痛みしらずのブラックスワン~やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。より~   作:伊勢村誠三

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裁くのはおれの『スタンド』だッー!!

                  第3部 スターダストクルセイダースより


その拳を叩きこむ

「来るぞ!『パープル・ヘイズ・ディストーション』ッ!」

 

『うばっしゃあああああああああ!』

 

拳のカプセルを外した『パープル・ヘイズ・ディストーション』が飛び出し迫りくる昇降機を何とか打ち返そうとラッシュを叩きこんだ。

だが凡そ人数人分しか乗せられないはずのそれは異様な重さと勢いで重力以上の理由で接地しようとする。

 

「まだだ!パワーを振り絞れっ!何としても耐えるんだ!」

 

『ばっしゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!』

 

『パープル・ヘイズ・ディストーション』の拳がその勢いを増す。

巨大な金属の塊を殴る音が吹き抜けに響く!

規則的な音の中に何かをこじ開ける様な異音が混じって聞こえた。

 

フーゴが脱出のためあけた穴からついさっき共にこのマンションに足を踏み入れたアホ毛付きのボサボサ頭が見えた。

 

「ヒキガヤ!」

 

「来い!引っ張り上げる!」

 

そう言って差し出された拳は切れて血が流れていた。

フーゴは『パープル・ヘイズ・ディストーション』をすり抜けてその手を掴もうとした。

しかし!

 

「あっ!」

 

八幡のうなじを、壁から飛び出て来た矢がかすった!

 

「今のは!?まさか…『矢』か!?」

 

『矢』によって暴走したスタンドがどうなるか。

人づてにでも聞いていれば、嫌な想像を、最悪の事態を想定せずにはいられない!

 

(頼む!頼むぞヒキガヤ!このエレベーターに加え暴走した『ブラックスワン』なんて…)

 

『ギャァアアアアーーーーーレェエエエエエエエエーーーーーーーーーーーー!』

 

勝手に八幡の背後に現れた『ブラックスワン』もうなじが切れていた。

そこから鮮血が噴き出し鎧を、体を、赤く染め、かきむしるようにペストマスクを引っぺがす!

 

「な、なんだ…なんだこれは!?」

 

「スタンドが変わってるんだ!

『スタンドパワー』の『その先』を引き出す!それが『矢』のパワー!

ヒキガヤ!君のスタンドは今!別の物になろうとしている!

絶対に制御するんだ!どんな形でもいい!

そいつが暴走してこのエレベーターと何か噛みあった瞬間!

僕らの負けが決まってしまう!」

 

吹き出る血、変わるスタンド、異常事態。

正直、八幡は色々いっぱいいっぱいだった。

 

どんな形でもいいから制御しろと言われても、

今まで嫌っていたこいつが違う形になってくれるなら、

願ってもないが…。

そうやってその場しのぎの『解消』をしてきたからこうして『解決』しか出来ない問題が来てしまったようにも感じる。

命の危機、絶体絶命の窮地にも関わらず、

八幡の思考は痛みと奇妙過ぎる現状のお陰でどこかクリアでよく回った。

 

「あーもう。ぐちゃぐちゃ考えるのはめんどくせえな。」

 

「ヒキガヤ?」

 

「いい加減この糞めんどくせえ事態を収拾つける!

何も考えねえで一回ぐらい言ってやる!てめえらなんか嫌いなんだよ!

ぶん殴るからそこを動くな!

今まで他の言い訳しか使ったことなかったから今!

今だけ最後に使わせてもらう!

お前らのせいでこんなこじれてんだよ!どいつもこいつもすっこんでろ!

俺の前に立つんじゃねええええええ!

その出来のイマイチな脳みそ!

蟻にトンネルあけられてそこから更に食われて半ば腐った皮だけのジャガイモみてえに中身スカスカにされてぇかぁあああ!」

 

葉山とか陽乃とか、

あと、少しは感謝してるし尊敬してるが平塚とか、

中学の時の同級生とか、塩対応の親父とか、

今助けようとしてるフーゴとか、

もうとにかくいろんな人間の顔を思い浮かべて八幡は握りしめた拳を床に叩きつけた。

 

「雪ノ下の件といい!小町の件といい!

テメエのツケ!耳揃えて全額払ってもらうぜ!

『ブラックスワン』!……『ジ・アクシデント』ッ!」

 

グルん、と、『ブラックスワン』の眼球が裏返り瞳の赤と、地の黒が逆転する。

 

『ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ!』

 

『ブラックスワン・ジ・アクシデント』の拳がエレベーターの天井を破壊する!

そして吹き抜けに飛び上がると、壁に向かっても拳を振るう!

 

『ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ!』

 

壁を蹴りながら一番上まで飛び上がり、天井を蹴ってまた戻る!

 

『ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダァアアアア!

UREEEYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!

ムッっッッッダァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』

 

完全につぶれた昇降機の真上に砂塵と共に八幡は舞い降りた。スタンドのどこかから落ちて来た矢をキャッチする。

 

「ブラックアウト…てめえの意識と、未来がな。誰かさん。」

 

「うっひゃー…ヒッキーすごーい……」

 

「全く。どんだけため込んでたんだ…。

僕が脱出してるとかしてないとか考えずにやっただろ…。」

 

「まあな。けど…」

 

「けど?」

 

「ようやくスッキリした!行こうぜ!二人を手当てしねえと。」

 

そう言った八幡の顔はぎこちないながらも、さわやかな笑みがあった。

 

 

 

翌日。雪ノ下の引っ越しが決まった。

流石に死体まで見つかったマンションに娘をずっといさせる親ではないらしく、すぐに戻って来いと言われたらしい。

 

「正直、あまり気は進まないけど、無様に操られた上に

誰かさんにまで敗北を喫したんだもの。

この先どんだけ恥を上塗りしても平気だわ。」

 

なんてあいつにしては珍しく俺に悔しそうな顔を見せて言った。

そのあと家族と話し合って、珍しく雪ノ下さんを言い負かして泣かせる雪ノ下の姿があったとか。

そして回収された『矢』はと言うと…

 

「調べたところ、葉山夫妻が新婚旅行先の露店で買ったものだそうだ。

しばらくインテリアにしてたらしいけど、

いつだったか模様替えした時にしまったきりと思ってたらしい。

多分、その時に葉山隼人が触れてスタンド使いになったんだと思う。

現にあの日、彼は急に体中をかきむしったかと思うと白目をむいて口から泡を吐きながら卒倒するようすがショッピングモールの防犯カメラに写ってたし、ほぼ間違いないと思う。」

 

学校では相応の騒ぎがあったが、意志の無いエレベーターにいつの間にか支配されてるよりかはマシな混乱なんではなかろうか?

その後ギルガは怪我した仲間と共に『矢』を持って帰国。

奉仕部もいくつか依頼をこなしつつ、どうにか平常運航に戻ったと言って良いだろう。

若干雪ノ下の毒舌が減少傾向にはあるが。

さて、そんな俺たち奉仕部が今どこにいるかと言えば…

 

 

 

「あれ?奉仕部の三人じゃん。どうしたの?

こんな土曜の昼間に。」

 

「姉さん。ちょっと引っ込んでてくれるかしら?

今から大事な5人目の部員を迎えなきゃいけないの。」

 

「五人目?」

 

「あー。今いろはちゃんってこの前依頼してきた子が入り浸ってて、実質部員、みたいな?かんじなんです。」

 

ふーん、と、何やら四人目、一色を利用する算段でも考えているのか企んでる笑みを浮かべる。

しかし、その笑みは、次の瞬間、電車から降りて来た改造制服のあいつの顔を見て凍り付くことになった。

 

「やあ皆。久しぶり。」

 

何かいい事でもあったのか、朗らかな笑みを浮かる彼は、トレードマークの紫のイチゴのピアスを揺らして再びこの千葉に降り立った。

 

「え、えっと…まさか、五人目って…」

 

「紹介するわ。ナランチャ・ギルガ君よ。」

 

「お久しぶりです。ミスユキノシタ。

あの時はひどい無礼を働いてすいません。

これはせめてものお詫びです。白がお好きだと良いんですけど。」

 

そう言ってグレコ・デ・トゥーフォーの白ワインを受け取った陽乃は半泣きになりながらホームを走り去っていった。

 

「嫌われちゃったなぁ…」

 

「ま、気にすんなよ。あの人に明確に怖がられるって、

何気にレアなポジションだぞ?」

 

「そうね。あなたがいてくれると心強いわ。」

 

雪乃は姉の後姿を見送りながら闇黒微笑を浮かべた。

 

「は、ははは…ゆきのんお手柔らかにね~」

 

苦笑いを浮かべる結衣。

男性二人も同様だった。

 

「行こうぜ。昼前だしなんか食おう。」

 

「いいね。実は目を付けといたリストランテがあるんだ。

ポルチーニ茸をたっぷり乗っけた窯焼きのマルゲリータが食べれる。」

 

「なにそれすっごくおいしそう!」

 

「一色も呼ぶか?こいつの歓迎会で。」

 

「良いでしょう。あとで部費から出しましょう。」

 

四人は駅を後にする。

スタンド使いとスタンド使いはひかれあう。

きっと彼らに降りかかる苦難はこの先もあるだろうだが、

 

「所でヒッキー、最近よく左肩揉んでない?

右利きでもこるの?」

 

「いや、最近変な痣出来てきて…撃ったとかじゃなくてなんっか…入れ墨みたいに奇麗な星形になってきてさ。

温泉はいれるかな…」

 

きっと大丈夫だろう。

彼にもまた、地上の星、ジョースターの血と、それに見合う意志があるのだから。




STAND MASTER 比企谷八幡

      破壊力   B
      スピード  A
      射程距離  A
      持続力   D
      精密動作性 C
      成長性   ?

     STAND NAME ブラックスワン・ジ・アクシデント
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