「で、結局あんなに焦って屋上へ向かって付いたら誰もいなかったわけですが、マックスさん一言どぞ」
「完全に徒労だよ畜生!」
屋上へと急いだ三人が目のあたりにしたのは相良と原作組、オリ主()が既に居なくなっていた状況だった。
どうやら途中ですれ違っていたようである。
「……まあ屋上に居た子から大体の状況は聴けたし、よかった」
時間は既に放課後、三人はいつもの様にマックスの家へと足を運んでいた。
今日は泊まることにしていた大地とオルガは一旦家に取りに戻っていた物を持って来ている。
「どうやらオリ主()君あらため神条君はお昼を食べてた相良君たちに堂々と俺が守ってやるよ的な痛々しい発言をしたらしいね。それで相良君が何言ってるんだお前的な反応をして、神条君が弱っちぃ奴が云々で、バニングスさんがアンタなんかよりよっぽどかんぬんと発言したと」
「……その発言に苛立ったらしいもやしは推測だけど魔力波を出して威圧、魔法を認知しない人にとってはちょっと気圧される程度の物だった」
「で、相良君はちょっと気圧された程度の反応しかしなかったから魔法を知らない人間だと断定した神条君は相良君を鼻で笑ってMOB発言、偶然先生が屋上に来たこともあって去って行ったらしいね。ところでもやしってニックネームいいね、今度からそう呼ぼうか」
「……会心作、どやあ」
擬音を言葉で表現しながら本人も心なしか得意げな顔をするオルガ。
またいつものペースに戻りつつある二人に呆れながらマックスは先程の出来事に結論付けた。
「ああ、もうとにかくアノ痛いやつは正しく痛いやつだったと、それで正しいんだな?」
「そうだね」
「……うん、だね」
神条君更にあらためもやし君はお約束的な俺がお前をry発言をかましてくれた。
おかげで少し俺たちの踏み台活動は楽になるかなあ、と思っていたところマックスはちょっとイラついたようだ。
曰く、何でもっと早く出てこなかった。
うん、激しく同意。
それで俺とオルガはこれから楽できるという喜びともやし君への理不尽な怒りで板挟みになっているマックスの今までの苦労を労うべくお泊り会でSETTAIをしているわけだけど、その顔に喜びは見られない。
いつも遊んでいる友人にしかも性別♂に接待されても、気持ちは嬉しいが素直に喜べないとか。
全くわがままな子育っちゃって。
「お兄さん悲しいよ」
「いきなり何がだ!?」
ほら、そう突っ込むところとか特にね。
「……今日も海鳴は平和、です」
「こんな平和嫌だよ!?」
オルガのボケに突っ込んでいるマックスを傍に俺はとっておきの物を持って来ていたことを思い出したので、仲つむまじく漫才をしている二人に物を見せる。
「あ、そうだ新作のクラッシュブラザーズ買っといたから夕飯食べたら遊ぼうよ」
「……賛成、ピカニャンは私が貰った」
「じゃあ自分はドンドンコングね、マックスはどうする?」
ピカニャンに目が無いいち早く反応したオルガに続き、俺もドンドンコングの宣言をする。
マックスは額に青筋を浮かべながらも律儀に回答した。
「全スルーかい!シムスだよ畜生!」
「ぴっちりスーツが好きだなんてマックスは」
「「変態だなあ」」
「そこではもるなよ!いいじゃんか!?」
やっぱり今日も海鳴は平和だよね、うん。
◇ ◇ ◇
「そ、そこはらめええええ」
「場外に飛ばしただけで変な声を出すな!?」
「……隙あり、ゆけピカニャン」
「あっ、シ、シムスさああああん!」
三人で作ったカレーを夕飯に食べた後は居間にある大型テレビで大乱闘クラブラ大会である。
大きな図体でこそこそ逃げ回っていた大地のドンドンコングをマックスのシムスが蹴り飛ばし、変な悲鳴を上げた大地に突っ込みを入れたマックスの隙を見逃さずオルガのピカニャンがスライディングキックをかましてステージからシムスを叩きだす。
現在大地の残機が1、マックスが0、オルガが3である。
大地への突込みで度々隙を見せるマックスを容赦なく撃墜するオルガという連係プレーの結果がこれだ。
最初の接待心などというものはとうの昔にマックスの残機と共に空の彼方へ飛んで行ってしまったようである。
「ドンドンコングのだいしゅきホールドを喰らえい!」
「ぐっ、シムスさんから離れろ変態ゴリラ!」
復帰したドンドンコングがシムスに掴み技を決める。
マックスはシムスを救い出すべくコントローラのレバーを忙しなく動かす。
一方大地は掴み技からのコンボを決めずドンドンコングがシムスに抱きついている状態で停止している画面を見て一言。
「このシチュエーションエロいよね!」
「……知るか!」
「今一瞬アリだと思ったね?全くマックスは変態だなあ、ほいもう一回だいしゅきホールド!」
「鬼か貴様!」
掴み技から脱出したシムスの移動先を予測して先回りしたドンドンコングが再びシムスを捕まえるなか、黄色いネズミがトコトコと揉みあっている2体のキャラクターの元にやってくる。
「……変態どもには鉄槌を、ギコスパーク」
「「纏めて葬られた!?」」
互いにダメージを蓄積させ合っていたドンドンコングとシムスはオルガのピカニャンの必殺技によって吹き飛ばされ、そのまま場外送りとなった。
この時点でマックスは全滅し、大地の残機も0の絶対絶命な状況となる、対する死刑執行人オルガの残機は3。
復帰したドンドンコングに歩み寄るピカニャンは地獄の使者を想像させた。
マックスとの乱闘でオルガの事を忘れ、今更その状況に気付いた大地は引き攣った顔になる。
「オ、オルガ」
「……何?」
親友である寡黙な金髪の少年に精一杯の笑顔で大地は語りかける。
「俺たち、友達だよね?」
「……そうだけど」
「ならさ―――」
「……でも勝負は勝負、やれピカニャン」
無情にも大地のドンドンコングは空へと舞い、それを追う猟犬の如くピカニャンが空中無限コンボを決め場外へと吹き飛ばしていった。
そして画面はリザルトに切り替わり各プレイヤーの順位が発表される中、MVPとなったピカニャンがこちらに短い手を一生懸命振って愛想を振りまいており、後ろではひっくり返った敗北したドンドンコングとシムスが崩れ落ちていた。
この光景を大地とマックスには黄色い悪魔が邪悪な笑みを浮かべて喜んでいるようにしか見えなかったという。