たまたま立ち寄った村で最近魔獣の被害が多発していると聞いたのが2週間前。
お世話になったので魔獣の退治を引き受けたはいいものの、予想外の数に手傷を負わされたのがその次の日。どうしたものかと悩んでいたところに『彼女』が現れたのが1週間前のことで……。
「よっ、どうだい怪我の調子は?」
「かすり傷だからな。もう別になんともないよ」
腰に携えた綺麗な装飾の施された剣を擦りながら、彼女は心配しているというよりは揶揄うように俺を見つめている。
彼女は俺と同じく、こんな時代に旅をしている変わり者。他に知っていることと言えば、多分身分の高い人ということくらいだ。何となく、立ち振る舞いや世間知らずなところが、前に会った自称第二王女様にそっくりだったというだけで、確証はないのだが。
「それにしてもあの程度の魔獣に手傷を負わされるなんて、キミって本当に旅をしていたの? 魔王軍なんかとばったりあったら一瞬で食べられちゃいそうだけど」
「否定はしないけどさ……。普通は俺は勝てる戦いしかしないし、勝てないと思ったら逃げて勝てるよう対策を組むし、自分じゃ無理なら大人しく逃げるよ」
「じゃあなんで今回は怪我してるのかな〜?」
「うっ、……見通し不足でした。あんな数いると思わなかったんだよ。それに、魔獣に困ってる人がいるくらいなら、一日でも早く倒してあげたいって思うのが普通だろ」
「そういうものかな?」
そう言いながら彼女はまた指先で剣を弄る。
多分それは癖なのだろうが、その癖と彼女の黒に近い赤色の髪の毛が、ずっと憧れていた幼なじみの姿を想起させて、複雑な気持ちを巻き起こす。
自分にとって、幼なじみは憧れだった。
この世界のどんなモノよりも眩しくて、いつも自分の前を歩いていたその女の子。自分無いものを、普通の人は持たないものを沢山持ったすごい女の子。
……考えるのはよそう。
決して彼女のことが嫌いな訳では無い。むしろ好きか嫌いかでいえば確実に好きな人であるけれど、だからこそ彼女のことを考えると幸せな気持ちになれない。
苛立ちとか、そんなろくでもない感情が湧いてきてしまうのだ。
「おーい。難しい顔をしてどうした? お腹痛い?」
「いや、なんでもない。それより怪我は治ったんだろう? なら子ども達の相手を手伝ってくれよ。ワタシ、子どもはあんまり好きじゃないんだよ」
「懐かれてるんだろうから俺よりもそっちが相手してくれよ」
「うっわ、将来子育てを手伝わない親になりそうな発言。いいから手伝ってよ。キミ、結局魔獣退治なんもしてないじゃん」
それを言われてしまうと少し弱い。
ふらっとこの村に現れた彼女はどうやら『祝福』を授かっていたらしく、本当に一瞬で魔獣の群れを倒してしまったのだ。
何もしてないのは本当のことなので、仕方ないと彼女について行く。そう言えば、彼女の名前を聞いていなかった。
「ワタシの名前? ……いや、実はちょっとね。名前は簡単に言うなって、ワタシの出身地ではそういう習わしがあって……」
まぁ今の世の中珍しい習わしでもないが、そういう地域出身の人は本名とは別に誰かに呼ばれる時用の名前があると聞いていたのだが。だって、名前が無いというのはあまりにも不便だ。
「呼び名……。そうだね。ワタシの『祝福』の名前でいいか」
扉の前で、陽の光を浴びる赤黒い髪の少女は俺にその名を告げた。
「──────『
エオスは不思議な人だった。
旅をしていく中で出会った相手は、年齢が骨董品モノの魔族であったりとか、魔王軍幹部の王女様とか、超厳しい魔術師の師匠とか、変な人ばっかりであったけれど例に漏れずエオスも中々の変人だった。
「はい! ワタシの勝ち! キミ達の負け! あ〜、まだ立ち上がるの? ならもう泣かすよ? 手加減しないよ? おら、死ね!」
とりあえず子ども達相手のチャンバラごっこに本気を出して子ども達を泣かせる人間であるらしい。さすがに子どもの遊びに死ねとか言いながら参加するのはちょっとどうかと思うな。
「そっちの兄ちゃんも見てないで手伝ってよ! この姉ちゃん大人気なさすぎるんだよ!」
「はいはい。わかったよっと」
「ふははは! ワレに歯向かう愚か者共め! 全員その首叩き落として門前に反逆者の末路として飾ってくれるわ!」
一体こいつはどんな立場なのだろうかと思いながらも、子ども達から棒を受け取って俺も参戦する。子ども相手にも容赦しない極悪非道な女だ。こうなってしまえば多分下手したら俺は殺されるだろう。
