪いと判断されたためです」

 

 ベトナム戦争ではジェット機がその力を十分に発揮できなかったことを参考にし、対ロウリア

 戦は旧式のレシプロ機が主体の基地航空隊が担うことになった。

 ただし建設中のタイダル空港はジェット機が運用可能な、軍民両用の空港として整備されるこ

 とが決定している。

 

 その他幾つかの報告と打ち合わせの後、ギム奪還作戦の会議は終了した。

 

 

 

 多国籍の会議が終わった後、日本国だけの会議が始まった。

 鳳翔がエジェイに来たのは極秘命令書を届けるためであった。

「呉鎮守府から至急ラキシスさんを戻して欲しいと言ってきています」

「現在作戦中ですが?穏やかではないですね」

 

 今まさに戦争中であるのに前線から指揮官の補佐役を引き抜くとは余程のことが起こったのか

 もしれない。

「不知火さんにパルテノという方がパートナーになったようです」

「不知火に?どんな人?」

 陽炎はラキシスに聞く。しかしラキシスの反応は以下の通り。

「...............(無言)」

 

「いや、マジどんな人よ」

 他ならぬ妹のパートナーについて陽炎は聞き流すことは出来なかった。

 ファティマのことを人と呼ぶ陽炎にほっこりしながら同時にラキシスは冷や汗をかいた。

 慎重に言葉を選んでパルテノ姉さまを説明した。

「バランシェファティマいちロックな生き様をしている方です」

 

 パルテノはクローム・バランシェ公が手掛けた二番目の作品である。外見はアフロアメリカン

 で黒髪のドレッドヘア。重度の薬物依存のラリラリラリ子さん。

 

 主のシャフトが無政府地帯カステポーに在る犯罪都市ザンダシティの市長であったとき、彼と

 共に『最もイっているコンビ』と言われた。あらゆる犯罪を極めたとされる。

 

 強力な戦闘力を追及した結果、精神的に極めて不安定になってしまった。故に薬物を大量投与

 してダムゲートコントロールを破壊しなければ生存できなかった。公式には廃棄処分済みとな

 っている。

 シャフトをボスヤスフォートに殺害されたことにより、精神崩壊しかける。治療後は天照帝の

 命により封印された。

 

 後年マドラとデコースの息子で11代剣聖ベルベット=ワイズメルのパートナーになり、デトネ

 イターを駆ってカラミティ星を砲撃、破壊する。

 

 一方で医学に精通し、バランシェ公が延命用ボディに自身の脳を移し替える際に手術をしたの

 がクーンとパルテノである。

 

 余談だがFSSで何言ってるのか分からないキャラランキングは

 5位ヒュートラン 4位パルテノ 3位キュキィ 2位天照帝 1位ラキシス である。

 (キュキィはミラージュ騎士で初代ザンダシティ市長の娘)

 

 

「それでもラキシスを戻したがる理由としては薄いわ。他に何かあったのかしら」

「多分パルテノ姉さまの愛機が建造されたのでしょう。あれは大きいですから」

「それはどんななの」

「ツァラツストラ・グローサー・デトネイター(旧ヤクト・ミラージュ)です」

 

 通常のGTMの三倍、50m以上ある全長に加えて120mを超える大砲を二門、肩に装備してい

 る。総全長は150m、こんなものが建造されたらまず隠し切れない、周囲から丸見えになり

 鎮守府は大騒ぎになるであろう。

 

 ならばさっさと艤装融合させてしまえばいいだろうと思うが問題が起きた。

 戦艦娘は男の子よりも大口径砲に惹かれる。

 巨大なバスター砲を見た戦艦の艦娘達がどうにかして自分に乗せられないか、画策していて収

 拾がつかないという。

 

 ラキシスの頭上に光の粒子が飛び散る。

「バシク姉さまに確認しましたら予想通りでした」

 ラキシスは軍の回線を無断で使用し呉のバスクチュアルと連絡を取って事実を確認した。

 そのことを知った陽炎は狼狽する。

「ばれなきゃいいんデス」

 

