形代の呪術師   作:夢食いバグ

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バレンタインのお話 番外編 入学前の交流 です。


幸せの味 小話 東京高専サイド

「今日も例年通り……か。」

 

2月14日、恋人や親しい人間にチョコを主とした菓子類を贈る日………と製菓業界が唄った日。

継木家のある一室には今回も大量の菓子類、酒、その他が雑多に届いていた。宗教みたいなお供え物や、会社からのチョコ菓子の試供品や、純粋な贈り物として等、理由は様々だ。

 

おじさんの時にも、大体同じような事になっていたらしい。そういえば僕がチョコ好きだったのって、よくくれるお菓子がそれだったていうのもあったような………

 

絶対消費しきれないから、僕に回してたって部分あるよね………おじさんの立場だったら僕だってそうするし。

 

「とりあえず手作りは、廃棄して………」

 

そう言おうと思ったとき。

 

「もう分けております。」

 

「あっそうなんだ………手作りは食べないようにね、何入ってるか分からないから。廃棄した上で貰ったのが、この量かぁ。確かに手作りは受け取りませんとか前々に話してたことあったけど。」

 

家の者がもう分けたと、返答を返す。毎度の事だから仕事が早いというよりは一種のルーティーンみたいな感じになっているのだろう。家族持ちの家の者が遠慮しつつもある程度取っていった後に残ったのがコレであり、ここにいる者達のお茶菓子として暫く出す分を差し引いたとしても大分残るのは目に見えていた。

 

「高専の人達で消費頑張ってもらうか………生チョコとか期限早いのも混ざってるからなぁ。後高専の先生ぐらいしか食べられないお酒強めのやつとか五条にも食べさせられないな、すぐ酔っ払うし。」

 

昔は御三家にも、貢物を分けるという名目で勝手に送っていたそうだがあっちも量送られても迷惑という話や、バレンタインは西洋の新しい行事であることも相まって何回かやった後断られたらしい。

 

個人的におじさんは、嫌がらせか何かはわからないけど今の禪院家当主にお酒とお酒のチョコレートは送ってた事は聞いた。

 

「………ひとまず東京の方から分けに行くかぁ、一応代理立てずに僕個人も行くから車お願いするね。

 

いいかい?

 

京都の方は、明日行くことにする。」

 

「継木 櫻様の仰ることであれば。」

 

ここにある荷物を家の人達が、ちょっとしたトラックに積めるだけ積んでいく。まるで業者だなぁとこの光景を見るたびに毎回思う………中身は手作りのものはないとはいえバラバラ過ぎるが。

 

さてどれぐらい引き取ってもらえるだろうか………学生だけではなく高専所属の呪術師にも配ってもらえるだろうか、とりあえず僕は車に乗り込んだ。

 

走るたびにガタゴト荷物が音をたてる、そんな雑音を聞きながら目的地に着くまで朝の光を遮るように顔に布を被せて眠りについた。

 

***************

 

ひとまず駐車できるスペースに車を置かせてもらい、起こされてまだ覚醒しきってない頭と寝起き特有のぼやけた視界をなんとかしようと目を擦りながら、それなりの大きさの荷台に菓子や小物を載せてガラガラと運んでいく………

 

学長にお話したいが、学長室に直接向かった方がいいのだろうか。

 

「相変わらず、すごい量だなコレ」

 

そう思っていれば、動物園で人気者のパンダの姿をした夜蛾さんのパンダさんがポテポテと歩いて近寄ってきた。思わず僕はその真っ白くてふわふわの身体に抱きつき体を埋めた。

 

「こんにちはパンダさん今日も真っ白でフワフワもふもふですね………えーと乙骨憂太さんは何処に、海外でしたか。確か………秤さんと綺羅々さんも今停学で………

 

そう考えると、ちょっと持ってきすぎましたかね?一応まだ積んではあるんですけど。」

 

砂糖が主食の五条が、持ってきた大部分を消費するとは考えてはいる。けれども今の東京校は随分と欠員が多い、停学然り海外研修然り………知ってたけど分ける量もう少し考えれば良かったかなぁと反省する。見ての通りのふわふわだなぁパンダさんの毛皮………毎日仕事で疲れた。

