キャラ崩壊してないか怖い
継木家が当主替わりの挨拶に来るらしいと、周囲の加茂家の人間がヒソヒソと話をするのがあたり中から聞こえる。明らかに歓迎ではなく、拒絶や否定嫌悪そのものであるのがわかるほどに内容は陰湿だ。
なら何故わざわざ関係を持っているのか?
それは継木の血が決して、加茂家に混じらないようにする為と言われた。
術式によるものではなく、血そのものが呪われている。
血を縁として一人の形代が、漏れた呪力を集め、呪いを引き受け、記憶を引き継ぐ。
形代は、血により選定されるそしてその形代となる人間が当主となる。
実力も高潔な血統も何もかも関係がない、すべてを引き受ける形代が当主として崇められる。
もし継木の血が混ざれば、加茂家の誰かがいつ継木家の形代になるかわかったものではない。もしそれが相伝の術式を持つ可能性がある者だったら目も当てられない。
決して混ざらないように、継木家から継木家の血を呪術家で継いでいるものがいないか情報を渡させているのだ。その為に関係を持ち続けているのだ。
他の2つの家五条家、禪院家でもそうだと聞いている。
だが呪術家でも、継木の呪われた血をあえて混ぜ受け入れるものもいる。それは呪霊または呪詛師を相手取ったときの死亡率が格段に下がるからとしか言いようがない、形代が受け入れられない程呪力による負傷を負わない限り全ての負傷は形代の苦痛として変換される。
厄を背負う、身代わりとしてとても優秀なのだ。
形代自体も非呪術師、呪術師問わず血の繋がりを持ったモノの漏れ出た呪力を集め膨大な呪力総量を持ち得ている為よっぽどのものでない限りは形代は受け入れる。
「警戒していかなくては。」
ここに今の継木家当主がいる。
現当主は今別の座敷で、継木の血を継いだ呪術家がどこなのか一から十まで聞いていると思う。
服を呼吸を整える、次の加茂家の当主として侮られないように威厳を見せなければと扉を開けた。
そこにいたのは、まるで死体のような深い黒い目をしたかなり幼い男。
継木家の当主なのだろうか?
「こんにちは、本日は当主変わりの挨拶へと伺わせてもらいました。
継木家当主 継木 櫻 と申します。
名前だけでも覚えてくださると嬉しいです。」
そう思っているうちに男は、自身が継木家当主であると明言した。すんなりと耳に入る底冷えする冷たい空気のような声をしている。
にしても私が言えたことではないが、本当に年下で今の時点で当主になるとは精神的にも経験的にも不足すぎではないのか!?
「正直僕も突然昨日今日と当主と言われてやってるだけなので呪術がなんなのかもわかりませんし……まぁこれから僕自体とは30いや24年長くてもその程度の付き合いだとはと思うので。
驚かせてしまいましたね、貴方の話は家の者から聞いております加茂憲紀様。
お互いの交友を深めるため、何か僕について分からないことがあれば遠慮なくお聞きください答えられる範囲でお答えしますので。」
「まってくれ、何故年数をそんなに決まってる風に言えるんだ。」
突然の発言に思わず口を出す。
自身の驚きと焦りを悟ったように、男 継木 櫻から発された発言は到底自己処理しきれない内容を多く含んでいた。
昨日今日とは何なのだ!
呪術を知らないだと、呪術家の当主だろう?
なんで年数をはっきり決めるように言えるのだ、その年に当主を辞めるのかそれとも自死でもするつもりなのか!
そんなまとまらない感情から出た落ち着きのない脈絡すらない言葉
「………いえ、本当におじ……先代当主が死んで僕が次になりました。僕は、先代当主に拾われ特に呪力も無く見えることもなくこの年まで過して呪術にも関わらずいました。
先代から呪術師のお話だけは好きで聞いてました、本当にあるものとは思っていませんでした。
感覚としては、眠る前に読んでもらえる絵本かな?
