形代の呪術師   作:夢食いバグ

5 / 36
禪院家

「また見れなかった。」

 

時間があるときにちょくちょく見ている巻物には、詳しい事は歴代当主の記憶から引き継がれます。と書かれている部分が多い。なんとも不親切なことであるが………

 

巻物の内容自体は、術式開示?と同じようにすべての人間が知れるような秘匿されたりしていない誰でも接続できるオープンな情報らしい。まぁ呪術に関わっている人しか見られないような細工はしろと言われ本当の大昔よりはすべての人間が見られるわけではないよう。

 

家の者に聞いてみると、当主は当主としての力を引き継ぎ認識した後は夢などを通して歴代当主の記憶をたどり力を得ると言っていた。皆が引き継ぎ持ち得る当たり前とも言えるその力、特異な形質。

 

………その歴代の当主とやらの過去の記憶の夢を見れないと言ったら、排斥は無かった。いつものように継木 櫻様は、生きてるだけでお役目を果たし生きてるだけで我々にとっては尊い存在です。

 

とみんなが皆、口を揃えて言った。一人ぐらい悪態ついている奴がいたほうが面白いぐらいだったのにまるで機械のように見えてきた。

 

どいつも、こいつも同じ顔。

 

「………オェっ」

 

夜に食べた、飯が胃から迫り上がってきたものをとりあえず近くにおいていた桶に吐き出す。消化途中なのかどうなのか黄色がかったドロドロの液体、豪華な食事も消化してしまえばみんな同じこんなゴミ

………昨日加茂家に行ったとき朝食食べなくて正解だったな、きっと目の前でゲボ吐き出してるわ。次期当主様の前でやったらどんな事になっただろうか想像するだけで寒気がする、寒気自体はいつも走ってるが。

 

次期当主の人はいい人そうだった、でも人なんて立場によって行動は変わる。心情が根が清く美しくあっても、大きな組織で動けば………

力とは人を縛りつける一種の鎖でしかない。他者も己も関係ない。おじさんも同じだったのだろうかと考えるがそれで今の苦しさの気を紛らわしているだけかもと思うと自分自身が醜くて心の底から笑えてきた。

 

葬儀で、肉とか食えたのが奇跡だな。

固形物は、駄目になっていきそう。

ゲロとかって水分多いみたいだけど、脱水症状これから出たりするのかな?

 

と何処か他人事のように思いながら、今日は禪院家に行くのかと夕食時に話された次の予定について思い返していた。

 

「正直今日ずっと布団で寝たい。」

 

 

*************

 

昨日言われたことで大切そうな事

 

「継木 櫻様、明日の予定なのですが。禅院家の当主様が直接話されたいと仰っております。前当主様との付き合いもありますので………」

 

つまり、加茂家とは違い当主直々に会えとのお達しが来た。一応継木家当主と言ってもお飾りのようなものなのだから、組織経営的に考えると僕は無視してもいいと思ってしまうが結構な物好きなのだろう。

 

「でここが禪院家………か。」

 

加茂家でも思ったが、継木家の家が貧相に見えるほど無駄にでかい屋敷だ。人が多いのかそれとも見栄っ張りなだけなのか。

 

名家は見栄を張るのも仕事の一つでもあるから、それ相応と見るべきか。

 

家の人達に着させられた、堅苦しい正装を整え簡単に髪を正す。

 

「………そっちからの迎えはやっぱり

 

ナシか。」

 

加茂家でも思ったが、どうやらウチの家は大手を振って歓迎されるようなものではないような事は分かってきた。それの理由はまだ僕には分からないが。

 

だけれども関係はそれぞれ深い、継木家ができた当初からこうして交流をしていたのだろう。

 

そうすることでメリットがあるのか、はたまたしない時のデメリットが酷いのか……

 

「(僕自身には関係のない話だけど。)」

 

招かれていない、ナカを進む。訓練としてバシンバシンと木を打ち合うような音。それは術としての物ではなく殺し合いで使われるような血生臭さが残るもの。

 

「(呪を祓う事しかないんだろうな、この禪院家の命題は………そのお陰?でまだ社会として成り立っている一つの要因かもしれないけど。

 

害をなそうとするより、無関心でいたほうが利益の溢れぐらいはあるって事かな?)」

 

そんなことを歓迎されてないのは分かりきっていたので、こちらも口に出して言うほどの勇気も度量も力も無いので内心だけで思いながら当主の座敷に進み障子を開けた。

 

「コイツが次の継木か!ハッハッハ湿気たやつだ。あやつの後とはな。」

 

まず感じたのは酒臭さ、その後に威厳は感じる声。おじさんよりはかなり年をとっていた。僕が死ぬより早く死ぬのかなそれとも僕のほうが早く死ぬのかなそう思いながら。

 

「始めまして、継木家当主 継木 櫻と申します。禪院家当主 禪院 直毘人様先代と長らく関係が深かったことは家の者から聞いております。」

 

とりあえず、格式を保った返答をした。

 

作り笑いはいつの間にかできるようになるものだ、心をカラにして。あの時のおじさんのマネをする、おじさんのそういうところが嫌いだったが嫌いな行動にも理由があることを知った。