 

呪力取るためにあっちに行ったりこっちに行ったり、精神弱ってる人たちの相手したりとか色々。ずっと何も考えずふわふわに埋もれてたい。

 

「貰えるものなら貰っておく、主義のパンダだから問題ないぜー。後勝手に抱きつくなよなー」

 

「ワフッモゴっ」

 

まぁそんな訳にも、いかないんだけどね。顔に肉球の感触がして息が詰まる。そのあとすぐにべりぃっと音がするようにふわふわのパンダさんからひっぺがされた。

 

終わってしまった…………。

 

「シャケ」

 

「そうですよね、狗巻棘さん。まぁでも消費期限短いものから頑張ってください。」

 

「騒がしいなどいつなんだぁ………うわっ継木来てんのかよ。まだ高専生じゃねーだろ部外者は帰れ。」

 

「こんにちは、義姉さん。ちょっとバレンタイン関連できた食料品とかの消費手伝ってもらいたくて高専にきました。」

 

ちょっとへたり込んで剥がされたことに落ち込んでいれば、狗巻さんが僕を覗き込むように動き、真希義姉さんが僕を見るやいなや、呆れたように手をしっしっと払うようにしながらため息を溢した。

 

確かに部外者といえば部外者ではあるが、でも呪術の関係者と広い目で見れば関係者のうちには入れるとは思う。そろそろ僕、高専生になるし。東京高専に決まったから、この人達は先輩にあたるのだろう。義姉さん先輩は語呂が悪いな………どっち優先しよう。

 

そう頭で思いながら、二人に精一杯の笑みを造り返答をする。だいぶ慣れた、表情を造ることにぎこちなさはなくなってると自負してる。

 

「義姉さん言うな、私は家で決めた婚約なんて認めてねぇからな!」

 

………嫌われちゃってるみたいだね僕、知ってたけど。仲良し姉妹それを家の都合として本人の了承もなく婚約になっているのだ。僕の了承があるかはもう気にしてない、真衣さんからは無いことだけははっきりとわかっている。

 

まだ嫌われてない時もあったような気がするけど………いつからか段々とこうなった。仕方ないよね僕が悪い全部。

 

「そう言ってーあくまでも家で決めた婚約であることに反発してるだけ………」

 

「うるせぇパンダ! 白兵戦で負けるような弱っちくて力が無い頼りねぇ奴に、私の妹任せたくねぇってだけだ。」

 

「おかか いくら」

 

「ハハハ、真衣を任せてもいいと義姉さんの方から言ってもらえるぐらいに精神的にも肉体的にも強く立派になれるように頑張りますね。」

 

真衣さんの婚約相手として真希義姉さんに認めてもらうには、やっぱり強くならないと………原因は他にも沢山あるけど僕にすぐできるのはこれぐらいしかない。

 

毎回白兵戦の訓練をすると、一本を取れない。だけども一本も、取られないことが多い。

 

舐めている訳ではない、真剣に純粋にやったら自然とそうなる………いやなってしまう。体が覚えているように、一本取れると思う前に一本取られるのを防ぐ行動が体から出てしまうような感じ。

 

パンダさんや狗巻さん相手だと、千日手のようになり………真希義姉さん相手だとその癖が分かってるのか僕が一本取れないことを前提に考えているように力で無理矢理突破され一本を取られる事が多い、後純粋に体力切れで………

 

最低限一本は取れるようにしないとな………後真希義姉さんに一本取られないようにもっと行動対処法考えて覚えないと。

 

「だから義姉さんと言うな! 継木。」

 

「まぁいいじゃねーか。」

 

「メンタイコ ネギトロ」

 

そうやって4人やかましく喋っていれば。

 

「賑やかだねぇ4人とも! うわぁチョコとか菓子こんもりとコレ何日分?」

 

五条が来た。

 

「ちょっとバレンタインデー関連で貰ったものを今消費しきれない分を分けてるんですよ。まぁ五条悟さんなら、学生時代から先代もしていたというので分かってると思ってますが。」

 

