染まるセカイ   作:零奥0

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タイトル通りです。


日常の一コマ

 

 

 

 歌に感情を乗せるという行為は、簡単なように見えて困難なことだ。演技と同じ。自分は精一杯演じているつもりでも、他者から見れば素人が頑張っている、程度にしか見えないのが殆どだ。

 

 僕自身もあまり得意ではない。今までの経験から、劣等感や孤独、哀愁みたいな曲に対しては感情を乗せることは苦ではないが、喜び、友情、慈しみ、愛情みたいなプラス方面の感情表現はてんでだめだ。

 

 歌うこと自体は好きだけど、僕にとって歌うことは孤独の象徴でもある。……今はあった、になるけど。

 

 東雲はこの点では僕に勝る。東雲は僕よりも歌を通しての交流が多いから、喜怒哀楽の経験が必然的に多くなる。

 

 表現の多様性……それがビビバス内で東雲が最も優れている部分だと、僕は考えている。

 

 

 

 

 

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 「え?じゃあ杏ちゃんは透野くんの歌を聞けたってこと!?」

 「そうだよ。めっちゃ上手かった……」

 

 凹んでいるのではなく、少し圧倒された様子の杏がボーッと虚空を眺める。あいつの技量はそれほどだったと言うことだ。俺はココに来るまでに買っておいたドリンクを飲みながら、昨日の事を思い返す。

 

 「彰人、お前はどう思った?」

 「………まだまだ俺じゃあ及ばねぇ」

 

 悔しいけど、これが現実だ。通話越しでもあいつの技量は俺と段階が違う。数年前に聞いた時よりも大きくレベルを上げていた。

 

 「……そうか」

 

 冬弥はそれ以上は聞かなかった。長い付き合いだが、いまコイツが何を考えているのかは想像できない。

 それはそれとして

 

 「ミク、リンとレンはまだか?」

 

 杏とこはねの会話を静かに聞いている、やや黒みがかった青髪のバーチャルシンガーに問う。

 

 「まだかかるんじゃない?MEIKO、結構怒ってたし」

 

 ミクは飄々とした雰囲気のまま告げる。

 

 「というかなんで遅れることになったんだ?」

 「えーっと、MEIKOのお気に入りカップを2人の喧嘩のゴタゴタで割っちゃった……からかな」

 「つまりは説教中ってことかよ……」

 

 なんともまぁアイツららしい理由だ

 

 「どうする?私達だけで始める?」

 

 杏がそう提案するが、そうした場合この後あいつらが抗議する未来が想像に難くない。

 

 「まぁいいか、元はと言えばアイツらの行いが原因だしな」

 「彰人って結構ドライなとこあるよね」

 「アイツらの自業自得だ。いいからやるぞお前ら、位置につけ」

 

 俺の呼びかけに応えて、ミクを含めた4人が俺を基準に立ち位置につく。

 

 「んじゃ、やるぞ」

 

 軽快な音楽が流れる。

 伝説を越えるための研鑽が、今日も始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後

 

 

 「酷いよ彰人!オレたちを置いて先に始めるなんて!!」

 「そうだそうだー!」

 

 さながら双子の如く俺に詰め寄る2人をあしらう。

 というかなんで俺だけ責められるんだよ。

 

 「元はと言えばお前らが原因だろうが。懲りたら今後気をつければいいだろ」

 

 自分達が原因という自覚があるのか、この一言で2人は押し黙る。

 

 とりあえずこれ以上ウダウダ言われても時間の無駄だ。さっさと再開するとしよう。

 遅れてきた金髪どもに、位置につくよう促すと表情は一気に明るくなり、嬉々として立ち位置につく。それを見てメンバーも位置に着き、ミクはカメラ係に回る。

 この世界に来てから幾度となく繰り返した流れだ。そこで俺はアイツの発言を思い出す。

 

 『圧倒的な歌唱力で凌駕する』

 

 裏を返せば、圧倒的な歌唱力で様々なユニットを上回ってきたと言うことだ。

 例え同じ舞台に立っていなくとも、ほぼ無加工の歌を聴いた俺は断言できる。それは事実であると。

 

 追いつく。いや、追い越す。必ず俺たちがお前を凌駕してみせる。

 

 それが透野に対して、一種の救いになると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「じゃあ追試の対策を始めようか?」

 

 まず俺に救いをくれ。

 

 「僕、あれだけ言ったよね?復習しとけって?今回だけじゃないよね?前回の試験も言ったよね?なんで2人とも追試なのかな?」

 

 返す言葉もねぇ……

 

 「あ、あの、シン…?そ、その決して手を抜いたりはしてなくてね…その」

 「うん、本番は手を抜いてないだろうね。どうせ、試験前に僕達が開いた勉強会で詰め込んだ知識の上にあぐら書いて、復習しなかったから結局身に付かずに本番で解けなかったんでしょ?わかるよ。前回と全く同じパターンだもん。」

 

 返す!言葉も!!ねぇ!!!

