次は五条家のはずなのだが。
「どうして宗教系の学校?」
「五条当主様が、こちらにいらっしゃるからです。高専は呪術組織の一つでありそこを今の拠点とされております。
それに寮住まいとなるため、五条家に直接赴いても五条家当主、五条悟様には会えません。」
「他の近しい五条家運営者みたいなのでもいいと思うけど。」
「五条家は、当主様の力が強い家でございますので。」
「ふーんそっか。」
継木家と大体同じだと思えばいいだろうけど、それよりも本人に集中する力が大分多いのだろう。
こっちは家が当主としてのあり方を決めるが、そっちは当主が家としてのあり方を決定するみたいなものかなぁ。
「………後今言うのも失礼ですが、ちゃんと食べられておりますか?家に仕えるすべての者が継木 櫻様を心配されております。」
「問題ないよ、昨日もらったお菓子は食べたししばらくは大丈夫。
ほら袖の下空っぽ、ゴミは適当に捨てたけど。」
「……ポイ捨てはいけませんよ。」
「わかってる、おじさんにさんざん言われた。」
夕飯は食べたが朝に吐き出してしまった。自分自身としては飲み物でなんとかしている。それでも胃から昇ってくるが………
自らの腹の中に無理やり物を入れて溶かして自らの一部とする行為が、苦痛でしかない。
「結局どうすればいい?」
「まず、夜蛾様にお会いしてください。夜蛾様も前当主様とお付き合いのある方でございましたので話も早いでしょう。」
「………場所は?」
「職員室にいらっしゃるようです。」
「わかったよ。」
でもこれで主な家の挨拶は終わる、その後に細々とした外回りは残るだろうが急を要するものでは無いだろう。後はゆっくり寝られる、夢は見ないが痛みや不快感から逃げられる。
だんだん嫌なところが似てくる。
来訪者用のタグを入り口でもらい、首にかける自身の名前がきっかりと継木 櫻と入っていた。
大丈夫だ、僕はキノ カエデでもある。
「失礼いたします、こちらに夜蛾様がいるとお聞きしたのですが………」
ふわふわとした自分自身を確かめながら扉を開ければ、昨日あった当主よりも一回り程度若い男がチクチクとぬいぐるみのような裁縫をしていた。
趣味なのかそれとも呪いに使う媒介なのか、どちらにしても愛らしい姿をしているようにみえる。
「次の継木か、死んだんだなアイツは。
話はもう聞いている、五条の所に案内しよう。五条もアイツの事は知っている話は早いだろう。
ついてこい。」
「ありがとうございます。裁縫の途中に申し訳ありません。」
「呪骸作りだ。」
「えぇそうですか。」
夜蛾と言う男は、自らの手を止めて席を立ちついてこいと自らをさそう。
僕はその背中についていきながら、学校の中を見渡していく。僕の、通っていた学校よりも木造の部分が多く旧校舎のようだけれども管理がしっかりしている。
なんというか雰囲気は学校というより、軍隊の予備施設みたいな行ったことないけどそんな感じがある。前々にテレビで見た警察学校の雰囲気と似てる。
和気あいあいというよりはピリピリした緊張が常に走っているような感じとか特に。
「先代と知り合いのようですが、何かありましたか?継木として不甲斐ない限りではありますが。
先代当主の方々達の記憶の引き継ぎができなくて、そういうところを全く知らず当主として置かれていますので。」
なんとなく何気なく、そう言ったら場が凍った。元々冷え切っていたがそれ程までにイレギュラーで異常で悪い意味で異端な事なのだろうか。
夜蛾と言う男は、足は止めずに数秒間返答を考えるような素振りを見せて発言に対して口を開く。
「アイツとは逆か、アイツは生まれた時から先代とやらの記憶をすべて引き継いでいた。文字通り母の子宮にいるときから夢として見ていたとさ。
継木 櫻お前のほうが、通常に近いと思う。全く見れないと言うのが、少し出されている資料とは違うが個人差だろう。
五条相手は、適当に流せ。
おそらく五条はアイツ基準で話を進める。」
「ハハハ、継木家でも僕は前例がない話のようで……先代はいくつか前例があるみたいな感じでした。
でもありがとうございます。
そういうわけで、夜蛾様と五条様のことは全く知りません。五条様はどのような方なのですか?会う前に少し知りたく思います。」