相変わらず、元気な方だなぁと思う。五条さんも高専に入っていたそうだしそこらへんはもう知ってるだろう。継木家との付き合いも御三家の一つ五条家としてあることも相まって。

 

「ウイスキーボンボン知らずに皆喰ったときは酷かったねー。サクラー、コレこの中にお酒入りはないよね? 僕、酒弱くてさー」

 

「コレ学生さん達用なので抜いてますよ。お酒入りは学長とかの先生用で分けてます。」

 

五条さんは、持ってきた菓子などが積み上がった山をふざけた様な砕けた口調で指を差して。酒入りのチョコがないかを笑いながら確認してくる。

 

それに僕は、最初っからお酒入りのチョコは分けてあると返答した。

 

お酒に弱い………まぁ結局お酒なんて軽い神経作用のある毒のようなものなのだが、外部からには強くても内部からは中々難しいようだ。百薬の長としてお酒は言われるが、薬は毒だ。百毒の長と言い換えても意味合い自体は変わらない。

 

何事も過ぎる事は害となる。自己にあった割合を、結局はそういうものなのだろう。夢に浸りすぎれば、現に戻れなくなるとは耳が腐るほど僕は言われてきた。

 

「五条先任務とか聞いてたが、帰ってきてやがったのか。」

 

「うーんまぁ終わって、報告行こうと思ったら。ちょーどの所に君達の色々と賑やかで元気な声が聞こえてね、ついつい気になって寄ったらってところさ。」

 

黒いアイマスクで、目元から表情が読み取れない代わりに口元がよく動く。意識してるんだかしてないんだか僕には分からないが、いつの間にか彼の手元には大量の甘いお菓子が取られていた。

 

きっと戦って死ぬよりも、糖尿病とかの生活習慣病になる方が早そうだ。負傷はともかく本当の病気って反転術式で治るのか酒で酔うのに?と思いながら空を見る。空気は冷たいが日差しがあって眩しい、コレを晴天と呼ぶのだろう。

 

「とりあえず、保存効かないやつを冷蔵庫に仕舞っておきたいので学長とか他の先生いないですかね? ひとまず職員室の冷蔵庫に詰めておこうかと。」

 

「それぐらいなら許可取らなくても良くない? 僕がすぐに消費するだろうし。まぁいいや、櫻は真面目だからねぇ。

 

学長は、あっちらへんで見かけたよ。というか僕も先生なんだけどー」

 

とりあえずそろそろ学長探しに動いた方がいいだろう、ドライアイスや保冷剤の時間は魔法や呪術なのではないのだから無限というわけにもいかない。ちょっと愉しくて長く居すぎてしまった事を反省しながら。ここにいる4人に学長が何処にいるだろうか?と聞けば五条さん以外は首をかしげ五条さんは指だけで方向を示す。

 

適当なことが多いから、心配になる。

 

けれどもそれしか当てがないわけで、行って居なかったら無駄足になるだけだなそう思って歩いていく………

 

「訓練所付近ですかね、では2月で涼しいですが溶けてしまうといけないので失礼しますね。4月に僕新入することになりましたので。

 

今度会うときは パンダさん 狗巻棘さん 義姉さん 新入生としてよろしくお願いいたします。」

 

ととっ、挨拶はしておこうかな………東京高専に入ることが決まったからにはここにいる人は先輩となる人達でもある。五条さんはまぁいいだろう………付き合い長いし。

 

そう振り返って笑い、すぐに足を進めた。

 

「おうっその時は、たっぷり扱いてやるからな!楽しみにしておけ。」

 

「たらこ そぼろ シャケ シャケ」

 

「何度言ったら分かるんだアイツ。」

 

「ねぇ聞いて、えっ、さり気なく僕抜かれた?」

 

「嫌われてるんだろ。」

 

***************

 

五条さんが指した方向とは真逆の場所に、学長はいらっしゃった。

 

彼は度数の高いだけの安酒か劣悪なMDMAでも飲んで幻覚でも見てたのだろうか? そう思いながら、ノックができない空いている扉の前でお辞儀をしてから入る。

 

「こんにちは、学長連絡もなく申し訳ありません………」

 

