痛みしらずのブラックスワン~やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。より~   作:伊勢村誠三

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「人間は、成長するのだ! してみせる!!」

                  第一部 ファントムブラッドより


猛独が襲う

イタリアがネアポリス。

かつて地中海との貿易で栄えたパスタの故郷として有名なこの街に、一人の少年が歩いていた。

金髪に紫目、デザイン的に穴の開いた緑色のスーツを着た鋭い目の少年だ。

イタリア事情をよく知る者が彼を見れば10人中10人、彼をギャングと判断するだろう。

そんな彼は暫く目的地など無いようにふらふらと歩いていたが、やがて一つのリストランテに入る。

 

「いらっしゃいませ。」

 

「彼と待ち合わせしてる。」

 

そう言われるとウエイターは一瞬目を細めたが、すぐに一番奥の席に案内した。

もう既にボルサリーノ帽をかぶった伊達男が待っていた。

 

「お久しぶりですムーロロ。」

 

「ああ。ま、座れ。」

 

促されて少年が座ると、ウエイターは彼に牛肉のボロネーゼが出される。

その皿の下には一通の封筒が敷かれている。

 

「明日1時、ネアポリス・カポディキーノ国際空港の組織所有のジェット機だ。

すぐに日本に行ってもらう。

封筒の中身はパスポートとチケット、日本での活動拠点の鍵。

そして指令所だ。指令所の方は飛行機の中まで開けるな。」

 

「了解です。」

 

短く伝えるとムーロロと呼ばれた男はウエイターに金を渡して去って行く。

残された少年はボロネーゼを食べ終えると封筒をもって店を後にした。

 

 

 

「……来たのね。」

 

「ああ、まあな」

 

総武高校奉仕部は、きわめて悪い空気が流れていた。

一見、何時も通りの依頼の無い日の様に見える。

だがただでさえ離れたところに座っている部長の雪ノ下雪乃と、問題の一番の中心人物、比企谷八幡の心の距離まで離れているのだ。

 

(どうしたらいいんだろう…)

 

部員の由比ヶ浜結衣はそんな二人を、びくびくしながら見てるしか出来なかった。

どうにか、どうにかこの空気を払拭したい。

そう思って何か二人に声をかけようとした時だった。

 

コンコンコン、と、きっかり三回。

ドアがノックされる。

全員気を張っていたからか、すぐには反応できず、再びドアがノックされる。

 

「どうぞ。」

 

雪乃がそう言うと、ドアを開けて一人の男子生徒が入って来た。

天然の金髪に、紫目。見るからに白人で、背丈は175cmぐらい。

制服は当然ながら総武高校の男性用の物なのだが…いったいどんな改造をしているのかデザイン的にクレーターの様に部分部分がへこんでいる。

ネクタイも私物らしく黒に紫のいちごの模様がついたものだ。

 

「失礼する。奉仕部はここであっているかい?」

 

「ええ。それで、ご用件は何かしら?ナランチャ・ギルガ君。」

 

その名前は結衣も知っていた。

イタリアのナポリから仕事の都合でJ組に編入して来た転校生で、

編入テストは全教科満点だったという噂はかなり有名だ。

 

「ああ。僕はこの学校に来て日が浅いだろう?

どうしてもある要件を伝えたい人がいるんだが、

生憎彼がどんな音楽が好きかも知らなくてね。

君たちに顔つなぎをお願いしたいんだ。」

 

「なるほどね。いいでしょう。それで、その人の名前は?」

 

「ヒキガヤハチマン。」

 

そう言った時、ナランチャの背後でビクッ!と八幡が震えた。

雪乃と結衣もそちらを剥く。

 

「もしかして君が?」

 

「ひ、人違いでしゅ…」

 

そう言って滅茶苦茶動揺しながらそっぽを向いた。

 

「嘘は、よくないな。」

 

そう言ってナランチャが目を細めたその時、八幡の体が大きくはねた。

そしてまるで腹部を強く蹴られたかのようにうずくまり椅子から倒れ落ちる。

 

「!? 比企谷く…なぜ止めるの由比ヶ浜さん?」

 

駆け寄ろうとした雪乃を結衣が裾を掴んで止めた。

 

「ゆきのん、見えないの?

あれ、なんか…ギルガ君の中から、変な、影か、モヤみたいなのが…」

 

「モヤ?」

 

「見えるのかい?僕の『パープル・ヘイズ・ディストーション』が。

もっとも、今うずくまってる彼はもっとはっきり見えているだろうが。」

 

ナランチャがそう言うと、八幡はその腐った眼を細め、歯を食いしばった。

ズバリ言当てられた通りなのだ。

彼の、八幡の目にははっきりと、白と紫の肌に、バイザー付きの黒いヘルムを被った血走った目に縫われた口からダラダラとよだれを垂らす怪人が、はっきりと見えているのだ。

 

「さあ、正直に答えてもらおうか。

君は、ヒキガヤハチマンだね?」

 

「くっそぉおお!」

 

八幡はそう叫ぶと、二度と見たくなかった[[rb:自身の怪人 > ・・・・・]]を繰り出す。

薄く肉の付いた黒い骸骨に鎧のようにも見える鉄板を打ち付けたそいつは頭をすっぽり覆う白いペストマスクをかぶった怪人だ。

 

「え!?ヒッキーも!?」

 

「あなた達さっきから何を…」

 

目の前のナランチャの怪人に向かって飛び出す。

 

『UREEEYYY!!』

 

「喋った!?」

 

結衣の驚きの声を聞きながらペストマスクはラッシュを繰り出す。

 

「温い!パワーも、スピードも、

その気になればムーディーブルースでもさばけるな!」

 

『うばっしゃあああああああああ!』

 

ペストマスクをパープル・ヘイズ・ディストーションは簡単に返り討ちにしてしまった。

ペストマスクが拳を受けるたびに八幡にも殴られた後のような傷ができ、壁に叩きつけられ、ついに動けなくなる。

 

『ギャ、ギャレ……』

 

ぴく、ぴく、と震えるペストマスクの手首をパープル・ヘイズ・ディストーションは容赦なく踏みつける。

八幡はペストマスクと同じ手首を押さえて声にならないうめき声をあげる。

 

「仮にも彼の兄弟なんだし、もう少しやるかと思ったけど、

案外、大したことない人間なんだな。君は。」

 

「いきなり来て…なんなんだよ。」

 

「僕は君を調べに来た。あるお方の命令でね。

果たして君のスタンドが脅威になるか。

けど、取るに足らない。

その彼女の言うところの影かモヤも強さは使用者の精神力に依存する。

君のスタンドからはそれが感じられない。」

 

「だ、まれ…こいつが、こいつが強かったらあの時あんなもんじゃ!」

 

「ほう!なるほど!

つまり君は自分のスタンドに特大のブレーキをかけたわけだ!

まるで臭い物に蓋をする用に!

そこら辺にいるカラスかと思えば、

その実自分を自分で決めつける黒い(ブラック)白鳥(スワン)って、ところか。」

 

そう言って鼻を鳴らすとナランチャは部屋を出ていった。




STAND MASTER ナランチャ・ギルガ(?)

      破壊力   A
      スピード  B
      射程距離  E
      持続力   E
      精密動作性 C
      成長性   ?

     STAND NAME パープル・ヘイズ・ディストーション
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