二周目アルトリアと転生元マスターの逆行譚 作:アステカのキャスター
「………ここ、は?」
「目ぇ覚めたかよ」
気が付けばそこは大樹の木陰だった。
ドレスは四散したせいで全裸な所を所々血が付き、穴の空いたローブを被せられていた。裸を見られたその事実に一瞬顔が真っ赤に染まり、声の聞こえた方向に目を向ける。
「貴様!!……っ!?」
腹部が貫通し、風穴が空き、そこから絶えず血が溢れ出している。それだけじゃない。身体全身の神経を擦り減らし、魔術回路全体が呪いで汚染され、絶えず呪いが体を蝕んで食い潰している。肉体の再生も呪いで行われているが、最早生きているのが不思議なくらいに……
「……不死は残った。ただ、呪いのせいで
「聖剣の鞘は」
「お前の中。ヴィヴィアンの性質の殆どを失った以上、魂そのものが欠けてたからな。ほっとけば死ぬが、流石は魔法の鞘。欠けた魂にすら癒しを与えるなんてな」
恐らくだが、この呪いはその鞘でさえ癒しきれない。
人として最低限の形を保つだけの不死の身体。だが、その苦痛と破壊の勢いが早すぎて、鞘の回復でさえ拮抗し合う程に強力なものだ。
「っ!!貴様、何故私を–––––」
殺さなかった、と叫んだ。
情けをかけられ、助けられた上に殺さなかった。それが屈辱だった。モルガンにとってそれは侮辱に他ならなかった。
胸ぐらを掴み、噛み付くようにラスカを睨み付ける。
だが、ラスカは力無く答えた。最早抵抗する力も無ければ、意識を保っているのさえ奇跡な中で、適当に嘘をついた。
モルガンは妖精眼持ちだ。
嘘などわかる。けど、本心を告げた方が屈辱でもある。アルトリアに手を差し伸べて、モルガンに差し伸べなかったから今度は手を差し伸べたなんて、それは都合の良い話だ。
「……さあな、理由なんて忘れた」
「っ!こんな事で全て無かったことになるとでも––––」
「思っちゃいねえよ。俺の罪が無くなる訳じゃねぇ」
恩を売ったわけじゃない。
それは嘘ではない。だが、これは贖いでもない。それはただの高望みした願いだ。高望みした願いを叶えたかった訳でもない、手を差し伸べたから何か俺の中で変わる訳でもない。
所詮は自己満足。
もしくは後悔から来る咄嗟の行動だったのか、今になっては分からない。
「……不死はあくまで肉体の形だけ、苦痛で擦り減っていく魂にまでは作用しない。ヴィヴィアンの呪いはそれだけ強力だ。マーリンでも解呪出来ると思えねぇ」
苦痛で頭の中を埋め尽くす地獄が、永遠にあるとするのなら自我は崩壊し、感情は消え、人形のように苦痛を感受するだけの存在になり、最後は魂が擦り減って死ぬだろう。
そうなったら英霊に昇格される事もない。
未来永劫、死ぬ事もできず永遠に苦しみ続ける未来しかなければ、魂が腐る。輪廻転生も無ければ、肉体に押し留められた空っぽの人形になり、自我も魂も、存在さえ忘却し完全な虚無に消えた怪物に成り代わる。
「よかったな。お前の復讐は一部叶ったぞ?永遠に苦しめるなんて普通に出来る事じゃない」
それこそ影の女王スカサハと同じ。
永遠に死ねない人生。悠久の時を経て、怪物に成り下がる不死の存在。多分、老いる事も出来ないのだろう。身体のみが不変となり、魂そのものは身体から抜け出せない。
普通は出来る事じゃない。
だが、聖杯によって神性化したヴィヴィアンなら話は別だ。ブリテン島の意思の総本体、湖の乙女の分岐体が神の視点を得て、蹂躙してきたのだから。
「それでも足りないなら好きにすればいい。煮るなり焼くなり、動けない俺を甚振ればいい」
