「おじさんやっと終わったのー!?もう夜になっちゃったんだけど!遊べないじゃん!嘘つき」
最期の仕事が終わり、儀式のようなうわべだけの30才の盛大な祝いを受けたあとさっさと寝ようと思ったとき。餓鬼が駆け寄ってきてボコスカと叩いてきた正直痛くも痒くもない。
てかもう日付すら変わるぐらいなのだが、こいつはいつまで夜更かししてるんだ。
「そんな約束した覚えねぇが?あとやっと終わったんだから寝させろ。もう目を開いていたくねぇ。」
怠い体を動かし布団に入ろうとすると、電子レンジに入れて暖めたばかりなのかくそ熱いホットケーキを顔にむけ投げて張り付けてきた。
やっぱり最期の時までクソ餓鬼だわこいつ。
「あぢっ何するんだ、こいつ。」
そう言ってすぐにつけられた物をはがし、頭をグリグリと仕置きをする。
「だって、ほしいっていったのおじさんじゃん!いたいいたい頭割れるー」
そうギャンギャン喧しく騒ぎながら、もう眠りたい俺の邪魔をしてくる。寂しいのは分かるがそこまでになるか?
とりあえずくっそ熱いレンジで加熱しすぎなホットケーキを冷ますように寒空の元に放置する。
「割れない割れない、そんなんで騒いでたら色々と切りがねぇぞ。おまえだって男だろ?そんぐらい我慢しろ。
後あれは冷めてから喰う。」
「えー!もう今日終わっちゃうよ、そうしたら誕生日プレゼントの意味ないじゃん!」
「もう十分祝われて疲れてんだよ。」
「じゃあ一口だけでも良いからさ、昼に僕の時間削って作ったんだよ!それをそのままとかー」
あー話にならない、まぁ餓鬼だから仕方ないところもあるのだろうが本当に甘やかしすぎというかなんというか………
仕方ない、俺が喰えばこいつは大人しくなるだろう
そう思い、放ったホットケーキを拾いサランラップを外し一口齧った。味は、普通の甘い生地だまぁだいぶペッタンとしているが。
「ハイハイ喰ったぞ、あり」
頭を撫でようとするが………………………
視界がグルンと逆転し、端から黒く黒く染まり始める。
もう終わりだ、こいつの相手を終わらせるぐらいの時間はあると思ってた。
もう一日が終わる、役目も終わる、もうどうでもいい、あいつも、仕えてる奴等も、俺を変に崇める奴等も、全て今日俺にとっても総てにとっても意味はなくなる。
これもある意味での呪殺となるのだろうか?
そう考えると忌々しいほど良くできた呪いだ、押し付けるだけ呪いを押し付けて後は勝手に呪いによって自滅する。
「ねぇおじさん?寝てるのおきて………
電話っ!救急車呼ばないと、おじさん死んじゃう!皆も呼ばないと死んじゃう。」
そう言って知識が足らない割には、頭自体は回るらしいあいつは異常に気がついたとたんに鬱陶しく俺の身動きが取れない体を擦るのをやめ。真っ青な顔をしながら静かな夜の屋敷をドタドタと騒がしい音をたてて駆けていく。
死ぬまで、いくつの時間が掛かるのだろうか。痛みはない、恐らく次の継木に引き継がれているのだろう。声を出すのすら億劫で最期の気紛れに手を動かそうとしてもピクリとも動かない。
だんだん心臓辺りに冷たいものがピトンピトンと溜まっていくような感覚がする。
これが溢れたら死ぬのだろうか?
そんな事を考えていると、あの餓鬼が呼んだらしい家の者が続々と集まっていた。特に助けようとかそう言うのはない。
只膝をついて俺の息の根が止まるのを待ち続けているだけ。
「おじさん!救急車呼んだよ!皆可笑しいよなんでなにもしないの?このままじゃ死んじゃうよ!