 というよりも日本のセキュリティ技術の水準が低すぎて気付く事は絶対に在り得ない。

 ジョーカー星団の電子技術ですらファティマには容易に支配できる。

 ジョーカーに比べれば知的生命体の水準にすら達していない日本、特に政府公官庁への侵入な

 ど鍵の掛かっていないドアを開けるより容易い。

 

「陽炎、私は呉に戻ろうと思います」

 陽炎はどうするか迷ったが、クワトイネの公都で待つという案に乗った。

 移動手段はどうするのか、自衛隊の航空機を借りることを考えたが、またしてもラキシスがア

 イデアを出した。

「パルサーに乗っていきましょう」

「パルサーって何?」

「パルサー・フローラ、楊貴(やんぎ)のことですヨ」

 

 金のセントリー『パルサー・フローラ』は別名パローラとも言い、楊貴(やんぎ)は幼体の名である。

 空を飛ぶことが出来、音速は出せないがそれに近い速度が出る。結界を張れるので安全性も確

 保できている。

 楊貴(やんぎ)はまだ子供だから無理と視線で訴えるが、ラキシスはもう亜成体くらいでしょと言って却

 下する。

 

楊貴(やんぎ)、貴方すごい犬なのね!」

 陽炎は喜ぶが、そばで聞いていて限界を迎えた者が一人いる。

「それって絶対犬じゃないだろ!」

 長月が吠える。

「犬には羽が生えてないし、字も書けない、野生動物が獲物を献上したりしないぞ!」

 

「普通の犬はそんなことないんだ、他の犬飼ったことないから知らなかったわ。長月は犬を飼っ

 たことがあるの?」

 だから犬じゃないと言いつつ長月は質問に答える。

「実家で父さまがドーベルマンを50頭くらい」

「それ警備用よね、流石元お嬢様」

 長月はこれまでも、しぐさの端々に育ちの良さを滲ませていた。

 

「話を逸らすな!陽炎、お前どこでそれを見つけた!」

 陽炎は昔を振り返る。

「ヤマネコ島の海岸にあった祠の中で寝てたのよ。私はメンチカツにしようと思ったんだけど、

 妹がいい毛皮が取れるからもう少し育てようって」

「食うつもりだったんかーい!」

 

 横で聞いていた大内田が気になることを質問した。

「陽炎さんには妹がいたのですか?」

「ええ、事情があってヤマネコ島事件の後は別々になってしまいましたけれど」

 陽炎は何故か複雑な表情を浮かべた。

 長月と鳳翔、あきつ丸の顔面は蒼白だった。

 

「もういい!直接こいつ(楊貴(やんぎ))に聞いた方が早い!」

 長月は楊貴に詰め寄って睨みつけた。

「お前は一体なんだ!何の目的があって陽炎に近づいた!」

 楊貴(やんぎ)は口の両端をつまみアッカンベーをした。

 

「どっへぇ~!!」

 セントリーの口の中は爬虫類に似て思ったよりもグロテスクであった。爬虫類が苦手な長月は

 悲鳴を上げのけ反った。

 その隙に楊貴(やんぎ)は陽炎とラキシスを乗せて空に飛び立つ、光の粒子を散らしながら飛ぶその姿は

 生物というよりもジェット機に似ていた。

 

「長月、教導はまかせたわよ~」

 飛び去りながら陽炎が後任に長月を選ぶ。陽炎のいない間の指揮は長月に任された。

 

 

 

 楊貴は一旦クワトイネ公都の中央広場に降り立ち、そこで陽炎を下ろした。

 目撃した公国民はひれ伏しお祈りを捧げていたが、ラキシスと楊貴は全く意に介さず呉に向け

 て再度飛び去ったので陽炎は途方に暮れた。

 とりあえず軍務省で霧島率いる本隊を待つことにし、ひれ伏す人々の群れの間を抜き足差し足

 で抜けていった。 

 

 

 

