どうか生暖かい目で見てください。
2021/10/05 行間を開けて文字を揃えました。
第一話 接触(クワトイネ視点)
クワトイネ公国の竜騎士マールパティマはマイハーク沖北方を哨戒していた。
この先の海には国家は存在しない。しかし、近年緊張が高まる隣国ロウリア王国の海軍が公国最
大の経済都市であるマイハークを攻めてくることは十分に考えられていた。
だからマールパティマは緊張感をもってこの任務に就いていた。
水平線の先に船影らしきものが見えた。
「こちらマールパティマ、船影を確認、数は1」
近づくにつれその船はとても大きいことに気づいた。180メートル以上の全長がある。
その船もこちらに気づいたようだ。チカチカと光をはなった、一瞬攻撃かと思ったが何かの合図
のようだ。
バリスタなどが積んでないから軍船ではないようだ。帆を畳んでいるから敵意はないのだろう。
彼はその船の周りの異常なモノに気付いた。
「ヒトが海面に立っている!?」
その船の周囲にはヒト種の少女が6人、揺れる波の上をすべるように進んでいた。
背中に背負子のようなものを背負い、手には金属の筒が出ている箱を持っている。
そのうちの一人、橙色の髪の毛を頭の両側二つに束ねた少女が笑顔で手を振っていた。
「ここはクワトイネ公国の領海です。貴船の目的を教えてください。」
船の甲板に降りると紺色の奇妙な服を着て眼鏡をかけた男が出て対応した。
「我々は日本国、ぜひとも貴国と国交を持ちたいと思っています。」
マールパティマは魔力通信を使って海軍本部に連絡をした。
「未確認船の所属は日本、目的は外交交渉。外交官が乗っている。」
「了解、公都の港に誘導してくれ。」
「彼らは今日の夕方に着くといっている」
「は?」
管制官が驚くのも無理もない、一般的な帆船では二日はかかる距離だからだ。
公都クワトイネの北にある港には巨大な船、それも鉄製の、が停泊していた。
「まさか本当に夕方に着くとは、巨大なのに何と速い船だ。」
たくさんの野次馬が岸壁に集まって見物している。
幾人かは後ろから押され、海に転落してまった。
落ちた人の救助を海面を滑って進む少女たちが手伝っていた。
「本当に海面にヒトが立っているぞ。」
「彼女らは兵士なのか?あのような若い少女を危険な目に合わせるとは、」
鉄船の護衛をしていると思われるのはいずれも年端もいかない少女たちであった。
しかもかなり可愛い。
クワトイネ海軍の軍人たちは最初この国にいい印象を持たなかった。
「シーサーペントだ!」
突如、巨大な海蛇が海中から飛び出し、水上にいた少女に襲い掛かった。
「危ない!」
ドン!
大きな音がしたと思ったら一撃でシーサーペントの頭が粉々に砕け散った。
「一撃でシーサーペントを倒す爆裂魔法だと?」
シーサーペント討伐は文明国の海軍であっても多大な犠牲を払わなければいけない。
それをたった一人、たった一発で成し遂げたのだ。
人々が称賛の声を上げる中、新たな脅威が迫っていた。
ソナーで周囲を警戒していた曙から通信が入る。
「陽炎、ソナーに感、まだいるわ」
「オッケー、数は?」
「さっきの海蛇よりも大きい物体が1」
「この世界にも潜水艦があるのかな?」
「それは分からないけど、この形はうーん、亀?」
「カメェ?」
海底から巨大な生物が姿を現した。顔は獅子のようでありドラゴンのようでもある。
体は巨大な亀の姿をしている。
「タラスクだ!」
「もう駄目だ、逃げろ!」
タラスク、それは伝説で語られる恐ろしき邪龍である。
神の加護を受けた勇者であっても苦戦は免れないSランクの魔物
かつてとある悪の帝国に使役されこの世界の人々を恐怖のどん底に叩き込んだ怪物である。
それに遭遇すれば万が一にも助かる見込みはない。
もし沿岸の都市を襲われたら放棄するしかない。
「こいつは危険ね、第14駆逐隊、戦闘用意!」
陽炎、霰、曙、潮、皐月、長月、6人の駆逐艦娘は勇敢にも邪龍に立ち向かう。
「まさか戦う気か?やめろ!逃げるんだ!」
クワトイネ海軍の軍人が艦娘たちに向かって叫ぶ。
「大丈夫です、任せてください。それよりも民間人の避難を!」
嚮導艦である陽炎は駆逐隊各員に指示を飛ばす。
「長月、皐月は民間船舶の護衛、目標を近づけさせないで」
「了解!」
「まっかせてよ」
「曙、潮は牽制射撃、頭を上げさせないで」
「楽勝よ、私を誰だと思っているの」
「分かりましたやってみます」
「霰は私と一緒に雷撃準備、左側からぶち込むわよ」
「了、解、、」
第14駆逐隊は異世界での戦いを開始した。
「さあてやりますか、いっけー!」
タラスクが口を開ける、なんらかの攻撃と思われる。
「させるか!」
タラスクの頭部に砲撃が命中する。
ギャウウン!
