完全にまぐれで意図していないので気にしない方向でお願いします。
とある休日の昼下がり、白石さんから連絡を受け、WEEKEND GAREGEを訪れていた。
いつもこの時期なると大体呼ばれるのだ。多分今回も同じ内容だろう。
着くやいなや白石さんに席に案内される。そこには呆れ顔の青柳、渋い顔の東雲、困惑顔の小豆沢さんがテーブルに置かれた教科書やノートなどの教材に向いていた。
成る程、テスト勉強か。やっぱりじゃないか。
「んで、どうして僕はここに呼ばれたの?」
「「助けてください(くれ)。」」
「要するにいつものね。」
こういう時だけこの2人は素直になって助けを求める。
テスト前に白石さんと東雲に対して青柳と共に勉強を教えるのは最早恒例と化していた。今までと微妙に異なるのは、ここに小豆沢さんがいるという事。
「小豆沢さんは青柳側?」
「えっと、た、多分。」
「それはよかった。僕の担当する箇所が減るからね。じゃあ2人とも今度ゴチになるから、どこがダメか教えて。」
「いつもすまないな透野。本来なら俺らがするべき事なのだが……」
「いつも言ってるけど青柳は悪く無いよ。毎回勉強しろとテストのたびに言ってるのに改善する兆しすら見せないこの子達が悪い。」
いつもならこんな言葉を言われれば即座に反論する2人だが、立場が立場なので「うぐっ」と呻きながらバツが悪い顔を浮かべるだけだった。
「えーっと、東雲が数学、白石さんが英語ね。
……………え、ここから全部わからないって事?」
「「……はい。」」
「…………覚悟は?」
「「………出来てる。」」
それじゃあ地獄のテスト対策を始めよう。
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透野くんが物凄い勢いと迫力で2人の苦手部分を丁寧に捌いていくことを、私と青柳くんはただ眺めてるだけだった。
「青柳くん、私たちっているかな?」
「最初はそう思うかもしれないが、透野は大枠となる基礎部分をわかりやすく教えている最中だ。応用になってくると俺らも必要になってくるから用意はしておいた方がいいぞ。」
「わ、わかった。そういえば、透野くんはどのくらい成績いいの?」
「あぁ、学年一桁には入るぞ。」
「えっ…!?」
「両親から学年一桁を維持する事を条件に歌い手としての活動を許可されたそうだ。具体的に何位なのかを聞いたことはないが、少なくとも俺よりは確実に成績は良いぞ。」
「そ、そうなんだ……。」
凄い人なんだなぁと改めて思う。確かバイトもしてるって言っていたし、一体どれ程の努力をしているんだろう。
「青柳、使う?」
透野くんが私たちの方を向いてノートを手渡してきた。2人は今練習問題を解いている様で、少し唸ってる。………がんばれ!
「ああ、助かる。可能だったら他の教科も見ていいか?」
「いいよ。そういうと思って全教科持ってきたし。好きに使って。あ、小豆沢さんも良かったらどうぞ。あんまり綺麗な字じゃないけど。」
そう言って2人の元に透野くんは戻っていった。
あ、怒られてる……。どこか間違えてたのかな?
「青柳くん、それは?」
「透野が要点を纏めたノートだ。俺も同じ様なことはしているが、透野はより細かく纏めているから参考になるんだ。見てみるか?」
「え、そ、それじゃあ」
青柳くんからノートを受け取るとそこには綺麗に纏められた文字が規則正しく書かれていた。要点は詰まっているが決して見辛くなく、最低限の色ペンで重要な箇所を強調させて後から誰が見ても分かりやすい様になっている。……あ、ここ丁度行き詰まってたところだ。ふむふむ、そんなコツが……ここだけ写していいかな?
