二周目アルトリアと転生元マスターの逆行譚   作:アステカのキャスター

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 あと二話で完結。
 仮説が多くてすまない。


九話

 

 

 蛮族の進行も決着がつき、ブリテンに束の間の平和が訪れた。

 あとはローマとの戦いだが、もうそこまでは居られない。他国の介入があれば抑止力も本腰を入れてくるだろう。あくまで俺は誰かの役を担う事でずっと誤魔化してきた。それも長く続けられる訳もない。今、俺が生きているのも奇跡のようなものだ。

 

 

「この部屋結構気に入ってたんだけどなぁ」

 

 

 荷造りを終え、部屋を出る。

 そこには部屋の前で待機していたアルトリアの姿があった。鎧は付けずに少しだけラフな格好で聖杯戦争時の私服姿によく似ていた。

 

 

「見送りか?律儀だな」

「律儀でもなんでもありません。貴方とのお別れになるのですから、見送りくらいしたくなります」

「騎士王に見送りとか、現代の奴らじゃ卒倒モンだな」

 

 

 呆れたように笑いながらその事実に呟いた。

 

 

「……ローマとの条約もそうだが、モルガンはまだ居る。一応円卓全員に渡した護符で操られる事は無いと思うけど用心しろよ」

「ええ、それ以上は私の…いえ、私達の責務です。貴方に心配される程のものでもありません」

「そりゃ心強い」

 

 

 私ではなく私達と言った。

 アルトリアもやっぱ変わったな。ちゃんと騎士王でありながら人の王としてこの世界を生き始めて、人として強き王になれた気がする。

 

 

「俺の人生、お前の手違いでこの場所に辿り着いて、馬鹿みたいに仕事をやらされて、卑王倒して、未来の騎士王を弟子に取ってめちゃくちゃ大変だったよ」

「うっ……すみません」

「けど、()()()()()()()()

 

 

 案外悪いものじゃなかった。

 それだけは本当だ。そこには達成感があった。勝利を分かち合い、時には喧嘩したり時には意見の食い違いに悩んだり、時には友と呼べる騎士達と酒を揺らしたりと、仕事こそ多かったしマーリンの代役なんてめちゃくちゃしんどい事はあったが。

 

 それでも今まで走ってこれたのはきっと……

 

 

「あっ、そうだ。これやるよ」

「これは?」

「ただの押し花。まあ売ったらそこそこ値は張ると思うぜ」

 

 

 永遠に枯れない蒼き薔薇。

 俺の魔術で品種改良した時に偶々出来た一輪の薔薇を押し花にしたものだ。防腐もしているし、青薔薇なんて出回っているどころか世界に一輪しかないかもしれない。

 

 

「ありがとう、ございます」

 

 

 ただ、アルトリアは笑った。

 それは可憐な少女のように。それが見返りだとするなら、用意した甲斐があったのだろう。

 

 

「今までありがとな。アルトリア」

「ええ、此方こそありがとうございました。ラスカ」

 

 

 最後に握手を交わした。

 少しだけ小さく思えたその手にどれだけ救われたのか分からない。救い救われた人生だ。だからこれで対等だ。俺を聖杯戦争で救ってくれたアルトリアの生涯を救った。まあリスクリターンが割に合わない気もするが、ちゃんと対等に隣に立って成し遂げた偉業だ。

 

 別れの時はいつか来るのは分かっていた。

 今日がその時だって分かっていた。意外と離れたくない自分もいるが、それでも俺は帰らなきゃいけない。

 

 

「……ぁ」

 

 

 最後にアルトリアが小さな声を漏らした。

 俺の袖を軽く掴んでいた。その表情はまるで迷子の子供のようで、何処か寂しげな表情をしている。

 

 

「どうした?」

「あっ……その」 

 

 

 袖から手が離れない。

 意を決したように俯いていたアルトリアは顔を上げて口を開いた。

 

 

「その、やっぱり此処に――!」

「ラスカ殿、そろそろ遠征の時間で……」

 

 

 パーシヴァルの声が聞こえた。

 それが何を伝えたかったのか分からない俺でもない。

 それでも行かなければならない。俺はこの時代の特異点そのものだ。それ以上は癌になりかねない。

 

 行かせたくない気持ちは分からなくはない。

 俺だって同じ立場なら引き留めようとしたかもしれない。それくらいに絆され過ぎた。

 

 だからその想いも葛藤も全部胸の内に秘めるのだ。きっと別れは辛いものだから。傷付けるにしても小さい方がいい。

 