 ラキシスと楊貴はロデニウスー沖縄間を時速約千キロで飛行していた。

「なぜ正体を明かさないんデスか?」

 楊貴は無言であった。

「もしかして恥ずかしいんデスか?全人類の上に君臨した貴女が?」

「最もかつては恐れられるか崇拝されるかどちらかでしたからネ。あそこまで純粋に憧れられる

 のは初めてなのは?ならば今更名乗り出るのも恥ずかしいデスよねえ」

 どこからか高音の女性の声が響く。

「貴様と世間話する気はない、野暮用は早めに終わらせる。3秒後にテレポートするぞ」

「あらあら、せっかちですね」

 一人と一匹の姿は掻き消え、広島県の呉鎮守府に転移した。

 

 呉鎮守府の工廠前広場で3人の艦娘が言い争っていた。

「両舷にバスター砲を配置し、その後方を重巡が支える。これでどうだ!」

 大和型戦艦二番艦、武蔵がどこぞの〇ルトラザウルス・ザ・デストロイヤーの様な改装案を口に

 する。

「この間の大和型二隻を連結して積む案はどうなったのかも?」

 明石の代理で呉鎮守府の工廠を任されている飛空艇母艦、秋津洲が疑問を呈する。

 

「どちらがトリガーを握るのかで揉めると思うので、二人で話し合って廃案にしました」

 大和型一番艦、大和が答える。(この大和は鶴翼の絆の大和です)

「やっぱり?そんな気がしたかも~」

 

「姉上がどうしても自分が打ちたいっていうのだ!」

「人聞きの悪いこと言わないでください。ちゃんと曜日替わりで交代しようと言ったじゃありま

 せんか」

「月水金日が姉上で火木土が私だろう、一日少ないじゃないか!」

「大和はお姉ちゃんだからです!」

 史上最強戦艦姉妹の低次元の争いが繰り広げられる。

 

「やっぱ、あたしじゃ無理かも~」

 秋津洲が涙する。だか意見をはっきり言えるだけでも立派だろう。

「そもそもハーモイドエンジンはこの世界では使えないからバスター砲も動かせないかも~」

 武蔵と大和は反論する。

「動くようになったらすぐにでも運用できるよう今から研究を始めなくては!」

「そうです!二つの問題のうち一つが未解決だからと言って、もう一つを放置していいという理

 由にはなりません!」

 

 使用可能か、それ以前にバスター砲は向こうの世界では国際法上使用禁止されてる危険な兵器

 、要するに核兵器に相当する兵器なのだ。

 もし使用したら国際社会から非難され孤立する、そんなもの装備してどうしようというのか。

 

 

「しょうもないデスね。打撃系では修理に資材が掛かるので関節技で制圧しましょう。大和はわ

 らわに任せろ?はいじゃあ武蔵は私が」

 隠れて話を聞いていたラキシスと楊貴は、茂みから飛び出し大和たちに襲い掛かった。

 

 武蔵はアキレス腱固めを掛けられ、タップするも聞き入れられず、痛みで気絶するまで技を掛

 けられた。大和は毛針を目に刺されたあとフロントネックロックを掛けられ失神した。

 制圧の様子を見ていた軽巡、長良はこう述べたという。

「戦艦は駆逐軽巡に比べて体が硬いのよね~」

 

 

 

 

 ロウリア王国王都ジンハークは緩やかな丘の上に作られ、頂上には王の住まうハーク城がそび

 え立つ。外周にはそれぞれ20m、25m、30m、の三重の城壁で囲まれている。

 王国民はその防御力に絶対の自信を持っている。

 たとえ文明圏内国の強大な軍隊が攻めてきたとしてもその攻撃に耐えきり、準備を整えて圧倒

 的な数で反撃する事が出来る、そう信じられている。

 

 ハーク城では軍事会議が開かれようとしていた。

「それでは会議を開催します。パタジン将軍、現況説明をお願いします」

「会議に集まっていただき感謝いたす。クワトイネ侵攻作戦の現状を説明する・・・」

 日本国召喚第一巻の実質的主人公パタジン将軍は戦争開始前とは打って変わって疲れ果てた表

 情を浮かべている。普段の彼を知る者は一様に心配した。

 

「初戦でギムの町の占領に成功した。被害は7千と想定より多かったが概ね成功と言える。敵の

 目が陸に向いている間に海から軍船4千4百隻、兵力14万の主力艦隊を経済都市マイハーク

 に差し向けた」

 そう、ここまでは良かった。

 

