ドラえもんside
「お、おいドラえもん。す、少しいいか?」
「あ、キャロルちゃん。どうしたの?」
キャロルちゃんは魔法少女事変の後、S.O.N.Gにて悪さをしないように監視……という名目で現在ここで研究員として働いている。
有事の際にはダウルダブラのファウストローブを使って共に戦ってくれることもある。頼もしい仲間であり友達だ。
とはいえ彼女の方から話しかけてくるのはとても珍しい。一体どうしたんだろう。
「そ、その……。あれだ……、その……」
「?」
こんなに歯切れの悪いキャロルちゃんなんて益々珍しい。
本当にどうしたんだろう?
「た、立花響から聞いたんだが……。お前に貸してほしい道具がある」
「貸してほしい道具?」
「あ、ああ……」
キャロルちゃんが秘密道具に頼るなんてことは滅多にない。
というのも大抵の物事はなんでも一人で片付けようとするタイプだからだ。僕に頼むことなんて滅多にないからこんなに歯切れが悪いのかな?
それにしたっていつもと様子が違う。なにか緊張してるみたいだ。
しばらく彼女は黙っていたが、やがて意を決したようにまっすぐと僕の目を見ながら言った。
「その……。タマシイム・マシンという秘密道具を貸してほしいんだ」
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キャロルside
その道具のことを知ったのは本当に偶々だ。立花響はオレに話しかけてくる際に今まで使ってみた秘密道具の話をする。
正直実に興味深い。かれこれ400年以上生きてきて、技術的革命も何度も目撃してきたが、わずかあと100年ほどでああも劇的な道具を作ることが出きる時代が来るというのは正直言っていまだに信じられない。だからこそ、ドラえもんの道具は興味深い。
そんな中、ある秘密道具を使った経験談を立花響はオレに話してくれた。
それがタマシイム・マシンだ。
タマシイム・マシン。それはタイムマシンの一種であり、魂だけが体から抜け出して、昔の自分に移る事ができるというものらしい。
それは一時の間とはいえ、昔の自分に戻れるということ。
すなわち、パパが生きていた時代に戻れるということ。
その話をオレは忘れることができず、最近では研究にも手がつけられなくなってしまった。
心配してくれたエルフナインや自動人形たちに思いきって相談してみたら……。
「でしたらその道具を貸していただけるようドラえもんさんに頼んでみたらどうでしょう?」
「そうそう。そんなになるぐらい、どうしても会いたいんでしょ
「派手に業務は私たちに任せて……」
「
「アタシたちが
「お前たち……」
五人の後押しにより、オレはドラえもんからその道具を借りることを決心した。
もう少しでパパに会える。そう思うとどうしても足がすくんでしまう。
パパの命題を理解できず、世界を滅ぼそうとしたオレがパパに会っていいものなのか?
ドラえもんはオレの様子に不思議がっている。オレはこんなに弱かったのか? 心底情けなくなる。
やはりやめてしまおうか……。
……いや、それではオレを送り出してくれた五人に顔向けができなくなる。
意を決してオレはドラえもんに頼んだ。
「その……。タマシイム・マシンという秘密道具を貸してほしいんだ」
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目を開けるとそこは昔パパと住んでいた家のベッドだった。
窓から見えるあの山はパパと一緒に薬草を取りに行った山だ。
「本当に……戻ってきたのか?」
このタマシイム・マシンには制限時間がもうけられている。その時間は一日。短くも長い時間だ。
懐かしい風景。匂い。もう二度と見ることはも感じることもできないと思っていたのに……。
ガチャ
「あ、おはようキャロル」
「っ…………」
ドアが開く音と共に響く懐かしい声。ああ、ダメだ。落ち着け。ドラえもんの説明を聞いてなかったのか? 昔と同じように振る舞わなきゃ怪しまれるだろう。
ここは過去の世界。生き返ったわけでは決してない。
そうだ。あくまで、昔の自分と同じ風に……。
「っうわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! パパァァァ!!!」
「おっと……どうしたんだい? キャロル? なにか怖い夢でも見たのかい?」
気付くとオレはパパに抱きかかり、激しく慟哭していた。
そんなオレをパパは心配そうに見つめている。
「よしよし。大丈夫。僕はここにいるから……」
「ひぐっ……。うん。うん」
パパはオレの身を案じて抱き返してくれた。
暖かい……懐かしい温もりだ……。
ごめんなさい。パパの思いを理解できなくて……。
回り道したけどもう大丈夫。もう間違えない。だからこれからも見守っていててね。パパ……。
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ドラえもんside
「おーい、ドラえもん……ってええ!? キャロルちゃん!? 大丈夫!?」
「ん? どうしたんだい? 響ちゃん?」
魂の抜け、脱け殻となったキャロルちゃんに毛布を被せていたら今度は響ちゃんがやってきた。
「い、いや……ちょっとお腹がすいたからグルメテーブル掛けでも貸してもらおうかなって思ったんだけど……キャロルちゃん大丈夫!?」
なるほど……。ほんと響ちゃんは食いしん坊だな。運動はしてるから太ってはいないけどもしやめたりしたら大変なことになるんじゃないかな……。
でも目的のものより倒れているキャロルちゃんを心配するところが響ちゃんらしいや。
「大丈夫。キャロルちゃんは今夢を見ているんだ」
「夢?」
「そう……。彼女にとって、世界よりも大切だった
今の彼女の体には魂がない。それでも、僕の目には彼女は笑っているように見えた。
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キャロルside
「ハハハ。こっちだよ。パパ」
「今日は本当に元気だなキャロル」
「今日は私がたくさん料理を作ってあげるからね」
「そうか……。それは楽しみだな」
「うん。楽しみにしてね」
あと半日もすればオレは元の時代に戻る。パパともう会うこともないだろう。
だから今。できる限りのことで感謝を伝えよう。想いを伝えよう。
今までありがとうパパ。これからもずっと大好きだよ。