染まるセカイ   作:零奥0

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一章の本編はこれで終わりです。

登場人物の考え方はあくまでも作者のイメージです。ご了承ください。


問答

 

 西日がジリジリと僕達を照らし出し、頬がまるで焦げ付くような熱を持ち始める。

 薄着の練習着に着替えても尚、感じる初夏の気温と日差しのダブルパンチによって、背中にじんわりと汗が浮き始める。

 

 いつものシブヤの公園。ビビバスの主な練習場所に、僕とビビバスは揃って相対していた。

 

 「じゃあ全員揃ったし、始める?」

 「その前に聞かせろ。なんで急に歌えない理由を話す?自分でもわからないんじゃ無かったのか?」

 

 東雲が発した疑問はビビバス全員が思ってるものだろう。

 

 「わからないけど、考察はできるよ。」

 「考察?」

 「うん。ずっと考えてたんだ。僕は歌が大好きだし、歌いたい欲求もある。それなのにそれが満たされない状態になってしまったんなら、原因なんて普通は絶対覚えてるはずでしょ?」

 「そりゃ、そうだな。」

 「一応僕はこんな状態だから、精神科の方に定期的に通ってはいるんだけど、自分でも色々調べたりもしてたんだ。そこで、考えうる中で一番信憑性の高い考察が………『過度なストレスによる一時的な記憶喪失』だと判断した。」

 「「き、記憶喪失!?」」

 

 杏が小豆沢さんが同時に驚きの声を上げる。

 東雲も声にはださなかったが、驚きの表情を浮かべている。

 青柳は……そこまで驚いていない?

 

 「青柳は驚かないんだ?」

 「……俺も本を読んだり、ネットで調べていたりしていた。そこでその結論を何回か考えたが、本人に聞くのは気が引けてしまってな。………すまない。」

 「別に青柳が謝ることは一切ないよ。僕の身を案じてくれたんでしょ?その優しさだけで十分だよ。……話を戻そうか。」

 

 僕はみんなに語った。

 夢を見ること。

 誰かから激しく非難されている夢を。

 

 夢の中で、僕は何も言えなかった事を。

 

 「もしかしたら、全く違う要因なのかもしれない。けど、現時点で考えられる原因はこれしかない。」

 「………その夢は、いつから見るようになったんだ?」

 

 青柳が僕に問う。タイミング?最初に見たのは…………

 

 「…………え?何?あたし?」

 

 杏と仲間の定義について話して、すぐのことだ。

 

 「ちょ、ちょっとシン!?あたしが何か関係してるの!?」

 「うん」

 「うん!??!!??!!??」

 「まぁ直接的じゃなくて間接的関与だけど」

 

 僕は、杏と話した内容をみんなに伝える。

 

 「それで次に見たのが、昨日だったよね?」

 「そう。共通点は君たち2人が、僕の中の概念を壊してくれたことかな。」

 「………概念?」

 「あぁごめん、杏には難しかったか」

 「サラッとdisられた!?」

 

 言ってしまえば、僕の中の当たり前を壊してくれたということ。

 

 杏には、僕は孤独が当たり前ではなく、仲間が居る事を。

 東雲には、才能を持つ者は、超えるべき壁であると。

 

 僕にそう教えてくれた。価値観を変えてくれた。そこが共通点。

 

 「多分、記憶に蓋をする時、僕の中で作った『当たり前』を鍵にしたんだと思う。」

 「鍵?」

 「そう、鍵。でも、その『当たり前』を変える事で鍵が壊されて徐々に記憶が戻る感じだと思う。だから、一部の記憶が夢として出てきたんだろうね。」

 「つまり、透野の常識を変えれば記憶が戻り、歌えなくなった原因もわかるということか?」

 「そういうことになるね。」

 「なんか、現実味の無ぇ話だな。」

 

 そこに関しては全面的に同意するよ。実際起きてるし、当事者だから口には出さないけど。

 

 「ん?じゃあ学校で言ってた、俺たちの前でなら歌えるかもってのはどういう事だ?」

 「あぁ、それはね」

 

 東雲が変えてくれた僕の中の『当たり前』の一つ。才能の価値観。それについてを話そう。

 

 

 

 

 夢の中で僕は、数人の大人達に責め立てられていた。言葉の多くにモヤがかかってて、聞き取れず理解できない箇所も多かったが、全員が僕の歌の才能を疎んでいること、そして僕の才能が彼ら彼女らの仲間の1人を壊してしまった(・・・・・・・)ことは確実だった。