「もはや恒例行事に近いようなものだからな、そこまで気にしなくていい。いつも通り、冷蔵庫を借りたいという話だろう。」

 

なるべく静かに音を立てないように入ると、ここに座れというかのように学長は横の床をポンポンと叩いた僕はそれに促されるまま横にしゃがみ座る。

 

学長の手元と周辺には、呪術関連の任務の割り振りなのだろうか起こったことと調査依頼等など書かれており依頼する人の名前の付箋が大量に貼ってある。

 

本当に忙しいよね、西日本周辺は京都高専が担ってくれるとはいえ東日本とそして天元様関連は主に東京高専が担っているのだから。内容は気にはなる………があんまり見ないことにしよう僕は部外者だ深く突っ込むのは良くない。

 

するとしたらちゃんとした方法で、調べ上げる。

 

「えぇそうですね、今回も要冷蔵と要冷凍のものがありまして。時間を喰いまして保冷剤とかドライアイスが溶けて要冷凍の物が危ないかなという感じです。」

 

僕は学長の方を見た、すると書類を一旦置いて手をパンパンと鯉を呼ぶ様に叩く。すると何処からか呪骸達が現れて書類から何から何まで、運んでいく。

 

大きいものは、流石に一人?では持てないらしく複数で運んでいる。この光景を見るたびに何処かのニン○ンドーのピク○ンのようだなと思うのは、仕方ないと思う。

 

「人気者も大変なことだ。後は呪骸に運ばせる、お前は気にしなくていい。」

 

「ありがとうございます、結構量が多くて………疲れるんですよね。呪骸ですか、凄いですよね本当に。仕組み知ったら僕にも作れますかねなんちゃって………人気者というより、崇拝に近しい人達が多いのがまぁなんともと言ったところですけど。

 

会社の付き合いで、新商品みたいなものありますし。ちょっとしたお歳暮みたいな。」

 

最後の一つになるまで、ぽてぽて運ぶその様子を見ていたいと思ったが上に立つ者らしい威厳を感じる学長の声に意識を戻される。

 

僕にもこんな感じのもの作れないかなぁとぼんやりと口にしつつ手をまごまごさせながら。

 

人気者か………と考えていた。確かにこんなにも量を貰うのは、ある意味でそうかもしれない。けど純粋に芸能人みたいな感じーかと言われるとなんか違う気がする。呪力を溜め込んでたり、呪霊に憑かれている人の相手をするのが主なのも、そう言うことになる原因かもしれないが………純粋な好感よりも依存や執着の方が色合いが強い。

 

呪霊に憑かれている人間以外は呪力という負の感情を吸いとっても、根本的な解決にはならない。一時的に気分は安らぐかもしれないが、その気分の安らぎに惑わされる人達がどうしても多くなってしまうのだろう。甘味のように酒のように麻薬のように。

 

呪力が、多ければ多いほどに。

 

突然大金持ってこられたり、周囲を巻き込むように勝手に色々僕のためと他人を思っている様な自己陶酔してやられるよりもよっぽどチョコ菓子などの贈り物の方がましであるが。量が多いと、処理が大変になるけど。

 

それに中には、企業という組織から貰うものもある。正確には僕宛ではなく、継木家というある程度の企業を運営している組織として宛られたものだ。そこら辺は今の僕はあまり関与していない。関連のある企業や、継木家の配下企業は一応覚えたけど。

 

「お前が使っている式神と感覚は似たようなものだ、簡単なものならいけるかもしれんぞ。

 

呪力………負の感情を取られれば、崇拝にも近くなるだろう呪術師の中でもお前は特異な存在としてあるしな。」

 

と学長は何処か励ますような口調で、話し出す。

 

告死蝶とは、似たようなものなのかなぁ………核がない呪力だけの単純な式神の一種なんだけど量が凄く多く扱えるってだけで………傀儡の第一人者である学長が言うならそう言うところもあると思おう………

 

特異な存在か。

 

「実感は無いんですけどね、吸い取ろうって意識してやってるわけではないので。なんだろ感覚としては呼吸ですかね、呼吸と違って意識しても止めることはできませんけど。

 

偉大なる先代達なら違ってたかもしれません。」

 