夜蛾と言う男は、僕がおじさんより遥かに弱くなってる?ような事は知ってるのだろう。知っているというよりも察しているのほうが近いかもしれないが。
おじさんはきっと最初っから知ってるように話していたのだろう、僕のときでも何度か知らない道の先を見てるような言動はあった………
それこそが継木の本来自然と受け継ぐ力
五条 悟?と言う人はよく知らないが、おじさんと比べられたときにどんな反応をするかよくわからないけど僕よりは確実に夜蛾と言う男は五条 悟の事を知っているだろう。
「…………会ったほうが早いだろう。
こっちに五条がいる、入れ。」
聞こうと思った矢先に、僕はある一つの教室の扉の前に立たされた。質問はする必要がないと思ったのかそれともちょうど言わなくていい理由ができたのかどっちでもいい、最初から五条家当主ということ以外わからない状況で今代替わりの挨拶をすることになるのだけは事実であった。
**********
伏黒 恵を禪院家に行かせないように、高専に掛け合い庇護下に置いた。
その時に色々と揉めたが、抑え込み続ける事でなんとかはなるだろう。
そして、今日夜蛾センセーに伏黒 恵の件で色々したことと引き換えとしてここで待っていろと灸をすえられているところだ。正直めんどくせーとどうでもいいと言う感情のみが今俺の中にあった。
誰が来るのかも教えてもらってはいない。来ればわかると言われただけ不親切にも程がある。
「…………会ったほうが早いだろう。
こっちに五条がいる、入れ。」
待たされた教室の外から夜蛾センセーの声がした、さて待たせたやつはどいつだろうと思いながら扉を見やる。
「こんにちは、継木家当主 継木 櫻 と申します。
貴方が五条家当主の五条 悟様ですね。お初にお目にかかります、今回は当主代替わりの挨拶へと伺わせてもらいました。」
扉をガラ………と、なるべく音を出さず静かに入ってきたのは、伏黒 恵と同年代のようなガキが一人。本来のこの時間なら学校に行ってるところだろう。
アイツと同じような服装を着させられて、服に着られているという言葉が似合うように覇気や気力が目に見えて失っている。
生きているだけの死体
簡単に言い表せば、そう答える。
似ているところは何を見ているのか分からない黒い黒い底が見えない目だけ。
「只のガキだな、待ってて損したー」
「えぇそうです。」
俺が返した言葉に、その子供はニコニコして返答するだけ。心の底からなぜだが気味が悪いと思ってしまう。伏黒恵のほうが大人びてはいるが子供らしい子供だった。
こっちは大人びてはいないが、子供として本来あるべきものが欠けている。
あっちには、津美紀という心の支えのようなものがある。俺にも夏油という親友がいる。
「継木家当主なら、僕のことだいたい知ってるんじゃないのー?
前の代の時は、色々と知っている事を前提として話されてさー流石の僕でもびっくり仰天」
そう言いながら俺は、サングラスを少しずらす。六眼は呪力を可視化することができる、相手の呪力の流れその他諸々を見れる。
呪力とは相手のいわば精神の状態だ、こういう話でよくわからないときもだいたい使える。
「残念ながら、僕は貴方のことを全く知りません。先代は継木として優秀な異常でしたがこっちはまだ本来受け継ぐモノが見られてません。
不良なエラー品ですよ。前例がない珍しい現象ではありますけど。」
相変わらず継木の呪力は、全てが混ざり合って膨大な呪力を扱っているというよりは膨大な呪力に侵食されて襲われているようにしか見えない。
俺から出るロスが少ない水滴ぐらいの呪力も、そっちに向かっていくのが見える。
「…………?」
俺は少し違和感を持ち、目を凝らす。唯一ちゃんと混ざり合ってない呪力が極めて少量だがあった。まるで集まってくる膨大な呪力から逃れるようにアイツはすべて混ざりあった物を持っていたのに。
これが継木の普通なのだろうか。
それともこっちの方がイレギュラーなのだろうか、このガキが言うには前に会った継木当主もイレギュラーであるとの事だが。
「中々面白いことになりそうだ。」
「えっと話聞いてます?母が枕元で聞かせる子守唄ぐらいにくだらなくてすぐに寝られるような話ではあると思いますけど。」
「えー最初から言ってー、聞いてなかったわー」
「…………………………………………ハッ?
