「団長!団長!大変っす!」
「どうしたんだい?ラウル。」
「
「それで?その功績者は見つかったのかい?」
「そ、それが誰も現場を見ておらず、どのファミリアも心当たりはないそうで・・・」
「へぇ、実に興味深いね。」
「仲間割れ・・・っすかね?」
「完全に否定するには情報が足りない。名乗り出てこない点から見ても『彼らの罠』という線は薄いと思っていい。報告ありがとう。下がっていいよ。」
「失礼しますっす。」
「フィン、何か気になるのか?」
「あぁ。少しだけ敵の真意が変わった。そんな気がしてね。」
「先日も似たようなことを言っておったろう。何か変わったのか?」
「奥底にある『意図』とやらは変化していない。これだけは言える。ただ、その意図に思いがけない
「??」
「これはあくまで僕の想像の域を脱しない。それを大前提として聞いてくれ。」
「お前の『想像』ほど宛になるものは無い。違うか?」
「彼らにとって予想外であり、
・・・・
「ありがとうお兄ちゃん!」
「次からは気をつけるんだよ。」
血が滲み出ていた膝に包帯を巻いて簡単な処置を施し、注意を促した後に走り去っていく少女に手を振る
『巨悪』に手を貸した上で誰かを助けるのは不思議だと問われればそれまで
単に放っておけなかった。それだけなのかもしれない
「あらあら、感心なことですねぇ。」
「・・・?えーっと貴方は確か【アストレア・ファミリア】の・・・」
振り替えればそこには他の人とは変わった服装を着た黒髪の女性
「わたくし達のことをご存知とはうれしゅうございますね。」
うわぁ絶対思ってないよこの人
『しゃこーじれい』ってこういう事だよ多分
「それで、何か用ですか?わざわざ褒めるためだけに来たわけでは無いでしょう?」
「いえ、そんな大したことではありませんわ。ただ・・・」
顔に張りつけた笑顔は1ミリも崩さない
こわいよこの人
邪神より怖いよこの人
「わたくしは貴方のような冒険者を見たことがございません故・・・一体どこからいらしたので?」
笑顔は崩さない、それでも奥底には拒否権はないと固い意思がみられる
やはりというか、この人
「生憎と僕は外の『ファミリア』所属で。それもそこまで有名じゃないので話したところで貴方の真意に応えられるかどうか・・・」
「【
こ、口角まで吊り上げてる!この人絶対楽しんでる
そ、そうだ!こういう時はこう応えろってエレボス様から教えてもらったんだっけ
「へ、【ヘスティア・ファミリア】です。」
「ほぉ・・・確かに存じ上げませんね。それでは、押し問答はここまでにしときますね〜。」
そう言って1人来た道を彼女は戻っていく
「今のところは敵ではないとだけ判断しときます〜。またお互いに生きてあえるといいですね〜。」
やはりというか、彼女が誰なのか、まともな情報は分からなかった
ただ、良くも悪くもいい付き合いはしないだろう
それだけは言えるのだった
・・・・
「一つだけよろしゅうございますか?アストレア様。」
【アストレア・ファミリア】本拠『星屑の庭』
巡回から帰ってきていたメンバーは、遅れて戻ってきた輝夜を見てひとまず安堵した
「ヘスティア様という神様をご存知でございますか?」
「ヘスティア?もちろん知ってるわ。『アテナ』、『アルテミス』に並んで3代処女神が1柱で、神格者としても
「ではその女神様が【ファミリア】を創ったという情報は?」
「ファミリア?そんなはずないわ。彼女が降臨したなんて話、聞いた事無いもの。」
「それは本当ですか?」
「えぇ。彼女の神友の『へファイトス』も『アルテミス』からも話は聞かないもの。」
「どうしたんだよ輝夜、何の話してるんだ?」
「その【ヘスティア】様でしたか?その女神様がどうかされたので?」
輝夜の周りに他の眷属も集まってくる
「いえ、ありもしない【ヘスティア・ファミリア】所属と騙る男子と出会った。それまでの話です。」
「確かに変ね、実在しないはずのファミリアの子供ね〜。」
「具体的にどんな特徴だったのですか?」
「そうですねぇ。一言で言ったら『アルミラージ』。ですかねぇ。」
「・・・ふざけているのですか輝夜。」
「あくまで見た目の話。白髪のヒューマン、わたくしにはどうにもきな臭くてたまりませんわ。」
「その子、もしかしたら私たちも会ってるかも・・・ねぇ?リオン。」
「白髪のヒューマンでしたら確かに先日お会いしました。名前は確か・・・イアンだったかと。」
「うーん、この情報量じゃ判断できないわね。明日、一応他の【ファミリア】にも伝達はしておくわ。それじゃ、みんな揃った事だし反省会始めましょう!」
・・・・
「どうしてこんなことに・・・」
ぼくはその夜、ふらふらとなんの気なく散歩をしていると1つの廃教会にたどり着いていた
全体的に廃れ、入口の扉は枠から外されよく取り壊されないものだと関心するほどだった
「おじゃましまーす・・・」
誰もいない
そんなことはわかり切ってはいるものの、言ってしまうのは仕方のない事なのだ
扉という役割も果たせていないような入口をくぐると、これまた所々外見からの期待も裏切らない有様だった
唯一期待はずれだったのはやけに
生活感は一切ない
まず間違いなくこの教会は無人のはず
それなのに、瓦礫やホコリがところどころあるだけ
まるで、
なぜ、こんな手間をかける必要があるのかその答えはそこにあるのだろうか
などと思案しながら月光の差し込む奥の方に足を進めていく
「うわぁぁ!?人が倒れてる!?」
光の当たる床に、白い服で頭まで覆った人達に頭は覆わないものの、口周りを覆っている人達、それともう人グループ
オレンジと白の服を着てなぜか仮面を付けた人達
2人ほど違う服を着ているけど多分この仮面の集団達の仲間・・・だよね?
それと1人、知己がいることに気づいた
「誰だっ!」
「い、いえ!僕は決して怪しいものではなくて・・・」
1人、青い服を着たアーディさんとは別の女性が立ち上がる
「ならば何故ここにいる!」
「えっ、えーっと・・・偶然?」
「(
「そ、それじゃあ無事みたいですし僕はこれで・・・」
「待て!逃がすと思うのか!」
獲物を握る手が小さく震えている
よほど受けたダメージが大きかったのだろう
「応えろ、お前は何者だ?なぜここに来た?」
「・・・今はイアンとだけ言っておきます。」
「イアンだと?聞いたことがないな。」
「ははは、それは僕が
彼女の方を向いたまま後方の扉へと後退する
「
「逃がすかっ!」
「・・・手は出したくないと言ったのに。」
静寂に包まれた夜の帳は、1人の手によって引き裂かれた