「この時点で日本国がクワトイネ公国に味方し参戦を表明した。我が国を国家とは認めず武装勢

 力と位置づけている様だ」

「無礼な、、、」

 敗戦続きで気が滅入っているのに、まるで挑発されている様で、皆は歯を食いしばり屈辱に耐

 えた。

 

「主力艦隊がマイハークに向かう途中で日本海軍の軍船12隻と衝突、千4百隻が撃沈され、支援

 に向かった竜騎士250騎も全滅した。日本海軍は軍船1隻が大破したがこれは友軍の誤射であり

 わが方の戦果ではない」

 軍幹部達はパタジンがこの場で正式発表したことに愕然とした。

 かつて定かでない戦闘結果報告を聞いて「そんな馬鹿な事があるか」と真に受けていなかった

 が、事実であることを国が認めたのだった。

 

「同海戦に参加した将兵たちは士気を阻喪し、使い物になりそうもないと報告を受けている」

 敵の軍船を一隻でも沈めていたら勝機もあったろうが、自分達では損害を与えられず、一方的

 に撃沈させられたのでは、何をしても無駄ということではないか。

 この戦いはロデニウス大陸史に大敗北として記録されるだろう。

 

「城塞都市エジェイ攻略のため出撃した先遣隊2万は、陣の展開が完了した直後に魔力通信が途

 絶えた。現場には猛烈な爆裂魔法を投射した跡が残っていて、先遣隊は全滅したと思われる。

 ギムに残っていた本隊も日本、クワトイネ、クイラ三国の攻撃により、僅かな生き残りを除い

 て実質的に消滅した」

 会議場は重苦しい空気に包まれる。

 

「パタジン将軍、日本軍はどの様な武器を使用しているのでしょうか?」

 軍幹部が尋ねる。

「海戦では羽ばたかない飛竜や火山弾を広範囲にまき散らす魔法、飛行する目標を正確に打ち貫

 く魔道兵器などが使用されたと記録にある」

 

「羽ばたかない飛竜にはワイバーンが全く歯が立たなかったとある、これは本当なのか?」

「火山弾の魔法を地上で使われたら、酷いことになるぞ」

「飛行する目標を正確に狙い打つことなど出来るはずがない!」

 軍関係者達は議論を続ける。

 

「クワトイネの一部の民達は日本国の事を太陽神の使者の再来だと噂しています。そのため公国

 内の士気は高くなっています」

 日本軍=太陽神の使者という噂は、一ノ瀬提督が国際世論を味方につけようと、意図的に流し

 たプロパガンダである。

 実は真実だったのだが、この時は知らなかった。

 しかも知り合いがその太陽神の使者の一人だと知った時は、知っていたなら言ってくれよとそ

 の人物に文句を言ったのだった。

 

「何が太陽神の使者だ!使者達はヒト種であったはず、ならば我々の味方だろう!」

 王国民の一般的な歴史認識はこうである。

「それが先遣隊副将のアデムがギムの太陽神の神殿を破壊し、巫女を凌辱して殺害したうえ太陽

 神を汚す言葉を吐いたそうです」

 実はこれは実際に行われたことである。出席者からはなんてことしてくれたんだ、と嘆く声が

 聞こえた。

 

 王都北港の港湾管理者が報告をする。

「そのアデムなのですが、王都北の港で見たと報告がありました」

 別人かと思われたが、多数の魔獣をつれ、それらを輸送船に乗せて出港していたことから、本

 人である可能性が高い。

 司令部では特別作戦など命じていないことは分かっている。

「あの野郎、脱走しやがった、、」

 つまりはそういう事なのだ。

 パタジンは怒りに震えた。いつか再会したらその首をねじ切ってやると心に決めた。

 

 会議は続く。

「確証は取れていないのだが、ギムの戦いにおいて空飛ぶ船の様な物が、まるで空が破裂したか

 のような爆音を立てて飛来したのち、白銀の鎧を着た巨人に変形したという証言もある」

 日本に見逃された民間人と、僅かに逃げ延びた軍人がそう証言している。

 