おじさん!おじさん!救急車呼んだからそれまで頑張って!死なないでもっと遊びたい。」
あいつが、騒ぎ立てながら俺に寄ってきた。もう無駄なのに抗っている、まぁ俺のためにご苦労な事だともう音しか聞こえない真っ暗になった空間で思う。
恐らくあいつのことは家の奴等は止めてはいない、俺の最期はもうとっくに決まっている。
「おじ………イッ」
ドサッとナニか重いものが倒れる音がした、苦しむような子供の声も聞こえた。
その瞬間確信する、俺にとっては最もなってほしくは無かったどうしてよりにもよって………
こいつが次の継木、俺の後の役目を担うもの。
その瞬間、絶対に伝えなければいけないことが一つあるその一つだけでも伝えなければならない。
俺は声に出てるかわからない出ていたとしても聴こえてるかどうかわからない。
《己の名前を忘れるな》
そう叫び続ける、なんでもっと早くになんでもっと準備をなんでもっとこいつの願いをそう頭のなかでさっきまでは無かった死に向かうまでの後悔が溢れていく。
伝わったのだろうか、伝わってなかったら俺とても滑稽だよなハハハ己の呪いすら遺せず後継ぎに押し付けるのだから。
ごめん ●● ●●● そしてどうかこいつだけは
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今日はとても良い天気で、雲一つもない晴天
昨日は大切な親代わりのようなおじさんの命日
必死に助けようと救急車を呼んだことまでは覚えている、だけどそれと一緒に僕も運ばれて今この真っ白な天井。
痛い気持ち悪い、吐き気がする、ぐらぐらする。
昨日からずっと、身体の中をぐちゃぐちゃにされたように気分が悪い。おじさんも死んだなら僕もこのまま死んであっちにいきたい気分。
そうやって病院のベットの中で、くるまっていると。
静かに扉が開いた。入ってきたのはいつもおじさんの近くにいた女の人ゆっくりとだけどもしっかりと僕の側に近付くと口を開いた。
「継木 櫻様お具合のほどいかがですか?」
「僕はおじさんじゃないよ。」
「そうですね、先代継木家当主は役目の最期を昨日全うされて逝きました。その次の当主があなた様なのです。」
そう彼女は、僕がおじさんの後を継いだと言った。
からかいや冗談ではない事を示すようにおじさんが持っていた古びた巻物を手渡してくる。
なんとか手を伸ばして、巻物を開いてみる。
そこには、大量の文章が細かく書かれているし更には巻物はいくら捲っても終わりがなくずっとなにも掛かれていない茶こけた古い紙がどこまでも永遠と続いていた。
「…………これはおじさんの?」
「そうです、これは先代継木家当主が代々受け継いできた呪いを扱う術と血の縛りの詳細です。
継木 櫻様貴方はもう術式を行使し継木家当主としての役目を果たし始めています。体調が突然優れなくなったのもその役目の一つのせいです。
先代継木家当主の具合があまりすぐれてはいないことは、継木様もお分かりでしょう。」
不思議な巻物の内容は僕には難しい漢字がつかわれているのと文字が崩れすぎていてよく読めないけど、僕が巻物をなんとなくみていると色々と話をしてきた。
なんだか僕が当主?であることの証明のようなお話らしい、おじさんも死んで色々突然で痛くて気持ち悪くて頭が回らない。
「つまりこの痛さとか気持ち悪いのはそのせい?」
「はいそうです。」
「なんで?そうなるのおじさんもずっとそうだったの?」
「えぇ、先代も同じような感覚を持っていたと思われます。私達の継木家の血は少々特殊なものが流れております。
詳しくすると長くなります………
なるべく短く言うならば、この血を継ぐ者の呪いを収集し呪いによる害を受け入れる事ができる者が継木家の当主となり代々当主となった際には継木 櫻というお名前で御呼びすることになります。
その気分の悪さは血を分けた者の呪いによる害と生み出し漏れでた呪いを受け入れている証 つまり当主としての証となります。」
とても長い話で半分も聞いていられなかったが、僕をやたらとおじさんの名前で呼ぶ理由は分かった。
そしてこの苦しみに慣れないと一生ろくに動けないだろうという半ば諦めにも近い確信も。正直ふざけんなと思う、だけれどもそれを行動に出す気力も削がれているような気がする。
「おじさんもそう呼ばれる前の名前があったということ?」
「先代はいくつかの例外になります、生まれ落ちた時点で当主としての役目を担っておりました。ずっと継木 櫻様でございます。」
「………………」
へぇそうなんだと思いつつ、窓の外を見た烏が空へと飛び立っていく様子をぼーと眺める僕から特に話したいことが無くなっていた。
「後の事は、こちらにお任せください。継木家当主 継木 櫻様、退院後お迎えに参ります。
他の事項や、知るべき事などはお迎え後お知らせ致します。」
向こうも一先ず伝えたいことは言い終わったらしく気まずい無言の時間が幾時か経った後、言葉を残し去っていった。
僕は巻物をベットの横のテーブルにおいた。
今さら気がついたが個室の病室で、色々と小綺麗に纏まっているこれも当主になったという現れなのだろう。
