3日間ぶっ続けの呪術御三家代替わりのご挨拶が終わり、次の日丸1日寝込んだらしい。
その事を目を開けて、デジタルの時計の日付を見て気がついた。朝頭が回らないだろうによく気がつけたなと感じた。
僕は整えられた布団から身体を起こし、横に丁度おいてあった湯呑に入った白湯を飲んだ。
頭をかくとごしゃごしゃと鳥の巣のように絡まっている、僕が梳かす訳ではなく何もかもやられるが………長くなりそうだと憂鬱な気分になった。
「でなんで起こしてくれなかったの、いや怒ってるわけじゃ無いけどさ。普通に起こされるもんだと思ってたんだけど…………」
家の者に、髪の毛を梳かされながら顔に粉や目に線を入れられる。そういえばおじさんもこうやって何か顔に塗っているようなことあたっけ………
そう思いながら、促されるままに目を閉じる。やっぱりまばたき等の動きがあるとやりづらいことこの上ないのだろうか。
「疲れておいででしたようですし、先代も先々代も深く潜るという意味で長い眠りにつくこともありました。当主としては一ヶ月程度眠り続ける事も珍しくありませんでしたので………
申し訳ございません。」
真っ暗な視界に、言葉だけが響く。
そういえばまだ夢は見られていない。だが変な感覚はそこにあるような感じはした。ナニカが突っかかっているような、挟まって遮られているようなそういう本当の意味での深い投身を妨げるような。
家の人達が言う当主が夢を見ると言う事が底なし沼に沈む事ならば、底ができてしまいそれ以上沈めなくなった。
きっとこういう事なのだろう。
「いいよ、でも僕と当主は同じじゃないことは理解してほしい。僕は僕。
後今更なんだけどさ、なんで名前教えてくれないの一度も聞いたことないけど。」
出来ないことは仕方ない、そう割り切って会話を続ける。家の者の返答が申し訳無さそうで、相変わらずどいつもこいつも変わらなくて対応するこっちが疲れてくる。
そうして何となくの質問を口にした、そういえば自己紹介すらこの家では聞いたことが無かった………他の家や呪術高専ではしない人もいたが自己紹介する人はいる。
他の人に自己を紹介する、それがない。
気にして無かったが、コレはヨソから見れば大分可笑しいのではないのか?
「………………そうですね、今の継木 櫻様ですそれは重々承知しております。家の者すべて。
継木家にとって名前は重要な要素、として他の家よりかなり深く考えられております。名前とは個を示し、形質を決定する最も足る要素なのです。
言葉として、言い放ってしまえばその名に身を固定することになるという考えを持っているのです。」
名をあえて語らず、無くすことで個と言う事縛りから逃れようとしてると言うことらしい。
境界線を区切りをとことん無くす、そうしようとしてるのは何となく分かっていた。血の縛りという呪いなんてその最も足る事だろう、人の負の感情を呪霊という一つの形になる前に取り込むのだ。
目の化粧が終わったのか、目を開けていいと合図をされ従う。薄い人工的な明かりが、真っ暗だった視界を浸食し景色を彩る。
「つまり僕は、 継木 櫻 に固定されてるって事になるのかな?家の人達風に言えば。」
当主は、同じ名で呼ばれ続ける。ソレはきっとこの継木家での一つの区切りいや縛りであり呪い。
当主がこの名前を持つのか、この名前を与えられたものが当主なのか最初はどちらかなのかきっと分かりはしない。だけど家の者は、継木 櫻を当主の名前として呼び続けるのだろう。
「当主としての、力を引き継がれその力を安定させる為にお呼びしている理由もあります。」
………ひょっとすると、記憶とかの本来あるべき引き継ぎがうまく行かないのはおじさんとの約束のせいかも知れないと。家の者の言葉で、思いついた。
己の名前を忘れるなと……
紀野 楓 という名前、それが残っている僕の中でだから 継木 櫻では完全になっているわけではない。
そう考えれば、色々と個人的辻褄が合う。深くもぐれない突っかかりはあの忘れてはいけない名前だ。
「固定させちゃえば、ブレないって事が今の僕は、ぶれているか何か突っかかっているか………そういう事なのかな?
