新世界の海に陽炎、抜錨します!   作:yutarou

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タイトルの陽炎の後に句点を入れ忘れていました。
原作者様、原作ファンの皆様ごめんなさい。
タグを追加しました。



第三話 日本国を視察しよう

 クワトイネ公国外務部外交官ヤゴウは日本視察団の一人に選ばれた。

 

 この世界は群雄割拠、新たな国が生まれたり滅んだりは日常茶飯事なので彼が新興国に視察に行

 

 くことは何度もあった。

 

 ただ、クワトイネ公国は文明圏外国家としては文化的に上位にいるので派遣先の国家は母国より

 

 も衛生的でなかったり、治安が悪かったりするので外交官が病気になったり犯罪に巻き込まれた

 

 りして死亡することも少なくない。

 

 なので新興国への使節団は外務部の業務のなかでは人気がない。

 

 ただ今回日本国への訪問は楽しみにしている。

 

 180メートルもの巨大な鉄船を建造する技術をもち、海邪竜タラスクを倒す魔導士を擁する軍隊

 

 を持つことから文明度は相当高い、と彼は見ている。

 

 しかもその魔導士は6人全員可愛い女の子だった。ヤゴウの好みは黒髪ロングで胸の大きな子で

 

 ある。エルフの女子はスレンダーな体型ばかりなのでおっぱいの大きな女性に惹かれるエルフ男

 

 子は多い。

 

 

 同じく日本国視察団に選ばれたハンキは憂鬱だった。彼は軍部からの出向で、日本国の軍事力を

 

 詳しく調査することを目的としていた。

 

 軍で鍛えた彼の肉体をもってしても長期の船旅はつらく苦しい。

 

 薄暗くじめじめした船室。塩辛く硬い保存食、ならまだましで蛆が湧いたビスケットを齧ること

 

 すらある。水は貴重なので使用が制限される、体を拭くこともできず病気になったりする。

 

 ハンキは陸軍軍人だが海軍軍人の精神力は凄いと思う。勿論陸軍も負けてないと思っている。

 

 日本国の軍隊はあの6人しか知らないがいったいどのようなものだろうか。ちなみにハンキは金

 

 髪で自分のことをボクと呼ぶ子が好みだ。

 

 

 日本国外務省からから日本国視察のスケジュール届いたので、使節団一行は公国外務局で説明さ

 

 れた。

 

「まず日本が用意した客船で出発、2日後福岡港に到着」

 

 使節団の頭に疑問府が浮かぶ、一千キロは2日で到着する距離ではない。

 

「初日は日本国の基本的法律、とくに道路交通法を学んで頂くことになります」

 

 なんでも日本国では外を勝手に動き回ると自動車というものに踏みつぶされるのだそうだ。

 

「その後シンカンセンという交通システムで日本国の実質的首都東京に向かいます」

 

 ここもおかしい、聞けば福岡と東京は一千キロ離れているのに朝でて昼に着くというではない

 

 か。日本国とクワトイネ公国との間で何らかの連絡ミスがあったに違いない。

 

 

「おはようございます!いい朝ですね!」

 

 視察当日、朝からハイテンションの田中外交官が挨拶した。

 

「使節団の皆さま本日は私が案内を務めさせていただきます。まずは短艇で沖合の船に乗船して

 

 頂きます。」

 

 沖を見ると巨大な船が見えた。マイハーク港は水深が浅いため使節団を乗せるための船が直接

 

 接岸できなかったので小さなボートで沖合の船まで行くという。

 

 そのボートが帆もオールもないのに恐ろしく速い。

 

 

 沖の船に乗り込むと絶世の美女としか形容しようがない女性が出迎えた。

 

「クワトイネ公国使節団の皆様初めまして、練習巡洋艦鹿島にようこそ、私は艦娘の鹿島です。

 

 艦長のようなものと思ってください。この度皆様を日本までお送りする大役を務めさせ頂くこ

 

 とになり、恐悦至極に御座います。うふふ」

 

 使節団の男どもは鹿島の美しさに魂を抜かれかけたがある疑問が浮かんだ。

 

「おっふ、あの失礼ですが艦名と貴女のお名前が同じなのですが貴国の風習か何かなのですか?」

 

「そのことについては後程我が国の軍の歴史と合わせて説明されると思います」

 

 この鹿島は軍艦でありながら外交の場になれるよう余裕のある設計となっている。

 

 鹿島の周囲を110メートル前後の鉄船が6隻護衛している。それぞれの甲板には陽炎たちがいて

 

 手を振っていた。

 

 

 船旅は快適そのものだった。

 

 艦内は光魔法のようなもので明るく照らされ、一定の温度が保たれている。

 

