痛みしらずのブラックスワン~やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。より~ 作:伊勢村誠三
第六部 ストーンオーシャンより
1
比企谷八幡がスタンド能力を得た理由。
それは、彼がDIOの息子であるからに他ならない。
彼の母は新婚旅行でエジプトに行った時、
あのDIOに屈服し、彼の子を孕んだのだ。
そしてDIOが空条承太郎に倒されると、
彼女は夫とともに日本に帰り、彼を出産。
幸いにして肩の星型の痣以外、
全くと言って良いほど父の面影の無い彼に両親は安堵した。
しかし、彼が継いでしまった父の要素は両親の全く感知できぬところで発現していた。
スタンド能力。
つい昨日、ナランチャ・ギルガこと、
パンナコッタ・フーゴに『ブラックスワン』と名付けられた彼の分身である。
「友達じゃ、駄目かな?」
中学生の時、比企谷八幡は同じクラスの折本かおりに告白して振られた。
これだけならまだ甘酸っぱい青春の一頁で済ませられることだろう。
「あいつ、折本に告って振られたんだってさww」
「だっさwwwwwつかなんでいきなり告白??」
「気持ち悪いよねー。
いつも一人で何考えてるか分かんないし。」
最低限の擁護をしておくと、
折本かおり本人は、悪意御あってこの話を広めたわけではない。
なんてことない日常会話の様に彼を振ったことを友人に話しただけだった。
だが彼女の周囲は悪意を持って彼の行動をまるで悪事のように広めた。
人付き合いが苦手で、あまり人と繋がりを持っていなかった彼は、
人間の醜悪さに絶望することになった。
最初はクスクスと、背後で笑われる程度だったが、
物がなくなったり、階段で転ばされるようになったりと、
いじめ行為はエスカレートしていった。
そしてたまりにたまった彼の鬱憤は、修学旅行のある一軒で爆発した。
二日目のキャンプファイヤーで彼は組んでくれる相手がいなかった。
それくらいならもう彼も何も感じなかったが、
ふと目に入ったのだ。折本かおりと、その相手の男子生徒が。
その男子生徒は八幡の死線に気づくと、
勝ち誇ったような笑みを隠そうともせず八幡に向けた。
「………。」
八幡は音楽に合わせて踊る人々を無理やり払いのけて最短距離でその男子生徒に詰め寄る。
「お前なんか!」
そう叫んだその時だった。
彼の背後から明確に像をもってスタンドが現れたのは。
『UREEEYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!』
まず彼はいきなり左足を押さえ泣きながら痛い痛い!と悲鳴を上げて倒れた。
そんな彼に異常を感じて駆け寄るクラスメイト達。
しかし、八幡の視界に捕らえられたすべての人間は体のけがなどしてない部分を押さえて苦しみだすか、急に青い顔をして泣き叫び出すなどの異常をきたし、そうならなかった物も見えないし触れることの出来ないスタンドビジョンにことごとく痛めつけられた。
「はっ!……え、、あぁ?」
我に返った時、その場に立っていたのは八幡だけだった。
周囲を見渡す。
皆、幻痛やトラウマの強制想起で倒れているか、
ブラックスワンにタコ殴りにされたかの二択だった。
「お、れ…が?俺が、やったのか?
あああ…あああああああああああああああ!!!!!」
この一件は全員何らかの精神的、
又は物理的な強い痛みを伴う出来事を思い出した集団ヒステリーとして処理された。
八幡は両親に許可を取り転校。
ただ一人すべてを最後まで目撃した折本かおりは、不登校のひきこもりになってしまった。
それ以来、八幡は二次元や自分の殻の内側に逃げた。
(こいつに名前なんてない。
だっていないし誰にも見えないんだ。
俺にしか見えないってことは居ない!
だから無視しろ。無視するんだ!)