僕は今6歳です、先代は30を迎えて死にました。
先々代もそのもっと前も、皆30を迎えると死にます。けれどもその前に死ぬ事も無かった、必ずその年を迎えると 死ぬ いや
それまで死なない、死ねない
のほうが正しい………?継木の当主は呪いで死にます、呪われて誰に殺されるまでもなくひとりでに死ぬんです。
そう聞いてます。」
まだ6歳という幼さの男は、呪力という普通の非呪術師の世界であれば異常にこれまで気がついてこなかった事。
当主は必ず30になると呪いで自死すること。
それを理由として淡々と答えていた。呪術の世界でもこれは当たり前として、済ませてしまっていいのだろうか?自身が死ぬという事にあまりにも抵抗がなさすぎる気がするのだ。
家の者から話されたことが思い起こされる、呪いの身代わり。
文字通りの 肉体 精神 魂 すべてを捧げる善き生贄の姿こそが継木家当主。
「怖くないのか?」
その言葉を口に出したとき、どんな顔をしていたのだろうか。ありえないというある種の否定だろうか、身の上に対する勝手な同情だろうか……
この加茂家に同じ年に来た時の自身と重ねても、彼の言葉は全く咀嚼し呑み込めるようなものではない。
「怖いか怖くないか………正確に言うと実感が無いからだと思います。
本当に突然です、でもなんとなくそうなるんだなーと思うしかないんです。
今の僕は呪いよりも銃とか大切なものを無くす事の方を怖いと思うんです、きっとこれから呪いのほうが怖いと感じるようになったらその死が怖いか怖くないかわかると思います。
今はその質問の答えは僕にはわかりません、
ごめんなさい。」
男は目を閉じて、ごめんなさいと謝った。
その時にちょっとした罪悪感と共に、その男いや継木家当主に対する警戒感は完全に消えた。
この人は、手探りで物事をなんとか見繕いながら正解を探しているだけ知らないことばかりなだけであると。
よくよく考えれば当たり前だ、どれだけ曰く付きの家だろうと当主は人間だ。
しかも呪術に染まりきっていない只の人間なのだ、血の呪いを受け役割を突然背負うことになっただけの。
「本当に、知らない事が多いようだな。」
「本当に知らない事ばかりですよ、これから嫌でも無理でも色々経験することになると思ってます。」
「………加茂憲紀個人としては、継木家当主 継木 櫻ではなく継木 櫻としての話が聞きたい。こちらとしても当主ではなく加茂憲紀として話す。」
「……………………………」
死人のような、底の見えない吸い寄せられるような漆黒の目がこちらを見据える。そこに感情を読み取ることはできない。
すぅっと一つ息をすい出た一声は、
「気分が、悪いです。吐きそうです、頭がいたいです、お腹の中に手を突っ込まれてぐるぐるぐちゃぐちゃ混ぜられてる気分です。
横になって微睡んで気絶でも昏睡でもなんでもいいです。意識を失いたいです、手放したいです。
それぐらい体とか、色々な具合が悪いです。当主?と呼ばれるようになってから。
貴方との話は頑張って言ってました。
正直あちこち苦しいです、本当に痛いのかそれともあちこち気持ち悪くて幻覚のように痛いのかもうわからないです。」
形代として受けている苦痛、そのものだ。
血の縁を持つすべての者の呪力と呪力による害を受け入れる、苦痛が代償ならばそこから逃げるすべなど用意されてもいない。
あれほどまでの苦痛を受けているように見えるのに精神の崩壊がなぜ起きないのか?いやそれは逆だ起きてしまったら苦痛が代償として機能しなくなる。
逃げることは叶わず、狂うことで和らげることさえ許されないのだろう。それ故のあの生気を失った目。
息を呑んだ、口が乾いている。
「そうか………横になるといい、それを踏まえていくつか君自身に聞きたいことがある。
いいか?」
その苦痛に、寄り添うことはできない。
下手な同情は不味い
だがその精神を理解することはできるんじゃないか、シンパシーは全く感じない同じではない。当主に関わる似たような立場だが、それに対する感情も立場も与えられたのか与えたのかも。
「………すいませんでは、遠慮なく………。
質問いいですよ、僕に聞きたいことが山程貴方にはありそうに見えます。」
まるで限界まできて、崩れるようにドサッとまるでモノが、落ちたかのように横になると。焦点が合わないのか瞳孔を暫く左に向けたり下に向けたりして、こちらに向けてくる。
「呪霊は見えているか?」
「なんか初めて見るものが多くなったのでアレが呪霊だと、認識のすり合わせはしてないので。」
「術式持ちか?」
「当主になったからにはあると言われてます、無自覚に使ってるかもでも意識的にはしてないです。」
「好きな食べ物は?」
「ホットケーキ、やっすい粉で作ったような薄っぺらい。」
「友達はいるのか?」
「居たけど、今だったらいないのとおんなじ。」
「嫌いな事は?」
「英語、イントネーションが悪いらしい。」
「拾われたと先程言ってたが理由は?」
「呪霊?で生き残り一人それが僕。」
こんな感じで、淡々と一問一答を二人で繰り返していく。内容自体に対した意味は込められてない、お互い見ているのはその時の揺らぎ。
声や会話のトーンテンポ、体の動き
お互いの本質を見ようとしていた。
「家族がか……悪いことを質問してしまったあまりに深く突っ込むものではなかったな。」
「別に、家族はおじさんだけだから。
僕にとっては最初っから。
アレは只の不運いや幸運なのかなよくわからないや、僕としては幸運だったのかもしれないけど。」
会話の初めから感情がないように淡々としていた声に抑揚が付き、目に感情が籠もったように見えた。それだけでほんの少しだけでも、己とは違う思考感情が理解できたような気がするのだ。
「おじさんは、前当主のことか?随分慕っているように見えるが……」
「僕の前の当主だよ。アハハ、僕にはお兄さんがいればこうやって話してたのかなぁ………
おじさんぐらいとしか、よく会話してなかったから。居なくなること考えてなかったや。」
どこか寂しそうに笑っていた、初めてする6歳という年齢相応の表情や声。
胸の奥が締め付けられ、何処かキリキリと音がなる。感情移入し過ぎると問題があるとわかっている。利用するだけ利用し傍観する、それが加茂家当主としては正しい行動なのだろう。
「………そうか、今はこれだけでいい。」
そうやって口を閉ざす、もう今は開きたく無かった。だが次の一言でその身勝手な思いは砕ける。
「質問を質問で返すなとは言うけど、その質問に答えられれば別に問題はないわけなのにどうしてそうなるんだろうね、どうどうめぐりになるからかな?