何せこの戦いの勝者はモルガンだ。
俺はもう満身創痍、瀕死の状態だ。死にはしないが、それでも甚振れるだけの身体はある。
モルガンの欠けた魂も回帰している。
ヴィヴィアンの性質そのものは薄くなったが、聖杯を宿していた影響で全盛期だ。俺は杖も折れ、聖剣のデッドコピーも呪われ、メアも居ない。メアは不死がないので癒しの泉の中にある水庭、もとい『
もう、気が済むまで傷付ければいい。
モルガンにはその権利がある。復讐する権利がモルガンには存在する。
「ふざけるな」
モルガンは心の底から腹立たしかった。
この静寂の理想郷を凍てつかせるような冷えた声で言い放つ。
「復讐だと?これが復讐だと貴様はほざくのか?」
それは怒りだった。
煮え沸るような憤怒が、冷静冷徹なモルガンから怒号を叫ばせる。
「ヴィヴィアンに代行したこの所業を!貴様は復讐と抜かすのか!!」
これはモルガンが望んだ復讐などではない。
こんなものが、ヴィヴィアンが代行した故の結果など望んでいた訳じゃない。
「こんなものが私の復讐など、死んでも抜かせるものか!!」
モルガンが、自分の手で片を付けなければ復讐など到底呼べるものではない。これはモルガン自身の復讐をヴィヴィアンに奪われた形でこの惨状を創り出したのだ。
これが復讐など、誇れるものではない。
ヴィヴィアンという女神に自身の尊厳を傷つけられて行われた復讐など、モルガンは復讐だと認めない。
それに呆れたようにラスカは愚痴をこぼす。
「知るか…。お前ヴィヴィアンに負けて意思ぶん取られたくせに、復讐復讐ってガキがテメェは」
「何だと!?」
「ヴィヴィアンはお前の意思を下敷きにして顕現したんだ。じゃなきゃヴィヴィアンが俺を欲するなんてあり得ねぇ。それを意識が無かったからってピーピー喚きやがって……」
「貴様……!!」
王に就けなくとも、幸せな人生があった筈だ。
それを全部復讐の為に捨てて、支配しようとする子供のような存在。三つの顔を持つと言っていたが、どれも意外と子供っぽい。まあ、そうさせてしまった責任が俺にはある。
だが……
「お前はモルガンだろ。
「っ……!!」
「お前らやっぱ姉妹だよ。あの馬鹿そっくりだ」
「あの赤い蜥蜴と一緒にするな!」
「いや同類だろ。所詮同じ穴の狢だ」
アルトリアも神霊化、女神ロンゴミニアドになったしな。
どうしてウーサー王から生まれた存在は大体俺に迷惑かけるんだよ。かつての主君を猛烈に殴りたくなってきた。
「ゴホッ、ゴホッ!!」
「!」
「ッ、あーやべえ……結構、意識遠のいてきた…」
腹の再生が終わると呪いがまた身体を巡る。
血を吐いて、咽せた俺の視界は徐々に失われていく。このままだと、次に起きれる日が来るのか分からないくらいだ。
「……お前は、死なないだろう」
「……さあ、永遠の苦痛を与えられた人間が果たして自我なんてものを保っていられるのかね…?自我の崩壊はある意味での死だ。次目覚めた時は記憶すら全部失ってるかもな」
「っっ……復讐は、どうなる。私の復讐は……」
「死なない人間をサンドバッグにするなら構わないが…まあ、万全な俺に復讐するのは叶わないだろうが」
モルガンが奥歯を噛み締め、俺の胸に手を当てる。ほんの僅かに呪いが揺れ動いた気がするが、取り除ける気はしない。
「……何のつもりだ」
「ふざけるな。こんな終わらせ方、私が認めない。認めてたまるか……!」
「ヴィヴィアンの呪いは聖杯で底上げされたんだ。その聖杯も最果てまで送られたんだ。今のお前じゃどうやっても無理だ」
「そんな事……!」