シーサーペントと違い致命傷になっていない。が、鱗や角などがはじけ飛んだ。
キッシャアー!
タラスクは砲撃に耐え、口から高圧の水流を噴出した。
「きゃああ!」
タラスクの水流は潮に命中した。潮の後ろにはクワトイネの民間船がおり、回避出来なかった。
潮は水流に押され、尻もちをついた。転覆するかと思ったが立ち上がった。
「潮!大丈夫?被害報告して!」
潮は体を見渡していった。
「大丈夫です。被害なし、濡れただけです」
「タラスクのアクアブレスを食らって無傷!?」
この戦いを見ていたクワトイネ公国海軍のミドリ船長は驚愕した。
タラスクのこの攻撃はクワトイネを含む文明圏外国で使われる木造軍船のみならず、文明圏内国
の戦列艦を一撃で轟沈させる。
この攻撃に耐えることが出来るのは、列強が最近開発に成功したと噂される装甲戦列艦だけであ
ろう。
それ以前に生身の人間がアクアブレスを食らえば死体も残らないはずだ。
「まさか彼女らは全員大魔導士級なのか?」
大魔導士といえどたった一人でアクアブレスを防ぎきる防御結界を張るのは不可能に近い。
ミドリ船長は訳が分からず混乱していた。
そうこうしていると日本国使節団の男から魔力通信が入った。
「彼女らは大丈夫です。彼女らは人間でもあり艦艇でもあるのです。援護は不要です」
なんだそれは訳が分からない。そう返事すると日本の男からこのように返ってきた。
「彼女らは艦娘、在りし日の戦船の魂を宿す、人類の守護者です!」
「よくも潮をやったわね、あの胸部の衝撃吸収装甲がなかったら危なかったわ」
「陽炎さんセクハラです」
このご時世コンプライアンスに厳しくなったのだ。
「ごめん、晩御飯のおかず一個あげるから許して」
「許します」
駆逐艦同士なのでおかず一個で済むがこれが提督もしくは某戦艦が相手だと砲雷撃戦に発展す
るだろう。
長月と皐月も砲撃を開始した。
長月の砲撃は見事タラスクの口腔に命中し、太く鋭い牙が割れて砕けた。
ギャアアアン!