彼はスタンドを縛った。
自分の内側に見たバックリわれた地割れの底のような闇に眼をそむけた。
結果、それ以降スタンドが出てくることさえなかったが、
八幡は益々内向的で偏屈なひとりぼっちになっていった。
しかしそこに、フーゴが、逃れ得ない自分以外のスタンド使いが現れた。
スタンド使いとスタンド使いはひかれあう。
彼がずっと目を背けて来た
2
「やあ!そこの彼女!」
白と緑のセーラー服の少女がアホ毛をぴょこん、と、揺らしながら振り返る。
ナランチャことフーゴは次なる任務を遂行しようとしていた。
八幡の妹、比企谷小町との接触である。
「時間を知りたいんだ。
時計を見せてもらえるかな?」
「いいですけど…」
フーゴに対してやや不審げな視線を向ける小町は外した時計を見せた。
「『パープル・ヘイズ』。」
『パープル・ヘイズ・ディストーション』すかさずその腕を掴み、
逃げないようにつま先を踏みつける。
「い、いや」
叫ぼうとした口も反対の腕でふさぐ。
「悪いが、君を調べるためなんでね。」
そう言われた小町は一瞬、泣きそうな目を丸くしたが、すぐにキッ!と強く睨む。
彼女に白い翼が生え、その翼が伸びると同時に流体型の白い怪人が現れた。
顔は小さく女性的で、背も低い。
両腕はあまりパワーがないのだろう、兄のブラックスワンより細い。
だがそのスピードはかなり速い。
繰り出された手刀をのけぞって避ける。
パープル・ヘイズ・ディストーションのバイザーをかすめると、
フーゴの額にも小さな傷が出来た。
「あ、あなた…いったい……」
「どうやら君は、あの兄よりは使いこなしてるようだね。」
「!? お兄ちゃんに何を!」
「痛めつけた。」
その言葉に小町は益々フーゴを睨むと、
スタンドと共に走り出す。
「『ドリーム・バイ・エンジェル』ッ!」
スピードだけならスティッキーフィンガーズとタメも張れるだろう。
だが、パワーは甘く見積もってD。
パープル・ヘイズなら強引に突破可能だ。
だが、
(何か能力を仕掛けてくる…
だが僕は自分の脳ウ力で反撃するわけにはいかない。
なら!)
あえて急所以外をフーゴは防御しなかった。
接近され無数の刺突を正面から受ける。
「え!?嘘!?」
「そこ!」
一瞬完全に驚いて止まった小町にフーゴは容赦なく膝蹴りを叩きこんだ。
「ご!」
「悪いが、報復しようなんて思わないくらいに敗北してもらう!」
『うばっしゃあああああああああ!』
肩、足、脇、連続蹴りをスタンドに叩きこみ、小町を後方にふっとばす。
羽が散り、小町は仰向けに倒れ、背中を思いきり地面に打ち付ける。
しかしフーゴは見逃さなかった。
小町が気を失う寸前、笑ったのを。
すぐにのかった羽に何かあると判断したフーゴはパープル・ヘイズの拳についた辛子色のカプセルを飛ばした。
一番近くにあった羽に触れて砕けたカプセルから、
目に見えない最凶の攻撃が放たれる。
殺人ウイルスの散布。
それが『パープル・ヘイズ・ディストーション』の固有能力だ。
外に飛び出しウイルスは光で簡単に殺菌されるが、
増殖力は強力で、一瞬あれば人体を残らず食い荒らせる。
たった一枚の羽根を食い尽くすなど造作もない事だった。
(さて、残った羽から離れよう。)
落ち着いて離れたフーゴ。
そこに風が吹き、残った羽が反対の歩道の方に飛んで行く。
「あれは…まずい!ユイガハマ!」
不意に声をかけられた結衣は、彼女からは靄の様に見えるそれに驚いて立ち止まるが、
なにかスタンド由来の物と判断し、すぐに両手を交差させて頭を守る。
すると彼女の、影にノイズのような物が走り、地面から浮き上がるとその羽を掴んで明後日の方向に投げる。
羽は一瞬赤く光ると爆発した。
「今のは…」
『ふふふふっ……』
影は不気味に笑うとまた地面に張り付いた。
STAND MASTER 比企谷八幡
破壊力 B
スピード C
射程距離 C(能力のは視界に依存)
持続力 B
精密動作性 D
成長性 B
STAND NAME ブラックスワン