 

「あぁ、本当に死んだのだな継木。

 

あやつの情け無い最期でも酒のつまみにでもしたかった。」

 

直毘人と名前がついた人間は、一瞬思い詰め真実を確かめるように真顔になりその次の瞬間には真意を隠すようにおじさんを嗤った。不思議と不快な気分にはならなかった、きっと僕と同じでおじさんをおじさんとして見てくれていた人のような気がしたから。

 

勝手な同調だ、人の心なんて分かり会えるはずがないのだからそれぞれ身勝手に他者に像を押し付けているだけ。

 

「……人の死に様ほどつまらないものは無いですよ。」

 

「誰だって最後は気になるモノ、どれだけ駄作だろうが最終回は気になるものであろう?しかも気に入ってた傑作の者とあれば。

 

さしずめ、続編といった所だな。」

 

「随分仲が深かったようで、禪院家当主の期待に添えるかは私でもわかりませんがね。同じく持ちつ持たれつ良好な関係をこれからも築けていけたらと思っております。」

 

「あやつと違ってどうも硬い奴だ、相手にしててつまらん。

 

少しなにか言えばすぐに突っかかってきて反応が愉しいものだったのがなぁ。そのせいで、危うく呪具庫や訓練場がお釈迦になりかけたが。

 

冗談を本気にしよってまさか本当にやるとは思わんかったし、あやつにできるとも思わんかった。

 

互いの若気の至りといったとこか。」

 

お互い仮面をつけたように、意味もない揚げ足を取るような軽口の言い合いをしていたが………

 

おじさんいったい禪院家で何やらかしたんだ。

 

そりゃ歓迎されなくて当然だわ、圧倒的にこちらの有責でしかない。お家取り潰しの危機が現当主の口からサラッと語られているのだが。

 

………加茂家とか五条家とかその他色々とそういう問題遺してるかもしれないと嫌な想像がついた、もう歓迎されてない問題は諦めようだいたいこっちが悪い可能性が高い。

 

「そうですか、先代が申し訳ありません。」

 

「気にしておらんよ、それ程までに記録にも記憶に残る愉快な奴であったというだけだ。

 

一つ聞くが、こっちから嫁でも取らんか?」

 

………血の繋がりを持ってしてお互いを人質にし、強固に保つとはよく聞く特に驚くことじゃない、話してる僕の年齢を全く考えてないだけで立場としてはおかしくは無い。

 

落ち着け

 

僕に近い人をあてがえばいいそれで目的は達成、お互い円満そうこの当主様は現在進行系で酔っ払いながら話してるのだ。

 

こちらもそう相手すればいい、お互い酔っていたとそれだけの事だと。

 

「継木家は、血に問題があると聞きましたが禪院の血を穢すとは言われないですかね。それだけが心配です、継木家当主として。」

 

「だから、嫁を出すと言っておる。継木を禪院に入れるのではない、継木に禪院の者を混ぜるのだ。」

 

「そうですかなら、家の者に印として成立つ人の選定を頼みましょうか。友好の証としてですから、おめがねに叶う人でありましょう。」

 

そう政略なら、当主でなくてもいい繋がったという事実があればいいのだ。本来ならこっちが嫁を出すのが基本であるが継木の血の問題がどうしてもある。

 

だからこその禪院家側からの、こちらに嫁入りさせるという発言なのだろう。

 

あくまで嫁入りしたら禪院家との繋がりを持った人物でもありつつ、姓が継木となり禪院家の者ではなくなる。

 

禪院の血が継木に犯される事はない。

 

「お前に向けてだ、継木家当主 継木 櫻」

 

クソジジイ、こっちが提案してやってんのにそれに沿っとけや。

 

と思わず口から出そうになるのをなんとか抑えて、ちょっと頭の中で思考する。6才のさらに当主にほぼ無理やりなったばかりのやつに考えさせることじゃないと思う、というかわざとやってるだろこのジジイ。

 

そういう事は、実際にそういう事してるのに言ってくれお飾りだぞこちとら。

 

「継木当主の寿命ご存知で?末永く縁を繋ぐのにはいささか不向きかと。」

 

「あやつから散々耳にタコができるほど聞いとるわ、30だろう?初めて見たとき赤子の状態でこちらの方が当主だと女が一人きおったからな、気が狂ったと思ったわ!

