「どうしてあの時突然離れたんだ。顛末書に書くからな。」
僕は今学長室に、最初に来たときのようにソファに座っていた。目の前にあるのは事の詳細を伝える為の複数の紙………そして僕が撮っていた写真も混じった複数の写真が資料として置かれている。
ちなみにあの橋の学長との任務が、終わったあとたらふく肉食わされた時間がたった今でも油が喉とかの粘膜に張り付いているようで、気持ち悪い。食うだけならと野菜ばっかり食って水で流してたのに目つけられた………いや本当に味のついた固形物自体あんまり得意じゃないのに油強めな肉はきついって。
あんまり味が無いものも今の僕じゃ受け付けないのに………うぇっあの時を思い出しただけでも胃液が迫り上がってくる吐きそう。最後に甘ったるいチョコソースとキャラメルソースが、たっぷりかかったバニラアイスクリーム追加されたし。好きだった物は、精神的にもかなりダメージがある。
辛いのは、ある種のあの行動への仕置であり説教みたいな物として食わされたんだから学長からみても当たり前なのだろうが。やっぱり食事はゼリー飲料と足りないのはサプリメントが、一番ラクなことを再度実感した。
栄養点滴で直接打ち込む方法もあるけど、時間かかるからな…………動けないし。
「詳しく分からないですけど、ここから僕の中だけの想定そして裏付けが取れないものですけどいいですかね?」
にしても顛末書か、確かに補助監督達に基本的に任せているとはいえ本当に事象などを確認したのは僕達だ。特に今回は補助監督さんの付き添いなどはない、呪術師のみで実行し遂行した任務となる。
多分一人の呪術師に、ある程度の補助監督をつけるのは記録の改竄を防ぐ為という目的も有るのだろう。
中の状況は本人談のみで済ますしかない事が多いだろうが、外装はごまかせなくなる。
「封印についてか。」
「恐らくあの封印は、最初に橋を作った時の生贄が主となって生まれた呪霊と。
鎮めるためとまた生贄を投下した。その結果生まれた呪いどうしが拮抗してた結果の安定だったと思います。」
「お前が向かったのはそっちか。」
あの呪い………達が向かっていた力の主な方向は橋の方、石をちゃんと同じ力で投げて対称的な向きでぶつけたらエネルギーがちょうどぶつかった地点で0になって2つとも落ちるように………
その現象に似たことが結果発生して封印として呪いを抑える作用をしていた。
「えぇもう一つの、存在すら知らなかった人達です。学長があのまま最初の方を倒してももう一つの方が力をつけて成り代わるだけだったので。
弱い内にと………無茶したなぁと思ってますけど。」
「今度からちゃんと言え。」
なので正直全部祓う必要なんて無かったのだ、封印を再度行うという観点から見れば。あの影のような人の残滓をあちらと同じぐらい弱くなるように調整すれば良かった。
…………人が手を加えなければならないそれほどまでに差が出来ていた要因はおそらくコレだろう。
「後拮抗が崩壊した主な原因………コレですね。」
「なんだ?動画か………
人が入っていたか、死体は発見できなかったが。………途中で切れたな。」
学長は僕が差し出した、スマホに映る動画に首をかしげる。中に入ってるのは無理矢理に作ったようなテンションが高い金髪の男が山奥に入って行く様子。
調査のときに壊れていた石を、壊す様子やゲラゲラと下品に笑い荒らしていく。そして最後にジジッと砂嵐がはしり男のつんざくようなカエルが潰されるような短い悲鳴で動画は終わった。
「人が入っていたこと自体は、あまり問題ではありません………この呪いが認知され動画という実物も相まって現実的に広まってしまった。その結果橋の方の呪いが、呪力を注がれ強くなり拮抗が崩壊した。
そう考えてます。」
「情報伝達による、遠方への呪いの拡大か………負の感情が広まる範囲が増えた結果ともいえるな。」
同じ呪いの力で、ある種の無効化をおこなってた今回の場合、力の拮抗が崩れるそれそのものが不安定化の材料となる。封印の印が弱まったとかそういう事はどうでもいいのだ、結局村のやった事は意味が無かったのだから。
2つの呪いのうち片方だけに、この動画………オリジナルは会社側からなのか削除されているが複製が拡散されている事もあって村だけでだんだん退化して終わるはずが。
動画を閲覧した人々から出た、負の感情呪いが注がれ安定の前提である力の拮抗が崩れたのだろう。
「呪いの中心点を橋と誘導して、その地点でのみ循環させ続けるものという予想だとな。呪物として変質したのは膨大な呪力にあてられ続けたからか。」
学長は、暫く考え込んだあと補助監督宛に伝えるであろう資料の記入をしていく。確かに呪術としてはあり得るが、珍しい現象の一つだろう。
普通なら一つのみで閉じ込める、強大な呪いで他の呪いを寄せ付けなくするぐらいで………
呪い同士を拮抗させて、その場でのみで停滞循環させ他の地域に害が行かなくすると言う方法なのだから。
「だから、片方僕が行ったのは只の我儘なんです。あのまま放ってはおけなかったんです。」
「……呪いは祓える物は祓っておいたほうがいい。お前がしたことは発言の不足はあるが呪術師として当ぜ
すまない席をはずす。」
学長は僕の言葉に、飲んでいたお茶を音を立てずに静かに置き、目を合わせて何処か啓す様に話しかけてくる。
やっぱり上に立つものは、強さだけではなく人望も必要になるのだろうと言葉を聞いて改めて思った。僕は当主として据えられて入るがここらへんがまだまだ不足してるな習うことは多い。