そうして構えた瞬間、俺は天を仰いでいた。
「…………は?」
遅れて手首と足に軽い痛みが走り、自分が棒を叩き落とされてついでに足をかけられて転ばされたことに気がついた。エオスが俺を見下し高笑いしていて、子ども達は最後の希望が潰えた絶望の表情を浮かべているのを別の世界の出来事のように見つめながら。
「すげぇ……何も見えなかった」
そんな正直な言葉が漏れていた。
師匠のえげつない特訓のおかげで、体がついていくかは別として大抵の動きなら見るだけならできるようになっていたのに、エオスの動きは本当に何も見えなかった。こんな経験は人生で二度目で、一周まわってなんだか気分が高揚してきた。
「すげぇなエオス。アンタ、もしかして名のある剣術家とか?」
「は? 別にそんなんじゃないけど……」
「じゃあ今の誰かは習ったんだ? 独学か? どっちにしてもあの一瞬でどうやって俺を倒して見せたんだ?」
「え、いや、これはワタシの師匠がワタシ用にって作り出した剣術らしいから、他の人が使えるかよくわかんないんだけど……そんなに凄かった?」
「すごいなんてものじゃない! 頼む、後学の為にどういった動きをしていたのか教えてくれないか。本当に凄かった!」
「ふ、ふーん! そこまで? そこまですごいと思うなら教えてあげちゃおうかなー!」
そうしてエオスはその名前の無い剣術について教えてくれた。
体格から何から何まで、エオスという個人が扱うように完全に調整されたその剣術はとてもでは無いが俺が扱えるようなものではなかったが、動きは参考になったし、何よりエオスという優れた剣士から教えて貰えるということが非常に良い経験になった。
「……ワタシの師匠、ワタシが小さい頃に死んじゃったんだけどさ。冷静に考えたら今でも使えるってことはワタシがこの程度の身長で成長が止まる前提でこの剣術を考えたんだよね。なんか腹立ってきたな」
「でも、弟子の将来のことまで考えてくれてるならいい師匠なんじゃないか?」
「うん。ワタシの師匠はいい師匠だったと思う」
基本的にエオスはその『師匠』という人物の悪口をブツブツと呟いていることが多かったが、話を聞くとすごく良い人そうだったし褒めても別にそれを否定しない。むしろそれを聞くと嬉しそうにする。
そしてエオス本人のことを褒めるとすぐ調子に乗る。煽てられると弱く、変なところで素直じゃない。エオスという人物はそういう性格だったと思う。
他人のはずなのに。
それはすごく、似ていると思った。
今にも崩れてしまいそうな、柔らかな笑顔がリスカに似ていた。だからだろうか。俺は彼女にそこまで踏み込まずに、すぐにその村を去ることにした。
「キミとの稽古の時間。楽しかったよ。これでワタシも誰かの師匠を名乗れるかな?」
そう言って笑顔で胸を張るエオスの顔をまっすぐと見ると、まるで自分の罪と向き合うみたいでまともに顔を見ることが出来なかった。それでも、彼女と過ごした時間は楽しかったし、有意義であったことは間違いでは無い。
「でも師匠はダメだな。俺にはもう、とんでもなく厳しいけど優しい師匠が1人いるんだよ」
「ありゃ残念。でも、良かったよ。師匠がワタシに教えてくれたことが、ワタシなんか以外の誰かの役に立てるなら、きっとそれは素晴らしいことだから。だからそのお礼に1つ、いいことを教えてあげる」
変に自分を卑下する言葉が少し気になったが、その疑問はすぐに次に出てきた言葉の衝撃によってかき消されてしまった。
「この先にある街。そこにキミが寄るのだとしたら……キミはそこで死ぬことになる。どうかこれだけは覚えておいて」
それが、俺とエオスの最後の会話。
暁の光に照らされる中で、その忠告を受けてから俺はまた旅立ったのだ。
「ねーねー。聞いていますか? 一目惚れしちゃったんですってば。一目惚れ。お付き合いしませんか? ほら、私結構可愛いと思いますし。あとなんでもいいんで布ありませんほんと? 包帯の巻き方とかよくわかんないので、このままじゃ本当に裸になっちゃうんです」
正直泣きたかった。
勇者として変態は成敗した方がいいのだろうが、罪もない一般人に手をかけるのは勇者としてどうなのだろうか? そもそもあと数分で罪が生えてきそうな相手だし別にいいんじゃないか?