僕も一つだけ質問いいかな?
この加茂家に君の家族はいるの。別に言いたくなければ言わなくてもいいし嘘ついてもいい、きっとそれぐらいの関係だから。」
閉した心の芯を突き刺す、まるで言った言葉が返ってくるかのように的確に痛いところを一つついてくる。
確かに、こちらだけ質問をしていた返さないのは失礼いや不自然だろう。
出そうとする声が、喉で止まる。だが捻り出す、これはやらなくてはならないことであろう。
「父様はいるでも母様は………」
「そっか、無理に言わなくてもいいよ喉が引き攣ってる。」
「………………………………」
途中で止められた、とても良く人を見ている。
次期当主としてもっと腹芸も、できるようにならないと見透かされてしまうということか………
それとも、継木の当主としての才覚か
「そろそろ、血の繋がりの話が終わる時間かな………偉いところも大変だね。それがそれである為に色々する必要があるんだから。
権利としなければならない行動は同等で釣り合いが取れるものとか………」
ずっと寝そべっていた体を起こし正装についたホコリ汚れなどを手でパンパンと落とすように叩く。
座り方を正座になおし、向き直った。
「今度はいつ会えるんだろうな。少し崩した会話はなかなか出来ないこういう立場になってしまうと。」
「会いたいと思えばいくらでも継木家は歓迎いたします。こちらから向かうのは……正月頃ですかね。
あと継木 櫻としてですけど、加茂 憲紀様をお兄さんとお呼びすることがあってもいいですか?
今日は楽しかったです。」
「兄か………、あんまり人がいない所でならいい渾名のような物だろう。こっちも弟とでも言おうか?」
そうやって、口角を上げて了承の微笑みを見せる。
当主としてと個人としてのやりたい行動は違う、けれども母親の為に立派な当主としての行動を取らなくてはならない。
ならばこういうことぐらいはやる。
「どうぞお好きな時に。」
継木 櫻はその了承の言葉を聞くと、満足げに笑いこっちも好きに弟と呼んでいいと返す。
お互いもうそろそろ別れの時間と、座敷からたち背を向けそれぞれの方向へと歩いていく。加茂家からのお出迎えはなく継木家は帰路につく。
「兄………そういえば、私は一人っ子だったな。なかなか悪くない響きじゃないか。」
継木の血を継いだモノが呪いによって死んだときに名前と死んだ瞬間と場所(主にその人間が最後に見た風景)がわかるぐらいが当主として基本的に受け継がれています。
継木家で当主として優秀、キチガイ(天才)になると、今飯何食ってるか爪伸びてるかぐらいの細かいことまで知ることが可能なため名家がこの血を警戒してるのはキチガイレベルの精度のやつが当主となったときに情報が全て筒抜けになるからと言うのが理由の一つだったり。
ちなみにおじさんが話していた、呪術師の話死んだ呪術師の何気なく知った記憶を残酷な部分をいい感じに子供向けに幸せな茶番に改変したのだったりします。
(当主としては、トップのキチガイレベル)
加茂くんのキャラ崩壊してないかなぁ()
どの組み合わせがみたいですか?(展開影響アリ)
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継木&虎杖
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継木&釘崎
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継木&伏黒
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一年ズ+継木
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継木単体