後呪術師として当然のことと言う物が、嬉しくなった。まだこんな業界捨てたものではないとか思い込める一つの理由にはなる。
「宿儺の器だと!!!!!どういうことだ悟説明しろ!」
私用でそれともまた別の仕事用の携帯なのか途中で音がなり学長は簡単に謝りながら席を外した。
学長室の外でなにかの会話をしているようだが………五条に対しての怒りのこもった大声に鼓膜が破れるかと思い耳をふさいだ。
宿儺の指と関係あるよなぁ絶対、恵の行った任務以外で宿儺の指と関係あるのあったけ………ぁっ報告が五条からだったコレ確実に恵の案件絡みだ。
死んでないといいけど。
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あの呪霊に受けた頭や体の傷を、高専配下の病院で軽く治療を受けて(本格的なものは家入さん任せになるだろうが)任務用に用意された何処かの部屋で色々ありすぎて逆に眠たい。
そんな中、何度も何度も着信を切っても電話をよこしてくる奴がいた。五条先生なら直接来るだろうし、電話番号からも恐らく。
「やっと出た出た恵、今回の任務無事と言えるのかな?まぁ生きてて何よりだよ。」
「こんな真夜中に、掛けてくんな。着信音が煩くて寝れねぇんだよ、何度も切っただろうが。」
開口一番に来るのは俺の今回の案件での生存を喜ぶ声、口調などは明るいが、相変わらずの何処か冷えた様な感覚を電話越しでも感じる。
それには、もう慣れた………俺から見て最初に会った時よりは遥かに感情表現はマシにはなっている。裏表は少ないが濁りがある、そういう感じだ。奥に進めば進もうとするほど分からなくなりそうになるのは濁りと言って良いだろう。
俺はとりあえず、夜中に何度も何度も電話してきたこいつに隠さず言う。はっきり言わないと通じないタイプな事は、分かりきっていることの一つだ。
「日本にも、時差あるからねー」
相変わらず砕けた口調で話してくる、電話越しに元気そうでなりよりだと笑っている姿を幻視しそうなほどに。確かに、瀕死の重傷と言うわけではない呪術師と言う毎回死と、隣合わせにしては軽く済んだほうに数えられるだろう。
虎杖悠仁と言う巻き込んでしまった呪いに関係の無いはずだった一般人のお陰で。
………歯の奥がギリリと音を立てた。
「国内に時差なんて殆どねぇよ、お前が今いる場所北海道かなにかか?何言ってるんだ安否確認だけなら寝るぞ。」
「今は高専に、任務終わって帰ってるから東京だよ。今回の案件の虎杖悠仁に助けられたんだっけ恵?」
俺は、すぐにこいつからの電話を切ろうとしたが………痛い所をつくように虎杖悠仁と言う名前を出された。助けられたんじゃない…………
「……………虎杖か虎杖悠二、そいつを俺の油断で巻き込んだ。」
俺が、この呪術界に巻き込んだんだ。宿儺の指を呑んだことは虎杖自身だとしても。
俺が時間を稼げていれば五条先生があの場に来ていた、強ければあの呪霊をあそこまで追い詰められず祓えていた、最初から残穢に惑わされずに宿儺の指を追えていれば…………!
スマホを握る力が自然と強くなる、ちょっと画面が歪む………それを見て買い替えどきかと言う思考が現実逃避するかのように横切った。
「それが偶然宿儺の指を抑え込める特異な存在だったって事だけは、僕は学長から聞いたよ。」
「そうか聞いてたか、お前。」
そういう思考をすぐに水を掛けて強制的に戻されるように、あいつは淡々と事実を確認するように陳列するように語りかける。いつの間にかあいつの取ってつけたような明るい口調は、声にあった冷ややかで自然と通る物へと緩やかに変わっている。
誰かを責めるものでは、全く無い。
けれども赦すものでは、全く無い。
「と言うより、学長が驚きすぎて声が漏れてただけなんだけどね。それを聞いて最後に戻ってきた時に学長相手に少しお話を追加でした。」
「………秘匿死刑が決定した事もか?」
「勿論!僕耳は早いからね。」
俺の言葉に、声の揺らぎ等の一切の動揺を見せずさも前提を全て知っているかの様に話す。継木の力は呪いを己のみに蓄積させる特異性が目立つがこいつ自体の本領は対話だと思う。
人に詰め寄るまでもなく、粗を出させるのがただひたすらに得意なのだ。そしてそれを元に、深く深く勝手に掘っていく。
あいつがこの場にいたらきっと俺は一発絞めて会話の流れを切らしてるだろう、純粋に腹が立つのもあるがそうしなければあっという間に毎回主導権を取られる。継木としての教育の賜物か、それともこいつ自身の素質そのものなのか。
「そうか………今聞くのは、筋違いで場違いかもしれないだけど………お前は宿儺の器 虎杖悠二の事どう思う。」
………けれども観察眼と揺るぎ無い善性自体は、本物で完全に俺は拒絶して終わらせることは出来ない。きっと完全を求めることは出来るだろう。
あいつは、高専デビューとかいって五条という身近なちゃらんぽらんを元にした様に普通そうな明るいと見えるように、身の振り方を変えた。
実際に、呪術師として動く時には殆ど敬語を使っている。そして任務に抵抗するような素振り自体は見せるが一度もやらなかったことも遅れたことも無い。
だからこそ聞いてみたかった。
お前にとって宿儺の器虎杖悠二は、どう思うと。
「らしく無いね、まぁ実際に会ってみないとどうとも言えないかな?