 

呪術師の世界なぞ、いつ死ぬかわからんむしろいつ死ぬかとっくに分かってる方が利点がある。それにすぐにくたばるわけでもあるまい?」

 

「………確かにそうですが、私個人では決めかねる部分が多いですかね。禪院家との繋がりは喜ぶべきものとしてくれるでしょうが……」

 

なんて返せばいいのか、弱い頭では思いつかない。まず一旦保留までに持ち込むことを考える。

 

お互い組織で動いている。禪院家の当主禪院直毘人は知らないがこっちは継木家で敬われていることは十分死ぬほど感じるが権力があるわけではない。権力あっても僕はあんまり使おうとも思わないから自動的に僕のそういう行動は周囲によって決められる。

 

僕の意志だけで完全に決めることは不可能。

 

「もうそっちの家の者とは、話はつけておる。さてそれを踏まえてどう出るか?」

 

愉しそうですね、外堀から埋めてやがった。………家のものが当主と会うことを強調してたのはコレもあったのかもしれない。

 

僕はそう決まっているのなら特に逆らう理由も感情もない、嘘かどうかを確認する必要はあるとは思うが。

 

「………わかりました、家の者ともう一度話し合い詳しい話は返答させていただきます。

話は人伝に聞くといつも誰かの都合よくネジ曲がるものですから。」

 

僕は立ち上がって去るために襖に手を付ける、きっとこの当主が言いたかった事も終わりなのだろう。

立ち去るのがわかってか、禪院の当主は酒を呑む手を一旦止めた。

 

「すぐに決まる話でもない、時期が来たらこっちからまた話をつけよう。それまでに良い返答を考えておけ。」

 

その時の表情は、誰かの困る顔が楽しくて仕方が無いとでもいうかのようだった。

おじさんと長い付き合いのときもそんなのだったのだろうか

 

「では、また正月にご挨拶に伺います。その時には話は纏まってると思われますのでお待ちください。」

 

別に結婚を決められるのはいいが、話はしてくれと思う。どうせ子供は作らないし、作れないから本当に形だけのものだし。

心臓に悪い、いい話だと思ってのサプライズとか思ってそうだがこっちにはただのハプニングだホウレンソウしてくれ。

 

そうやって、帰るために長い廊下を歩いていると黒い髪の女の子がボロボロの体で人目をさけるように歩いているのが見えた。

 

この家の様子じゃ、普通興味すら持たれないと思うのになんでわざわざこんなことをさせられなくてはならないのだろう。目を合わせるととててっと逃げ出した、僕は咄嗟に追いかけた意味は特に無かった。

 

放っておく理由がなかった。

 

その女の子はとても足が早かった、僕も運動にはそれなりの自信があるはずだが当主になっての気分の悪さも相まってどんどん離されていく。

 

「いつまで追いかけてくんだよ!しつこいな!」

 

女の子が初めて声を出した、元気がいいといえば良いのかそれとも自分を保つためなのか……

 

この家の女性の扱いは、とても良いものとは僕の口からは言えない。男性だから良いとも言い切れはしないどちらも不自由で窮屈だ。

 

「いや!怪我してるから、それに逃げることはないと思う!」

 

「フツーに転んだんだよ!ついてくんな!」

 

………僕の目でみても、転んでそんな殴打痕のような傷はつかないと思う。

体力的にもそろそろ持たないし一か八か。

 

「わかった僕は、ここで止まるから君も立ち止まってほしい。立ち止まらないなら追い続ける。」

 

そう言った、立ち止まらないならそれでいい仕方がないことキツイが根性はあるつもりだ体力が持つまで追う。そう決めた、逃げられたらそれが運命だったということ。

 

「………はぁ、わかったよ。てかここまで追ってくるってどんな執念だよ。ストーカーか?」

 

そう言われて辺りを見返すと、ちょっとした林の中だった。追いかけるのに集中してて気が付かなかった。

 

女の子は呆れている。

 

「ここまで来たのか?気が付かなかった。

あのさ、その怪我大丈夫?」

 

「私は人一倍頑丈に出来てんだよ、心配ないからさっさといけなんにも出来ないのに突っ込んでくんな。」

 

「……アハハいらない情だったよね、ごめん。お詫びにコレあげるいらなかったら捨てていい。僕食べられなくてここでは多分珍しいから。」

 

下手な同情は悪意よりも、本人にとっては害である。分かってたけどその見極めがまだできていなかった。

この子は安い同情を、してはいけない子だった。

 

………袖からいくつかのキャラメルや、チョコを取り出して渡す。当主になってから口につけられなくなった好きだったお菓子、家ではこういうものはあまり出てないだろうしこの子なら隠すのも得意だろう。

 

「何なんだよコレ?」

 

「お菓子僕の好きだった、ちょっと食べられなくなっちゃって。でも消費しないととやかく言われちゃうから。」

 

継木家ではもう、僕は食事をあまり取れないようになってるのはもう知られている。だからこういう細々としたお菓子を持たせられている。だけどもういらない。

 

「なるほど、いらねーからやるってことか。貰えるもんは貰っとくよ。

だけど名前ぐらいは聞かせろ、私を追いかけ回したんだしな!」

 

「継木家 当主継木櫻だよ。まためぐり合わせが良ければ会うかもね。」




「なぁ真依、継木って奴から貰った菓子なんだけどさすっげー甘い歯溶けるぞこれ。
真依にもやる、毒の心配はなさそうだしな。」

「えっ……真希ありがと、なんか飴とは違う感じ、どっちとも柔らかい。」

「気に入ったなら、あいつからまたかっぱらってやる。継木もいらねーからって貰ったしな。」

どの組み合わせがみたいですか?(展開影響アリ)

  • 継木&虎杖
  • 継木&釘崎
  • 継木&伏黒
  • 一年ズ+継木
  • 継木単体
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。