ひょっとしたら、力を継いだなんて勘違いかもしれないよねハハハ」
継木の当主として必要な力を失うことになるとしても、この名前だけは忘れてはいけない。それがおじさんの最後の願いだから。
だからこそ、こんな欠陥品なのだろうが。
継木家当主としているなんて、夢であれば良かったのに。
「………それはありえません、貴方こそが継木家当主 継木 櫻様なのですから。」
僕が言うと、すかさず家の者たちは否定はしてこなかった僕は否定こそ欲しかったまだ何処かへ元々に戻れると思っていた。
都合のいい存在だよねどっちもお互い。
そう思うと心の底から乾いた笑いが出てくる、極限まで行くと楽しくなるものだ。
「うんそっか。で今日はどんな事をやればいいのかな?寝てていいなら寝るけど僕は。」
楽しくなって笑いながら今日の予定を聞く、挨拶まわりは急ぐものはない。おじさんが僕だと考えると、きっと普段のやくわりが溜まっているだろうから。
きっと。
「今日は、呪力の収集となります。いくつか上層部より呪霊が発生しそうだという箇所に向かい、継木の血を継いでないもの達以外の漏れ出て滞留した呪力を吸い上げます。
………基本的には、このような当主としての業務が多くなります。殆どの場合一級術師1名がサポートして付き添い継木 櫻様の護衛にあたります。
呪力を自らの身体を持ってして浄化できますが、呪力が形となった呪霊には基本的に優位なものではありませんので………」
家の者は、そう言って廃墟等の今回回っていくだろう箇所に赤い印がついた地図を手渡す。
僕は、それを見たがざっと三十近くありこれは夜中までかかるだろうと目測をたてた。渡す時に今回は初めてなので軽くと話したため
本来はこれよりもっと多くの箇所をめぐり、呪力を集めていくのだろう。そりゃおじさんも毎回疲れるよね、夜にお話ねだったの悪かったかな。
護衛が毎回つくのか、あの時のお話とかその呪術師さんの事だったりするのかな?
呪霊はまだ、とても凶暴なのは見たことがない。僕じゃとても太刀打ちできない事だけはなんとなくわかる死なないとしても。
「………つまり不味いやつに当たったら、その術師さんを放置して逃げろって事?」
「そのとおりでございます、継木 櫻様。継木家として家の人者たちの総意は貴方様の身の安全が一番ですので。」
「………………………」
本当に継木家は継木以外どうでもいい存在なのだろう、家の者が放った言葉に見捨てることへの悲しみや罪悪感はこもってはいなかった。
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「今日はよろしくお願いします。戦いはてんでできないので………楽巌寺様ですよね。
一級呪術師と聞いております。場所としては最初なのであまり危険はない所と言われてますがこんな事に付き合わせてしまい申し訳ないです。」
車に乗せられてしばらく移動し、1つ目の目的地につくとそこには一級呪術師だろう人物がギターを持って僕を待っていた。
名前はたしか楽巌寺さんと聞いている。かなり年上で初めての当主としての役割だ、全く護衛したことがない人物でないだろう。
きっとおじさんもこの人に護衛してもらったことがあると思う。
「若いからな仕方あるまい、先代の小さい頃と比べるととても良い子に見えるな………
とすまないすまない、わしの後ろにちゃんとついて来い来い。ちゃーんと護衛したるわ。」
貫禄のある佇まいで、気味が悪い空気の中僕は彼の後ろを歩きながら周囲を見渡す。
小さな呪霊がこちらに来るたびに、ギターの弦を一つ弾く一つの音でパンっと次々と弾けるように弱い呪霊が消えていく。
消えた呪霊の散り散りになった、呪力を感覚で集めていく。また同じく呪いにならないように。なんとなくやり方は分かった、集めるたびにさらにいつもより気分が悪くなるから。
「そうですか、足は引っ張ると思いますけど………仕事はやれると思うので。」
「そう固くならんでも良い、まだ10にも満たんのに完璧にやろうとするのがおかしいんじゃ。わしのような年寄りに任せておればいい。」
「頼もしいですね。」
この人は僕より先に死ぬのだろうか、それとも後に死ぬのだろうか。でもいつか別れることは確実なのだ、それは僕が決まった寿命でなくても同じこと。
後でこの楽巌寺さんの好きなお菓子でも聞こうかと思う、これから生きてる限りは付き合うことになるだろうから。
正直に言えば、加茂家の次期当主さんと同じぐらい親しくなっても大丈夫な気がする。
いい人そう、只の勘だけど。
「ボーッとしちょるな! そろそろここの呪霊多い処に入るからな、気張れ。」
声に驚いて、向き直るとそこには潰れた大きな呪霊が一つ殴られ潰れていた。口から足が生えているように見えるがそれはよく見ると千切れた本物の人間の足だと気が付き。
ここは本当に危険な場所なんだとやっと知覚した、もし一人だったら丸呑みにされているだろうなさっきの呪霊に。
「貴方がいて良かったです。」