「あ、あの、透野くん!」
「…ん?どうしたの?」
「こ、これ写させてもらっていいかな?」
「いいよ。さっきも言った様に好きに使って。なんなら持ち帰っても良いし。」
「え、いいの!?」
「うん。大体覚えてるし。」
ナチュラルにハイスペックなこと言ってるよ……
「ふむ、まぁ及第点かな。それじゃ応用に移ろうか。」
「ま、待って…きゅ、休憩させて……。」
「………………。」
こ、こんなにも消耗してる杏ちゃん初めて見た。東雲くんも無言だけど凄くやつれてる……。
「…………まぁ基礎部分は終わったしいいか。」
「いやったぁぁ!!」
「………ヨシ!」
心の底から喜んでる……。一体今までどんな内容の勉強を……。
「青柳、ここからここ、あと付箋貼ったとこを重点的に教えといて。多分テストに出る。」
「わかった。む、ここもか?」
「天馬先輩から過去問貰って、あの先生なら高確率で出す。」
「成る程、司先輩が言うのなら間違い無いな。」
「うーん、相変わらずの妄信具合だことで。」
青柳くんによろしく、と言うと透野くんは私の方を向きノートと教科書を出した。
「小豆沢さん、ここからここの範囲はもうやった?」
「え、えっと、うん、もう終わってて丁度私もテスト範囲だったから勉強してたよ。」
「それは良かった。じゃあこの囲ってあるところを白石さんにお願いできる?ここさえ押さえとけば多分大丈夫だと思うからさ。」
「うん、わかった!頑張るよ!」
そう言って透野くんから英語の教材を受け取る。説明する時に活用できる様に先程見せてもらったページを開く。数学のノートも凄まじかったけど、こっちも凄い。英文は綺麗に揃えられて、文法の注意事項、見分け方、重要となる単語、全てが一文一文丁寧に纏められていて思わず息を呑むほどだった。
「透野くん、ノートの纏め方本当に上手だね。」
「ありがとう。半分趣味みたいなものなんだよね。やってるうちに楽しくなってくるし、その分復習にもなるし。」
「勉強を趣味とかあたしわかんない。」
会話に杏ちゃんが混ざる。両手にはカフェオレを持っていて、私と透野くんに持ってきてくれたみたいだ。
「まぁ白石さんにはそうだろうね。興味ない事にはとことん無関心だし。」
「よくわかってるじゃん!」
「褒められたことではないけどね。」
「うぐっ!」
こうしてみると2人は本当に距離が近い。
まだ知り合って間もないけど、東雲くんと青柳くんには一歩引いているけど、杏ちゃんにはその距離がなくて、本当に気が置けない仲という感じがする。
実際、杏ちゃんと話す時に透野くんはよく軽口を交わすけれど、杏ちゃん以外とは交わさない。
2人は一体いつから……
「だって大人になったら別に使わないじゃん!」
「英語の歌詞」
「少ししか使わないじゃん!」
「ブレブレじゃん」
……これ軽口を交わしてるんじゃなくて、軽口を杏ちゃんが一方的に受けてるだけな気がする。
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「「お、終わった……」」
テスト範囲を無事に教え終えると2人はグタァとテーブルに倒れ込む。
「テストまで復習しとくんだよ?」
「善処する」
「できたらねー」
「頼むから確約してくれない?」
これまでもこの調子でなんとかなってきてはいるものの、学年が上がるにつれテストの難易度も比例して上昇する。まだ高1とは言え今のうちにやっとかないと後で後悔することになるのこの2人はわかってるのか?……分かってないんじゃなくて目を逸らしてるんだろうなぁ
「というか今更ではあるんだけど、謙さんは?今日ここが休みであるのは看板見て分かったんだけど」
「学生時代の友達と会ってくるんだって。その友達と一緒に歌ってたりするんじゃない?」
「そっか」
仲間かぁ……
「まーた
「あぁ、ごめん」
「…………。」
ここで追及してこないのは彼女なりの気遣いであり、優しさだろう。
白石さんは僕が今の活動を始めた理由を知っている数少ない人だ。
だから僕が欲しがっているものも当然……
「ヨシ!今日はここまでにしよっか!冬弥もこはねもシンもホントにありがとね!」
「オイ、オレにはないのかよ」
「あんたはあたしと同じで感謝する側の人間でしょ!」
「……まぁな。……あんがとな」
東雲のややツンデレを含んだお礼を持って勉強会は終わり、みんなそれぞれの家へと帰っていった。
僕を除いて。
「それで、呼び止めたってことはさっきの続き?」
「うん、そう。」
彼女の目はいつになく真剣だった。
「ねぇシン」
「なに?」
「あたしたちは仲間じゃないの?」
知り合って数年、触れてこなかったことに、踏み込んでこなかった領域に彼女は飛び込んで来た。
「テスト前という重要な時期にその話をするの?」
「はぐらかさないで。……何時でもよかったけど、今度
つまりはその日が今日だったということか。
「仲間ってさ、どういう間柄を指すのかな」
「……?」
「僕はさ、仲間っていうのは同じ目標を持った人達が切磋琢磨しあいながら向かっていく、そんな関係だと思ってるんだよね。丁度君達、ビビバスみたいなさ。」
「…………。」
白石さんは無言で僕の話を聞いている。特に意見は無い様だ。
「それってさ、僕と君達には当てはまらないよね。」
「……どうして?」
「僕は別に君達みたいに伝説を超えたいって訳じゃない。ただ歌いたいから歌ってるだけであって、明確な目標なんて無い。」
一緒に何かを成し遂げようなんて、微塵も思っちゃいない。
「共通の目標は僕と君たちには無くて、君個人に対しても共通する目標なんて無い。それは仲間とは呼べない。」
「…………。」
白石さんの表情は変わらない。
「さっきの質問に答えるなら、僕と君達は仲間じゃ無い。」
「それが、シンの考え?」
白石さんはやや俯いて僕に問う。
「うん。」
間髪いれずに答える。表情は読み取れない。
「じゃああたし達は仲間だよ。」
………何を言っているんだ?