そう適当に考え、痛みから逃げるように眠りにつきたいと目を閉じる。
考えるのはおじさんの葬儀には出たいという事、もし出れなくてもお墓の場所は絶対に教えて貰う絶対にだ。
****************
ずっと続く痛みの中なんとか眠りにつく。
「こりゃひでぇな、餓鬼以外全員くたばってるじゃねーか………特にイテェから来てみればこの様か。
ヒーローは遅れてくるというが 呪術師は手遅れな時にしかこれねぇって事だな。ハッ、くそが。」
瓦礫の隙間から今より若いおじさん?だろう人をみていた。すると手を掴まれずるりと引っ張り出される。痛いはずなのだが夢なのか、痛みも掴まれた感覚も感じなかった。
「……………………」
僕は、色々と夢だけど話そうとした。死んでしまった人とこんな形でも会えたのだ、色々と言いたいことはあったが声には出ずに無言になった。
まるで映画を流してみるように淡々と確定している行動が流れていく。
「お前名前は?とりあえず安全にはなってはいるが、名字は分かるがなぁ……表札は見つかってるし。」
「…………………」
「とりあえず外でるか。」
そういうと、おじさんだろう人は僕の手をとり色々と崩れ果てた場所から出ていく。そして僕は抵抗せずについていっていた、そして学校のような場所につれていかれて白い部屋に入らされた。
汚れた服をとられると色々傷がついていた。火傷や青痣が服で見えないところに多いように見えた。
「こいつのこれは呪霊による傷か?」
「いや、呪霊によるものはここにはないね。全部他の要因だよまぁ普通の傷もなんとかやれるし、かるーくやっとくよ。
櫻君の頼みでもあるしね。」
「ありがとうございます、呪霊による負傷はあると思ってたのでこちらの勘違いですがよろしくお願いいたします!」
「………………」
そう言っておじさんは部屋を出ていって、医者のような人に色々湿布を張られたり骨折れてないか診られて。帰りに一緒に帰ったここまで僕は一言も話していないいや話そうと思っても声が出ない。
「継木家当主としてこいつを迎え入れる!」
と僕を家に連れてくるやいなやおじさんは色々言っていた、家の人は特に何も言わなかったが善意というよりは無関心という方が近い。そのまま空き部屋までつれていかれて。
そこを使っていいといわれ、たったままだと埃とかすごいかと掃除を始めていた。まぁでも軽い掃除ですむぐらいの汚れで、これでいいだろうとおじさんは空き部屋に入ってここは安全だと示すようにくつろぎ始める。
「大丈夫だから、入って良いぞ。怖いものはないからな?」
「………………」
そうやるとしぶしぶと言った様子で体が動き始め、部屋の端っこにちょこんと座るようにしていた。
「お前の部屋なんだから、もっと自由にして良いんだけどなぁ。名前はいえないのか?
自己紹介が遅れたが継木家当主 継木 櫻という。当主、当主と堅苦しく呼ばれてることが多いがお兄さんでもなんでも好きに呼んでくれ。」
「名前わからない、ついてはいるだろうけど呼ばれたこと無い……」
やっと僕の声が出た、相変わらず勝手に出すかんじになってしまうが。その声を聞くとおじさんは頭をすこし抱えて。しばらく悩んだのち部屋から出ると紙と筆を持って戻ってきた。
「なら俺表札でなんとか名字分かるから、つけても良いか?名前無しとか分かりにくいし。」
「……………………」
そうすると紙に筆で、さらさらと僕につけられるだろう名字と名前を書いていく。書かれた字は正直にいえばなんとか読めるというような丸文字で癖はある。
「紀野 楓 (きの かえで)とお前の事を呼ぶことにする。それで良いか?戸籍調べて終わるまでの間になるかも知れないがどっちか好きな方使え。」
つけた名前の書いた紙を部屋の戸に張り付けた。
それをみて僕は
「かえで」
と一先ず自身につけられた名前を呟いた。
「もう疲れてるだろうから寝ろ、今日は櫻お兄さんがついてやるから。」
「…………………」
おじさんに、促されるとすぐに僕は眠りについた。
****************
夢の中で眠りについた瞬間
目が覚めた。時間は朝ではなく深い夜の時間で、体の芯まで凍るような肌寒さに襲われた。
「そういえばおじさん『己の名前を忘れるな』ってとても消えそうな小さな声で言っていた。僕の聞き間違いかも知れないけど。
紀野 楓 という名前を忘れずにいれば良いんだよねきっと。」
予定では、呪術一年生と同時に高専デビューしたいなぁ
どの組み合わせがみたいですか?(展開影響アリ)
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継木&虎杖
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継木&釘崎
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継木&伏黒
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一年ズ+継木
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継木単体