 

 「東雲はずっと押し黙ってるけど、結局何点だったの?追試ってことは赤点なのは間違い無いとして」

 「……………34」

 「クラス平均は?」

 「…………………………70」

「なんであと一点で免れたのに復習しないかな………」

 

 透野は決して声は荒げないが、怒っているのがプレッシャーでわかる。これに関しては完全に自己責任だからなにも言い返せない。

 

 「んで杏がクラス平均68の点数が33って君らねぇ…」

 「ごめんなさい…」

 

 杏ですらこのザマだ。因みに透野の後ろに冬弥も控えているが、こっちは怒りではなく、呆れが殆どを占めている。

 

 「小豆沢さんには?」

 「…伝えました。」

 「どんな反応だったかは今の君をみたらわかったよ。」

 

 あぁ、だからコイツここに来る前からこんな項垂れてんのか。

 

 答案を渡すよう言われた俺たちは、その言葉にすぐさま従い手渡す。

 受け取った透野は冬弥と一緒にどう教えるかの相談をするため別のテーブルに移った。時々聞こえてくるため息が妙に気になって仕方がない。

 

 「お待たせ!杏ちゃん、東雲くん!」

 

 2人が対策検討している間にこはねも合流。杏が「ごめんねぇぇぇこはねぇぇぇ!!!」と号泣しながらこはねに抱きつく。

 こはねはこはねで慰めればいいのか、怒ればいいのか、励ませばいいのか迷っている。

 

 「お待たせ、ある程度の方針は決まったよ。あ、小豆沢さんこんにちは。」

 

 判決が決まり、2人が元のテーブルに戻ってくる。遅れてきたこはねの挨拶も忘れずに。

 

 「見た感じ、僕がチェックをつけておいた箇所は問題なくできてる。確かにここを抑えとけばイケるとは言ったけど、まさか基礎中の基礎問題を落とすとは思ってなかったよ。」

 

 地味に棘がある言葉が俺と杏を無条件に貫いてくる。

 

 「とにかく、間違えた箇所のパターン問題を解く形でいこう。あくまで追試だし、大きく問題は変化しないだろうしね。小豆沢さんと青柳には、この前と同じように2人について聞かれたら教えてあげて。」

 

 前回よりもさらに厳しくなると予想していたが、どうやらそうはならなさそうだ。……これならまた練習も並行して

 

 「因みに追試でクラス平均下回ったらペナルティあるからね。」

 「「……!?」」

 

 当たり前でしょ?と透野は続ける。

 問題も大きく変化しないのだから、出来て当然。学校も落としたくて問題を作っている訳ではない。なのでしっかりと対策をすれば落とすことは絶対にないし、なんなら高得点を取れるはず。

 

 理屈はわかるが分かりたくない。

 

 「とりあえず東雲のペナルティは君のお姉さんに決めてもらうとして、杏のペナルティは、「待て待て待て待て待て!!」…なにさ?」

 「どうしてお前が絵名の連絡先を知っている!?というか知り合いだったのか!?」

 「それは君がペナルティを回避できたら教えてあげるよ。」

 

 コイツ悪魔か!

 

 「それで、杏の方は……謙さん、何かあります?」

 「ちょっ、シン!?」

 「そんじゃあ、1週間練習時間を全部店の手伝いに変更だな」

 「了解です。」

 「イヤァァァァァァァァ!!!!!」

 

 コイツ!!悪魔か!!!

 

 「それじゃあペナルティ回避目指して頑張ろうか!」

 

 こんな時だけ滅多に変化しない声のボリューム上げるんじゃねぇ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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追試結果

 クラス平均70点

 東雲72点

 

 クラス平均68点

 白石72点

 

 

仲良いね君たち。

 

 

 

 

 

 

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その後の一幕

 「平均超えたんだからどこで絵名と知り合ったか教えろ」

 「と言っても普通にカフェで知り合ったスイーツ仲間だけど」

 「ウッソだろ!?アイツにそんかコミュ力無いだろ!」

 「自分の姉をなんだと思ってんのさ…。まぁ確かに最初話しかけたのは僕だけど」

 「それを教えろ!!」

 「次のテストで赤点無かったらいいよ」

 「悪魔かお前!!」

 

 

 

 




赤点はクラス平均の半分未満としています。


絵名と知り合った経緯は、絵名が他の客と揉めている所にシンが仲介役として入ったのがキッカケです。
たまーに一緒に遊びに行くくらいの仲の良さです。また、それに関連して瑞希とも知り合ってます。

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