 蛇口という道具をひねればそのまま飲める水が出てくる。そのうえ温かいお湯まで出せる。

 

 食事は王宮の晩餐会で出されてもよいのではないかというほど美味であった。

 

 船旅をあれほど嫌がっていたハンキ殿は艦内のバーでカクテルなる酒を上機嫌で飲んでいる。

 

 

 

 二日後、鹿島は福岡港に到着した。

 

 そこで使節団一行は度肝を抜かれた。

 

 石の様に見えるが石ではない白い建材で出来た港。

 

 遠目に見えた天高くそびえる建築物。

 

 鉄で出来た巨大な橋。

 

 道路には馬が引いていないにもかかわらず快速で動く荷車。

 

 そして空を飛ぶワイバーンよりも大きく速い鉄竜。

 

 噂に聞いた神聖ミリシアル帝国のような、いやそれ以上の発展ぶりであった。

 

 

 初日はホテルの中でおもに交通ルールを教えられた。

 

 日本国では馬なし荷車は自動車と呼ばれ、国民のほとんどが所有しているという。多数ある自動

 

 車を効率的に動かすにはこういったルールが必要なのだと感心した。

 

 鹿島の艦内にもあった水道、照明、エアコンなど、便利な魔道具のようなものの使い方も教えて

 

 もらった。使節団の皆、是非ともこれらを輸入してもらいたいと思った。

 

 

 日本のことで驚くべきことが分かった。日本人は魔法が使えないのだ。

 

 たまたま交通事故に遭遇したヤゴウが被害者の女性に治癒魔法を掛けたら、田中氏や周りの日本

 

 人達が仰天した。日本人とって魔法とはおとぎ話や創作物の中だけの存在だったのだ。

 

 では艦娘たちは?彼女らからは確かに魔力を感じるのだが。そう疑問をぶつけると艦娘に使われ

 

 ている技術は彼らも良く分かってないそうなのだ。

 

 あと、艦娘は治癒魔法は使えないという。ならば治癒魔法はクワトイネ公国の有力な輸出品にな

 

 るのではないだろうか。

 

 

「日本国の軍隊を見学することは可能じゃろうか」

 

 ハンキは田中外交官に尋ねた。

 

「ちょうど鹿屋基地にて航空祭がありますのでそちらでしたらできると思います」

 

 

 鹿屋基地

 

 まずは現時点での主力戦闘機烈風一一型の飛行が披露された。時速695キロものスピードを誇

 

 り、機動力もまた素晴らしい。

 

「これではワイバーンどころか改良種でも歯が立たんぞ」

 

 烈風一一の性能に驚いていると新たなアナウンスがあった。

 

「それでは皆様、新設航空自衛隊の主力戦闘機F-15J改の登場です」

 

 次に出てきた戦闘機はなんと音速を超えて飛行できるのだ。そのあまりの性能にハンキとヤゴウ

 

 はあっけにとられた。烈風もすごいがF-15はいきなり技術が飛躍しすぎだろう。

 

 

 

「わが日本国には現在二つの軍隊にあたる組織があります。通常兵器を運用する自衛隊と艦娘が所

 

 属する日本海軍です」

 

「それを説明するためにまず我が国の歴史をご説明します」

 

 日本国の創世神話、仏教の伝来、遣唐使、貴族社会と武士の誕生、二度にわたる元寇、戦国時代

 

 安定した江戸時代、黒船と明治維新、二度の世界大戦がスライドという機械で説明された。

 

「あれは護衛していた軍艦ではないか?」

 

 映像の中に見覚えのある軍艦が出てきたのでハンキは不思議に思った。この映像は70年ほど前の

 

 ものだという。70年も同じ軍艦を使い続けているのはなぜだろうか。

 

「それは私たち艦娘がかつてあった軍艦の魂を宿した存在だからです」

 

 鹿島、そして陽炎たちはある人類の敵に対抗するため軍艦の魂を宿した兵器なのだそうだ。

 

 

 ハンキたちは信じられないといった表情をうかべたがひとまず続きを聞くことにした。

 

 第二次世界大戦の凄惨な戦いが映し出された。温厚だと思っていた日本人にもいざとなったら死

 

 を恐れず戦う一面があることを知った。

 

 広島長崎への原爆投下を見たときは古の魔法帝国のコア魔法ではないかと恐怖した。

 

 無条件降伏後、急速に復興する様子を見て日本人の底力を見た。そしてミリシアルもかくやとい

 

 うほど発展した大都市。二度目の大戦のあと地球の技術力は飛躍的に発展した。

 

 音速を超える戦闘機。150キロ離れた目標を正確に打ち抜く誘導弾。大空のさらに上、宇宙から

 