「それが仕事じゃ。気にせんとけ。」
そうやって深くまで歩いていく、何かを倒す為ではないそういう特定の目的がなく彷徨く呪霊になる前の呪力溜まりを解消する役割なのだからそれはそれで当然か。
呪霊を倒しては、散り散りなった呪力を吸い上げ場所自体に溜まっている呪力を吸い上げる。あらかた綺麗になったらまた次の場所に向かうのだが………こういう物は掃除と同じで完璧を求めるといつまでも留まることになるだろう。
お互い慣れてるのか向こうも同じ考えのようで。
「そろそろ切り上げて次に向かうとするかの、継木は平気か?」
「僕は、平気です。貴方も疲れたら言ってください。かなりの箇所巡るので時間とか体力とか使うので。」
そうやって、車まで戻ろうとすると呪霊の食いかけで遺されたのか首ががネジ曲がり折れ壊れた人形のように腹から内蔵が飛び出した死体を見た。
目が開いている。
「少し、待ってもらってもいいですか。」
僕は、待ってもらうためにここの呪霊に喰われたと思われる死体を指差した。
すると何故か怪訝な顔をこちらに向けて。
「死体か………まぁいいもうここは安全じゃろうて………、本来ならいや何でもないわ。」
「では、時間取りますが失礼しますね。」
僕は、死体の前に近づいて手で見開いた目を閉ざした。その後袖から香を取りだし近くにおいて火をつける、静かに細くか弱い煙が立ち上った。
いつからか当主がやり始めた行為、でも最初からの風習というわけではないから絶対にやれと言うものではないが………
嘘でも慰めや安らぎがあってもいい。今こうしてるのがどれ程の悪人かそれとも善人か、そんな事は関係がない。最後ぐらいは誰だって何者だって、救いを求めてもいい本当に救われるとは限らなくても。
「名前はなんだろうな、失礼します。」
服を弄ると、内蔵にあたり服が血で汚れる………でもそのこと自体にはなんとも思わなかった。なんとか学生証らしきものを見つけ名前を確認する。
「…………わかった君は、こういう名前をつけてもらったんだね。お疲れ様後はゆっくりお休みなさい。
僕は、君のことを覚えているよ。
それが役割の一つでもあるから。」
僕は、名前をしっかりと覚えその場を立ち去り彼の元に戻る。まだ回る場所は山ほどある、合流して車に揺られて朝から晩まで同じようなことを繰り返した。
名前も呪霊の形もすべて覚えた。
その時には、すっかり夜も深くなり冷たい風が吹いている。この服は動きやすいのはいいが風が吹くとどうにも肌寒く感じる。
「お疲れ様でした、ありがとうございます。ちょっと余計なことに時間使わせてしまって。」
お辞儀をして、少しの謝罪をした。今回は、死体を見かける事が多かったそのおかげで袖に持っていた香をすべて使い切ってしまい。僕は、そのままでも良かったが見るに見かねたのか香の補充に一旦家に戻らせてもらったのだ。
「それが継木家なのだろう?呪術界でも、かなり特異な形質を多く持つ。それが一種の縛りでもあるのであれば仕方あるまいよ。
後払った呪霊の数覚えておるか?」
「637ですね…………人から生まれた者たちですからね、覚えていますよ。忘れませんよ。」
僕はそう言って笑った、本当にいい人だ。
呪霊は悪ではない、人によって生まれたある種子の様なものだそれを呪いにより消してしまうのだから覚えておく必要がある。
確かにそこにいたんだと、人と同じように。
「そうか、先代も同じように呪霊すらすべて覚えておったわい………
少し気が早い話なのだが、もし良ければ京都校で学ばないかの?東京校もあるのは知っとるか?」
「東京校の呪術高専には、五条家の挨拶のときに一度伺いましたが京都校もあるんですね………」
京都校で教鞭も握ってるとなると本当に多忙な中来てくれたのだなと感じた。
距離的には大体同じ程度だとは思うが………
「具体的にどっちに行くかは家の者が決めると思いますので、こっちでどうとかは言えませんけど。もし京都校に行くことになったら僕は嬉しく思いますね。」
「そうか………もし京都校に来ることになったらこちらも歓迎する。」
楽巌寺さんは口調をちょっとわかめにしてみた。
櫻君のメンタルは病んでるようで、割と発散できてるので健全です。
どの組み合わせがみたいですか?(展開影響アリ)
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継木&虎杖
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継木&釘崎
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継木&伏黒
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一年ズ+継木
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継木単体