 

 そこで作られた僕の中の『当たり前』が、才能は罪であるということ。まぁ最近までこの『当たり前』を認識すらできてなかったんだけど。

 

 ともかく、そんな才能の価値観を昨日の東雲の発言である、

 

 「才能は壁で、超えるもの」

 

 これが僕の中にあった才能の価値観は、罪から壁になった。

 あんまり変化がないように思えるけど、僕の中では大きな事だよ。

 

 だって東雲がこう言ってくれたおかげで、夢の中でぼくを責め立ててる奴らが、『僕を罪人にした大人』から、『僕を罪人にするしか(・・・・)無かった大人』に変わったんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「東雲が才能をそんな風に考えてくれてるなら、同じユニットの君たちならその考えを共通して持ってるかと思ったんだよ。」

 

 話し終えた後、僕はそう締めくくった。

 

 「────俺は、んな事意識して言ってないぞ?」

 「知ってる。だからこそだよ。意識してなくて、スッと出たあの言葉はきっと本心だろう?だから変えてくれたんだよ。」

 

 我ながらチョロイン極まってるな。や、別に東雲とBL的展開なんて移行しないけど。

 

 「だから今日、無理言ってここに参加させてもらったのは皆んなにも聞きたかったからだよ。東雲の意見は考慮せずに、『才能とは何か』これの答えを聞きたかったんだ。」

 

 いきなり僕から問われたからみんなは面食らった様子だ。杏なんか目をパチクリさせてる。貴女綺麗な目をしてますね。

 まぁでも、急にそんな質問されたら困るだろう。才能と言っても様々なカタチがあって、どう表れてるかも人それぞれ。僕達なんてたかが15〜16年しかまだ生きてない高校生であって、大人と違って多くの人と出会っている訳じゃない。才能を見てきてる訳じゃない。難しい質問だろう。……と、一塊の若造が思ってる訳だが。

 

 「本当は一番最初に聞きたかったのに、東雲が急かすから…」

 「俺のせいかよ!?お前だって聞く様子なかったじゃねぇか!」

 「正直失念してた」

 「お前自身の問題だろ!?」

 

 やっぱり皆んなの意見は気になるので、そんな思考は遥か彼方へ投げ捨てて、考えが纏まる様になるまで東雲と漫才でもしておこう。すまん東雲、犠牲になってくれ(悪魔)

 

 東雲に対しての話題は、東雲の実姉だったり、天馬先輩だったりと事欠かない。そして一個一個にちゃんと反応していいリアクションしてくれるので僕の中に僅かにある嗜虐心が刺激される。君アレだよね、絶対腐ってる方々には受け取る方にされがち……やめようこの思考。考えるだけで萎える。少なくとも僕はそっち側ではない。

 

 「シン、纏まったよ。」

 

 東雲で遊ぶ、じゃなくて、東雲と話してる間にもみんなは真剣に考えてくれていた。いや、当事者がこんなんで申し訳ない。

 

 「先に俺の意見を話させてほしい。」

 

 そう言って、青柳は僕の目を見る。

 

 「俺は、彰人と概ね同じ考えだ。クラシックからストリートまで音楽の才能を持つ者は多く居る。以前、彰人からも俺は天才側に居ると言われたこともある。」

 

 そりゃそうだろう。小さい頃からクラシックの英才教育を施され、それについていけていた青柳は間違いなく天才だろう。

 

 「だが、それでも越せない者は多い。だからこそ言えるのは、才能とは努力で育むものだと俺は考える。」

 

 「持ってるだけじゃ意味ないってこと?」

 

 「あぁ、どんなに優れた才能を持っていても、活かせなければ持ち腐れるだけだ。才能にかまけていては、例えルーキーでも小豆沢のように常に努力を怠らない者には、才能というアドバンテージは直ぐになくなる。」

 

 青柳の言ってる事は的を得ていると思う。おそらく、過去に自分の身の回りで起こった事なのだろう。

 

 「透野の言うように、才能を持つ者はそれだけで初期ステージが異なり、周囲から疎まれることもある。しかし、それだけで罪になるなど愚かな考えだ。先ほど透野が言った様に、その才能に挑む努力すらせずに、才能を持つものに対して理不尽な悪感情を向ける奴らこそが罪人だ。」

 

 青柳はそう締めくくった。罪のことまで否定してくれるとは。

 

 「ありがとう青柳。今君がいったことが本心だったことは、なんとなくわかるよ。」

 