すいません、では簡単に継木家当主ですが先代の記憶の引き継ぎがないので貴方のことを五条家当主五条悟様としか知りません。」
「つまりキミは記録ナシってことかー」
呪術自体知らないように見える。俺は呪術界では割と名は通ってる、それなのに名前しか知らないのはいささか不自然だ。
突然呪術の世界へ入れられた
そういう感じ、一般人の非術師から呪術師が生まれることはあるが基本的には呪術師から次の呪術師は生まれその時の思考も教育される。
継木家においての教育……呪術師としての思考の矯正の主な一つが、記憶の継承なのだろう。
現時点の力は強くないむしろ弱い、だがもしアイツ………先代程度またそれ以上に力を持つように育ったらそれは確実に伏黒 恵のように次を担う呪術界勢力になる。
しかもまだ思考が整ってない状態で今ここで継木家当主としている、無知とも言えてしまうが逆に引き継ぎによる凝り固まった思考が一切ない。
腐ったミカンだらけの呪術界でいい劇薬になる、凝り固まった古臭い思考から新しい思考をいちから仕込むことができる。
確実に30才まで生き残れる可能性が高いのも大きい、逆に30才になれば死ぬが。
「まぁそうですね、これからゆっくり脳無しですが詰めていこうと思ってます。」
その前に思考がだいぶ、見たところちゃんとイカれてはいそうだが大人しい外部にそれがいかない事が欠点といったところか。自己変化で完結できてしまうイカれ、文字通りの死んだ思考。
「………まぁこれからも長い付き合いになると思うし、僕君の家に突撃かましちゃおうかなー★」
「ちゃんとお話つけてください、家の者も困ってしまいますので………」
「気まぐれだからさー、そんときはそんときでしょ。五条家当主五条 悟だしね、継木家としても無視は出来ないでしょ?」
「………………親睦を深めてお互い友好的でありましょう。」
言質は取った、同い年だし恵と接点を持たせるのも良いだろう。
後は、なるべく上層部とは接触させないようにこちらで色々とする必要がある。せっかく思考が真っ白なのだ確実にこちらにつける。
「じゃあよろしくねー」
「………こちらこそ末永い縁であることを願います。」
俺は相変わらず死体のような調子のガキに手を振った。ガキも帰るのか扉に手を付けて静かに閉じる。
イカれてはいそうだがその方向性が、向いているか向いていないかのベクトルとして違うのが本当にアイツに似ている。話していて思った。他者や世界を変えるものではなく自己変化で済ませてしまう、そういう類のモノ。
呪術師は基本的に世界を変える。呪術の極致、領域展開も自身の生得領域を広げ世界を自身の力を持って変革させるモノ。
アイツが言ったことを思い起こさせる。
元々生得領域があるならわざわざ広げる必要がない、その中に相手が入り込めるように無自覚に身を溶かさないように守ってるものをちょっとだけ世界に溶かしてやればいいと。
1から作り上げるのでなく、元々あるものを使えば簡単なのに何故しないと。
理解ができないが、アイツは本当にそうやった。あのガキも同じような所に到れるイカれ方なのだろう。
「終わったか五条。継木の当主はどうだった。」
「ほんとーに暗いやつだよ、本当にアイツの継ぎとは思えないぐらい。」
ガキが去ったあと暫くしてから、夜蛾センセーが入ってきて会った時の様子や感想などを突っ込んできた。アイツは夜蛾センセーとも付き合いがあったし気になるのは気持ちとしてわかる。
「でも中々芽自体はあるように見える。」
「六眼か?」
「そう僕の六眼がいってる。あれはアイツに近づけるよ、希望観測だけど下手すると超えられるかもね。」
そう六眼で現状は見れても未来は見れない、してるのはあくまで期待でしかない。
「そうか、良くやってくれ。恐らくは継木家として継木櫻は呪術高専に入れるだろう。
東京校か京都校かはまだ決まってないがな。」
「東京校か京都校ねぇ……」
俺は一人だけ最強では意味がない、それだからこそ今動いている。
継木 櫻は、俺の願いの一つになってくれるだろうか。
呪術師はイカれてれば精神的に向いてるとか言うけど、呪術師に向いていないタイプのイカれ方とかもあると思うの。
どの組み合わせがみたいですか?(展開影響アリ)
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継木&虎杖
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継木&釘崎
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継木&伏黒
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一年ズ+継木
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継木単体