 

「王……お邪魔でしたか、申し訳」

「言うな、直ぐに行くから先に荷物持ってけ。この事は墓場まで持ってけよ」

「御意に」

 

 

 荷物を押し付け、パーシヴァルを離れさせる。

 此処が聖杯によって生み出された並行世界なのか、本当に史実の逆戻りなのかは俺も分からない。剪定か排斥かの二択だ。水泡のようなこの時代にいる俺か、もしくは歴史そのものが消えるか。

 

 

「二度と会えない訳じゃねえよ」

「!」

「いつかまた、聖杯戦争があったら召喚する。騎士王の縁も結ばれてるんだしな」

「その時の私は覚えて……」

「英霊に昇格される前のお前と縁を結んでんだ。きっと会えるさ」

 

 

 一生の別れにはなるかもしれないが、永遠の別れではない。

 俺の縁はもう定まっているなら、あり得ない可能性だって引き当てられる筈だ。だから、さよならじゃない。別れを惜しむ必要はない。

 

 

「だから、()()()()()()()()

 

 

 またいつか会える。

 そんな期待を残して、最後にアルトリアを抱き寄せた。いつか会えたとしても、その時まで寂しい想いをするかもしれない。

 

 まあ、俺からしたら妹みたいな存在だ。

 だからこれくらいはいいだろう。案外、自分も何処か寂しくなるなと感じてしまっている。けど、それでも行かなければいけない。

 

 アルトリアが強く、抱き締め返した。

 流れた涙を見せないように、胸に顔を押しつけて見栄を張るように精一杯の返答を返した。

 

 

「ええ、()()()()()

 

 

 ただ、震える手で別れの言葉を告げたアルトリアの頭を涙が止まるまで撫で続けた。

 

 

 ★★★★★

 

 

「宜しかったのですか?」

「何が?」

 

 

 愛馬ラウレスに乗りながらパーシヴァルが俺に質問して来た。

 

 

「王の事について」

「墓場まで持ってけと言ったはずだ」

「ですが……」

「俺だってあれこれ考えたさ。ただ、俺の存在はマーリンの負担を大きくする。それを十年近く頼ってんだぞ?」

 

 

 いくらマーリンが冠位の魔術師でも限度がある。

 アイツが満足に動けないから俺がマーリンの代わりにあれこれ手を回したんだし。

 

 

「俺だって残れる方法を画策したが、どれも抑止力に引っかかる。俺自身は抑止力に引っかかり難いだけで、肉体そのものはこの世界の法則に適応するなら、いずれバレて消される」

 

 

 降臨者(フォーリナー)としての側面を併せ持つのは恐らくはあっているのだろう。それはあくまで魂の話だ。アビゲイルや葛飾北斎のような邪神の狂気を封入された二面性というのはない。発想で言えばデミサーヴァントか。この世界の人間と外部の人間の魂を融合した存在。故に抑止力に引っかかり難いが、完全とまではいかない。完全にする為にマーリンが根回ししてくれていた。

 

 

「あくまで俺がブリテンに残りたいと思った事は否定しねぇよ」

「そう、ですか」

「つか、お前はいいのか?ギャラハッドもそうだが、聖杯を俺が帰る為だけに使うって了承した上で旅路に同行するとか」

「我等円卓は一度貴方に救われました。卑王の時も貴方がいなければ敗戦の可能性は決して低くはなかったでしょう」

「それは……」

 

 

 あくまで結果論だ。

 犠牲が多くてもアルトリアは卑王を倒していただろう。実際に史実では倒していた。

 

 

「民を想い、国を想い、此処まで走って来た貴方の願いをどうか私達に叶えさせてください」

「……ったく、あーこれだから騎士は苦手なんだよ。調子狂う」

「褒め言葉ですよ」

 

 

 ここまで純粋な心で言われると断るにも断れないじゃないか。これだから騎士の誓いというのは苦手だ。魔術師はみんな大体外道が多いし、そう言った心構えをしている奴の方が多い。外道な事は出来るが、余りそんな事をしたくないと思う自分がいてもそれしかないなら実行する俺は断じて善人ではない。

 

 

「ギャラハッドもいいのか?」

「先生に色々救われましたから。その、ランスロットの事とか」

「あー、アレね」

 

 

 円卓に入る際にランスロットに拘束の魔術をかけて、盛大にギャラハッドにビンタしてもらった。呪われた第十三の席次に入る際に、俺が許可した。アルトリアも騎士としてエレインに放任した罰として許可した。まあエレインは気にしてないようだし、なんならまだ恋心が燻っているのを俺やペリノアで抑えていたけど。