バヂッ!!!とモルガンの手が弾かれた。
当然だ。魂に干渉する宝具で、ヴィヴィアンの性質そのものを取り上げているのだ。ざっと二割、聖剣の鞘を使い性質を取り戻しているが、今のモルガンは以前より弱体化している。そんな状態でヴィヴィアンの呪いなど取れるものか。
「……止めろ」
「くっ……もう一度」
再び手を弾かれる。
それに対抗するように干渉していくが、モルガンの手を優しく掴んで止める。魔術は霧散し、干渉は消えた。
「もう、いいから」
「っ……」
「いいんだ……このまま続ければその手だけじゃ済まなくなる」
手の一部が呪われている。
この程度なら聖剣の鞘で元に戻せるが、それ以上呪いが移ったら鞘でさえ上回る呪いに侵される。綺麗な白い手が黒く穢れていくのを見たくはなかった。
「綺麗な手なんだ。呪いで穢すものじゃない。俺はもう、いいから」
「お前は……私を憎んでいないのか」
「恨み言なら全部吐いたさ。それに、俺は憎まれて当然だと思ってる。お前に殺されても、俺は構わないって、そう思えちまうくらいに俺はお前にひどい事をした」
復讐されて当然の結末だった。
それが例え、ヴィヴィアンに奪われた復讐であっても。
「知ってて手を伸ばさなかった……知っててお前を利用した。それはお前を不幸にするって、分かっていたつもりなのに」
モルガンの策略を見抜けたのだって逆行したからだ。俺はこの時代に存在しない異物であり、この時代を知っている卑怯者だ。だから上澄みだけを掬い取って、ブリテンを良くした。
その結果、不幸になる人間を知っていた筈なのに、俺は何も手を差し伸べてやれなかった。
「だから……俺はもういいんだ。お前が手を穢してまで……呪いを解いてほしいなんて思わない」
だから、これが罰なのだろう。
死ねない地獄に俺はただ沈んでいくだけだ。
「命を捨てるつもりか……」
「捨てられたら…楽だがな。まあ、ある意味死ぬなら捨てるも同義か…」
不死によって捨てられない。
ヴィヴィアンが遺した身体から魂を離れさせない術式。その上で老いる事すらない呪いをかけるって悪趣味な所はモルガンにそっくりだが。
「だったら、私がお前に罰を与えましょう」
首筋を撫でられる。
このまま首でも締められてしまうのか、冷たい手で喉に触れられてゾワゾワする。潔く苦しめられる事を覚悟する。
「私のものになりなさい。ラスカ・トゥエルフ」
その言葉に思わず呆気に取られた。
「……はっ?」
「どうせ捨てようとする命なら、私の為に尽くせ。お前が私にしてきた事が罪だと思っているなら、それが私への償いになる」
なんて我が儘な要求だろう。
支配する為に俺を死なせない
「無茶…言いやがって……呪い解けねぇだろ」
「今は無理だ。だが、その呪いは必ず解く」
「神の呪い…と同じだぞコレ」
「私を誰と心得ていますか?」
そうだったよ畜生。
この女、神代の領域に踏み込んだ魔女だった。この呪いすら彼女はいつか支配してしまうのだろう。
「だから待っていなさい。呪いが解けた時はキャメロットにも負けない国を作る為にキリキリ働いてもらいます」
「……はは、そりゃあ…大変だ」
「だから––––」
胸ぐらを掴んで引き寄せられる。
唇に、柔らかな感触を感じて、閉じかけた目を僅かに開いた。
「今は安らかに眠りなさい」
「……キスする…必要あった?」
「唾付けというやつです。貴方はもう、私のものなのですから」
これはまた、アルトリアが知ったら殺されそうだな。