だけど、恵君が彼………虎杖悠仁と言う一人の人間を生かしたんだろう?ならそれ相応の善性を持っていることは伝わるよ。思い入れの無い人間を可哀想だから肩入れする精神性じゃないしね。」
「相変わらず、お前は一言余計だな。
確かに俺の我儘な事は、事実だがなんでそこまで知ってるんだお前は。」
あいつはらしくないと、俺の事を言った。
その後に虎杖悠二は、俺が生かしたんだろうと説いたその後に理由は善人だからとまで付け加えて。グサリグサリと俺の中膿を潰すように、淡々と突き刺す。
こいつと話してるとたまに隠していた嫌な所が切開され、暴かれるそんな気分になる。
「知ってる訳じゃない、事実のない憶測だよ。呪術規定に沿えば宿儺の指を呑んだ彼は即刻死刑だろうし………五条先生はそう言うことあんまりやら無そうだし、現在特級呪術師の乙骨さんという秘匿死刑からの高専請け負いの前例はあるけど。
そうなると恵君の影響しかないかなぁって、只の勘だけど。そして普通の人だったらしないだろうし恵君からみての善人だろうなぁと。」
「あーお前はそういう奴だよな、本当に!」
………たまにどこまで知っているんだ、と思うことはあるがこいつは知っている事を組み立ててるに過ぎないことが多い。それを対話でぶつけて、反応で真偽を確認する。
会話はキャッチボールに例えられるが、こいつはまれに壁当てのような行為を行う。会話によって得た言葉による答えではなく、声の変化や揺らぎ行動をみて心情を図る。
きっとそれをされた。電話越しでだ。
「………………で、僕からちょっと聞きたいことがあるコレ終わったら切るからさ。宿儺の指を百葉箱から本当に持ち出したのか?虎杖悠仁は。」
「見た時には、百葉箱にはもう宿儺の指はなかったそしてあいつは宿儺の指が入った箱を持っていた。俺から見れば確実に持ち出したのはあいつだ。」
暫くの沈黙の後、あいつはふと思い出したかのように口を開く。本当に持ち出したのは虎杖悠二なのだろうか?と俺の目から見ればあいつは確実に宿儺の指が入っていた空箱を持っていた。
参考に渡された写真通りの箱をだ。
「うんそっか。
今でも僕の中では、まだ違和感の多い案件だから恵も忘れないようにね………宿儺の器が偶然見つかって指を消せて呪術界としては幸せとかそういう単純な物では決してないから。」
「分かってる………」
そう言えば、あいつは最初っからこの任務が俺に割り振られていたことに気がついた時異常な程警戒をして他の呪術師もつけた方がいいと騒いでいた。この任務以外では恵の実力には妥当だね、かちょっと難しいかもしれないから気をつけてぐらいで終っていた。
実際にそのとおりに俺はこの任務で死にかけた、まだその警戒はあいつの中では解けてないらしい。
こういうのも何だか、あいつの嫌な予感は遅かれ早かれかなり当たる。まだ解消されてないと言うことは………つまりそう言うことなんだろう。
「こっちが何度も電話したから言う事じゃないけど体休めるには寝るのが一番だからね、じゃあおやすみ。
明日には恵も高専戻るでしょ、その時に虎杖君紹介してね。僕としても色々楽しくお話しできそうだし。」
「…………言いたいことだけ言って切りやがった、あいつ。寝るか俺も。」
スマホの奥からツーツーと切れたような音がする、時刻をみれば午後0時を過ぎていた。俺は今日を忘れるようにベットに潜り込む、明日も騒がしくなりそうだと朧気に思いながら。
継木本人は普通とおもってるけど、周囲からみたら立派なイカレ野郎()になってるなーとおもいましたまる。
バレンタイン系の小話とか入れたいな………
どの組み合わせがみたいですか?(展開影響アリ)
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継木&虎杖
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継木&釘崎
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継木&伏黒
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一年ズ+継木
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継木単体