そんな思考より先に純粋に怖くて涙が出ていた。リスカの人生において、今まで悪辣で狡猾な相手というのは何体も相手取ってきたが、今にも下半身が露出してしまいそうなのに頬を赤らめながら自分への愛を伝えてくる類の変人とは出会ったことがない。
理解も出来なければ未経験。普通に怖くて泣いた。でも勇者は泣かないから頑張って涙は堪えた。
「ちょ、待ってよー! ほら、私結構可愛いでしょ? 愛人でもいいから! お願い!」
「ごめんなさいごめんなさい多分人違いですからお願いしますもう話しかけないで」
「人違いじゃないよ。もうビビッときたんだから。貴方は私の運命の人に間違いなしです」
「多分そのビビッとは下半身を露出していることによる寒気だと思うので早急にズボンかスカートか鎧を見つけた方がいいと思いますお願いします付いてこないでください」
「え? 着ないでください? やだ、そんな熱烈……」
もう誰でもいいので助けてください。
そう思いながら、リスカは前もろくに見ずに曲がり角を曲がると、何かにぶつかった衝撃が走り、
「む、大丈夫ですか? 前を見て歩かないと危ないですわよ?」
誰かにぶつかって、自分の方が負けて尻餅をつくだなんて経験はリスカの人生において1度もなかったため、一瞬何が起きたのか分からずに呆然としてしまい、それから今度は別の事に驚いて立ち上がる気持ちすら失せてしまった。
──────それは、ただひたすらに
平均的な女性よりも背の高いリスカですら見上げる必要が出てくるほどの巨躯は、もはや女性どころか人間、生物として最上位の恵体。
太く強靭ながらも艶やかさを失っていない四肢に巨大な上背を支えるに相応しい筋肉。そして生物として優れているならばこそ、生き物の雌として当然ながら授乳の為の器官すらもあまりに巨大。別にリスカは『彼』がそこまで胸の大きさを気にしないので気にしたことはほとんどなかったし、そもそもこちらも平均より大きいはずなのに敗北感を覚えてしまう圧倒的巨大。
あと何故かこっちは上半身が裸で胸元に包帯を巻いている変態だった。
リスカは心中で己のあまりの変態遭遇率を嘆き、静かに泣いた。
「……なんでこの人上半身何も着ていないんですかね? そういう趣味の変態の類ですか?」
その言葉をそのままそっくり返してやりたいと、首を傾げている下半身露出魔に出そうになった言葉を飲み込む。
「…………もしかして、この後ろの変態に追われて前も見ずに走って逃げていたということですか? 貴方達2人がどのような関係かは存じませんが、人の嫌がることはしてはいけませんわよ?」
じゃあお前はとりあえず服を着てくれと、堂々としている上半身露出魔に出そうになった言葉を飲み込む。
「貴方……私のことを変態と言いました!? 私のどこが変態だと!?」
下半身の服を着てないあたりかな。
「そちらこそ妾のことを変態と言いましたわね! 妾のどこが変態に見えまして!?」
上半身の服を着てないあたりかな。
「私の体におかしなところなんてありません! むしろ私はとてつもなく可愛いと思います!」
「それを言うなら妾の体にもはしたない部分はありませんわ! 故に全裸でも変態じゃありません!」
「…………」
「…………」
「
「
どうか惹かれ合うならば自分のいない所で惹かれ合ってくれと、リスカ・カットバーンは何度目かも分からないあまりに大きな溜息を吐いた。
「なるほど。貴方はそちらの女性に一目惚れしてしまったけれど、上手く思いが伝わらないと。そういうことですわね?」
「そうなんです。一体どうすればいいと思います?」
寧ろ伝わりすぎて怖くて逃げたのだが、下手にこの2人の会話に首を突っ込むのも嫌なのでリスカは口を噤んだ。逃げようにもこの2人、異常な速度で追跡してくるので、こんな服を着てない姉妹の関係者とも思われたくない故にリスカの取った選択はとりあえず大人しくしていることだった。