「パタジン将軍、貴公はふざけているのかね?」

 筆頭魔導師ヤミレイが5秒後に激怒しそうな表情を浮かべる。

「それは可変人型兵器かね?それは古の魔法帝国がインフィドラグーンの神龍に対抗するために

 開発していたとっておきの決戦兵器ですぞ」

 ヤミレイ氏は文明圏外の魔導師であるが、歴史の知識は優秀で文明国の学者にも引けを取らな

 い。

「しかし出力と耐久性の両立が難しく、結局開発は間に合わず、魔帝はコア魔法の使用に踏み切

 ったと言われているのですぞ」

「そんな魔帝ですら持っていないものが存在する訳ないでしょう」

 ヤミレイは学者としてそのような荒唐無稽な話の存在を許せなかった。

 パタジンは素直に謝罪した。

 しかしパタジンはある可能性に気づく。

 

「まさか日本国は古の魔法帝国なのでは?」

 パタジンは真っ青になるが、三大将軍の一人ミミネルは否定する。

「魔帝ならば他国と国交を持とうとはいたしません、また伝承では魔帝が現れるとき、昼間は夜

 の様に闇に包まれると伝説にあります。そのような現象は起こっていません」

 

「7か月前に海の方で真夜中が一瞬昼間の様に明るくなったという現象は観測されましたが、魔

 帝とのは不明です」 

 7か月前の出来事は日本国がこの世界に転移した時に見られた現象である。

 日本国=魔帝を半ば信じていたパタジンは赤面しながらも、一方で安心した。

 この話は一旦中断する事になった。

 

 

 パタジンは真っ黒なフードを被った気持ち悪い男に遠慮がちに話しかける。

「パーパルディア皇国の使者殿、貴国の支援があれば助かるのだが」

 世界で五か国しかない列強国たるパーパルディア皇国の軍隊であれば、日本国など敵ではない

 だろう。しかし男は馬鹿にしたように答える。

 

「我が国はこれまでどれだけの支援をしたと思う、これで勝てないような弱い連中は友好国とし

 て我が国には必要ない」

「ぐぬっ」

 使者の余りの無礼な態度に一同は歯ぎしりする。国と国との間でなされるようなやり取りでは

 ないが、両者の国力の差はそれが許されるほど開いている。

 

 その時ヤミレイが使者に問いかけた。

「ならば勝利した実績があれば支援して頂けるのですかな?」

 局地戦でも勝利すれば支援を続けるのかと、ヤミレイは使者に聞いている。

「まあ、勝てれば、考えてやっても良いが」

 ヤミレイは作戦書を取り出した。

 

「蓮の庭園襲撃、及びカナタ首相暗殺計画!?」

 その計画とは魔導師と魔法剣士からなる小数精鋭部隊を“転移魔法”によって敵国首都に送り

 込み、クワトイネ首脳陣を殺害、動揺しているうちに戦力を立て直すという作戦である。

 

 日本国はクワトイネの要請に従って動いているので、クワトイネが混乱していれば満足に動け

 ないと予想される。

 更にクワトイネの某貴族は既に懐柔済みであり、彼らに反乱を起こさせることでさらなる混乱

 呼ぶことが可能である。

 日本国とクワトイネが混乱しているうちにパーパルディア皇国の援軍の到着を待つ、というの

 が今作戦の目的である。

 

「転移魔法だと!」

「古代に失われし超魔法が使える者がおるのか!?」

 会議場は騒然となる。

「はい、我が配下のバッハトマ魔法傭兵団の主宰、ボスヤスフォートが会得しております。お呼

 びしてよろしいか?」

 パタジンは困惑しながら頷く。

 議場の中心に三つの光の人影が浮かび上がり、黒ずくめの三人が現れた。

 

「バッハトマ魔法傭兵団主宰ボスヤスフォート、行動隊長デコース=ワイズメル、副主宰ビュ

 ーティー=ペール、参上しました」

「まさか本当に転移魔法が使えるのか?」

 