彼女は──白石さんは顔を上げる。
──笑顔だった。
「どうしてそうなるの?」
「……動画をシンが上げてるから。」
「……?」
「ねぇ、シンが動画を上げてる理由って何?」
「え、そりゃ、人前で歌えないから」
どうして今更そんなわかりきった事を…
「人前で歌えないからって、動画を上げる理由にはならないでしょ?歌うだけなら自分の家や1人でカラオケとかに行けば存分に歌えるじゃん。」
「それは……まぁ」
…………………………。
「シンが動画を上げてる理由はさ……」
……………………………………。
「誰かに自分の歌を聴いてほしいからでしょ?」
……………………………………………。
「歌を通じて自分という存在が居ることを知って欲しかったんだよね?」
…………………………………………………。
「……そこだよ。」
「『多くの人に自分の歌を聴いて欲しい』それがあたしとシンの共通の目標。」
…………ああ
「シンは仲間なんて居ないって昔あたしに言った。」
……………そうか
「居るよ。ここに。仲間は。」
………………見ようとしなかっただけだったんだ。
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「………。」
「…………気不味いんだけど」
「奇遇だね。僕もだよ。」
「あたしらなんか凄い恥ずかしいやり取りしてなかった?」
「なんか妙にシリアスだったね」
「なんであんな感じになったんだろ」
「わかんない」
2人でクスクスと笑い合う。
「ありがとう白石さん。」
「何が?」
「一人じゃないって言ってくれて」
「言ってないけど!?いや伝えたかったことはそうだけど、それ言っちゃう!?」
狼狽える白石さん。思わず笑ってしまう。
ヌガーッと憤慨する白石さんを落ち着かせて会話は続く。
「あたしさ、シンのことずっと仲間だと思ってたんだ。」
「うん。」
少し寂しそうな顔だった
「あたしは一方的にシンに負けたくないって思ってて、ライバルでもあって歌を歌う仲間だと思ってた。」
「うん。」
「でも、シンから仲間が居ないって言われて、彰人や冬弥を見てたら仲間ってなんなのかわかんなくなっちゃった。」
「………うん。」
一拍置いて白石さんは続ける。
「でも、こはねと出会って、彰人や冬弥とユニットを組んでやっと分かった。」
「……それは?」
「あたしが仲間と思ったらその人はあたしの仲間ってこと。」
「……白石さんらしいね」
「でしょ?……仲間の定義なんてその人によるけど少なくともあたしの定義はこれ!だから、シンもあたしの仲間。否定なんかさせないからね?」
「今更しないよ。」
もう十分気付かさせてもらったし。
「ところでシン、あたしと彰人がシンに対する目標があるんだけど、何か分かる?」
「そんなのあったの?……え、まさかテスト勉強の仕返し?」
「んな訳ないでしょ!あれはあたしも彰人も感謝してるんだから!そうじゃなくて、」
白石さんはハッキリと僕に言った。
「絶対に同じ舞台でシンにビビバスとして勝つ事!」
共に描きたいミライを。
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「………あ」
ただただ空虚な白が広がるセカイの変化に少女は頬を緩ませる。
「綺麗な水色」
登場人物紹介3
小豆沢こはね
基本プロフィールは本家参照
シンとは知り合って間も無い為、深い関係性はない。けれど杏と仲が良い所を見ている為悪感情は抱いていない。シンの歌や問題を知って以降、友人としての関係性を深めたいと思っている。
主人公との関係がゼロから始まっている為、客観的に主人公と周囲の関係性を見れるので語り部として動かしやすい。全員が全員知っているよりも1人が知らない事で話が発展させやすいのでこのポジション。
変化
セカイの一部に色が確認されました。
シンの考え方に変化が確認されました。
シンの杏に対する呼び方が親しくなりました。