 

 とは言え、円卓の任命式でやったのは笑った。アルトリアも顔を伏せて笑い、円卓の全員は半分同情と半分腹筋の死亡を確認した。モードレッドに関しては爆笑を隠さなかった。

 

 

「それに、母様が生きているのは貴方のおかげです。母様があの男に迫ったとはいえ、それでも愛してくれた人です。本来なら処刑されても不思議ではないのに。貴方が根回ししてくれた恩もあります」

「エレインかぁ……まあ、アイツは恋以外はしっかり者だしな」

 

 

 一応『王の見えざる手』の責任者は俺だったが、この旅路に行く前にエレインに任命した。あの後、まあ色々な事を話し合って、ペリノア達と酒を飲んだりと、送別会のようなものを開いたり、楽しかった。

 

 まあブリテンに残れないのはとても心苦しいのだが、やれる事は全部やったつもりだ。

 

 

「……ん?」

 

 

 唐突に悪寒が背筋に走った。

 まるで水面を踏んだかのように、波紋が広がりそして……

 

 

「ギャラハッド!!!」

「っっ!?」

 

 

 昏き湖、モルゴース。

 そこには何も無かった。見えた範囲に湖も川も、なんなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ギャラハッドの盾がそれを真っ向から受け止め、即座に展開した木の壁で後押しするように防ぎ切る。圧倒的質量に木が薙ぎ倒されるが、ギャラハッドのおかげで無傷だ。

 

 

「今のは一体……」

「……こんな質量を罠で複数展開出来る人間なんて魔術師じゃ俺は一人しか知らねぇ」

 

 

 魔眼で調べた結果、同じ物があちこちにある。

 この質量は人を押し潰すくらい造作もないだろう。パーシヴァルも俺もギャラハッドが居なければヤバかったかもしれない。こんな質量を引き起こせる魔術トラップを複数展開し、尚且つ遠隔操作まで可能な巧妙な罠。これほどの隠蔽が出来る魔術師はブリテンで五指に入る生粋の魔女。

 

 

「出てこいよモルガン?」

「――腐っても夢魔の弟子か」

 

 

 だがこればかりは驚いた。

 まさか直接的にモルガンが攻撃するのは予想外だった。モルガンは策略家でそれこそ魔女のように悪辣な手を使って内部崩壊を引き起こす事こそモルガンの手腕だ。だから直接狙ってきたのは流石に予想してなかった。

 

 

「しっかし、白昼堂々過ぎないか?お前らしくない。アーサー王に消されるぞ」

「赤き蜥蜴に消される?笑わせるな、奴の右腕にしては私を過小評価し過ぎだ」

「いんや、これでも過大評価してんだぜ?ただ円卓とアーサー王を纏めて相手するのは客観的に見て無理だろ。それの可能性があんのは成熟したキャスパリーグくらいだ」

 

 

 流石に成熟した比較の獣が起きたら円卓でも勝てない。

 と言うかキャスパリーグはマーリンの庭で眠ってたりするし。塔がまだ出来てないから庭を作って引き篭もる事が多い。

 

 

「ああ、貴様の言う通り流石に全員を相手するのは無理だったが――もうその必要は無くなった」

「……何?」

「最早駒など要らぬ、私直々にキャメロットを堕とそうか」

 

 

 なんだ?この違和感。

 まるでそれが出来るかのようにモルガンが告げている。確かにモルガンは強い。それこそ神代の魔女を名乗るに相応しい強さを持つ。だが、目の前にいるモルガンは()()()()()()()()()()()()()()

 

 モルガンが力押しで攻める?

 それをやるなら他国の王を傀儡にして俺達に繰り出せば足りる。ただそれもせずに何故一人で円卓の騎士二人と俺の前に現れた?

 

 それは余りにも()()()()()()()()()

 

 

「お前、誰?」

「何を言っている?」

「いや、お前は本当にモルガンなのか?」

「知れたこと、私は――――」

 

 

 モルガン自身が口に手を当て僅かに動揺している。

 名前が思い出せないのか?いや、そんな事はあり得ない。あの魔女が自分の名前を忘れる?それじゃあまるでモルガンが傀儡みたいじゃないか。

 

 

「いや、そんな事は些細な事。貴様を私の物にする」

「はっ?」

「故にそこの有象無象には消えて貰おうか」

 

 

 おい待て、めちゃくちゃとんでもない事言い――!?