 確証はない。だけど、嘘が下手な青柳だ。此方の目を真っ直ぐに見て伝えてくれたのだ。上っ面の言葉のわけがない。

 

 「じゃあ、次、あたしでいい?」

 「うん。がんばれ!杏ちゃん!」

 

 青柳に続き今度は杏が前に出る。

 

 「あたしはね、特別な才能はあっても、特別な人間なんかいないと思ってる。」

 

 笑顔で、声色は少し明るく話し始めた。

 

 「あたしが思う才能って、結局のところ才能の分何かが欠けちゃってると思うんだ。冬弥なんか歌上手いのに天然だし「…天然?」、彰人は猫被りだし「おい」、シンとかは……えーっと、えーっと、不器用だし!」

 「大分絞り出したね」

 「う、うるさいな…。と、とにかく、才能ってあくまでその人の個性なだけでそこに意味とかは無い気がする!シンはあたし達の友達!難しい事は考えずにそれでいいと思う!」

 

 ……本当に眩しいな、杏は。

 

 「うん。ありがとう。これからも友達としてよろしくね。」

 「もっちろん!」

 

 「じゃ、じゃあ、最後は私…かな?」

 

 そう言って小豆沢さんは前に出る。

 

 「私は、正直よくわからない。歌い始めたのも最近で、透野くんの歌も、凄い!っていう気持ちがいっぱいで、凄い才能を持ってるっていう目で見た事なくて……えと、その…」

 

 少し言い淀んでしまった小豆沢さんに、杏が寄り添う。

 

 「大丈夫。思った事言えばいいんだから!」

 「う、うん。ありがとう杏ちゃん。……えっとね、だから、わからないからこそ、透野くんの事を知りたいと思うの。」

 「僕のこと?」

 「うん。透野くんの事を見てれば、答えもわかるんじゃないかなって。……これじゃ、ダメかな?」

 

 小豆沢さんが上目遣いで聞いてくる。

 ダメって言ったら隣にいる保護者から拳が飛んで来そうだな、凄い睨んでるし……。言う気全く無いけど。

 

 「全然。と言うかいきなりこんなこと聞かれて、すぐに答えを出せって方が難しいよ。3人は僕と付き合いが長いから、すぐに答えが出たんだろうね。」

 

 自分で言って納得する。この理論で言えば、小豆沢さんとの関わりも長くなれば答えが出ることになる。小豆沢さんの考えは的を得ていた。

 

 「うん、みんなありがとう。本当に君たちと話せてよかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────

 

 「それで?歌えるのか?」

 「うーん、多分?」

 「なんでお前も疑問系なんだよ。」

 

 そりゃこの状態になってから人前で歌えるなんて思ったことなかったし、歌う状態にならなきゃわからないし。

 

 「でも、前にここに立った時よりは落ち着いてるよ。」

 立っている場所はWEEKEND GARAGEのステージ。数年前に立ち、当時改めて歌えないことを痛感した場所。

 ここにいるのはビビバスの4人だけ。謙さんは気を遣ってか、残り僅かな閉店作業を杏に任せて早々に帰宅した。あんな大人になりたい。

 

 「・・・少し、待ってね」

 

 僕の言葉に全員無言で頷く。

 

 

 ・・・・。

 一歩前に出る。

 鼓動は少し早い。

 呼吸もいつもより荒い。

 前を向くことに抵抗が生まれる。

 「歌うな」と頭の中で誰かが言う。

 

 

 ・・・・・でも

 

 

 震えはしなかった。

 

 

 「行こう」

 

 

 僕は言うと同時に手元のスマホの再生ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜は少しだけ、喉が痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────

 

 

 

 

 「・・・やったね」

 

 水色と白のみが同居するセカイ、少女は一人の少年に賛辞を贈る。

 

 「・・・・暖かいオレンジ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




その後のちょっとした一幕

 「ところで、さっき僕たち男子には欠点というか短所言ったけど、小豆沢さんにはないの?」
 「は?こはねに欠点なんかあるわけないでしょ?????」
 「君の欠点はその盲目具合だと思うよ」
 「何をーーーー!?」
 「あ、杏ちゃん落ち着いてー!?」

 そのあと、なんだかんだ楽しそうにおいかっけこする男女の姿があったとか
















変化

セカイに色が加わりました。

シンの能力が条件下でのみ発揮可能になりました。

シンのVivid BAD SQUADに対する呼び方が親しくなりました。


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