呪術界では、とりわけてそう見られている自覚はある。良くも悪くも呪術師というマイノリティの中のマイノリティ………だけどもコントロールが効かないが故にいまいち僕個人としてナニかをしてるという認識は薄くなってしまう。他人の呪力を取っているせいか気分とか体調は毎回悪いけど………

 

量が多いと呪力を取る量も多くなる、少なければ少ない………そんな感じでスイッチのオンオフとか強弱を自身で決めることが出来ない………だから余計に気分悪くなってるんだろうけど。

 

おじさんは、どうだったのかな。気分が悪そうにしてたけど………きっと僕よりは上手くやっていた。それは揺るぎ無い事実だ。

 

「………上手く行かないなぁ。」

 

小さく小さく、少しの物音で掻き消えるような声でボソリと呟く。

 

呪具の扱いはある程度出来るようにはなった、けどそれはそれまでの事。全ての基礎となる呪力の操作がいまいち掴みきれてない。負の感情を火種として練り上げ、呪力として抽出し運用するのが呪術師………呪いを操る者の基礎だが、こちらから見れば負の感情を元にする呪力は外部から勝手に己の内に入ってくる物であって己の内部から練り上げて出すものではない。

 

力の方向が逆回転とは、よく言ったものだ。何とか身体強化とかの基礎中の基礎までこぎつけられはしたが………繊細なコントロールには程遠い。

 

「高専は呪術に関して学ぶ場所だ、お前がいくら特殊だとしても少しは呪力操作とかの助けにはなるだろう………それに呪術の才覚自体はある方だぞ継木、二級呪霊をほぼ単独で倒したその話は聞いている。歳を重ねた呪術師でも二級止まりが殆どとなるのにこの年でだ。

 

記憶はまだ引き継がれてはいない様だしな、お前の様子だと。それに引っ張られすぎてないか?」

 

呪術について学ぶか、学んだ所でコレどうにかなるのかなと思うのが正直な所ではあるが………。他の人の呪力の練出し方や呪術から何かを、掴むのもアリなのかもしれない。僕がまだ使えてない生得術式以外の物も多いだろうし。

 

「才覚に年は関係ありませんよ、若くして刹那のように散る者もいれば老年にて開花させる人間もいます。それに武具の影響が殆どですよ、きっと素手だったら三級すら祓い鎮めてあげられないと思います。

 

んっえぇそうなんですよ、時間が経てばって問題でも無かったようです。でもそれはそれで良いかなって思っていたりもしてますよ、ちゃんと今は僕が積み上げた物だって実感できるので。」

 

二級を倒したから才能はある、と言われても正直ほぼ呪具による力が殆どを占めていると考えてる。どれだけ手酷く扱おうがシワすらつかない巻物もそうだが、柄のみの剣が呪霊に対しては無法と言っていいほどの力を誇ってる。

 

その上での二級呪霊の鎮魂なのだ、鎮魂の功績の中の僕自身の力としては呪具を使わなければ殆ど無いに等しい。

 

それに呪術の力は、基本的に不安定その一言に尽きる。生まれつきが8割とは言うが成長の伸び代が良くも悪くも読めない世界だ。更に呪力自体解明しきれていない部分が多く、それ故に才能が重視されるのではないだろうかとも考えている。素人が剣を持つのか達人が剣を持つのかの違い。呪術には銃は無い。そういうこと。

 

新しい才能ある新芽が踏み潰され、芽もでない種が少しの切っ掛けで大樹になる。

 

そんなものだ、そう言う世界に若いのにコレだけできるから凄いというのは呪術師としてまだぺーぺーの僕が思うのもなんではあるがナンセンスだと感じる。

 

んっにしても記憶に引っ張られてるか………、確かにあれば違っていたかもしれないと毎回のように思ってる。反転術式や領域展開歴代から脈々と引き継いで繋ぐ事こそが、継木家のもう一つの利点で他の呪術師には無いことだ。

 

僕にはそれがない。

 