堪らず海中に潜り、逃走を図るタラスク。
「逃がさないよ!」
皐月はタラスクの潜った辺りに爆雷を多数投射した。
すぐに大きな水柱が立ち周囲の人々は驚く。
そして息も絶え絶えなタラスクが浮かび揚がってきた。
「止めよ!酸素魚雷一番二番発射!」
「魚雷、発射」
陽炎と霰の放った4本の酸素魚雷はタラスクの左脇腹に突き刺さり大爆発した。
その爆発は強固であったはずのタラスクの甲羅を粉々に粉砕し、その巨体を跡形もなく消し去っ
た。
陽炎が思い出したように呟いた。
「あ、あの亀食べられるのかどうか聞くの忘れた」
ちなみに古の勇者タ・ロウとケンシーバによるとタラスクの肉の味は
「獣人の顎でも嚙み切れないほど固い。さらにオッスオラ亀という自己主張の強い臭いが鼻腔一杯
に広がる」
「食べて後悔した魔物10選に入る」
とのこと。
ミドリ船長は恐れ慄いた。あの恐ろしいタラスクが跡形もなく消し飛んだのである。
それほどの威力のある爆裂魔法はたとえ大魔導師が百人いても作れないだろう。
もし、いま日本国がクワトイネ公国に襲い掛かったら確実に敗北する。
ミドリは祖国が日本国とは絶対に敵対しないよう心の中で祈った。
陽炎は引きつづきソナーで周囲を警戒していた曙にもう脅威となる存在はいないのか尋ねた。
「湾内の一角に不自然に大型魚が集まっている箇所があるわ」
「そう、後でクワトイネ側に報告しておきましょう」
そんな会話をしていると陽炎は曙が何か後悔しているような表情をしていることに気づいた。
「釣り竿持ってくれば良かった、、」
そののつぶやきを聞いた陽炎は思わず吹き出し、大声で笑った。
曙は秋刀魚漁をきっかけに釣りにはまった。大潮や村雨、ベールヌイとともに釣り同好会を結
成するほどに夢中になっていたのだ。
隣国ロウリアと緊張が高まり、少しでも味方が欲しいクワトイネは日本という国が国交を求め
てきたのでカナタ首相自ら会談することとした。
日本国は外交官の田中ほか2人、そして護衛の少女が一人同行した。
「陽炎型駆逐艦一番艦、陽炎と申します。よろしくお願いします。」
「カゲローガタクチクカンイチバンカン・カゲロー?」
「陽炎でいいです。」
「あなたがタラスクを倒したのですか?」
「ご迷惑でしたでしょうか?」
「いえいえ、そんなことはありません。」
「よかったぁ。」
安堵した陽炎の肩に小さな二頭身の人影が現れた。栗色の髪をした可愛らしい女の子だ。
「うわああああああああ!妖精だあー!!」
「えええ?!なんでファンタジー世界の人に驚かれるの?」
「異世界から国ごと転移してきた、ですと?」
転移後周辺海域に哨戒機を飛ばし、この国を発見したため挨拶にきたという。
合わせて無断で領空侵犯したことを謝罪された。
哨戒騎が来たことすら察知できなかった軍部は顔を青くした。
「信じられないのも無理ありません。我々も元の世界でそのようなことを言い出す人間がいたら
相手にしなかったでしょう。」
「ですが原因は不明ですが現実として起こってしまったのです。」
「ですので貴国に使節を派遣していただいて、その目でみて確かめていただきたいのです。」
「国ごと転移だと?信じられるものか、追い返してしまえ」
「ロウリアと戦争になるかもしれないのに更に敵を増やすおつもりですか?」
「日本は大型で高速の船を作る技術と強力な爆裂魔法を使う魔導士を持つ、味方にするべきだ。」
「彼らは礼儀正しい、信用してもいいと思う」
「妖精を連れているということは彼女らは悪人ではない。」
反対意見が多数出たが最終的にカナタ首相は日本に使節団を派遣することを決めた。
「日本国は我が国に何を求めているのでしょうか。」
「まずは食糧、そして資源、特に石油です。」
「ほほほ、ならば貴国は運がいい、我が国は緑の神の祝福を受けた土地、特に手入れをしなくとも
農産物が大量に採れるのです。」
これには日本国側が色めき立った。さらに石油というものがどういうものか説明を聞くと、
「その石油というのは隣のクイラ王国の燃える水に似ていますね。」
「なんですと?」
「クイラ王国はその燃える水がそこかしこから噴き出し、農業に適した土地が少ないのです。」
「よろしければ国交開設の仲介しますが、」
「ぜひ、お願いします!」
陽炎抜錨します。では妖精は登場していませんが拙作では登場させようと思います。
艦娘と妖精の絡みは可愛い、と思うからです。
ある時からから出てきた、ということにしてください。
また、一航戦、鶴翼、瑞の空などほかのノベライズともクロスオーバーしたいと思います。
タラスクの肉についての食レポは岡本健太郎氏の山賊ダイアリー、リアル漁師奮闘記(講談社)
のミシシッピアカミミガメを食べたエピソードから引用しました。