「なるほど。……妾には貴方に足りないものがわかりましたわ!」
「おお……さすがマイフレンド。一体それは?」
「自分磨き、ですわ!」
布地だよ。
それ以外にも倫理と常識が足りてないけど、まず布地が足りてないよ。
「自分磨き……?」
「ええ。貴方は確かに可愛らしく、素晴らしい人物だと思いますが。貴方はその魅力を他者に伝える努力をしましたか? 高尚な芸術も、相手に伝わらなければそれはないのと同じ。……どんな思いも、相手に伝えなければそれは存在しないも同じなのですわ」
変態の戯言。
なのにその言葉はほんの少しだけリスカの胸の内の存在しない傷を掘り返す。
「誰かに好いて貰いたいならば、まずは己の魅力と気持ちを伝える。それでも足りないのならば……もっと自分の魅力を見せつけて、相手が思わず欲しくなってしまうまで見せつける! それだけですわ!」
「おぉ……さすがはマイフレンド!」
「それでは妾は実は今追われている身なのでここらでさらばですわ! また会いましょう、マイフレンドとその恋人さん!」
「誰が恋人だ」
とりあえず1つの変態が去り、残された変態は改めてリスカの方を向いて自己紹介を始めた。
「さっきは急に告白してごめんなさい。驚きましたよね。ちょっと貴方が私の好み過ぎて……あ、私はエ……エノレアって言います。改めて言いますと、貴方に一目惚れしまして」
思ったよりも丁寧な自己紹介が飛び出してきて面を喰らいながらも、どうしようかと考える。
まず告白だが、残念ながらリスカに同性愛の趣味はない。
「うん。ごめんなさい。私は同性NGだから」
「……そうですか。じゃ、じゃあお茶だけでも!」
「…………あのさ、まず言いたいんだけど」
何となく、気の迷いだ。
これだけ迷惑をかけられて、怖い思いをさせられて、本当に嫌なのに。
気持ちが本物であることだけは伝わってくる。そんな自分にはない『勇気』を持っているこの子のその気持ちを無碍にすることは、リスカ・カットバーンには出来ないと思った。
「下、なんでもいいから買ってこない?」
「見繕ってくれてありがとうございますリスカさん。私、もうこの服一生着ます」
「そういうのいいから。ほんと、気持ち悪いから……」
とりあえず適当なスカートを買って与えてやったのだが、これがもう腹立つくらいに似合ってしまい、先程までいた変態の姿は消えてなくなりそこに居たのは絶世の美女になっていた。
「ところで、なんで街中でスカートと下着を無くしてたの?」
「ああ、実は私……えっと、なんて言うんでしたっけ? アレですよ。あの生まれつきの特殊な力」
「もしかして『祝福』のこと?」
「……はい。それですね。私、『祝福』で好きになったものを溶かしてしまうんです。だから、お気に入りの服とかみんな溶かしてしまって」
生まれつき『祝福』を持つものにとってそれは当たり前の力であり、手足を動かしたり、声を出すのと同じように祝福を自由に扱えるとリスカは聞いていたが、まるで彼女は自分と同じ、あとから祝福を得たような口振りでそう話した。
困ったな。
さっさと話だけ聞いてどっか行ってしまおうと思っていたのに、ますます離れづらくなってしまった。
「実はたまにいるらしいんですよ。生まれつき『祝福』を扱う才能はあったけれど、何らかの理由でそれに気が付かずに生きているヒト。大抵はその才能に気が付かずに生きて死ぬらしいんですけど、私は……運悪く、事故で頭を打った時に発現してしまって。それ以降、まともな生活を送れなくなってしまったんです」
「まともな生活、ねぇ……」
もしも自分に『勇者』としての才能がなければ、なんてことを考えた回数なんて、それこそ数え切れない。
まともに包丁すら握れない、ただ誰かを殺すだけの殺戮人形。それがリスカ・カットバーンに与えられた才能であり、神からの祝福。