自分が今していることは、自身で積み上げたという自覚があるから嬉しいとは言ってはいるが………実際には只の劣等感の誤魔化しに過ぎないと思うことはある。もっとも突然やられたとしたら記憶で脳がパンクして僕いう微かな自我が消し飛びそうな気しかしない。

 

「………受け継いだとしても、お前はお前だ。先代とはだいぶ違うぞ。」

 

「僕と先代は別人ですから、当然の事ですね。お酒のチョコは結構量持ってきたので………高専ですし他の成人の術師方も任務を受けにいらっしゃると思うので、適当な配分で色々分けてください。」

 

とりあえず話を切り替えよう、頭が色々と痛くなってきた。久しぶりの休日に限りなく近い日をアンニュイな気分で過ごしたくはない。

 

適当な、話題の切り替えとして本来の話であったチョコの分配の件について話し出す。

 

学生達は、未成年なのでアルコール度数が高いウイスキーボンボン等のお酒のチョコはどうしても配れない。だから別途で分けたのだが………大人の方にもお酒に弱い人はいるもの、全員が全員強かったら忘年会の十八番急性アルコール中毒による病院への搬送は無いだろうし。

 

………まぁ必要なことだったとはいえ未成年の身でお酒飲んだこと数えきれない程ある僕が、ダメとか云々あんまり言えないと思ってるけど。

 

それはそれだ、ひとまず置いておこう。

 

高専なら、一般呪術師の依頼の仲介を多くするなら分けるのも造作もないことだろう。だから持ってきすぎとは、言わせない。

 

「細い飴のようなチョコでもあるか?」

 

「チョコ味の飴なら、棒付きですよ。」

 

「あぁ日下部が、禁煙中でな。」

 

日下部さんか………禁煙していたのは知っていたが、理由は妹さん関係かな?詳しくは知らないけど、彼の妹さんが赤子を身籠った辺りだったかなぁ。

 

タバコは副流煙とかもあるしね、妊婦さんは基本妊娠中にタバコ吸うことを禁止されるから。いや妊娠終わったら良いって訳でもないとは思うけど。

 

家族愛言うなればそんなものかな?

 

「自身の、体を気遣うことはとても良い心掛けだと思います。どんな理由でも。」

 

「継木なら、もう知っているだろう。今知ったような感じで話しやがって。」

 

そうやって僕が純粋に思ったことを言えば、何故かそれが学長の気に障ってしまったようで頭をゴリゴリされる。力が強い、頭割れる頭本気で割れる! 何で! 僕悪いこと言った覚え全く無いよ!

 

『自身の、体を気遣うことはとても良い心掛けだと思います。どんな理由でも。』

 

って笑顔で言ったことの何処にそんなにされる要素ある?! 理不尽ここに極まれりだと感じるよ!

 

「ちょっと頭ぐりぐりするのは! 痛いんですって。僕が言うのもなんですけどひ弱なんですよ!」

 

「呪術師として、こんなことでピーピー言うようでは務まらんぞ。」

 

「それとこれとは全く違うような気がしますけど! 理不尽圧倒的に理不尽………」

 

十数分間頭をゴリゴリされ続けられた………本当に僕そういうことされるような事した?

 

「酷い目にあった…………」

 

そう思いながら、ちょっとボロっとした様子でまだ痛む頭を抱えて目に涙を溜めた。呪霊と戦っている時とは違い脳内でアドレナリンが出てないせいか地味に痛みが続く。

 

戦っているからと言って、痛みとかそういうのに日常から強いかと言われればそうじゃない。僕だってある程度の切り替えは必要だ。常在戦場のような戦闘狂の思考回路持ってないし。

 

普通に紙で、指切るの今でも痛い。

 

「せいぜい言葉遣いには気をつけることだ、人には触れられたくない領域と見られてるとは思ってない領域がある。それに踏み入るとこうなるぞ。」

 

「それにわざわざ踏み入ろうとしてる訳じゃないですよ、知ろうとしたらそこに近かったりするだけで。僕そんなに悪趣味じゃないですよ。」

 

触れてはいけない領域には、ちゃんと気を付けているつもりではある。そこらへんは言葉には出してないし、もし僕が何も考えてなかったら最初の学長が任務依頼の資料広げてたのを静かにガン見している。