 

 

「くそっ!?」

 

 

 即座に置換座標地点に結界を張る。

 しかしそれを意にも介さないように魔術を続行する。パーシヴァルはその場から飛び退き、ギャラハッドは盾を構える。

 

 

「がっ、これは……!?」

「ぐっ……!?」

 

 

 即座に結界を張って座標をズラしたのに、まるで障子紙を破るかのように二人に槍が突き刺さる。しかもご丁寧に置換座標を二つ揃えて二人の行動を予測して槍を突き刺す。座標が僅かにズレたおかげで致命傷こそ避けられたが、二人が一瞬で。

 

 

「止まれ!」

 

 

 大樹を生やし、モルガンを呑み込むように拘束する。

 その間に二人の回復をする。傷はそこまで深くはないが、貫いた槍のようなものに目がいく。魔術で編み込んだソレはまるで最果ての槍に形状が似ている。

 

 

「大丈夫か!?」

「ありがとうございます……。今のは」

「空間置換だ。ともかく逃げるぞ!俺達じゃ防御の上から圧倒され――」

 

 

 バキバキッ!!と木々が折れる音が聞こえた。

 嘘だろ、早過ぎる。展開した魔樹は拘束力に長けた耐久性のある魔樹だったのに、それを小枝のように魔樹で折るなんて。

 

 

「逃がすものか」

 

 

 その槍の切先をギャラハッドに向ける。

 先程の置換と同じ、ギャラハッドが幾ら防御結界を張っても盾の内側から攻撃される。その行動を見た瞬間、俺はその場を離脱する様に叫んだ。

 

 

「っっ!!メア!!!」

 

 

 一瞬にしてその場所を置換する。

 神代紋様を通してこの場の俺とモルガンのみを引き込んで、その場から二人を引き離した。俺が使えるのは癒しの泉に向かう時のみ。だが、あの場所ならまだ対等に戦える可能性が高い。

 

 

「なっ!?」

「先生――!?」

 

 

 パーシヴァルとギャラハッドを置き去りにするように、その場所からモルガンとラスカのみを消していた。

 

 

 ★★★★★

 

 

 そこは静寂が似合う神秘の泉。

 暖かな光に照らされ、ただ一つの大樹には緑が生い茂る。ただ、その光景だけで美しさに溢れた小さな楽園。

 

 竜が棲まうその泉は癒しをもたらし、泉の中では水庭と化し、ブリテンの神秘が溶け落ち一つの理想郷として存在する。

 

 

「ほう、空間置換か」

「使い手のお前が感心するほどのものじゃねぇだろ!メア!!」

 

 

 氷の槍がモルガンの全方位に展開される。

 此処は俺が整備したメアの水庭。この場所は一種の固有結界に等しい程に力を与えている。この周囲はメアの全ての射程距離。その広さは半径40メートル。

 

 

「成る程、此処はお前達の工房そのものか」

 

 

 メアの氷の槍がモルガンに襲いかかった。

 それを横目に少しだけため息をついて安堵の笑みを浮かべた。

 

 

「本当ナイスタイミングだ」

「まあね。それより君が帰る事聞いてないんだけど!私も怒ってるんだよ!?」

「悪かったって!つか、お前の場合泣きついて水庭に封印しかねないだろ!?」

「……いいじゃん。私ドラゴンだし、宝を守るのはドラゴンの役目だし」

「よかねぇよ!?」

 

 

 いや確かにドラゴンにはそんな逸話もあったが、流石に監禁されるのはゴメンだ。愛が清姫並みに重いよ。とはいえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「この場所なら勝てるとでも思ったのか?」

 

 

 昏き水の結界か。氷の槍が全部塞がれた。

 だが、それも水である事に変わりはない。メアの神代紋様を通して竜の魔術、万物を融解する蒼炎をモルガンに放つ。依然としてモルガンは結界を張ったままだ。

 

 

「そんなものが効くとで――」

 

 

 突如、大爆発を起こし結界は破壊されモルガンが吹き飛んだ。

 

 

 

「アホか。幾ら昏き水でも所詮水だ。万物融解の炎は摂氏一万度は越えてんだぞ。水蒸気爆発するに決まってんだろ」

 

 

 まあこの世界科学技術は全く発展してないしそもそも水蒸気爆発そのものを知らないのだろう。まあお陰で意表を突けたが。頭から血を流し、折れた腕を庇いながら気を失わないように必死に耐えている。

 

 

「あっ…ぐううっ!?」

「以前のお前ならこんな手に引っかからない。答えろ、お前は誰だ?」

 