ただ、二度目の口付けは少しだけ甘く、虚な視界で見えたモルガンの頬は僅かに赤く染まっているように見えた。愛があるかは分からない。彼女はただ支配するだけだ。支配こそが愛なのかは俺には理解ができない。
「私はお前を許さない。私を生かした意味、たっぷり後悔させてあげます」
「……最っ悪だな」
「魔女ですもの」
でも、少しだけ生きる理由が出来た。
この後苦痛しかない俺の人生にいつか終わりがやってきたら、今度はモルガンの為に働かなければいけない。ああ、最悪だ。生きても社畜と地獄の繰り返しなんて。
全く最後まで振り回されてばっかだ。
アルトリアが終わったら今度は姉とはな。まあ、それもまあ辛くても二人の王を導いたって誇りを持てる人生だと、笑えるのかもな。
「……ああ、期待して……待ってるよ……モルガン」
最後に彼女の髪に触れると、力無く手は地面に落ちる。
次はいつ起きるか分からない。永遠の苦痛に蝕まれた身体からいつ自我が崩壊するかなんて予測出来ない。
けど、いつかこの呪いに終わりがあるなら。
それはきっと、自分を対等に見てくれる大馬鹿が、この呪いを終わらせてくれるのだろう。いつか終わる事を信じて、ラスカは深い眠りに堕ちていった。
★★★★★
彼の瞳が閉じていくのを確認する。
私の中に融解していた聖剣の鞘を取り出し、彼に埋め込む。最早私には必要ない、流石に不老不死ではないが、妖精に寿命はない。ハーフでも長生きは出来る。
「この泉の底に『
この癒しを齎す場所と聖剣の鞘があれば、呪いは解けずとも苦痛に苦しむ事はない。彼の身体を水庭へと沈める。どうせ竜の妖精が居たのだ。呼吸が出来る場所で、私が生み出した『罪なき者の塔』と同じなのだろう。
「全く、私を本気にさせた事を後悔させてあげます」
これは復讐だ。
モルガンがラスカに送る咎であり、復讐であり、愛である。
ラスカを好きという言葉では表せない。
何せ私は支配でしか与える事が出来ない。私の敵であり、私の野望を幾度と阻む愚者であり、そして私が対等だと認めた魔術師であり、私の事を心から後悔していた馬鹿な人。
最早キャメロットなどどうでも良かった。
もう、アルトリアへの復讐など頭になかった。
起きた時には覚悟してもらおう。
私の駒として、手足としてこき使ってやる。私なくして生きられない身体にしてやる。そして、私のものにして、ずっと……
★★★★★
ブリテンが終わる。
アーサー王はモードレッドに王位を継承し、そしてモードレッドも次の者へ王位を託し、寿命によって息を引き取った。
そこから、ブリテンの神秘は死に絶えた。
まるでアーサー王が辿るべきだった結末を後送りにしていたツケが働くかのように、神秘は死に絶え土壌も悪くなり、キャメロットは自然に崩壊していった。
アーサー王はその最後を見届けた。
キャメロットは三代目にして、全てを失い滅びの末路へと走っていった。
「……やはりここに居ましたか」
大樹の木陰に瞼を閉じて眠っている人影を見た。
モルガンだった。姿こそ変わらないが、それでも顔は青く、具合が悪そうだ。
「愚妹か……何のようだ」
「……理想郷に旅立つ前に彼に会いたかった。それだけです」
「……勝手にしろ」
彼の泉を覗き込むと、竜の妖精が手を振っている。
そこに安らかな顔で眠っている彼の姿が見えた。初めはこんな事をしたモルガンを許せずに、聖剣を抜きかけた。
しかし、それを止めたのが竜の妖精メアリージェだ。
彼女を生かしておく理由を聞かされ、更にはモルガン自身がアルトリアの所業など今更興味ないと言い切り、彼女を生かした。
「貴女も病に侵されたと聞いていますが……どうしてここに?」