 

それに僕そこまで悪趣味じゃない………

 

「ハァ………まぁいい、先代は勝手に人の記憶引っこ抜いてくるようなやつだったからな。自分の手の内でできるだけで済んでるからまだマシだ。」

 

「…………本当に毎回思うんだけど、何やったんですか先代?」

 

「………」 

 

僕と学長の間に重い沈黙が、漂う。

 

うんこれが、学長のいう踏み入ってはいけない領域だな………また頭をゴリゴリされて何故かミシミシ聞こえそうなのやられたくないしここは素直に。

 

「わかりました、聞きません。」

 

とはっきりと言う。おじさんは、僕が見てきて思ったより悪趣味で性格悪かったのかも………それでも僕の大切な親のような存在には変わりないけど。

 

「それでいい、明日は京都の方に向かうんだろう? 特に手間でもないしこっちからそっちの学長に話をしておく。俺からの電話ならある程度出るだろうしな。」

 

「ありがとうございます。もう知ってるとは思いますが、僕東京高専の方でお世話になることになりました。これからよろしくお願いいたします!」

 

京都高専の学長には、学長が連絡つけてくれるそうだ。

 

明日は京都高専に、チョコの分配と。お兄さんや真衣に会えるかな? 僕は東京高専に通う事になっているから学生といえども二人に会う機会は減ってしまう。だから今のうちにたくさん話したいなぁ………そう頭の中では思いながら。

 

学長に向かって、お世話になることをお辞儀しながら言う。もう東京高専に行くことは学長だし知っているだろうが、礼節は大切なこと。それで人間関係などが上手くいくなら良いことである。

 

それに三年間のモラトリアムを過ごす場所の責任者だ、意識しなくても世話になることは多いだろう。

 

後純粋に、継木 櫻としても卒業後に関わる機会は東京高専を担う学長として長い付き合いにもなるだろうし。30才で呪いに芯まで侵され死ぬこととなるのに長い付き合いというのもまた可笑しな話であるが。

 

「………その話は全く聞いておらんが継木が、ここ東京校に通うだと??? まだ話し合っておらんぞ向こうの学長とは……」

 

「えっ? 学長が決めたんじゃ……」

 

学長なら当然知っていると思っていた………じゃあいったい誰がそういうことに、特に利点も何も無いはずであるが…………

 

「あー五条先生か?」

 

思い当たるのは五条悟しかいなかった。

 

そういえばよくアポ無しで突撃してきては、貴重な休みを潰され、話せば途中離脱しまくってたなあの五条………よく恵君やらなんやら連れてきてたけどアレ僕の食い止め役の意味合いもあったのか?

 

なんだか思わずため息をついてしまった。

 

「五条か………とりあえず今から学長同士で調整すれば何とか東京高専か京都高専か選べる様な状態にはなるとは思うが。」

 

学長は僕の様子を見て、そういう心優しい提案をしてくれたがそういう訳にもいかない。

 

「いいです、家の者たちが決めたことですので僕に特に介入権とかの権力はないので………」

 

家の者たちが決めたことには基本的に従うのが基本、わがままを簡単に通せるほど権力はない。

 

「そうか、なら東京高専学長夜蛾正道として継木櫻お前を高専生として歓迎する。」 

 

「はい、よろしくお願いいたします。」

 

なんか始まりから色々とトラブルがあったが、これ僕入学してから大丈夫なのかな………なるようにしかならないしやるようにやるか。 




ちょっとした事前交流バレンタイン時期の番外編はあと2つ出す予定ですが正確な時期は未定です。文字数は多めな予定ではあります。

継木櫻の飲酒経験は、結納の儀とか兄弟の盃等のそう言うところでされる儀式的意味合いがある酒のみ。飲んだふりが、周囲の監視もあって出来ず飲酒している。(故に大体日本酒、ワインやウイスキー等の西洋酒の経験無し。)

趣向品として個人で飲んだ経験は全く無しです。

どの組み合わせがみたいですか?(展開影響アリ)

  • 継木&虎杖
  • 継木&釘崎
  • 継木&伏黒
  • 一年ズ+継木
  • 継木単体
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