 

 聖剣のデッドコピーを突きつけて目の前の存在に問う。モルガンはもっと頭を回すタイプだ。こんな力押しの手を使わない。なんなら俺に負けるなど有り得ない。

 

 

「私は……!ぐっ……!?」

 

 

 頭を押さえ、胸を押さえつけている。

 身体の内側から魔力が暴れているようなその状態に目を見開き、魔眼でその原因を調べる。

 

 

「お前、まさか……」

 

 

 俺が感じたモルガンの違和感。

 魔力は俺が知っているモルガンより上だ。その原因はもしかしたらと思ったが、それよりも問題があった。モルガンであってモルガンではないその存在をずっと偽者だと勘違いしていたが、それも違う。あの置換魔術、昏き湖の結界は間違いなくモルガンの技術だ。だが、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「止めろ…!これは私の復讐だ……!!邪魔をするな……()()()()()()…!!」

 

 

 まるで自分の内側にいる存在を憎むかのように憎悪を吐き散らす。膝を突き、胸を押さえつけて苦しそうにしている。

 

 

「お前、それ!?」

 

 

 俺達が探してた聖杯じゃねぇか!?

 どうやって手に入れたのか分からないが、合点がいった。

 

 いや、予想こそしていたがそうか。モルガンにはアルトリアの姉としての人格、ブリテン島の化身としての人格、そして湖の乙女としての人格、三つの人格が存在している。

 

 その中に存在するブリテンの意思とも呼べる存在、ヴィヴィアン。湖の乙女という存在は史実的に見ればあやふやでそれこそ複数存在するというが、ヴィヴィアンはかなり特殊だ。

 

 これは仮説だ。

 そもそもヴィヴィアンには様々な仮説が存在する。ペレアスと結婚したとか、ランスロットに加護を与えたとか、ベイリン卿に殺されたとか様々な仮説が存在する。

 

 だが、ヴィヴィアン=湖の乙女。

 これは正しいし正しくない。恐らくだが湖の乙女は島の意思そのもので有り、存在を示すものではないのだ。

 

 というのも、湖の乙女は複数存在するのではなく、ガイアやアラヤと同じようなブリテンの神秘が存在する限り存在する()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 つまり何が言いたいかというと、ヴィヴィアンというのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「っ、ああああああああああああああっっ!?」

「っっ!モルガン!?」

 

 

 聖杯を使って自身を強化していると思った。

 聖杯はあくまで手段だったと思う。モルガンは聖杯で復讐など望まない。その過程でこそ復讐心が満たされる。

 

 聖杯は無尽蔵の魔力炉にもなる。

 その過程で、モルガンは聖杯を取り込んだ。いや、取り込んでしまったのだろう。もう一つの人格、ヴィヴィアンの人格がそうさせた。それぞれ独立した人格、そしてヴィヴィアンという湖の乙女の存在そのものがモルガンに抑え切れないほどに膨れ上がった。

 

 

「卑王みたいに島の意思そのものに押し付けられてんのか!?」

 

 

 此処でもう一つ仮説。

 ヴィヴィアンとは何か。ヴィヴィアンは神造兵器エクスカリバーを生み出したり、加護を与えている存在だ。聖剣が造られる過程で妖精達、星の素材が関わってくるが、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 妖精達は確かに宝具と呼べるものを作ったが、それを神造兵器と呼べるのだろうか?神が造った訳でないのに何故神造兵器と名付けられた?

 

 つまり、ヴィヴィアンという存在は。

 

 

「おい、嘘だろ……なんなんだよこの魔力は」

 

 

 この水庭が支配されかねない莫大な魔力を纏った存在が目の前に顕現する。束ねていた黒いリボンは引きちぎれ、魔力によって黒いドレスが四散し、昏き水が纏わりつく。

 

 それはもうモルガンではなかった。

 瞳が翡翠色に変わり、まるで女神のような独特の雰囲気を醸し出している別のナニカだった。

 

 

「――――」

 

 

 そう、ヴィヴィアンと言うのは。

 湖の乙女と同時に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 




 あくまで仮説です。
 この小説はその仮説に基づいています。

 良かったら感想、評価お願いします。

もし番外編がもう一つ書くとするなら?

  • 妖精郷の女王モルガンと賢者ラスカの一日
  • 神聖キャメロットでの槍王とラスカ
  • カルデアでのラスカの奪い合い
  • モルガンかアルトリアの純愛物語
  • IF もし逆行した原因がモルガンだったら

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