 地上を監視する人工衛星。

 

 神話にある古の魔法帝国に匹敵する兵器が登場し、日本国があった地球は魔境だったのだと理解

 

 した。

 

「このころ地球人類の文明は絶頂を迎えていたと言えます。しかしそれらはある物たちの登場によ

 

 って滅亡の危機を迎えます」

 

 ハンキたちにはこれ程の文明を滅ぼしかける存在など想像できなかった。

 

「これです」

 

 

 それは

 

 死と

 

 破壊と

 

 絶望だった。

 

「これが人類の敵、"深海棲艦"です。」

 

「それまでの兵器が全く通用しない敵によってかつてあった人類の戦力は壊滅、多くの人命が失わ

 

 れました」

 

「艦娘という深海棲艦に唯一対抗できる兵器の登場により人類はかろうじて命脈を保ったのです。

 

 彼女らの奮戦によって少しずつ海域を奪還していきました。そして先般、深海棲艦の女王個体を

 

 倒し長きに亘った戦争に勝利したのです」

 

 

 ハンキたちは震え上がったまま鹿島の説明を聞いていた。ロデニウス大陸に出没する魔物や近海

 

 にいる海魔とは比べ物にならない。魔力が伝わらない映像を通していても分かる格の違う存在、

 

 恐怖しかない。

 

 そしてそれらと戦うことを宿命づけられた艦娘たちの運命に涙か止まらなかった。

 

 

 新幹線という大蛇のような移動機械にのって東京に向かう。地上を走る乗り物がワイバーンより

 

 速い時速300キロで走行すると聞かされてももはや驚かなかった。日本なら何でもできるのでは

 

 ないかと思った。新幹線の中は快適そのもの高速で動いているのに全く振動がない。それという

 

 のも振動を抑える装置を組み込んでいるので中は全く揺れないし、開業以来脱線事故を起こして

 

 いないのだそうだ。

 

 

 東京は福岡以上の大都会だった。これ以上驚くことはない、と思っていた使節団は無理くり驚か

 

 された。地上634メートルの鉄塔。空中を走る高速道路。ガラス張りの高層ビル。ここは現実な

 

 のか?夢でも見ているのではないか。使節団の皆が頬を抓って確かめていた。

 

「ハンキ殿!抓るのは自分の頬にしてください!」

 

 

 東京に着いた使節団を内閣総理武田が出迎えた。

 

 そして東京の高級料亭で日本、クワトイネの国交開設に向けた協議が始まった。

 

「日本は食糧を求めています。必要としているのは年間5000万t、もちろん貴国一国のみで賄う

 

 つもりはありません」

 

「コーヒー豆などいくつか分からない品目は有りますが、賄えますよ5000万t」

 

「えええ?!」

 

 クワトイネは緑の神の祝福を受けた土地、種を植えれば特に何もしなくても作物が取れる。

 

 害虫や病気など全くつかず、一年に複数回収穫でき、あまつさえ成る実も多い。

 

 まさに農業チート、国全体が〇樹の村なのである。

 

「反則じゃないか」

 

 

「ですが問題もあります。私たちにはこれ程の量の物資を輸送する術がありません」

 

「であれば我々がインフラを輸出しましょう」

 

 日本国がクワトイネに鉄道の敷設、港湾施設の整備、発電所の建設などを請け負うことなった。

 

 クワトイネはこれまで余って家畜に食わせていた食料を輸出し国の発展させることができる。

 

 日本国は懸案だった食糧問題が一気に解決する。

 

 両国にとってこれ以上ない合意を得た。ただ一つを除いて、

 

「やはり武器の輸出はできませんか」

 

「申し訳ございません、新世界技術流出防止法により武器の輸出はできません」

 

 

 外交官田中の私的記録より、

 

 今日は日本国の歴史に残る会談であった。日本が抱えていた問題が一挙に解決できた。

 

 転移してすぐ農業チート国家クワトイネ公国と資源チート国家クイラ王国と国交を開設できたこ

 

 とは誠に幸運としか言いようがない。考え過ぎかもしれないが、まるで何者かの作意があるかの

 

 ようだ。このまま何事もなければ良いと思う。




日本国との通商で発展するクワトイネ公国、しかし隣国ロウリア王国が不穏な動きを見せる。そして意外な強敵がロウリアに味方していた。
次回 第四話 異世界転移して初めてのクエストで野生のラスボスと遭遇した件

拙作でも艦娘はアルペジオ方式の形態が在ります。
ただし、この形態で攻撃しても深海棲艦にはダメージを与えることが出来ません。なので艦娘たちはこの形態を輸送モードもしくは観艦式モードと呼んでます。
キリ番報酬でbarracuda MkⅡを貰いました。

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