「どうせ死ぬなら此処が良かった、それだけだ」
正確には病などではない。
モルガンはブリテンの意思そのものだ。ブリテンが滅ぶという事はモルガンも死ぬという事。老化はせずとも、彼女もまたブリテンと共に運命を共にしなければいけない。
「ああ、忌々しいな。私の半身の呪いが解けるまで、あと少しだというのに」
「……貴女は」
「英霊の座については把握済みだ。死んだとしても、持ちかけられた契約で私は聖杯を手に入れる」
モルガンもまた、人理を護る契約を持ちかけられた。
まあ彼女の場合、人理が用意した英霊の座すら支配し、掌握した後に座の記録を記憶に、彼の呪いを解く為に奔走するだろうが。
「私と同じ事をするつもりですか」
「奴を解呪出来れば逆行などする必要などない。何処だって構わないさ。私にとってもうブリテンが全てだと考えていないしな」
「……ラスカは私の従者です」
「今は私のものだがな。本人に言質は取っている」
ぐぬぬ、とアルトリアが悔しげな顔をしているのをモルガンは鼻で笑った。お互いに気に入らない人間同士、モルガンにとっては溜飲の下がる僅かな復讐にはなっただろう。
「……私はそろそろ逝く。貴様はどうするつもりだ」
「私は理想郷へ。抑止力が再び契約を持ちかけていますが、私自身はそこにいた方がいいでしょう」
アーサー王の可能性の話だ。
この歴史でアルトリアが死ぬ事があれば、本当に歴史が剪定されかねない。一度目の死後は英霊になる前に聖杯を手にする事であったが、二周目となった並行世界では、アルトリアに再び抑止力が人理の守護者の契約を持ちかけてきた。この歴史を確定させるならその契約を受けると言う条件により、この歴史は完全には消える事はない。
「そう、か」
モルガンも瞳を閉じる。
ブリテンの神秘と共にモルガンの命も此処で途絶える。もう十分に生きた。もう老婆となってもおかしくない。けど彼女は変わらず美しく、そして何も変わらない。
「モルガン、貴女も見れるといいですね。––––夢の続きを」
モルガンは静かに息を引き取った。
その顔は何処か安らかで、静寂に満ちたこの場所で彼女は夢の続きを見に、この世界から旅立っていった。
この歴史は此処でおしまい。
ブリテンは滅んだ。
それでもアルトリアはブリテンの終わりに納得していた。彼が繋いだこの国も、何時かはこうなると彼自身が告げていたからだ。
けど、この歴史は消えない。
ラスカ・トゥエルフが居たこの時代はアルトリアが居る限り、必ず何処かに存在する。またいつか、それがいつなのかは分からない。それでもきっと会えると信じて、アルトリアは理想郷へと旅立っていった。
★★★★★
「………ん」
瞳を開けると、そこには知らない天井が。
ボヤけた視界を擦りながら、辺りを見渡す。まるで結婚式の教会のような場所だ。身体は動く、手も足も動く。魔術回路の汚染すら消えている。
「あっ、目が覚めましたか?」
そこには、かつての王。
俺が手を焼かされた大馬鹿野郎とそっくりの騎士王がそこにいた。まだ寝ぼけているのか、普段着とは違くて、何処か雰囲気が違う?
「……アル…トリア?」
「……どうやら、本当だったようですね。彼女の情報は」
服装を見た感じ、アルトリア・キャスターだ。
俺も本物を見たわけではないが、何処か違う気がする。アルトリアというより、目の前にいる女の子は竜の気配より、限りなく妖精に近い雰囲気がした。
「私の名前はトネリコ、汎人類史ではモルガンと呼ばれた魔女の名前です」
「なっ……!?」
汎人類史では?