「はい、一度行ったところ、もしくは見える範囲であれば自由に行き来出来ます」

 非常に有用な魔法である反面、反逆されたら非常に危険である。パタジン達はボスヤスフォー

 トを恐れた。

「人質として副主宰のペールを置いておきます。ご安心ください」

 

「ボスヤスフォートよ、この作戦が成功したら貴様にロウリア貴族の地位と領地を与えよう」

「は、必ずや成功させて見せましょう」

 そう言うとボスヤスフォートとデコースの体が光の粒子となり消え去った。

 二名はさっそくクワトイネの公都に転移した。

 

 クワトイネ公国に侵入していた工作員の目の前に、突如として黒ずくめの二人が現る。

 事前に通達はあったため、工作員は驚いて一歩下がる程度の狼狽で済んだ。

 この工作員は座標固定のための魔道具を持ち、二人を蓮の庭園に案内する役割を任されていた。

「任務ご苦労」

 

 遅れても一つの人影が現れる。

 まるでマジシャンの助手のような黒いドレスに身を包んだビューティー=ペールである。

「君は何番目だ?」

「五号でございます、ボスヤスフォート様」

 

 ビューティー=ペールの能力であるエイリアスはただの分身ではない。

 それぞれが自我を持ち、独自に思考し行動することが出来る。

 たとえ一体が倒されたとしても、別の惑星という余程の遠距離でなければ、敵の情報を他の個体

 に伝達できる。またペール自身、最強クラスの魔導師である。

 オリジナルである一号は国王の側に付いている。万一王国が裏切れば直ちに処置できる。

 それよりも何か嫌な予感がして五号の彼女は付いてきた。

 

「フロートテンプル襲撃を思い出すな」

 ボスヤスフォートの言葉にデコースは感じている不安を吐露する。

「前回のようにスルーされたらどうする?」

 三人は沈黙する。

 前世で天照帝の空中宮殿を襲撃し、ミラージュ騎士他を多数を殺害し、さらに玉座の間に侵入す

 るという事件を起こしたが、国家の威信などどうでもいいと考える天照帝は

『ふーん天晴れ、天晴れ~』(意訳)

 というコメントを残し無視した。

 

「大丈夫だ!あんな変人は二人もいない、今度こそ大丈夫だ!」

 このことは三人にとってちょっとしたトラウマだった。

 

 

 クワトイネ公都北の港町を三人の女性が周囲を見物しながら歩いていた。

「なんだかテーマパークみたいな町ね」

 白と赤の巫女のような服を着て眼鏡を掛けた戦艦の艦娘、霧島が呟く。

 中世ファンタジーを題材にした遊園地の様な所だと思った。

「ワクワクするな!霧島」

 赤と青のド派手な髪で、体に密着したスーツを着た戦艦の艦娘サウスダコタが笑顔で答える。

「遊びで来たんじゃないのよ」

 銀髪を持ち、ノースリーブのスーツを着た戦艦の艦娘ワシントンがたしなめる。

「いいじゃねえか、私と霧島に敵う奴なんかいねえよ」

「私を外したわね!」

「マイティには別の任務がある、それは私らの飯を作る任務だ!」

「何よそれ!」

 ワシントンの方が日常の生活力が高く、料理も三人の中で一番上手い。

 霧島もワシントンが料理を作ってくれると助かると思っていた。

「ふざけてないで行くわよ、これからこの国の首相と面会するんだから」

「はーい」×2

 三人の艦娘は蓮の庭園に向かった。

 

 クワトイネ救援艦隊本隊の編成

 旗艦 戦艦 霧島

 随伴 戦艦 サウスダコタ ワシントン

    重巡洋艦 摩耶 鳥海

    軽巡洋艦 天龍 龍田

    駆逐艦  暁 天津風 

         綾波 夕立(先行して参戦)

 




 ユーリア・バシュチェンコの元ネタはFSSに登場する戦車部隊の教導官ユーリー・バシュチェン
 コ大尉です。原作では男性です。
「湿地にて救出を待っておられるのは我らが光皇そのひとである。戦車隊、いやAKD軍人として
 その戦い陛下にお見せしろ!」
 このセリフが好きです。
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