「……私の祝福は生物に効き目は薄いんですけれど、それが厄介で。一目惚れとかすると、その……先に私の服をそうしたみたいに、相手を……」
それを聞いてゾッとした。もしかしたら、自分もあの変態2人組の仲間入りをさせられていただなんて考えたくもない。特にあのデカい方の変態はなんというか、人間の匂いがしなかった。絶対にアレは狂人かろくでなしの類。同類認定なんて死んでもお断りだ。
「でも、貴方にはそれを制御できたんです。だから、それも嬉しくて二重に昂って……改めてすいませんでした。私、普通になれたのかなって嬉しくなっちゃって……」
「まぁ、別にそういうことならいいよ。謝らなくて」
縮こまって、まるで自分から世界から消えてしまおうとするエノレアを引き止めるように。
「今まで自分の世界になかった、『トクベツ』なモノを見つけたら、そりゃ嬉しくて正気じゃいられないよね。おかしくなるのも仕方ないでしょ」
「……えへへ。そうですね。リスカさんはそれくらい、私にとって特別なんです。私が溶かすのを我慢出来たのは初めてなんですから」
リスカ・カットバーンに同性の友達なんていなかった。
いや、リスカ・カットバーンに友達なんてものは一人もいなかった。どんな人間であれ、彼女と同じところに立てると思う人はいなかった。誰もが一歩引いたところから彼女を見る。
恐れたり、敬ったり、誰も彼女を女の子として見なかった。
唯一見てくれた『彼』とは、きっと自分は友達では無いのだとリスカの方が認められない。
だから、エノレアという女の子はリスカの初めての女友達だった。
話していると心が軽くなる。気が合うし、恋バナなんてものもしてしまった。驚くほど楽しい時間が過ぎて、気が付けば日が暮れる寸前になってしまっていた。
「……もうこんな時間。それじゃあね、エノレア。私は『勇者』だから、また生きて会えるか分からないけれど、またどこかで……エノレア?」
「どうしよう。今日だ……今日だった。なんで、私は忘れてたんだろう」
エノレアは空に浮かぶ満月を眺め、震える声で呟いた。
その顔は青ざめて生気を失い、今にも膝から崩れ落ちてしまうくらいに何かを恐れているのが見て取れる。
「エノレア、どうしたの? 体調でも悪いの?」
「……リスカさん。この街から逃げてください」
「は?」
「魔王軍幹部が来ます! この街はきっと、誰も生き残れません! お願いします! 逃げて!」
「きゅ、急に何言ってるの? またおかしくなったの?」
仮にもし、彼女の言うことが本当だとしてだ。
リスカ・カットバーンは魔王を倒すために後天的に祝福を授かった『勇者』だ。ここに魔王軍幹部が現れるのならば、リスカは逃げる理由はない。逃げることは出来ない。それが『勇者』だから。
「……勇者。あ、あぁ。なんで、なんで私そんなことも忘れていたんだろう。昔からこうなんです。私、好きな人のことを思うと、全部頭から吹き飛んじゃって……」
太陽が沈む。
誰そ彼と問う曖昧な時間は終わりを告げて、はっきりと闇の時間が訪れる。
「…………エノレア?」
「…………これが私の愛なんです。だから、リスカさん」
月のように綺麗な瞳がリスカに向けられる。
心を融かす夢魔の笑みが向けられる。それは遊戯の始まりの合図。噂に聞いた、地獄の始まり。
「私の愛を、受け融めて」
理性よりも先に本能で飛び退いたリスカ。
その背後の建物が文字通り
この攻撃は知っている。直接見た訳では無いが、勇者として知らないわけが無い。
一夜にして街を融かし滅ぼす厄災の名前。
「魔王軍幹部、『視殺』の
・従者くん
いつも女口説いてる。
・エオスちゃん
祝福持ち。なんでもバラバラにできるらしい。
・上裸の変態
職場に退職願出しに行った帰りに襲撃されて防具を失った。本人は無傷。
・エノレア
本名、エウレア。魔王軍幹部の1人。
・リスカ・カットバーン
魔王の対の概念、『勇者』の1人。
好き
-
リスカ
-
ホシ
-
スーイ
-
ギロン