魔眼で調べたが、どうやら此処は異聞帯。しかも第六異聞帯、妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェか。完全に原作全てを知ってるわけじゃないんだが、此処に呼び出されたのか?
身体の至る所を見ても呪いは存在しない。
痛みもないが、不死のみは残っている。不死を取り上げたら俺は老化で死んでいるはずだ。不死を残した呪い全てが解呪されている。
「呪いが解けてる」
「不死は残しました。どうやら貴方の魂は水庭で摩耗する事なく凍結していたようですし、『風の氏族』の力も借りて解呪が出来ました」
「……此処は異聞帯だろ?異聞帯の住人が何で俺を?」
トネリコが説明すると、俺はその内容に驚愕を隠せなかった。
此処は妖精暦4000年。カルデアが来るのは女王暦2017年だから、多分6017年前の異聞帯なのだな、それ以上に驚いたのは……
「嘘だろ!?あの魔女、レイシフトの仕組みを暴いてこの世界のお前に転送したのか!?」
「はい。貴方の解呪も私に任されました。この世界では私はヴィヴィアンの性質が大きく出ているので」
「……呆れてものも言えねえよ」
確かにヴィヴィアン寄りの性質の自分が居れば解呪は出来なくはない。呪いをかけたのがヴィヴィアンなら、解呪出来るのもまたヴィヴィアンしかいない。汎人類史ではヴィヴィアンの性質自体を殆ど取り上げてしまったから解呪は出来なかったようだが。
だからってレイシフトの仕組みを暴いて情報をこの世界のモルガンに渡して俺を『
その規格外さに思わず絶句する。
あの魔女、最早根源に繋がっていても俺はおかしいと思わないね。
「それと、彼女から伝言です」
「あっ?……っ!?」
胸ぐらを掴まれ、トネリコは薄く笑う。
それは魔女のように蠱惑的で、背筋が凍りつきそうなくらいにゾワゾワと感覚が警鐘を上げていた。
「––––もう貴方を離さない。私の為に生き、私の為に尽くしなさい」
思わず息が止まりそうなくらいに美しい魔女に囁かれ、意識が停止していると、トネリコはニッと笑いながらこの世界のモルガンの性格に戻る。最早どっちと聞く事すら出来ない。それくらいの唖然で声が出ない。
「さっ、行きましょう!ブリテンの明るい未来の為に!!」
まだ心臓がバクバク言っている。
ああクソ、二度目の人生は社畜で決まっていたのは分かっていたのだが、まさか本当に国造りから始めるなんて思いもしなかったし、汎人類史のモルガンだろうが、異聞帯のモルガンだろうが関係なく。
「……やっぱお前、魔女だよクソッタレ」
完敗だ。
魔女のものになるって受け入れた時点で負けだったのだ。姉妹揃って俺をこき使う未来など予想していたのに、俺の人生は大体二人に振り回される運命だったようだ。熱くなった頬を両手で叩き、俺はトネリコの背中を追いかけ始めた。
––––––FIN
あとがき。
これにて二周目アルトリアと転生元マスターの逆行譚は完結となります。後々マテリアルや軽い番外編も書いていきますので。
これ、アルトリアよりモルガンがヒロインブーム来た?うん、カルデアで姉妹揃った時に取り合いになりそうな所とか書いても面白そうだし、いいよね?全ては夏の夜の夢さ。……なんつって。
多分。出来れば批判は無しでお願いします。
まあ、とりあえずこれで一応一先ずは終了です。
ご愛読してくれた皆様、本当にありがとうございます。
良かったら、感想、評価よろしくお願いします。
では、次の機会でまたお会いしましょう。
しーゆーねくすとあげいん
もし番外編がもう一つ書くとするなら?
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妖精郷の女王モルガンと賢者ラスカの一日
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神聖キャメロットでの槍王とラスカ
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カルデアでのラスカの奪い合い
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モルガンかアルトリアの純愛物語
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IF もし逆行した原因がモルガンだったら